寄成ギョウに転生したから、キャラの良さガン無視して善人になるニョロ〜! 作:ライダー☆
色々とモチベは上がりきっていませんしどんな話で書いていたのかさえ覚えてもいませんが、まぁ色々あって書くことにしました。
てなわけで、今回から心機一転、ジョー編ということで頑張っていきますので、よろしくお願いします。
ちなみに、昔のような投稿頻度で書くことは多分できません。だってまだ熱が上がりきってないもん。デュエチューブのジョー編見終わってないもん。だからゆったり目で行きます。(*´ω`*)/ヨロシク
新・第一話 新たなデュエマの幕開け!?謎の少女シンラ登ジョー!!
【デュエル・マスターズ】
それは、トランプでも花札でもない。
カードを介して交わされるのは、もっと危うくて、もっと激しくて、もっと熱かりしものだ。
一枚一枚に宿るのは、意志を持った生命──クリーチャーたちの魂。地球と、彼らの故郷〈クリーチャーワールド〉。その二つの世界を繋ぐ細い糸が、盤面の上で幾度となく火花を散らしてきた。
それが“デュエル・マスターズ”。
命と誇りを賭け、己の意志を剥き出しにしてぶつかり合う者たちの闘争だ。
十数年前、その世界を丸ごと凍りつかせた化け物がいた。
名を「終焉の禁断 ドルマゲドンX」。
記録にも、記憶にも残ることを許されなかった、禁忌にして異端の存在。理屈も秩序も飲み込んで、痕跡さえ残さず塵に変える。“無”がそのまま形を取ったような何か。クリーチャーワールド中の誰もが、抗うことすら諦めて膝をついた。
そしてその中には、かつて“破壊”と呼ばれた男──ザキラが封じられていた。
彼が目を覚ましたとき、世界の秩序は根っこから引っこ抜かれた。空は裂け、大地は呻き、星の灯りひとつひとつが暗闇に呑まれていく。支配と崩壊、そのどちらもが、たったひとりの意思によって解き放たれていた。
それでも、たったひとり、膝をつかなかった男がいる。
寄成ギョウ。地球最強のデュエリストにして、どんな種族のクリーチャーとも本気で心を通わせられる、少し変わった男。
人間の身でありながら、彼だけは違った。絶望が肩にのしかかっても、握ったデッキを手放さなかった。ドルマゲドンXの、ほとんど神に近いような圧力の前でも、一歩も引かなかった。
魂を焼くようにして紡いだ最後の一手──山札の底に眠っていたたった一枚のカード。それが、すべての決着をつけた。
そして、負けを認めないドルマゲドンXは、最後の最後で自壊という道を選んだ。
「滅ぶのならば、貴様らも共に――」
その一言とともに弾けた終末の光は、あたり一帯を巻き込もうとした。
だが、ギョウたちは生きていた。ほんの数秒、奇跡と呼ぶしかない何かが、彼らを死の淵から引き戻していた。偶然か、それとも定めか。それを言い当てられる者は、あの場に一人もいなかった。
後日、クリーチャーワールドを統べる女王・プリンプリンは、ギョウの前に膝をついてこう告げた。
「あなたこそが、次の王にふさわしい」
ギョウは、間を置かずに首を振った。
「王とか、そういうんはええねん。ワイはただ、この世界を守りたかっただけや。守れたんなら、それでもうお釣りが来るくらいや。あとは……普通に飯食べたり、普通に寝たり、そういう暮らしに戻りたいだけやねん。王様なんて柄はワイには重すぎるわ。」
英雄は、いつだって民から祭り上げられる。だが英雄自身は、たいてい最後まで、ただの人間でいたがるものだ。
けれど、時代はそれを許さなかった。
「それでも、あなた以外に頼れる者がいないのです。……どうか、力を貸してください」
頭を下げられて、ギョウはしばらく黙り込んだあと、渋々といった調子でうなずいた。 それは栄光の戴冠式などではなく、面倒事をこれ以上長引かせないための、ただの妥協だった。
――時は流れる。
ギョウは、かつて共に戦い、笑い合った女性・ジャスと夫婦になり、ひとりの娘を授かった。
名を、シンラ。
娘が生まれた日、ギョウは腕の中の小さな重みを見下ろしながら、静かにこう呟いた。
「この子には……ワイみたいな戦い方、させとうないな」
だが、娘の瞳は、あまりにも父親に似ていた。
迷いなく前を見る澄んだ眼差し。信じたものへ迷わず手を伸ばすまっすぐさ。
ギョウの願いをよそに、運命の輪はもう静かに回り始めていた。
シンラが十二歳を迎えたその年。
クリーチャーワールドには、ようやく穏やかな時間が戻りつつあった。裂けた空も、傷んだ大地も、少しずつ元の色を取り戻し始めていた。
だが――
平和というのは、いつだって借り物の時間でしかない。
水面の下で、何かが確かに蠢いている。まだ名前もついていない不穏な気配が、世界の輪郭をわずかに震わせている。
これは、かつて世界を救った英雄の娘が、自分自身の戦いを見つけていく物語。
誰が本当の“デュエル・マスター”なのか、もう一度問い直すための、もうひとつの序章である。
すべては、ここから始まる。
「……………………」
ここ、どこ。真っ暗で、何にも見えない。
「………………シンラ、シンラ……!!!」
誰かが、私の名前を呼んでる。知ってる声のはずなのに、輪郭だけがぼやけて掴めない。お願い、姿くらい見せてよ。声だけなんてずるいじゃない。
「あなたが最後の望みなの…………お願い……あの人を助けて……!!」
あの人って、誰。わからない。
ていうか助けてって、話が飛躍しすぎ。順番ってものがあるでしょう、順番ってものが。
……なのに、変なのよね。胸の奥のほうで、何かがすとんと納得してる自分がいる。理屈は追いつかないのに、感覚のほうが先に頷いてる。
「ごめんなさい……あなたに、こんな重たいものを背負わせてしまって。……ごめんね。こんな母親で」
母親。……あ。少しだけ、記憶の扉が軋んだ。この声、お母さんの声だ。 だったら、あの人っていうのは――
「お父さん……。」
――
「わぁっ!!!」
「ぬおぉっ!?」
……はぁ。何よ今の。妙な夢だった。けど、ただの夢って感じもしない。あの感覚だけ、やけに肌にこびりついてる。「お父さんを助けて」って、お母さんの声で、たしかに言われた。
それ以外は、全部が霧の向こう側。お父さんの顔も、お母さんの顔も、記憶の引き出しをどれだけ引っ張っても中身が出てこない。自分がどこで生まれたのかも、どうしてこんな場所に転がってたのかも、まるでわからない。
それでも、何もかも消えたわけじゃなかった。
一つ。私の名前はシンラ。今年で十二歳になる。
二つ目は……えーっと……う〜ん……
あら、一つしかなかったわ。
――で、ここから。
……えぇっと……ここはどこ、この子は誰。私が跳ね起きた勢いで、見事に尻もちついてるけど。ごめんなさい。
なにあの髪型。前髪の上に「D」と「M」を象ったみたいな房がぴょんと跳ねてる。しかもそこだけビビッドな黄色。何かのマークなの。それとも……まさかのファッション? 個性が強すぎて、ちょっと引く。
それにしても、気になるのはこの部屋。天井はベッドが上にある部屋の構造上少し高くって、壁一面に子どもの落書きみたいな絵が貼られてる。風景、モンスター、笑ってる人。どれも色が強すぎて、現実感が薄い。知らない場所。見たこともない部屋。
「いってて……あ、ようやく起きた……長い間、ずっと寝てたんだよ。」
「……?あなた、誰?」
「俺?えーっと、切札ジョー」
切札。ジョー。
……聞いたことある名前だわ。たしか、お父さんとお母さんがそんな名前を口にしてた。「切札勝太」っていう、すごいデュエリストがいたって。写真も見たことある。小さい頃のお父さんが、その勝太さんと肩を並べて笑ってた一枚。
思い出せば思い出すほど、この子、勝太さんに似てる。目つきの強さと、どこか抜けた空気感が。……まさかこの子、あの人の――
「ねぇ、あなた……」
「ちょっとちょっとちょっとーー!!」
なっ、なに、今の声!?どこから!?
……いや、いまのは、確実にこの子の胸元。デッキケースのあたりから聞こえた気がする。
嘘でしょ。そんなはずない。私はまだ寝ぼけてるだけ。うん、夢と現実がまだ混ざってる。それだけ。
「あーんた、第一声が『あなた、誰?』ですかぁ!?まずはジョーさんに、ありがとうございますって言うのが、ジョー識ってもんでしょーー!!」
「はぇ?」
……間違いない。こいつ、喋った。デッキケースが。うわ、テンションの上下がめちゃくちゃ激しい。見た目のわりに、口調が人間くさすぎる。
「……何をそんなに驚いてるんですかこの子は!!」
「いや、デッキケースが喋ってるの見たら、誰だって驚くと思うけど……」
「へ?あぁ確かに。」
「……ねぇデッキー、やっぱりこの子……」
「えぇ、おそらく。私の正体を知っても、私が戻らないということは……!」
なによ、私を訝しむ目で見て。何もついてないでしょ、私の顔。とりあえず触ってみる。あ、結構スベスベしてる~。…じゃないってーの。
あぁもう、思考が霧に包まれて動かない。えっと、私、何を聞こうとしてたんだっけ。たしか何かを訊こうとしたところで、この喋るデッキケースに横から止められたのよね。人生にこんな展開ある?
ないでしょ。断言できるわ。
……あ、そうだった。この子――切札ジョーのことを訊こうとしてたんだった。
「ね、ねぇあなた!!」
声が裏返った。自分でも驚くくらい勢いがついた。
「うぇぇ、なにびっくりした!?」
「あ、ご、ごめんなさい……じゃなくて!あなたに訊きたいことがあるの」
「訊きたいこと? 俺に?」
「ええ。……ねぇ、あなたのお父さんって……」
――ガチャリ。
扉の開く音が、これ以上ないくらい間の悪いタイミングで重なった。
「ジョー、ご飯できたわよ……ってあら、起きたのその子」
ひょっこり顔を出した女性。あれが“お母さん”……なんだけど、すごいおでこ。反射率が尋常じゃない。あの額に太陽が当たったら、あたり一帯が眩しさで真っ白になるんじゃないかしら。
……はぁ、訊くタイミング完全に逃したわ。最悪。何でこう間が悪いの、私。
と、そこでデッキケースが、誰にも気づかれないような小声でジョーに何かを耳打ちした。さっきまであんな大声だったくせに、都合のいい時だけ声を潜めるのね。
「しっかし変ですよねぇ。この子も、私と同じで隕石みたいに落ちてきたんですよねぇ?」
あの喋るデッキケース。相変わらず、口数だけは多い。
「うん。母ちゃんが買い物で街まで歩いてたら、この子見つけたって言ってたから」
(……え?)
思考が、そこで完全に止まった。
(買い物のついでに見つけた……私を……?“隕石みたいに落ちてきた”って、何それ。……私って、一体、何なのよ)
頭の奥がキリキリ痛む。考えようとしても、うまく形にならない。記憶も感情も、足元からじわじわ崩れていくみたいだった。
(だめ……全くまとまらないわ……これ、まだ夢の続きなんじゃないの……?)
「ねぇあなた、大丈夫?ちょっと顔色悪いけど……」
柔らかい声が耳に届く。ジョーの“お母さん”が、私の前にしゃがみこんで、心配そうに顔を覗き込んでいた。近くで見ると、光る額よりも先に、瞳の温度のほうが目に入ってくる。
……正直、大丈夫とは言い切れない。でも、ここで「だめです」なんて言ったところで、どうせまた布団に逆戻りするだけだろうし。今は動いて、状況を少しでも整理しなきゃ。止まってたら、余計に沈むだけだもの。
「……大丈夫です。けど、ここって……どこなんですか」
「私たちのお家よ」
「……お家、ですか。じゃあここは」
ちらりと背後の少年に目をやる。
「……ジョーの部屋」
「…………そうですか。……助けてくださって、感謝しています。けど、私、まだ状況がまるで飲み込めていなくて」
「それくらい、わかってるわ」
「え……」
その一言に、少しだけ救われた気がした。効き目のわりに、痛みのない薬みたいな優しさだった。
「……ふふ。ねぇ、あなたの名前は?」
「……シンラ」
「シンラちゃんね。……さ、ご飯を一緒に食べましょ。あなたの分もちゃんとあるから」
――拍子抜けするくらい、優しい人だった。
「ジョー、その子連れてきてあげて。私、先に準備してくるから」
「はーーい。……ねぇ、一緒に行こ!」
ジョーが手を差し伸べてくる。けど……大丈夫、私は一人で立てるはず。舐めないでよね。
「よ、っと――」
……あれ。
力が、まるで入らない。手足が空気でできてるみたいに、へろへろと崩れ落ちる。両膝が床につく寸前で、ようやく気づいた。私、相当お腹が空いてる。お腹の底が冷え切って、そのぶん力が出ないんだ。
そういえば、いつから何も食べてないんだっけ。夢と現実の境目を漂ってたせいで、空腹の感覚すら、ずっと置き去りにしてた。
「ねぇ、私……何日寝てたのかしら」
訊きながら、自分の声が妙に頼りないのに気づく。舌の上に残る渇きが、それを裏づけてる。
「え? うーん……デッキー、どのくらい寝てたっけ?」
「まるまる三日は寝てましたねぇ」
三日。言葉の刃が、耳から入って脳の芯まで刺さった。
「あ、あぁ……そうなの……。道理で、腕一本上げるのにも一苦労なわけね……」
脚は鉛みたいに重くて、指先は乾いた紙みたいにひび割れてる。熱いのか寒いのかもよくわからない身体で、私はジョーの差し出した手を取った。素直に頼るのは正直ちょっと嫌だったけど、あの細い手に縋る以外に選択肢がなかった。リビングへ引かれていく途中、窓の向こうに見えた空は橙色に焦げていた。……ああ、もう夕方なのね。特別な感慨もなく、ただ時間の流れだけを受け止めた。
そしてその夕食は、私の胃袋にあまりにも正直だった。
テーブルの上には、雑にラップされたカレーパンと、豚骨ラーメン。色はどちらも茶色一色。栄養価については、たぶん深く考えられていない。盛りつけに工夫のかけらもなくて、せめて野菜の切れ端でもと思って探したけど、見当たらなかった。皿の上は茶色の単色画。潔いくらいに食卓から「バランス」という単語が抜け落ちてる。
「うげぇ、母ちゃん、カレーパンはもういいってばぁ」
「好き嫌いしないの!恥ずかしいわよ?」
恥ずかしいのはむしろこの偏り具合だと思うけど。と心の中でだけツッコんでおく。二品。しかも両方とも揚げ物と炭水化物。栄養士が見たら卒倒しそうなラインナップ。だけど――空腹には勝てなかった。お腹の虫が怒鳴るみたいに催促してくる。
「いただきます」
口に入れた瞬間、身体の芯がじわりと温まった。あ、美味しい。スパイスがしっかり立っていて、カレーパンの皮は思ったよりサクッとしてる。ラーメンのスープは濃くて、やや塩気が強めだったけど、それが逆に体に染みた。……空腹というフィルターがかかっていたにしても、味自体は決して悪くなかった。
気づいたら完食していた。お腹が満ちると、頭の中の霧もようやく晴れてくる。今こそ訊かなくちゃ。この家の人たちに、確認したいことが山ほどある。
「……ごちそうさまでした」
「ううん、いいのよ。でもびっくりしたわねぇ、空から女の子が落ちてきたときは」
「デッキーと似てるよなぁ。空から落ちてきたってところ」
「ま、まぁ……たしかに似てますね……」
何でジョーとあのデッキケースは、そこでひそひそ声になるのかしら。隠したいことがあるってわけでもなさそうだけど。
まぁいいわ。それより、私は私のことを知りたい。
「食べ終わってすぐで悪いんだけど……ちょっと、あなたたちに訊きたいことがあるの」
空気が、ぴんと張り詰めた。部屋の温度が一段下がったような、そんな錯覚に包まれる。私は言葉を選びながら、最初の一歩を踏み出す。
「……ねぇ……ジョー君、だったわよね、名前」
「え?俺?うん」
「……名字、切札って言ったわよね。あなたもしかして、切札勝太っていう人の子ども?」
その瞬間、二人の顔に走った動揺は、隠そうとしても隠しきれるものじゃなかった。豆鉄砲を食らった鳩みたいな顔。言葉の意味を飲み込むまでの、ほんの一拍の間すら、表情に出てた。
「なんで……父ちゃんの名前、知ってるの」
「かっちゃんの名前を……あなた、一体何者なの……?」
「…………私の名前は、シンラ。名字は…………寄成。寄成シンラよ」
名乗った瞬間、ジョーのお母さんの瞳孔が、わずかに開いた。全身がこわばるのが見て取れた。彼女だけが、その名前に何かを見出しているようだった。ジョー君のほうは……たぶん聞かされてない。あるいは、覚えてないのかもしれない。
「寄成……って……嘘、でしょ……ギョウとジャスちゃんの、子ども……ってこと?」
母親の声が震えた。驚きを含んだその声が、空気をひときわ鋭く揺らして、部屋の温度すら一瞬変えたように感じた。まるで過去が、いきなり目の前の現実に押し寄せてきたみたいな錯覚。彼女の声の重さに、私自身も一瞬、息を止めた。
「ねぇ母ちゃん、ギョウって……あの、かっこいいおじさんのこと?」
ジョー君の問いかけには、変に無垢な響きがあった。彼の記憶の中の“ギョウ”は、ただの頼もしい大人でしかないらしい。そのギャップに、胸の奥が少しだけ締めつけられる。
「え、ええそうよ。昔……一緒にデュエマをやったことがあったのよ」
「うん……って――ええぇマジで!?」
彼の声が空気を割った。日常を突き破るくらいの衝撃が、少年の喉から噴き出す。天井に跳ね返ったその響きが、部屋全体で彼の混乱を反響させてるみたいだった。
「あ、あのぉジョー様、私にはなぁんにもわかんないんですけどぉ……?」
デッキーの声が、場違いなくらい呑気に響いた。呑気っていうより、場の深刻さに単純に追いついてないんだと思う。
「え、あぁえっとねデッキー、ギョウおじさんって人はね、かくかくしかじかでこれこれこういうわけで……そういうことなの」
「なっ、なんですってーーーー!!?」
理解してるのか、してないのか、判断に迷う反応。でも確かに“共感”の色はあって、意味が通じた証拠でもあった。最近のデッキケースって、こんなに高性能なの。……いや、そもそも喋ってる時点で規格外なんだけど!
と、そこでデッキケースが「しまった」というように、両手で口を押さえた。その仕草には焦りがにじんでいた。
「ん? 今の誰の声……?」
「え? えーっと、気のせいじゃない……?」
「そうかしら……」
………なるほど。私は、今のジョーのお母さんとジョーのやりとりを見て、ようやく合点がいった。
このデッキケース、たぶん正体がバレたら、何かは分からないけれど都合が悪いんだ。だから声を出すときは、極力静かにしてたのね。
「にしても驚いたわ……まさか、あの二人の間に子どもができるなんて……。あの人たち、絶対そういうことはしない夫婦だと思ってたのに……!」
ジョーの母親の声が、ほんの少しかすれていた。長年の確信が、いま静かに崩れていく音のようにも聞こえた。
「そういうこと……?どういうこと……?」
ジョー君が首を傾げたその表情は、まだ半分子どもの顔だった。
「ジョー様、それ以上は踏み込まないほうがいいですよぉ。この小説、健全がモットーですから!」
「へ? なんで急に健全ってワードが出てくるの。そんなに駄目なワードだったの、『そういうこと』って……!?」
彼の声が、また少し裏返る。何かに気づきかけて、でもまだ完全には理解しきれてない、そんな微妙な声だった。
「――で、私は夢の中で、お母さんの声を聞いたの。そこで思い出したのよ。『お父さんを助ける』――それが、私のやるべきことだって」
あの夢の記憶は、いまも肌の奥にじわりと熱を残している。母の声は、はっきりと私の意識を貫いて、使命の輪郭をくっきりと描いていた。感情じゃない。衝動でもない。あれは、魂に直接刻みつけられた“命令”だった。
「なんか展開、急すぎない!?」
ジョーのツッコミが空回りしてる。でも、その気持ちもわからなくはない。唐突なのは私自身、重々承知してるから。だって、そもそも元をたどれば――
「これ以上長々とやってても意味ないでしょ!それにもう、この小説の作者、投稿の間隔を空けすぎて、書き方感覚忘れちゃってるのよ!だから今こうして、長ったらしくて中身のない文章を、だらだら並べる羽目になってるんじゃない!だったらここでピシッと締めなきゃ、まずいでしょうが!!」
【ちょちょちょちょっとぉ!?それは駄目、色々とまずいんだってそれはぁ!!】
「――ってことで、私はお父さんを助ける。何が起きたのか、断片すら浮かばない。それでも。助けなくちゃいけないってことだけは、心の奥にしっかり刻まれてるの。胸に杭でも打ち込まれたみたいに」
言葉にしてる間、自分でも驚くくらい確信があった。思い込みじゃない。妄想でもない。夢の中で聞いたあの声が、現実の輪郭をはっきり描いてた。あれは、誰かの願いとか運命とか、そういう綺麗な言葉じゃなくて、もっと生々しくて、個人的で、逃げようのない――“私の義務”だった。
「…………」
誰も口を開かなかった。重い空気、というより“間”。一言挟んだだけで割れてしまいそうな緊張感。でも、だからこそ続ける。
「……急すぎて頭が追いつかないのはわかるわ。自分でも、言ってることが突飛だってのは百も承知よ。でも……もう一度言う。私はそれをやらなくちゃいけないの。クリーチャーワールド。お父さんはきっとそこにいる。だったら、行くしかないでしょ。手をこまねいてる時間なんて、一秒だって惜しいのよ!!」
気づけば、声が荒くなっていた。けど、無理に押さえつけるような冷静さなんて、今の私にはむしろ嘘くさい。熱が溢れて止まらない。心臓から直接、言葉が噴き出してくるみたいだった。
「う、うん。わかったんだけど……シンラちゃん? 俺、ひとつ訊きたいんだけど」
「……何かしら?」
「クリーチャーワールドって……どうやって行くか、わかってるの?」
――その瞬間、すべての思考が、すとんと音を立てて止まった。
「………………」
「………………あっ」
――し、しまったーーーーっ!!
全っ然わかってなかったーーーーっ!!!
そうだった。勢いのまま全部喋っちゃったけど、そもそもどうやって行くの!?どこから!?次元の壁?転送装置?魔法陣?いや知らない!!誰か教えて!!!
「あ、頭抱えちゃったわ……」
ジョーのお母さんがぽつりと呟く。その冷静な一言が、氷の欠片みたいに額に突き刺さった。……わかってるわよ、今の私、相当間抜けな顔してるんでしょうね。
「デッキー、俺……なんか間違ったこと言っちゃったかな?」
「うーん……私にゃわかりません」
いやぁあああ頼りにならなさすぎ!!
よりにもよってこんな時に、デッキーの緩すぎるリアクションが妙に心に刺さってくるなんて、誰が想像した!?
【……えー、そうして、一日が過ぎていきました。結局シンラはクリーチャーワールドへ行く方法が皆目見当もつかず、おまけに地球上に自分の帰る家すらないため……るるちゃんの粋な計らいによって、彼女は切札家にしばらく居候させてもらうことになったのでした!!!】
……ナレーターさん、展開が雑すぎません?
【いやいやしょうがないじゃんデッキー。作者がまだ感覚を掴みきれてないんだから! 投稿間隔、一ヶ月以上空けちゃったせいで……!!】
「は、はぁ……」
【……あ、それと。今回はここまでらしいですよ。スタッフさんたちがそう言ってました】
「えぇ、もう終わり!?デュエマ一戦もしてないのに!?だったら上のタイトル、詐欺じゃないですか!『新たなるデュエマの幕開け』って!幕、開いてない!まだ閉まってる!!」
【そう言われても、あっち側の判断なんで、私にもどうしようもないんですよねぇ。デュエマは次回やるらしいので、まぁここまでってことです。……はい!では、次回をお楽しみに〜〜!】