ひなたときゅう   作:アキ山

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思いついたネタで書いたモノに好評かをくださった皆様、ありがとうございます。

執筆していて思ったのですが、この作品は昼と夜に分かれている感じですね。

竈門家パートが昼、鬼と白面パートは夜という感じで。

これをこの作品の味にしようかな。



竈門家の新たな旅立ちと風柱

 鬼舞辻襲撃の翌日、竈門家を一人の男が訪ねてきた。

 

 冨岡義勇と名乗った青年は『鬼殺隊』なる華族の私兵組織に属しており、夜闇に紛れて人を食う悪鬼を滅する事を使命としていると語った。

 

「冨岡さん、でしたか。その鬼殺隊がウチへ何の御用でしょうか?」

 

「(この辺りは俺の警備区域だ。貴方の家は人里離れているので、異常が無いかを聞きに来た。そして俺の勘で、)ここに鬼が出たと思った」

 

 ボソリと呟かれた一言に、竈門家の人間は日向を除いて全員首を傾げた。

 

 冨岡義勇はすさまじく口数の少ない男だった。 

 

 いや、口下手と言うべきか。

 

 本人も話すのが嫌いと公言している通り、彼は脳内で考えている事柄の十分の一もアウトプットできない。

 

 その没コミュニケーションぶりは、某同僚曰く「そんなだから、みんなに嫌われるんですよ」と言われる程の代物だ。

 

 当然ながら、そんな男の弁舌の裏にある全容を初対面の人間が理解できるはずも無し。

 

 一家を代表して応対した炭十郎は必死に頭を巡らせた結果、鬼狩りをする以上はそういう勘も優れているのだろうと己を納得させた。

 

「鬼…ですか」

 

 そう呟きながら顎に手を当てて思案する炭十郎。

 

 思い当たる節は妻子から聞いた昨夜の不審者なのだが、それが御伽噺に語られる鬼かと問われれば首を縦に振る事は戸惑われる。

 

「ひな、しってゆ! きのーのよるね! あかいめの、こわいおじちゃんきたの!!」

 

 そんな中、声を上げたのは末娘の日向だった。

 

「日向、お父さんは今大事な話をしているから駄目よ」

 

「ねずねーちゃん、キュウもいってたよ! あれ、きぶーむざーってわるいやつだって!!」

 

 妹を止めようと後ろから抱き上げる禰豆子に、手足をパタパタさせて抗議の声を上げる日向。

 

「キュウ!」

 

 日向の言葉を肯定するかのように、花子の膝で丸くなっていたキュウは一声鳴いた。

 

 そんなやり取りを聞いた冨岡は少しの思案を挟んで、その顔色を変えた。

 

「待ってくれ! それは鬼舞辻無惨と言うんじゃないか?」

 

「そうだっけ?」

 

「キュウ、キュウ!」

 

 食い気味な冨岡の問いに、花子の膝から降りたキュウを抱き上げて問う日向。

 

 そんな日向にキュウは頷きながら何度も鳴く。

 

「そうだって!」

 

 狐と意思疎通をするという地味に凄い事を幼女はやっていたのだが、今の冨岡はそんな事を気にしている余裕はなかった。

 

 普通であれば幼子の戯言と切って捨てるだろうが、その対象が数百年目撃情報が無い鬼の首魁となれば話は別だ。

 

 奴を捕捉できる可能性があるのなら、藁にだって縋るべきだと冨岡は判断したのだ。

 

 彼はスクッと立ち上がると荷物の中から筆記用具を取り出して、手早く手紙をしたためた。

 

 そして口笛で鴉を呼ぶと、その足に伝書鳩のように手紙を括りつけて放ったのだ。

 

「すまないが、貴方達にはすぐにここを離れてもらう」

 

「へっ?」

 

 突然の冨岡の奇行を見ていた竈門家の面々は、彼が続けて放ったこの言葉に唖然となった。

 

「昨夜この家を襲ったのは鬼舞辻無惨という鬼の首魁だ。わざわざ奴自らが出向くという事は、貴方達には鬼舞辻が邪魔だと思う何かがあるに違いない。だから、鬼殺隊と我等の主家である産屋敷家で保護させてもらいたい」

 

 今までの口下手っぷりを返上するかのように一気にまくしたてる冨岡。

 

 これには炭十郎を始め、竈門家の人間は大いに悩んだ。

 

 竈門家が住んでいるのは先祖から受け継いだ土地だし、これまた代々続けてきた炭焼きという生業もある。

 

 それを全て捨てる事など、即決するのはあまりにも重い話だ。

 

「わかりました。私達はどうすればいいですか?」   

 

 それでも炭十郎は決断した。

 

 妻の話を鑑みれば、ここを襲撃した鬼舞辻とやらは家族を手に掛ける気だった事は間違いない。

 

 しかもそれが鬼の棟梁となれば、己の一家が置かれた状況が如何に危険かなど容易に察しが付く。

 

 キュウがいなければ、帰宅した炭十郎が目にしたのは変わり果てた愛する家族の遺体だったかもしれないのだ。

 

 こうして竈門家は雲取山から一時引っ越すことにした。

 

 彼等が次の居としたのは、鬼殺隊のパトロンである産屋敷家が用意した大きめの日本邸宅。

 

 産屋敷の当主からの説明では、ここで『藤の家』という食事や治療など任務に赴く隊士のサポートをしてほしいという事だった。

 

 こうして『藤の家』として竈門家は再出発する事になり、瞬く間に半年が過ぎた。

 

 そんなある日の昼を少し過ぎた頃、竈門家の玄関を一人の男が潜った。

 

 大柄で鍛えられた体と、ザンバラに切った白髪に顔や体に刻まれた数々の傷が特徴の剣士。

 

 入り口が開いた際に鳴る呼び鈴に気が付いた日向は、廊下の向こうで件の男を見ると目を輝かせた。

 

「おかえりなさい、さねみちゃん!!」

 

「実弥ちゃんはよせって言ってんだろうがよォ、日向ァ」

 

 満面の笑顔で駆け寄ってくる日向を抱き上げると、風柱・不死川実弥はその頭を撫でてやる。

 

「またちょっと重くなったなァ。ちゃんと飯食ってるみたいで安心したぜェ」

 

「うん! ひな、ごはんいっぱいたべてる!!」

 

 竈門家は他の藤の家とは違い、望まれない限り鬼殺隊士へ敬意を払って接する事は無い。

 

 その代わり、共に食卓を囲み談笑し、時には炭十郎が隊士の悩みを聞くアットホームな持て成しを行っているのだ。

 

 今のように子供達が満面の笑みで「おかえり」と言ってくれるのは、ここを利用する多くの隊士に好評だったりする。

 

「お、不死川のアンちゃんだ!」 

 

「おかえり、アンちゃん!」

 

「アンちゃん、ぼくもおんぶして!!」

 

 日向の声を聞きつけたのか、茂と花子に六太が不死川へ寄っていく。

 

「ちょっと待ってろォ。先に荷物置いてくるからよォ」

 

 子供達の頭をポンポンと叩くと、不死川は勝手知ったると言った感じで客間へ足を運ぶ。

 

 掃除が行き届いた部屋の中に日輪刀や旅装を置くと、グッと背伸びをした彼は背後へ声をかける。

 

「なァ、みんな出てきてくれよォ」

 

 不死川の声に応じるかのように、彼の眼は自分の背中から降りる薄青の光を映す。

 

 それは畳に着くと小さな子供達へと姿を変える。 

 

『実弥兄ちゃん、お疲れ様』

 

『もう! 一昨日もまた自分で手を切ったでしょ!! あんまり怪我しないでって、いつも言ってるのに!!』

 

 笑顔で労いを掛けてくるのは貞子、そして不満げに頬を膨らませているのは寿美だ。

 

「ありゃあ鬼をおびき出すのに必要だったんだァ。あんまり怒んなよォ、寿美」

 

『竈門の皆はいい人だけど、ちょっと兄ちゃんに馴れ馴れしすぎるよな』

 

『実弥兄ちゃんがおんぶしていいのは、僕達だけだもん』

 

「そう言うな、就也。あれがこの家の持て成し方なんだァ。弘も何時もはお前等が占有してんだから、偶には仲間に入れてやれ」

 

 口々に不満を漏らす弟達を不死川は苦笑いで嗜める。

 

 察しの通り、彼等は現世の者たちではない。

 

 ここにいる不死川実弥の弟妹たちは、数年前に鬼にされた母親の手に掛かって命を落としている。

 

 彼等を襲った惨劇こそが不死川を鬼殺の道へと駆り立てた最大の要因だ。

 

 そんな彼等がどうして長兄に話し甘えているのか?

 

 それは不死川実弥が持つ人より強い霊感と日向の法力が合わさった末に起こった奇跡が原因だ。

 

 竈門家が藤の家を興した当初、その噂を聞いた不死川はここを利用しようとはしなかった。

 

 鬼殺隊はその多くが鬼によって家族や大切な人を失った人間だ。

 

 その彼等にとって家族の温かさを思い出させるこの場所は毒にも薬にもなった。

 

 ハマる者は任務地が竈門家から遠方だったとしても、時間と足が許す限り何とか立ち寄ろうとする。

 

 逆に忌避感を示す者は一度利用すれば二度と足を向ける事は無い。

 

 不死川はどちらかと言えば後者の人間だった。

 

 隊士の噂を聞いた彼は、あそこだけは行かないでおこうと心に決めていた。

 

 しかしある時、この家を利用せざるを得ない任務が不死川へ任されてしまう。

 

 渋々竈門家の玄関を潜った彼を出迎えたのは、今日のように満面の笑みを浮かべた日向だった。

 

 己の強面っぷりは理解している不死川としては内心で怯えて泣かれるのではと身構えていたのだが、日向は不思議そうに彼の背中の向こうを見上げるばかり。

 

「なんだァ? 俺の背中になんか見えんのか?」

 

 極力優しげにそう尋ねた不死川だが、返ってきたのは言葉ではなく日向の小さな手だった。

 

「えっとね、あのおねえちゃんたち、だれ?」

 

 彼女は不死川の指を握ると逆の手で彼の背後を指示した。

 

「お姉ちゃん達? ───なっ!?」

 

 そうして振り返った不死川は己の眼を疑った。

 

 何故なら自分の背や肩にしがみ付いている複数の子供達が見えたからだ。

 

 すこし色が透けているが、その姿を彼が見間違えるはずがない。

 

「貞子、寿美、就也、弘……」

 

 それは天国へ逝ったと思っていた自身の弟妹だったのだ。

 

 不死川は当初、日向が何かをしたのかと勘繰った。

 

 しかしポカンとしている幼女の顔を見て、それはないとすぐに判断した。

 

『やっと兄ちゃん、気が付いた!』

 

『もう! 遅いよ、実弥兄ちゃん!!』

 

『兄ちゃん! 鬼退治するの、かっこよかったよ!!』

 

『ぼくもかたな、ブンブンしたい!』

 

 一度認識したからか、今度は声まで聞こえる上にむこうも実弥のそれを理解しているのだから、実弥はもう言葉にならなかった。

 

 その後、衝撃的な状況で頭の中がグチャグチャになった実弥は、夜まで客間に引きこもった後に自己最高レベルの早業で鬼の討伐を遂行した。

 

 そして任務を終えたその足で産屋敷の妻あまねへ助言を求めたのだ。

 

 力ある巫女の家系の出である彼女は、不死川の説明を受けてこう結論付けた。

 

「おそらく、その子供は高い霊感を持っているのでしょう。そして貴方も人より優れた霊感を秘めていた。それが彼女との接触で開花したのだと思われます」

 

 そしてあまねは弟妹が成仏していないのは、不死川を護るべく守護霊となったのではないかと説いた。

 

 きっと今までの鬼殺の中でも、彼等の力で助けられた場面があるに違いないとも。

 

 それを聞いた不死川は人目に憚らずに号泣した。

 

 まさか、失った家族が自分の事を護ってくれていたとは思いもしなかったのだ。

 

 それから不死川の竈門家に対する見方は大きく変わった。

 

 たとえ霊とはいえ、二度と会えないと思っていた弟妹達と語り合えるようにしてくれたのだ。

 

 その感謝に加えて生来の長男気質もあって下の子供達には何くれと世話を焼き、炭治郎には同じ長男として護身術を教えたり過去の経験から助言を与えたりするようになった。

 

『けど、玄弥兄ちゃんはどうしてるかなぁ。ヤクザとか悪い事していないよね?』

 

『むこうには母ちゃんとことがいるから大丈夫だと思うけど……』

 

『なんか実弥兄ちゃんを追いかけて、玄兄も鬼狩りになりそう』

 

 生き別れの次男である玄弥の事をズバズバと語る弟妹達に実弥の口元が引きつる。

 

 貞子と寿美の意見はともかくとして、就也の言葉はあり得ると考えてしまったからだ。

 

 もしそうなったらどうするか……?

 

 降ってわいた問題に思わず腕を組んだ実弥の脳裏に浮かんだ相談相手は、ここの家主である竈門炭十郎だった。

 

 酒に酔っては母や子供達に手を上げていた自分のクソ親父とは違い、大きな木のように静かで穏やかな雰囲気を持つ彼を実弥は柱としての先輩である悲鳴嶼行冥と同じく、頼れる大人として尊敬していた。

 

 彼がそう思う切っ掛けは二度目に竈門家に立ち寄った時の事だった。

 

 当初は弟妹達は霊だから食事は必要ないと思っていた実弥だが、夕食で自分の料理を物欲しそうに見ている弘達の様子に、葵枝へ事情を説明して4人の食事も用意してもらったのだ。

 

 当然、弟妹達の食事は藤の家の責務である隊士へのサポートには当たらない。

 

 そのため任務を終えて家を出る時に実弥は弟妹の食事代を支払おうとした。

 

 しかし葵枝達は事情が事情だからと受け取ろうとしなかった。

 

 『渡す』『貰えない』と押し問答をしている中、声を掛けたのが炭焼きを一段落させた炭十郎だった。

 

「受け取ってあげなさい。そのお金が不死川君の長男としての矜持なんだ、自分の稼いだお金で弟妹に美味しい物を食べさせてあげたいというね。炭治郎なら分かるだろう?」

 

 妻子をこう諭して料金を受け取ると、炭十郎は『これからも不死川君が来た時は、5人分の食事を用意させてもらうよ』と笑った。

 

 その時に実弥は思ったのだ。

 

 話が分かるオッサンだと。

 

 それから実弥は竈門家を利用した際、炭十郎と話をするようになった。

 

 彼の聞き上手な性質もあって、柱を務める際の愚痴や機密に当たらない程度の悩み事も聞いてもらったこともある。

 

 駆け出しの隊士が逃がした鬼が竈門家に狙いを定めた時もそうだ。

 

自分が駆け付けるまで薪割り用のナタで鬼をバラバラにし続けた強さも然ることながら、誰より早く玄関に飛び出して体を張って家族を守る様に実弥は感銘を受けた。

 

あれこそが父親のあるべき姿なのだと。 

 

「心配すんな、玄弥の奴は元気にやってるさ。どんな仕事かは分からんが、きっと真っ当に生きてる」 

 

 もし就也の言うとおりになったら、炭十郎さんに一度相談に乗ってもらおう。

 

 そう不吉な予感に区切りをつけた実弥は、今夜の鬼狩りへの英気を養うために客間で仮眠を取る間まで弟妹と戯れるのだった。

 

 

 

 

 不死川が鬼狩りに出た夜、眠る日向に抱き着かれていたキュウは薄く目を開ける。

 

 瞼の奥から現れたのは狐の瞳ではなく白面のそれだ。

 

「ようやく身体を癒し終えたかよ、鬼舞辻無惨」

 

 奴が自身の居城に十二鬼月と呼ばれる幹部を集めている、そう卑妖から報告を受けたキュウは口元を嘲りに釣り上げる。

 

 吹雪の夜に無惨と対峙した時は、奴が首魁などと露にも思わなかった。

 

 あの時に討っていれば面倒な事にならなかったと後悔したが、竈門家の人間と一緒ならどんな生活も悪くないと考え直すことにした。

 

「…みかずき…どーん……おつき…さま…どーん……」

 

 寝言を言いながら、はむはむと我が身に口を付ける日向にキュウは嘲笑の笑みを苦笑へ切り替える。

 

 白面は分身の斗和子を破戒僧・引狭のもとへ潜り込ませたことや、キリオを育てる過程で光覇明宗の術式の多くを理解している。

 

 その知識を利用して護身の為に法力の使い方を睡眠学習させているのだが、この娘はいったい何の夢を見ているのやら。

 

 自慢の毛並みがよだれでベタベタになっている事に小さく息を付いたキュウは、気持ちを切り替えると無惨の住処へ忍び込ませた配下と意識を繋げる。

 

 ねじ曲がった空間の中、和風建築の廊下や部屋が縦横無尽に存在する奇妙な建築物。 

 

 これこそが鬼の首魁である鬼舞辻無惨の拠点、無限城である。

 

 その一角で、無惨は十二鬼月を己の前へ招集していた。

 

「一同、揃っているな?」

 

「はい……」

 

「黙れ。貴様、何を勝手に発言している? 私の許可なく口を開くことは無礼であると知れ」

 

 向けられた問いかけに『上弦・弐』と目に浮かんだ法師風の男が返答を返そうとするが、無惨は苛立ちながら無茶苦茶な理論で男の首を千切る。

 

 無惨が無造作に法師の首を投げると、その体が慌てて拾いに行く。

 

 そして瞬く間に首を繋げた法師が先ほどの位置へ戻ると、無惨は再び口を開いた。

 

「今回、貴様等を呼んだのは一つ仕事を命じる為だ」

 

 跪いた配下が何の声も上げない事に少し機嫌を取り戻した無惨は、その仕事の内容を口にする。

 

「貴様等でも九尾の狐についての伝承を聞いた事があるだろう。その妖怪が私の前に現れた」

 

 無惨の言葉に古くから生きている黒死牟や半天狗が息を呑む。

 

 九尾の狐が単体で国一つを滅ぼす傾国の大妖怪である事を、彼等は寝物語で耳にした事があったからだ。

 

「奴は私の大望を阻む存在だ、絶対に生かしてはおけん。しかし、貴様ら程度ではあの化け物に勝てるとは思えん」

 

 そうして無惨は後列に控える下弦と呼ばれる者達を指さした。

 

「まず、下弦の者たちは九尾の狐について徹底的に調べ上げろ! 能力や弱点、過去では如何にして討伐したかを! そしてその方法を以て上弦全員で奴を討つのだ!!」

 

「はっ!」

 

 下弦衆が返事を返すのを卑妖越しに見ていたキュウは再び酷薄な笑みを顔に張り付ける。

 

 この我を討つ? 我の弱点を探る? ずいぶんと思い上がったものよ。

 

 ――――――カス共が!!

 

 キュウがカッと目を見開いた瞬間、ソレは発動した。

 

 下弦の鬼達が顔にある全ての穴から黒い血を吹き出して、バタバタと倒れたのだ。

 

 本来なら日輪刀で首を刎ねるか日の光を浴びせるしか滅びない鬼の身体が、グズグズと腐れ果てていく。

 

 その光景は異様の一言だった。

 

「累!? な…なんだ!? いったい何が起きた!」 

 

 突如引き起こされた下弦の全滅、特にお気に入りの鬼である累が死んだ事に無惨は狼狽する。

 

 その光景を見ながらキュウは愉快と口角を吊り上げた。

 

 かつて、キュウが白面として生きていた世界にはH・A・M・M・Rなるアメリカの機関が存在した。

 

 彼等は白面の事を調べ、それを打倒できる手段を構築しようとする研究機関だった。

 

 しかし、彼等はその最中に多くの職員や上層部が今の下弦のような形で謎の変死を遂げた。

 

 その凶事を引き起こしたモノこそ白面の祟り。

 

 己の事を暴こうとするモノの命を呪毒によって惨たらしく奪う目に見えない災厄だ。

 

 今回下弦に牙を剥いたのは、その祟りだった。

 

 鬼の力と不死性は体内に注入された無惨の血に籠った呪いと言うべきものが担保となっている。

 

 ならばそれを超えるほどの呪詛を食らえば、鬼が滅するのは当然と言えた。

 

 そして祟りによって滅却された己の血から、無惨はこの惨状を引き起こしたのが誰かを知る事となった。

 

「ば…化け物め! おのれ! おのれおのれおのれぇぇ!!」

 

 明らかに怯えの表情を見せながら残った上弦の鬼達へ背を向ける無惨。

 

「き…貴様等! すぐに九尾の狐を抹殺しろ! これは最上位命令だ!!」

 

 震える声で叫ぶ無惨。

 

 それに先ほどの法師が問いを投げる。

 

「最上位という事は、青い彼岸花の捜索は中断していいんですか?」

 

「青い彼岸花だと? なんだそれは(・・・・・・)! 私はそんな命令など出していない(・・・・・・・・・・・・・・・)!!」

 

「え…でも……」

 

「私の言葉を疑うというのか、童磨!? 貴様は何様のつもりだ!!」

 

 八つ当たりと言わんばかりに童磨と呼ばれた法師の上半身を右腕の一振りで吹き飛ばすと、無惨は居城の奥へと去って行った。

 

 その醜態に満足したキュウはゆっくりと身体を丸める。

 

 鬼舞辻無惨よ、哀れで非力な鬼の王よ。

 

 貴様を我の玩具にしてやろう。

 

 貴様の野望を、夢を、悲願を、幸福につながる全てを奪ってやろう。

 

 その抜けた穴に恐怖を、絶望を、徒労を、破滅を呼ぶモノを目一杯詰めてやる。

 

 喜ぶがいい、死に怯える弱者よ。

 

 我が飽きるまで、貴様を殺さずにいてやるぞ。

 

 精々、貴様が織りなす悲劇と喜劇で我を楽しませ続けるのだなぁ。

 

 小さく笑い声を漏らす白狐の顔は、世紀の大妖怪という名に相応しい邪悪に満ちていた。  





アタマ無惨様による白面攻略

【条件(ステージギミック)確認】

・敵意を持つと攻撃が通りません。

・憎悪を感じると攻撃が通りません。

・怒ると攻撃が通りません(癇癪持ちの無惨にはクリティカル)

・そもそも相手の耐久値が高すぎるので、万が一攻撃が通っても相手の回復を上回るダメージを与えるのは困難です。(白面は戦車砲やミサイルにも耐える耐久性)

・恐怖を感じると相手のステータスが上がります。

・無惨の恐怖は血を通して他の鬼に拡散するので、倍率ドンさらに倍。

・相手が空を飛んでいるので、射程が長い攻撃じゃないと届きません。

・日が昇る前に勝利か逃亡しなければならないタイムリミット制

・パワー・スピード・スキル・タフネス全てにおいて相手に負けています。

・尾で撫でられる(手抜き)と即死(リスポーン可)

・あまりリスポーンし過ぎると再生阻害の霊槍攻撃が飛んできます。(これでバラバラにされるとリスポーン不可)

・ブレスをくらうと跡形も無く消し飛んで即死(リスポーン不可)

・あやかしの尾に呑まれると即死(リスポーン不可)

・シュムナの尾に囚われると溶かされて即死(リスポーン不可)

・卑妖の群に取り憑かれすぎると、全ての記憶を失って木偶になる(リスポーン不可)

・嵐と雷の尾を直撃すると全て消し飛ばされて即死(リスポーン不可)

・白面の攻撃はほぼ全て食らうと即死(肉弾攻撃はリスポーン可)

【攻略】

・まず無惨を窮地に追いやって、明鏡止水の境地に目覚めさせます。(中の人ネタ的に仏教系もやってるので【孔雀やシュラトなど】ワンチャンあるかも)

・揺れない心で攻撃を通せたら毒を注入します(攻撃を食らうとアウトなのでチマチマ4時間ほど耐えましょう)

・動きが鈍ってきたら鬼の血を流しこんで細胞破壊を狙います(ここまでで一度でもリスポーンしていると血が足りずに、失血死で無惨が消滅するのでノーミス必須)

・全ての条件を達成すると白面が一瞬怯むので、鳴女のゲートを使って撤退しましょう。

クソゲー大好きマゾゲーマーの皆さん、挑戦求む。
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