寄成ギョウに転生したから、キャラの良さガン無視して善人になるニョロ〜!   作:ライダー☆

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第15話 べらららっ、最悪デュエリスト降臨!ホカベンVS牛次郎!

 ルシファーはんを病院に送ってから1時間がたった。彼は今、集中治療室で治療中や。医者の言うことによれば、心臓の持病を悪化させており、かなり危険な状態らしい。

 それを聞いたルシファーについとった3人は一気に顔を暗くした。その中でも女性の人は泣き崩れた。よほど好きやったんやろなぁ……泣き声を聞き続けてると、こっちまで悲しくなってくる。ワイは仮面をつけ直し、病院を出たニョロ。

 

「絶対に死ぬんやないで、ルシファーはん……。」

 

 外は日が沈み始めてた頃やった。空の端が赤くなって、それ以外はもう暗くなりかかっとる。そんなとき、勝太くんたちが病院の前までやってきてたんや。ホカベンはんは、おらへんかったけどな。

 

「ギョウ……!」

 

 みんなは僕を見るやいなや駆け寄ってきたで。ルシファーは大丈夫なのかって、顔に書いてあった。……全部正直に伝えた。嘘をついたらそれこそほんまもんのアホや。そんな必要もないしな。

 

「ルシファー……ちくしょうあの野郎……!!」

「勝太くん……。その気持ちすごくわかるで。けど彼は持病でああなったんやない。元凶がおるんや。」

「元凶、だと……!?」

 

 僕は、勝太くんたちに、牛次郎のことも話した。そうしたら勝太くんたちの顔は一気に豹変した。当然や。人一人の命をなんの悪びれもなく奪おうとしとるんやから。……僕だって、心の中で永遠にそう思い続けとるしな。

 

「ひ、ひどい……腐ってるわ……!」

「あの野郎がやりやがったのか!!ルシファーをあんな目に……!!」

「そうニョロ。」

「……ギョ、ギョウ。第二回戦を戦うのは、その牛次郎とホカベンなんだ。」

「……な、なんやて?なんちゅうことや、よりにもよってホカベンはんが牛次郎と……」

「だから今、ホカベンはベンちゃんと一緒に特訓をしに行った。あんなやつには、負けられないって重い声で言ってさ……俺、初めて聞いたんだ。ホカベンが人のことを、「あんなやつ」なんていうの……。」

「しかも重い声でかいな。ホカベンはん、結構怒っとるみたいやな。」

「まぁな。前に俺が、お前と牛次郎のデュエマ見たことあっただろ?それをホカベンに話したときも、あいつはすごく怒ってた。多分、それがあるんだと思う、ズルして勝つやつは許せないんだ。……だからさギョウ。明日、ホカベンを全力で応援しようぜ!!俺等にできることはそれしかない。けど、それが一番だ!」

 

 応援……そうやな。それが人を鼓舞する最高の方法やしな。ホカベンはんの思いに、応えなあかんな。

 

「うん。全力で応援するニョロ。絶対にホカベンはんを勝たせるニョロ!」

 

 それを最後に、僕と勝太くんたちはサヨナラしたニョロ。

 その時、変に視線を感じたけど……ま、気のせいニョロよな。

 

 …隠れて盗み聞きしていたら。フン、応援だと?くだらないこと言うねぇあいつらは。そんなの無駄だよ。だって僕の手元には……「最強のドラゴン」がいるんだもんねぇ〜べぇらならら……!!

 

 

 

 そして翌日、デュエドーム。第二回戦の幕が上がろうとしていたニョロ。

 僕らは観戦台に立ち、ホカベンはんを見守る。ベンはん、るるちゃん、ぶっちゃけはんの3人と一緒に、全力で声を出して応援する。

 

「ホカベーン!頑張れよー!!!」

「うん!絶対に勝ってみせるべ!」

「くっだらない。そんなことできないよ。君が勝ったのは、先攻後攻を決めるさっきのじゃんけんだけさ。」

「やってみなくっちゃわからないべ!」

「わかるよ……すぐにね。」

 

 

『デュエマ、スタート!!』

 

 

【デュエマ甲子園第二回戦!ホカベン選手VS牛次郎選手!5文明を揃え、フェアリー・ミラクルでマナ加速を行い、盤面展開を行う牛次郎選手に対し、自慢のクリーチャーたちで確実にバトルゾーンにいるクリーチャーを破壊していくホカベン選手の有利な状況に。両者のバトルゾーンにはクリーチャーが3体、そのすべてがホカベン選手のクリーチャーだぁ!!】

 

 

牛次郎 6ターン目

 

「ボクチンのターン。呪文、フェアリー・ミラクル。効果で1枚マナゾーンに、そしてマナゾーンにすべての文明が揃っているから……更に1枚加速。5マナでサイバー・ブレイン。効果で3枚ドロー。1コストでポレゴンを召喚。ターンエンドだよ。」

「お得意のイカサマはどうしただべか?」

「そんなの使わないよぉーん……そうでなくたって、君には余裕を持って勝てるんだからね。」

 

 

ホカベン 7ターン目

 

「ここで引いてやるべ……うおおお、ドローだべ!よし、きたべ!」

 

 まずはコッコ・ルピアを召喚して、その上にバルキリー・ルピアを進化。効果で山札から1枚ドラゴンを手札に加える。

 …あれ?永遠のリュウセイ・カイザーがいないべ!?おかしい、たしかにデッキに入れてたはずなのに……ん?暴走兵スクラッチ?なんの能力もないカードを3枚も、オラ入れてたっけなぁ……いや、考えても仕方がないべ!ここはこいつを……

 

「熱血龍三代目D(ディー)ソウルB(バトル)を手札に加えるべ!」

「よっしゃー強力なドラゴンをゲットだぜー!」

「これでまた牛次郎を倒すのに一歩近づいたニョロ!」

「べぇならら……けどそいつのコストは12。このターンには召喚できないよぉーん。」

「そいつはどうだべかな?こいつはバトルゾーンにある火のドラゴン1体につき、コストを3少なくして召喚できるんだべ!よって、DソウルBを1マナで召喚だべ!」

 

 こ、これは……!ホカベンはん、間違いなく強なっとるニョロ!牛次郎も意外やったんやろうな、目ぇ丸くして驚いとるで。

 

「彼の特訓の成果というものだね……あれこそ、彼が編み出したデュエマ、三冠王デュエルさ!」

「特訓って、前に言っていたやつのこと、なんだなぁ?」

「ってか、三冠王デュエルって何なの……?」

「確かに気になるニョロなぁ。」

 

 ベンはんが静かに解説してくれた。

 

「野球で言う三冠王は、ホームラン、打点、打率を極めること。それをデュエマではドロー、デッキ、プレイング。この3つに置き換えることができる。けどホカベンは、このバランスがとても悪かったんだ。」

「じゃあホカベンは、特訓でその弱点を克服したってことか、ベンちゃん!」

「そう。ドローにデュエ魂を乗っけ、デッキを再構築し、極限までプレイングに磨きをかけたのさ。それまでの道のりはとても辛かっただろうけど、彼は弱音を吐かずにとても頑張っていたよ……彼自身の、夢を叶えるために。」

 

 ……夢?なんやろうな、夢って。そう思っとったら牛次郎がホカベンはんにそれを訊いた。

 

「もちろん、勝太くんとギョウくん、この2人と戦うことだべ!野球しか知らなかったオラに、デュエマを教えてくれたのは勝太くんで、オラにあったデュエ魂をよりたぎらせてくれたのはギョウくんだべ!だからオラは、2人に強くなったオラを見てもらいたい!そのために、この試合は負けられないべ!」

 

 めっちゃええこと言ってくれるやないかぁ。胸の奥がじんとした。勝太くんもちょっとじんとしてるニョロ。

 

「ふ〜ん。そうなんだぁ……じゃあ残念だね。それは無理だよ。君が僕に勝てるわけ無いだろ!?……その夢、ぶち壊してやるよぉべならら……。」

「性格歪みすぎでしょ……ほんっと、最悪ね。」

「あの野郎、嫌なこと言いやがって……ぅおいホカベン!お前のほうがあいつよりも強ぇ!気合入れていけー!!!」

「おうだべ!三代目DソウルBの登場時効果で、ポレゴンとバトル!フルスイング、ライト前にクリーンヒットだべ!」

「すげぇぞホカベンー!そのまま押し切っちまえー!」

「バルキリー・ルピアで、シールドをブレイクだべ!」

「ざぁんねんトリガーだ。幾何学艦隊ピタゴラス!効果でバトライオウ2体を手札に戻せ!」

「くっ!でもあともう一体いるべ!バトラッシュ・ナックルで、シールドをダブルブレイクだべ!」

「……べぇらならら運がいいなぁ!シールド・トリガー、DNA・スパーク。効果でお前のクリーチャーをすべてタップして……ボクチンは1枚シールドを追加。」

 

 ……見た感じイカサマはしとらんみたいやな。完全な運で引きおった。だから「あいつまたイカサマしてるんじゃねぇか」ってつぶやいとる勝太くんに、それだけは教えてあげた。

 

「ま、まじかよ……チクショー、悪運の強い奴め……!!」

「けど、まだホカベンはんのクリーチャーは3体おるしシールドも優勢や。次のターンに牛次郎があれを止めなければ、勝ちはもう目の前ニョロ。」

「そうだな……よーしホカベン!あと一息だぞー!!」

「オラはこれでターンエンドだべ!」

「素人の分際でここまでやってくるとは……。」

「……確かに、オラはお前の言うとおり素人同然かもしれないべ。けど練習すれば強くなれるんだべ!」

 

 牛次郎の顔色が、わずかに変わった。

 

「……なぁにくさいこと言ってるんだよ。ちょっとばっかり練習したぐらいで、この天才に勝てると思ってんのかぁ!?」

「もちろんだべ!オラが、トドメのホームランをぶち込んでやるべ!」

 

 いい調子やなぁホカベンはん。そのままその調子を保って、最後まで頑張るニョロ!

 ……って思ったところに牛次郎のうざったい笑い声が刺さってくる。そこから間髪入れず、少し本気でやってやるとかなんとか言う声も……いちいちムカつくやつやのぉ。

 けどなんやろ、なぜか、ものすごい胸騒ぎが……。

 

「さぁ〜……て、天才のデュエマを見せてやるよ…………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牛次郎 キーカード:龍覇ザ=デッドマン

ホカベン キーカード:熱血龍三代目DソウルB

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牛次郎 7ターン目

 

「べぇらならら……行くよ。ドロー!来たよ、こっからが天才デュエルの始まりさ。……おーいギョウ!」

 

 僕を呼んだ……なんや。

 

「今から出す切り札は、実は君にあげるものだったんだ。けど君が何故かものすっごくいいやつになっているから、これをあげるなんてことはしなかった……今以上に強くなってもらっては、困るからねっ!」

「今以上に強くなってもらっては……新たなドラグナーかなんかか!?」

「そういうことさぁ!8マナタップ、龍覇ザ=デッドマンを召喚!」

 

 新しいドラグナー……けど胸騒ぎの正体はこれちゃう……まだ何かがある……!!

 

「ザ=デッドマンをバトルゾーンに出したとき、超次元ゾーンからコスト5以下のドラグハートを出せる。これがボクチンの最強のドラグハート・フォートレス!侵攻する神秘ニガ=アブシューム!さぁて……ボクチンはここからぁ……!?」

「まだなにか仕掛けるつもりだべか!?」

「ホカベン、気をつけろ!」

「気をつけてニョロ!」

「ターンエンド。」

 

 ズコーっ、ターンエンドかぁーい。何が来るかとびっくりしたやんけ……。

 

「ターンエンドかよっ!」

「まったくびっくりしたニョロ……。」

「いや、2人とも、違う!やつはこのまま龍解をしようとしているんだ!」

「何!?」

「なんやて!?」

 

 ……ふーん、あのアホメガネは察しがいいみたいだね。その通り、今から巻き起こるのは龍解、絶望の下準備。次のボクチンのターンから、その絶望が幕を開けるんだよ。なぁんせ、1ターン目にロジック・サークルを、唱えているんだからねぇ……。

 

「ターン終了時、マナゾーンにあるドラゴンを5枚手札に戻すことで、条件成立。さぁて、君の夢はぶち壊れるよ!天才に、努力した凡人は何があろうが勝てないんだよ!龍解ィ、五邪王(イビルキング)ニガ=ヴェルムート!!!」

 

 超巨大クリーチャー……パワー18000……一気にマズくなったなぁ……。

 

「あんなにあっさり、龍解するなんて……」

「しかもそのときに、ドラゴンを大量に回収したんだなぁ!?」

「ホカベン……!!」

 

 ……いや、でも、まだ負けたわけではない。なんならこっちのほうがクリーチャーの数で有利やし、トドメまでさせる打点の数はある!

 

「怯むんやないでホカベンはん!クリーt」

「クリーチャーとシールド、数ではすべて君のほうが有利なんだ!」

 

 セリフをベンはんに取られたニョロ……。

 

「……!!そ、そうだぜホカベン!気合入れてけー!!」

「頑張るんだなぁー!!」

「頑張ってホカベンさん!!」

 

 これで少し調子を取り戻したみたいやな。声にも活気が溢れとるニョロ。

 

 

ホカベン 8ターン目

 

「よぉし、ガツンとかましてやるべ!ドロー……。」

  

 鬼丸「覇」。嬉しいけど今は出すことができないべ。ここは次のターンに持ち込まれた場合にこいつを召喚できるよう、準備をしておくべ……!

 

「コッコ・ルピアを召喚!そして総攻撃だべ!DソウルBで、シールドをトリプルブレイクだべ!」

「攻撃したな?ニガ=ヴェルムートの効果発動。お前はアンタップしているクリーチャーを、一体選んでマナ送りにしなければならない!」

 

 コッコ・ルピアをマナゾーンに置けば、次のターンに鬼丸「覇」を出せなくなる……けどそれ以外を置いたら攻撃できるクリーチャーが減る……仕方がないべ。

 

「コッコ・ルピアをマナゾーンへ。さぁ、ブレイクを解決だべ!」

「しゃー!あと一撃だぜ!」

「勝利はもう目の前ニョロ!」

 

 目の前ぇ……?馬鹿言ってるんじゃないよ。ロジック・サークルで山札を見てるから、ここにトリガーがあることはわかっているんだ。

 

「にひっ。幾何学艦隊ピタゴラス。効果でバトラッシュ・ナックルとバルキリー・ルピアを手札へ!」

「抜け目あらへん……簡単には勝たせてくれへんらしいニョロなぁ。」

「けど、あのおっさんのシールドは0。次のターンをしのげば、ホカベンさんの勝ちよ!」

「気合入れていくんだなぁー!」

「さぁ、どんな玉でもバッチコイ!だべ!」

 

 ……っ、ずっと気にかかる、この胸騒ぎ……一体何なんや?これは……。

 

 

牛次郎 8ターン目

 

「どんな、玉でも?じゃあこれを出してあげるよ……絶望の始まりだぁ!5マナタップ、べぇらならら……」

「永遠のリュウセイ・カイザーを召喚だ。」

 

 ふっと、胸騒ぎが収まった。そのカードを見た瞬間にや。

 ……収まった、っちゅうのは、正しくない。正確に言えば、胸騒ぎの正体が確定した。それだけや。僕の目が不安げになる。

 

「トワリュウは8マナのはずや!5マナで召喚はできないニョロ!」

「馬鹿言うんじゃないよ、ザ=デッドマンの能力で、本来のコストを支払う代わりに、各文明を1枚ずつタップすれば、そいつを出せるのさ!さぁらぁに、ニガ=ヴェルムートの能力でマナゾーンのカードは全文明を得る。つまりはそういうこと。」

「……くそっ、あいつここに来てあんなカードを持ってたのかよ……!?」

 

 勝太くんの言う通りや。まさか逆転の目を潰すようなカードを……。

 待て。トワリュウ?そういえばホカベンはんのデッキには入っとらんのか?マナゾーンにも、バトルゾーンにもない。……バルキリー・ルピアでの回収も、トワリュウを加えとらんかった。加えた次のターンに召喚するっていう手も、DソウルB以外の選択肢で十分にあった……はずや。少なくとも僕の脳内にはそれがある。

 ……何やろな。相手が相手やから、すっごい嫌な予想ができてまう。さっきの胸騒ぎの正体もあのカードやった……。ま、まさかと思うけど、牛次郎の野郎……!!

 

「さらにニガ=ヴェルムートでDソウルBを破壊!ターンエンド。」

「クリーチャーが0体に……一気に形勢が逆転しちゃったわ……。」

「ホカベンは、かなり窮地に立たされた…………。」

「……だ、だけど、ホカベンなら大丈夫だぜ!な、ホカベン!」

「…………うん、勝太くんの言うとおりだべ、オラは全然大丈夫だべ。」

 

 まずい……掛け声を忘れるぐらいに、僕の予想が凄まじいぐらい実像になっていく……あのトワリュウは……!!

 

 

ホカベン 9ターン目

 

「ドロー!バトラッシュ・ナックルを召喚!」

「べぇぇらならぁ!リュウセイ・カイザーが出た時点でお前は、負け!確定!してるんだよぉ〜!」

「うっ……!?」

「永遠のリュウセイ・カイザーがいる限り……ホカベンのクリーチャーはタップ状態で召喚される……そして次のターンには……」

 

 

牛次郎 9ターン目

 

「ホカベンの出したクリーチャーは、パワー18000のニガ=ヴェルムートによって……必ず破壊されてしまう……!!」

「スピードアタッカーでも、攻撃できないんだなぁ〜……!」

「ホカベンはん……!!」

「…………でも!永遠のリュウセイ・カイザーさえ倒せばまだ望みは……!!」

「べぇららららぁ〜〜!!そんなことしたって無駄なんだよねぇ〜。一体破壊したところで、ずっと手札に加えていた2体がいるんだからねぇ〜……」

「あ……あぁ……!!」

「これでお前はおしまいだ!お前は何もできない、この天才に歯向かったバツなんだよぉ〜!!」

 

 ……どんどん、嫌な予感が確証になっていく。

 僕がホカベンはんに渡したデッキには……トワリュウは、3枚入っていた。ホカベンはんは、まだトワリュウを引いとらん…………。

 

 

ホカベン 10ターン目

 

「グランドスラムを召喚!」

 

 

牛次郎 10ターン目

 

「ボクチンのターン。もう一体のリュウセイ・カイザーを召喚して……。ニガ=ヴェルムートで、シールドをクアトロブレイク。さらにリュウセイ・カイザーで最後のシールドをブレイク。」

 

 ホカベンはんのシールドは……表情でわかる。全部トリガーちゃうかったんやろう。つまり、ザ=デッドマンのダイレクトアタックが……。

 

「あと一撃で……決まってしまう……万事休す……か。」

「後一歩だったっていうのに……ホカベン……!!」

「ザ=デッドマンで……」

「くぅ……っ!!」

「グランドスラムを攻撃だよぉ〜ん。」

『!?』

 

 ダイレクトアタックを……せぇへん?どういうことや?あいつは何がしたいっちゅうんや……?

 

「ターンエンド。ほら、君のターンだよぉ野球少年(ホカベンくん)。途中で逃げ出すのは、正々堂々としたデュエマにはあってはならないことだよねぇ〜……?」

 

 腸が煮えくり返るような怒りと、それ以上の寒気が、

 

「……オラのターン。」

【おーっと!?もうすでに勝敗は決しているにも関わらず試合続行!これは、前代未聞だぁーーー!!?】

 

 僕らも、観客も、みんな困惑、騒然や。

 

「一体どういうことなの?」

「ぶっちゃけ、全く意味がわからないんだなぁ……?」

「…………はっ、まさかあの男は!?」

 

 ベンはんが息を飲んだ。

 

「なんか気づいたのか、ベンちゃん。」

「あぁ。今の状況、ホカベンくんはいくらクリーチャーを出そうが、永遠のリュウセイ・カイザーによってタップ状態で召喚しなければならない。そんなクリーチャーが今2体、次のターンに3体になる。つまり彼は、もう牛次郎に攻撃はできない……」

「っ!!つまり、ホカベンの負け方は………………山札切れ!それまで甚振ろうっていうのかよ……!!」

「あぁ。そ、そうとしか考えられない……。」

「っ……ぉおい、きたねぇぞ牛次郎、てめぇー!!!!」

「黙れ、切札勝太。こいつが悪いんだよぉ、このボクチンに楯突いたんだからねぇ。」

「ぬぐぐ……あの野郎〜〜〜……!!」

 

 そこからは、一方的にホカベンはんがなぶられ続けていったニョロ……。

 言葉の意味をそのまま受け取るような話やなかった。出したクリーチャーが次々と、何の抵抗もできないまま消えていく。それを牛次郎は楽しんどった。観客席からも悲鳴が上がり始めた。

 

「鬼丸「覇」を召喚!」

「ボクチンのターン。3体目のリュウセイ・カイザーを召喚。そして……ニガ=ヴェルムートで鬼丸「覇」を破壊。」

「うう……!コッコ・ルピアを召喚!」

「破壊!」

「バトライオウを、召喚!」

「破壊ィ!」

「バザガジー・ラゴンを召喚……!」

「はっかい〜!!」

「バ……バトリベンジを……」

「破壊ーーーっ、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊、破壊ぃ〜〜!!!」

「ホカベンさぁん!」

「やめろ牛次郎ーーー!それ以上やる必要はねぇだろうが!!」

「ちゃちゃう!!ちゃうちゃーうう!!!」

「こんなのは試合じゃない。ただの暴力だ!棄権するんだホカベン!」

「……ま、まだだべ……バルキリー・ラゴンを召喚。」

「何考えとるんやホカベンはん!ニガ=ヴェルムートがいる限り、クリーチャーは破壊され続けるんやで!?」

 

 観客の声が、悲鳴に変わる。それぐらいひどい光景やった。ただ甚振られるのを見ているだけ……。

 ついに勝太くんの我慢にも限界が来た。助けに行こうとした。けどホカベンはんは、それを良しとはしなかったニョロ……。

 

「ど、どんな状況でも……絶対に諦めちゃだめって教えてくれたのは勝太くんだべ!」

「だけど……!!」

「だから、オラはこの試合に勝って、勝太くんと、ギョウくんと戦うべ!2人にライバルだと認めてもらうために、夢を叶えるために!この試合、絶対に勝つんだべーーー!!バトラッシュ・ナックルを召喚!」

「結局、夢は夢……努力したって何したって……現実にはならない!それ夢で終わるんだよこの凡人がぁっ!!!!バトラッシュ・ナックルを破壊ぃーー!!!」

「うわァァ〜〜!!」

「やめろ牛次郎ーーーーー!」

 

 ……言葉も出ない。何を言えばいいかがわからない。ただ凄まじい怒りと悲しみが、心の中で溢れてるだけで……。

 

「かっちゃん……落ち着いて。ここでかっちゃんが乱入したら、ホカベンさんの気持ちは、一体どうなるの?」

「デコちゃん……ふざけんな、落ち着けるわけねぇだろ!っじゃあ俺に、ホカベンを見殺しにしろっていうのかよデコちゃんは!!」

「そんなわけ無いでしょ……本当は、私だってかっちゃんとおんなじ気持ちよ!……けど、もうどうしようもない。あともう少しで、試合は終わるわ……。」

「試合が終わる……まさかもう、山札が!?……い……一枚だけ……かよ……。」

 

 るるちゃんの声は震えとった。勝太くんの拳が、手すりを強く握りしめとる。

 

「もうすぐで、この楽しい楽しい時間も終わっちゃう。そうだ、選ばせてあげるよ。山札切れで負けるか、それともこの僕にとどめを刺されて負けたいか…………早く選べ。」

 

 その声の軽さが、一番腹立たしかった。

 

「デュエリストにとって、山札切れは最大の屈辱。どのみち負けるならとどめを刺されたほうが、よっぽどマシ。だから、ホカベンの決断は…………」

「………トドメを、さしてくれだべ。」

 

 その声は震えてなかった。ホカベンはんは、最後まで目を伏せへんかった。

 

「ま、そう来ると思ったよ。……ケッ、最後までその真っ直ぐな眼差しを消さなかったか。凡人にしてはよくやったよ君は。」

「ホカベン…………。」

 

 …………最後の瞬間。僕はその時に、自分の予想の的中に怒り心頭やった。最後の一枚まで……トワリュウは、姿を表さなかったんや……!!!

 

「じゃ、ザ=デッドマンでダイレクトアタァ…………ックなんてするかよ。ターンエンド。」

「……え……な、なんで……?」

「なんでって言われても、お前みたいなやつの言うことなんて聞くわけ無いだろ?凡人は死に方を選べなぁい〜!さ、山札の最後をめくんなよ。べぇらnarara……」

「牛次郎ォ、てめぇーーー!!!!」

 

 

ホカベン 20ターン目

「おい、何してる。さっさと引け。」

「…………くっ……!!」

 

 山札を引く手は、小刻みに震えとる。

 震えながらも、ホカベンはんはゆっくりと手を伸ばした。引く前から、わかってたやろう。それでも引いた。そして最後の、ドロー。

 決着が、ついた……。

 観客のブーイングと、牛次郎の笑い声が響き渡る。

 

【このドローによって山札がなくなったことにより、ホカベン選手の敗退が決定!牛次郎選手の勝利です!】

「べぇ〜ららら!いやぁ〜楽しかった楽しかった……デュエマは、こうでなくっちゃぁねぇ……!!」

 

 ホカベンはんは本気で悔しがり、泣いとった。

 ……僕も泣きたくなった。

 

 …………試合が終わり、ドームでは第三回戦の抽選が始まった。

 そのときにはもう、僕らはドームにはおらんくて、ホカベンはんが甚振られてできた傷を治しに、サイファー病院へと足を運んどった。ホカベンはんは傷だらけで動けへんから、るるちゃんが担いでくれた。

 病院につくと、そこにルシファーはんの付き人3人がおった。またここで会うことになるとは、思わんかったなぁ……。

 

「おまえたち……って、そいつは!まさか、あの男にやられたっていうのか……!?」

「……あぁ、ホカベンは、牛次郎にやられた……すっげぇムカついたぜ。一発殴ってやろうと、みんなで控室の扉蹴っ飛ばして入ってったけど、あいつはいなかった!!」

「けど、1通の手紙はあった。「敗退おめでとう、ルシファーと凡人……」ってね。……ふざけるんじゃない!!なにが敗退おめでとうだ、あの男……!!」

 

 ベンはん先生は、手紙をクシャクシャにして床に投げつけた。本気で怒る顔と似つかわしくない言葉は、初めて見るもんやった。ベンはんがああいう顔をするっちゅうのは、それだけ怒ってるっちゅうことや。

 

「……けど、牛次郎は強かったべ。確かに……オラは弱かった。それだけだべ……。」

「ホカベンさん、だめよ!」

「あんなやつを認めたら、だめなんだなぁ!!それに、お前は弱くない、最後まであいつに諦めずに食らいついていったんだなぁ!!」

「……あ、ありがとう。そう言ってくれると嬉しいべ……けど、なんでリュウセイ・カイザーがオラのデッキに入ってなかったんだろう……絶対に入れておいたはずなのに、知らないバニラカードになっていたんだべ。」

 

 ……それは、牛次郎のせいや。

 僕は、みんなに聞こえるようにすべてを話した。牛次郎がもともと持っていたという線も考えられる。けど僕はそれは絶対にないと思っとる。デュエ魂を持たんあいつが、あのカードを持っとるはずないんや。

 

「ギョウくんがオラにくれたリュウセイ・カイザーは、牛次郎が……!?そ、そんな!」

「あ、あの野郎……どこまで腐ってれば気が済むんだよ……!!」

 

 しばらく、誰も何も言わなかった。

 

「……せやから絶対に許せへん。僕らのデュエ魂をあいつ等は侮辱した。……せやからなぁ、僕は今からあいつを倒すためにデッキを整えに帰る、いや、家にこもる!第三、第四試合は動画で見るニョロ。すまんが応援には行けへん。」

「あぁ、わかったぜギョウ!………………絶対に、絶対に勝てよ!それで負けたらただじゃ置かねぇからな!!」

「……お、俺達からも、それを頼みたい……!ルシファー様の、仇討ちを!」

 

 ……みんなが僕に鋭い眼差しを送っている……わかっているニョロ。絶対に、負けはしないニョロ。

 

「ほんじゃ、またな。」

 

 病院の廊下を抜けて外に出ると、夜が来てた。星も出とらんかった。ただ暗い夜空やった。

 牛次郎、絶対に許さへんで!!!!お前の悪事も、次の試合で終わりにしたるわ!!

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