暗黒錬金術師伝説7 暗黒!フィリスのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、黄昏の朱

ディーンさんは、肩を落として、去って行く。

 

最後に、本当に済まなかったと、もう一度わたしに謝っていた。男泣きに泣きながら謝るので、わたしとしても許し解放せざるを得なかった。

 

真相は、本当にくだらなく。身勝手で。どうしようもないものだった。

 

カンヴァーという例の商人。

 

既に広場に吊されている、の記憶を覗いたところ。

 

やはり先代公認錬金術師の時代から悪事を働いており。特に匪賊とのパイプ役を担っていた事が分かった。

 

その中では一番の小物だった。

 

どういうわけかカンヴァーの記憶にあった、先代公認錬金術師の手足となって主要な悪逆を働いていた連中は、悉く既に命を落としているのだが。ともかくとして此奴は、フルスハイムのインフラが竜巻で壊滅したのを好機とみて、あくどい商売を再開。

 

そして足りない物資の値段をつり上げて荒稼ぎすると。

 

その金を使って、ロンダリングをはかったのだ。

 

つまり、取引先だった匪賊の抹殺である。

 

未だにパイプのあった匪賊を上手く使って、傭兵団との争いを起こさせる。

 

匪賊に怪しまれないように、傭兵団にも勝てるような情報も流す。

 

その結果、近場の匪賊は悉く消耗。

 

傭兵団にも犠牲者が出た。

 

アズヴァマール一家も、その一つだった。

 

酒を仕入れさせたのは、小間使いを使ってやった事。アズヴァマール一家を皆殺しにした匪賊も、いずれ別の傭兵団に情報を流して処分するつもりだったらしい。

 

だが、鏖殺が来た。

 

それを知ったカンヴァーは、手間が省けたと喜んでいた。

 

そのせいで。傭兵団の人間だけで三十人以上死んだにも関わらず、である。

 

全ての映像が決め手となり。即決で死刑が確定。

 

その日のうちにカンヴァーは吊された。匪賊の場合は見敵必殺、捕縛した場合は斬首だが。カンヴァーは匪賊では無いので絞首刑らしい。この辺の法は街ごとにあるのだろう。吊される直前まで、カンヴァーは見苦しく泣きわめいていた。他も同じだとか。商人が金を稼いで何が悪いとか。頭に来たらしいオリヴィエさんが、最後は猿ぐつわを噛ませていた。

 

全てが終わった後、オリヴィエさんが来る。

 

彼女は、本当に申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「申し訳ありません、フィリスどの。 我が街の恥が、迷惑を掛けてしまいました」

 

「いえ。 それよりも、竜巻を起こしている根本原因を近々どうにかします。 その時には、協力をお願いするかも知れません」

 

「! 分かりました。 自警団に声を掛け、練度を高めておきます」

 

敬礼を受けたので、此方も礼で返す。

 

そして、すぐにエルトナに引き返した。

 

事件は片付いた。

 

だが、これでよく分かった。

 

今後、わたしは力を得れば得るほど、こういったおぞましい人間の深部を目にしていくことになる。

 

それは避け得ない宿命だ。

 

最初にお外の世界を見た時。

 

本に書いてあったものと違いすぎて。膝から崩れ落ちたけれど。

 

世界を知れば知るほど。

 

そのどす黒さ。

 

邪悪さが分かってくる。

 

変えなければならない。

 

わたしにはどんどん力が備わっている。だから、その力を使う義務がある。

 

場合によっては力尽くでも変える。

 

そうしなければ、ディーンさんのような犠牲者はどんどん増えていくだろう。それがこの世界というものだ。

 

ソフィー先生が言っていた事を信じるなら。

 

ソフィー先生は、あんな光景を、数限りなく、訳が分からない時間見続けてきた、という事になる。

 

それは、ああいう風になるのも納得である。

 

もしも、わたしもソフィー先生の領域に達したら。

 

ああなるのだろうか。

 

深淵に完全に浸かった。

 

力そのものの権化に。

 

エルトナには深夜に到着。その場で解散とする。レヴィさんは、あまり思い詰めるなと言い。カルドさんは。無言のままキャンプに戻った。

 

お姉ちゃんと一緒に家に帰ると、お父さんとお母さんが、料理を作って待っていた。ツヴァイちゃんは頑張って起きていたらしいが。もう力尽きて眠っていた。

 

もう一人子供が出来て嬉しいとお母さんは時々言っていたけれど。

 

やはり、ホムとの考えの違いは、時々ずれを産んでいるようで。

 

四苦八苦しているのが見て取れる。

 

でも、実のところ、お姉ちゃんを引き取った後の方が、もっと大変だったらしいので。

 

ある程度慣れっこなのだろう。

 

……お姉ちゃんがいない時に聞いた話ではあるが。

 

夕食をいただきながら、事件が片付いた話をする。

 

お父さんもお母さんも。昔はライゼンベルグ近くまで行ったことがあった事があるからだろう。特に驚かなかった。

 

きっと、わたしが見た程度の汚い話は。

 

幾らでも見てきたのだろうから。

 

具体的な話はしなかったが。

 

真犯人が罰を受けたことだけは告げ。

 

それだけで話は終わった。

 

寝床に入る。

 

メッヘンまで道が通るまで、後ちょっと。その後は、メッヘンと連携して、まだ弱い周囲とのインフラを更に強化。連携して、周辺都市が動けるようにしていきたい。

 

まだ、ソフィー先生が指示した時期まで、かなり時間がある。

 

周辺に確認されているネームドの処理。

 

いるようだったら匪賊の駆除。

 

そして街道が不整備なら、緑化作業で補助。

 

やる事はいくらでもある。

 

否。

 

今のわたしなら、半年あればそれだけの事が出来る、と言う事だ。

 

出来るのならやる。

 

当たり前の事で。

 

それ以上の何も必要はない。

 

ぼんやりとしながら、思う。

 

ああいう腐り果てた人は、どうしてああなってしまうのだろう。

 

世界を変えるには、人間を変えるしか無い。ソフィー先生はそう言っていた。

 

それは事実だと思う。

 

だが、具体的にどうしたらいい。

 

怪物的な才能を持つソフィー先生でも、どうにもならない状態が続いているのだとしたら。

 

何か方法はあるのだろうか。

 

いつの間にか、夢を見ていた。

 

わたしは既に人の姿を失い。

 

多数の人間の軍勢と戦っていた。

 

屈服せよ。

 

さもなくば皆殺しだ。

 

恐怖に顔を歪めながら、必死に抵抗する人々。

 

嗚呼。

 

こういう未来もあり得るのだろうか。

 

夢だとわかっていながら。

 

わたしは。また、心に大きな傷がつき、黒く染まるのを感じていた。

 

 

 

(続)




数多の戦略事業に参加し

様々な社会の裏側も見て

手を既に血に染めている今、フィリスは既に子供では無く大人として行動しなければなりません。

新たに指定された上級ドラゴンの撃破という課題もありますが。

それ以上にフィリスは大きく増えた「出来る事」を全力で駆使して、周囲の理不尽と戦わなければならないのです。

現在本作は一章分の内容を二日に分けて投稿しています。このペースについて意見をお聞かせください。

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