寄成ギョウに転生したから、キャラの良さガン無視して善人になるニョロ〜!   作:ライダー☆

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新・三話 いきなり頂ジョー決戦!シンラVSジョー!

「マスター候補の……人間……」

 

 デッキーのその言葉は、まるで雷鳴のように俺の頭に響いた。  

 ……わかってた。いや、薄々察してた。でも、改めて聞かされると、やっぱり――衝撃だった。  

 

 シンラちゃん。あの子が「マスター候補になりうる存在」だって? 

 

 いや、今はまだ完全に“なった”わけじゃない。けど、それでも……!  

 あそこまでの力を持っているなんて――もう、完全に次元が違うじゃん。  

 俺だって、一応マスター候補だ。ジョリー・ザ・ジョニーを持ってる。だからこそ、わかる。このレベルの戦いが、どれだけ高みにあるのかってことが……!!

 

 その瞬間、不意に浮かんだのは――キラのことだった。

 

 キラは俺の一つ年上で、ずっと俺の「上」にいた。勉強も運動も、すべてが俺よりも上。テストの点はいつも段違い、走れば俺より十歩は速く、ゲームをすれば完封され、ジャンケンすら勝てない。勝負という勝負、努力しても、願っても、届かない背中。  けど――二年前。キラが海外に行く前、最後のデュエマだけは違った。  

 俺は、必死にデッキを組んだ。自分にできる全てを詰め込んだ。勝つためにどうすればいいか、何日も考え続けて――そして当日、ようやく運も味方してくれて、俺はキラに勝った。

 

 人生で、たった一度だけ。あの完璧超人に勝った瞬間。たったそれだけ。……それ以外は、何一つ敵わなかった。  

 でも、あれから二年。俺も変わった。デッキーに出会い、ジョーカーズと一緒にいて、マスター候補にもなった。たくさんのデュエマをこなして、負けて、勝って、何度も心を折られそうになって、それでも俺は進んできた。

 

 だけど――本当に、俺はキラに追いついたのか?

 

 今、目の前にいるシンラちゃんは、まだマスターになっていないというのに、すでに「その域」にいる。キラのように、いや、それ以上に思える。  ……勝てるのか? 本当に? 俺の全力は通じるのか?

 いや……それすらも、わからない。

 わかっているのは、ひとつだけ。

 

「この戦いは、間違いなく俺がピンチになる。」

 

 やばい。俺、デュエマやろうって言い出した側なのに……なんか、急に怖くなってきた……!!!

 

「……ん?どうしたのよ、ジョー。……まさか、ビビってるの?」

 

 シンラちゃんが静かに、でも確かに挑むような眼差しで俺を見つめてくる。

 すでにカードは手元に揃えられ、フィールドには美しく整列したシールド。彼女の構えに隙はない。完璧だった。だけど、そこに見えるのは“傲慢”じゃない。“余裕”でもない。ただただ――純粋な「楽しみたい」っていう、まっすぐな気持ちだけだった。

 

 それが、余計にこたえる。俺はなにを怖がってるんだ。彼女は、戦いに誇りを持ってる。だったら、俺も――応えなきゃいけないじゃん。

 ……俺の背中を、誰かがそっと押してくれる気がした。

 それがジョーカーズだったのか、キラだったのか、それとも……俺自身だったのかはわからない。だけど俺は、ひとつだけはっきりと理解していた。

 逃げちゃダメだ。俺は、マスター候補だ。

 

 そして、それ以上に――デュエマが、大好きなんだ!

 

「……早く始めましょ?待ちくたびれちゃう」

 

 シンラちゃんが穏やかに言う。声は軽やかで、だけど一切の油断もない。

 

「うん……!」

 

 俺はうなずいた。目を逸らさずに、デッキに指をかける。  

 俺はもう、臆病な自分を置いてきた。この戦い、絶対に逃げない。どれだけ強い相手だろうと、俺は――俺のデュエマを貫く!

 

「よしっ……! やってやるぞ、シンラちゃん! 俺が勝つんだ、絶対に!!」 「ジョー様、その意気ですよ!」

 

 デッキーの声が力強く響いた。さあ、デュエマ開始だ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

切札ジョー 切り札:ジョリー・ザ・ジョニー

 

寄成シンラ 切り札:進化の始まりシンラセンショー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『デュエマ、スタート!!!』

 

【ついに始まった、ジョーとシンラのデュエマ!果たしてジョーは、強き少女シンラに勝てるのだろうか!?】

 

 

ジョー ターン2

 

「俺のターン。ドロー!ヤッタレマンを召喚!!」

 

〈ガンバレガンバレジョーサーマー!!!〉

 

 よし。ヤッタレマンを召喚できた。次のターンでバッテン親父を召喚すれば、ターンを安全に進められる!

 

「ターンエンド。」

 

 

シンラ ターン2

 

 ……ジョーのカード、今見返してみると、まったく色のない、無色なのね。……しかもジョーカーズなんて種族、聞いたこともないわ。となれば警戒あるのみ。盤面は整えてから攻めに行くようにしましょう。

 

「呪文、フェアリー・ライフ。マナを1マナ加速。ターンエンド」

 

【この後、ジョーは予定どおりバッテン親父を召喚。対するシンラは、ボントボとフェアリー・ライフでマナ加速を進めて7マナまで貯めていく。ジョーはその隙をついて、シンラのシールドを2枚ブレイク!シールドとクリーチャーの数ではジョーが有利!果たしてこのデュエマ、どちらが勝つのかぁ!!】

 

 

シンラ ターン4

 

「私のターン。ドロー。……よし」

「ジョー様、シンラ様がなにか引いたみたいですよ?」

「うん……」

「マナチャージ。まずはトテントンを召喚。そして……龍装者ババルガ。こいつはマナゾーンにあるクリーチャーの分、コストを1少なくできる」

 

 え?てことは……えーっと、いち、にぃ、さん……8枚あるから〜〜……まさか1マナぁ!!!?

 

「ふふ、気づいたかしら?てことで……ババルガを1マナで召喚!」

 

 まずいですよジョー様……トリプルブレイカーが、たったの1マナで出てきてしまいましたぁ!

 

「け、けどまだあいつは攻撃できない!次のターンにどうにかできる……」

「あら? 終わりだと思ってるのかしら?」

「へ?」

「トテントンの能力を発動。パワー12000以上のクリーチャーが場に出たことで、カードを1枚引ける」

 

 強力なクリーチャーを少ないコストで出しながら、手札を補充するとは…………やはり彼女、タダモノじゃない。デュエルマスター候補と言われて納得のプレイング……!!!

 

「そして、今引いたババルガを1マナで召喚!!」

「嘘ぉ、またぁーーー!?」

 

 あぁまずいです! トリプルブレイカーが一気に2体に!しかもあっちは手札を減らしていませんし……ジョー様、大丈夫でしょうk

 

「………………」

 

 あぁだめだァァッ!!!! 

 作画が真っ白になっちゃってるーー!原画になっちゃってるぅ〜〜〜!!!!  ジョー様、諦めないでください!まだ「勝機」はありますから!彼らは攻撃を、まだしてきませんから! 

 だからぁ〜「正気」に戻ってぇ!……なんつって。

 

「……デッキー、それはないよ」

「……うわぁ急に元に戻りましたよこの人……すっごい今の私の励ましが虚しいじゃないですか!!ねぇどうしてくれるんですか、何してくれちゃってるんですかぁ!!!」 「いや、ごめん、ごめんってば……」

 

 何を茶番してんだか。まぁいいわ。残り3マナ。そして今引いたカードは……よし。

 

「そして3マナをタップして、今引いたフェアリー・トラップを唱えるわ。山札の一番上をめくって……コスト6のくまくまわり。これよりもコストの小さいバッテン親父をマナゾーンへ!!」

「うわぁ、バッテン親父がぁ〜〜!!」

「ターンエンド。はい、あなたのターンよ」

 

 

ジョー ターン5

 

 ぐぐぐ……チクショー、バッテン親父がいなくなったせいで、攻撃を防ぐことができなくなっちゃった……! けど、もう仕方ない。こうなったら相手のクリーチャーをどうにかして破壊しなくっちゃ……

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 ぐぬぅ、ここでパーリ騎士は意味がない……けど、マナ加速はできるから召喚はしておこう。ていうかそれしかできないし……

 

「パーリ騎士を召喚!こいつの登場時能力で、墓地のカードを一枚マナゾーンに!」

「ふーん。マナ加速ねぇ。……からの?何をするのかしら?」

 

 うぅっ!挑発してきてる……くっそー反撃してやりたい! けどどうすることもできない!

 

「ヤッタレマンでシールドをブレイク。……ターンエンド、です……」

「じゃあ私のターンね」

 

 まずいです……ジョー様が完全に失速しています! 

 となると……残り5枚のシールドにすべてをかけなければ……!!!!  

 あぁ両手を合わせてるぅ!ジョー様、もう5枚のシールドに祈っていますぅ!! 

 

「神様ぁ、どうかこのシールドにトリガーがありますように……どうか……!!!」

 

 しかも相手の目の前で!!恥ずかしさとかないんですかこの人は!……あ、なかったですね。デッキーったらお茶めっ☆

 

「いや、それはないわーデッキー。何?好感度稼ぎ?」

「だぁからなんで急に冷めるんですかッ!!!あぁなんかすっごいむかつくーーー!!!」

 

 二番煎じの茶番はいいっての!!……調子狂うけど、私のターンね。

 

 

シンラ ターン5

 

「ドロー。そして呪文、スプラッスイカ。パーリ騎士をマナゾーンへ。マナゾーンからクリーチャーを一体、手札には……戻さずに、行くわよ。総攻撃!!!ババルガで、シールドをトリプルブレイク!」

「トリガー、来てくれ……!くそぉっ!!!」

 

 まずい……このままでは、ダイレクトアタックまで決まっちゃう。残り2枚……俺はそれに賭ける!

 俺のデュエ魂なら……ここでなにか来てくれるはずだぁッ!!!!

 

「?」

 

 何かしら、今……ジョーの髪が光った? 

 しかも器用に前の黄色の部分だけ……気のせいかしら。まぁいいわ。今はケリをつけることを最優先としなくっちゃね。

 

「2体目のババルガで……ダブルブレイク!」

 

 ……一枚目ぇ!来ない……最後、二枚目ぇ…………!

 はっ!来たぜーーシールド・トリガー!

 

「ジェットセット・バイト!こいつでトテントンを破壊だぁ!」

「っ。……ターンエンドよ」

 

 よっしゃぁ、このターンを切り抜けたぜ!

 それに相手のクリーチャーは二体、ここであいつを引ければ……行ける! 勝てるぜ!!!

 風は俺を押してくれている……この流れを、絶対に断ち切らせちゃいけないぜ!!!

 

 

ジョー ターン6

 

「俺のターン!!」

 

 この風が……俺を押す……!!

 ならば、それに乗っていく!ノッていく!そして……引いてやるぜぇ!!!!!       

 いっぱぁっっつ!!!ヴァッキューン!ズッキューン!!ドォッキューン!!!!! 

 ドローーーーッ!!!!

 俺の風……ビュービュー吹いてきたぜ!!!

 

「ジョリー・ザ・ジョニーをぉ……召喚だぁ!!!」

 

 あれは……さっき見たやつ。うわぁかっこいいわねぇ〜。西部のガンマン、ってやつかしら?しっかしあの馬、普通の馬とはかなり違うわね。何かしら、鉄で出来てるのかしら?だとしてもなんで……?

 

「ジョニーだけが持ってる最強の能力……マスター・W・ブレイカー!!」

「ぅん?何それ?」

 

 行くぜ。引き金は二度引かねぇ……一発が「すべて」だッ!!!!!

 

 

 バキュゥ…………ン……

 

 

 な、何っ、ババルガ二体が破壊された!弾丸一発撃たれただけなのに。

 ……そういうことね、マスター・W・ブレイカー。シールドの数分、相手のクリーチャーを破壊するってわけね。……でさぁ、なんで弾がまだこっちに向かってくるわけ?

 

「ジョニーの攻撃でシールドとクリーチャーがすべてなくなった場合、バトルゾーンかマナゾーンにジョーカーズが5枚以上あれば……俺はゲームに勝てる!!!これが……マスター・W・ブレイクだっ!!」

「やりましたよジョー様! これでシンラ様とのデュエマに勝っ……」

 

 

 キンッ……

 

 

 あ、あれ?一体どういうことですか?なぜ、ジョニーの弾丸が彼女にあたらずに弾かれてしまったんですか?

 

「え……どうして……?」

「残念。クリーチャーが一体残ってるわ。シールド・トリガー、祖霊の化身(チャネル・トーテム)。こいつでヤッタレマンをマナゾーンに。これで、あなたのバトルゾーンには攻撃できるクリーチャーは一体もいない。ダイレクトアタックを刺すことはできない……!!!」

「くぅっ!! ターンエンドだ……」

「まさか……ジョニーの銃弾さえ彼女には効かないというのですか!? こ、これはとんでもない……まだ真の力を秘めているマスター候補とは思えないほど……完成しきっている!?」

 

 完成しきっている、ねぇ。……さてどうかしら。もしそうなんだとしたら――私の両親は「神様かなんかかしらね」。

 

「じゃ、私のターンね。ここで終わりにするわよ。全部をね!!」

 

 

シンラ ターン6

 

 私は、私の今やるべきことを果たすだけ。目の前にいる敵を倒す!力をつけるのよ! 父さんを助けられるのはこの私だけ……だったら、私がやらなきゃ誰がやるっ!!

 そして掴み取るのよ、強さの果てにあるものを……!! 

 ドローーーッ!!  

 私はまだまだ成長できる。……「あなた」と一緒よ。

 

「シンラセンショーを……G(ゴッド)YOU(ユー)を使い、8マナで召喚!!」

 

〈よっとぉ! 登場だぜ。……そして……ジョニー、だっけか。お前〉

〈?そうだが、それがどうした?〉

〈どうもこうもしねぇさ。お前を倒して俺は、俺の進化へとより近づいてやる。それだけだ!!〉

〈やってみろっ!!!!〉

 

 ジョニーの指がトリガーを引いた。轟音とともに弾丸が宙を裂く。しかし――

 

〈そんなもんじゃ止まんねぇよッ!!〉

 

 シンラセンショーは身体をひねり、一発目を紙一重で回避。続けざまに放たれた弾丸を篭手で弾き、地面を蹴った。

 

 一瞬で懐へ。

 

〈チッ――!〉

 

 ジョニーが舌打ちした瞬間、シンラセンショーの拳が横薙ぎに振り抜かれる。

 

 ガッ!!

 

 鈍い音が響き、ジョニーの意識が揺らぐ。視界がぐらつく中、さらに追撃。

 

 ドンッ!!

 

 みぞおちにめり込む衝撃。息が詰まり、足元が浮く。

 

〈終わりだッ!!〉

 

 振り上げられた拳が、真正面から叩き込まれる。

 

 ジョニーの身体が宙を舞い、重力に引かれるように地面へと落ちた――。

 

〈なぁにがやってみろっ!!!だ。俺のほうが強い。これだけじゃねぇかよ。〉

 

 う、嘘だろぉ〜〜!!ジョニーが負けただとぉ…………!!

 ……ん?あっ!や、やばいっ!てことはこれは、クリーチャーがバトルゾーンにいないってことになって……ま、まさかぁ!!!

 

「察したみたいね。出たターン、相手プレイヤーを攻撃できるという能力がシンラセンショーに付与された。これでトドメ!!」

〈サヨナラだ!!!〉

「ぬぎゃぁーーーー!!!!!!」

 

 こいつでトドメ。結構ギリギリだったわね。ババルガ二体が一気に破壊されたときは焦ったけど……まぁなんとかなったわね。

 ……けど、ふーん、ジョリー・ザ・ジョニー、ねぇ。なぁんかあのクリーチャー、まだまだ奥がありそうなのよねぇ。

 …………さっきのシンラセンショーとの戦い、どこかジョニーの方は手を抜いていた気がする。いや、どこか全力を出せていなかったっていったほうがいいのかしら。……となれば、あっちも力を秘めているってことなのかしらね。  

 って思ってたら、シンラセンショーがカードから出てきた。

 

〈おいシンラ。どうしたんだよそんな考え込んでさぁ。勝ったんだからもうちょっと喜んだらどうだ?〉

「え?あ。う、うわーいやったー」

〈……お前、ジャス様みたいだな〉

「えーっと……それ私のお母さんだっけ?」

〈いや、そうだよぉ!?お前そこんところの記憶も抜けてるのぉ!?〉

「うん。なんかジョーとそのお母さんの話で、名前を聞いたかなってぐらいの記憶しかないから……」

〈んじゃあもう一回言うけど、お前の母親だよ〉

「……そうなの。ねぇ、またもう一つ質問していい?」

〈あぁ。けどあんまり長くなるなよ? 長ったらしくしたら読者が飽きる〉

「いいえ。文字数が7000文字超えるまではやるわよ」

〈……本来の主人公置き去りかよ……〉

 

 んなことしたらだめだr……あぁいいかもしれねぇ。あいつらはあいつらで「セリフがなくなって楽だからそのまま続けて」ってスケッチブックに書いてやがらぁ。

 ……終わったら、そっちに移るって感じでいいの?  

 …………「うん」ね。オッケー。ていうかそれぐらいだったら声に出していいだろ。

 

「ねぇ、言っていい?」

〈え? あぁ、うん〉

「『そこんところの記憶も抜けてるの?』って言ってたけどさ、私の記憶が抜けてるってことを、事前に知ってたみたいな素振りだったわよね?あなた……なにか知ってるの?」

 

 空気が、すっと変わった。さっきまでの軽口が嘘みたいに、シンラセンショーの声が低く落ちる。

 

〈……知ってる。まぁこのデュエマが終わって一段落ついたら教えようと思っていたが、手間が省けた。お前から質問してくれるとはなぁ〉

「……教えて」

〈お前の父親が、お前の記憶を消したんだ。なんでかは知らない〉

 

 ……何、言ったの、今。

 

「…………私の、お父さんが?」

〈そうだ。んでお前はその後意識を失った。一気に多量の記憶がなくなったせいか、定かじゃねぇけどな。……母親はお前のことをずっと看病してくれていた。いつか意識を取り戻すその時まで。だが、意識は取り戻すことはなかった〉

「なんであなた……そこまで知ってるの?」

〈従順な付き人だったからな。割と信頼されてた。だからいつだってお前の母親の隣にいて彼女を護っていたんだ。ちなみに記憶を消したってのも、お前の母親から聞かされたことさ〉

「へぇ」

〈まぁそれはいいとしてだ。……そこからお前の父親は……クリーチャーワールドのクリーチャーというクリーチャーを一掃した。その中心にいたのは……ドラゴンだ〉

 

 !?な、なんですって……今のはこのデッキーの耳にも入ってきましたよ!とんでもない情報ではないですか……!!!

 彼女の父親が、どうしてそんなことを……。

 

「なんでそんなことを……?」

 

 お、よし。聞きましたよ彼女が。これで聞ける……

 

〈それもよく知らん〉

 

 知らねぇのかい!!!!!

 

〈だけど、それでクリーチャーワールドは壊滅した。そして、その代わりとするように新たなる種族が生まれ、生活を始めた。……その後、お前の父親の所在は全くの不明。さらにお前の母親は父親の罪をかぶり王座を剥奪され、生活さえ縛られた。そんな狭苦しい環境で、母親は自分の子をこれ以上看病することはできないと思い、お前がいつか目を覚ますまで何も無い暗闇へと包みこんだ。詳しく言えば、球体のポッドのようなものさ。そこはなにも干渉することのない安全な空間だったからな。包み込むには最適の場所だった。……その時俺は、お前がいつか目を覚ましたときに護るための守護者として、カードの中に入ることを命令された。……そしてお前には、一つの願いを託した。……「父親を助けてほしい」とな〉

「……それで、この私は地球に?」

〈あぁ。母親はお前の送り先を「地球」に指定していたからな。地球には頼れる存在がいることをあの方は知っていた。……それが、目の前にいる切札家の存在なんだよ〉

「……そう、だったんだ。……わかったわ、ありがとう。結構いい情報を知れた気がする」

 

 でも、変ね。頭ではちゃんと理解できたはずなのに、胸の奥だけが、なぜかずっとひんやりしたまま。父さんが、クリーチャーを一掃した。それを助けるために、私はここにいる。……何を信じて、何のために戦えばいいのか、急にわからなくなった気がした。

 

〈そりゃあようござんした。……さて、と。おーいお前ら、話し終わったぞー〉

「あ、終わった?よーしじゃあ俺らの番だー!!!シンラちゃん強かったなぁー!まさかジョニーを出したってのにそこから捲ってくるなんてなーー!いやー本当に強かったなぁーー!!!!」

 

 流れるように言うわね。まるで感情がこもっていないかのように。いや、実際はこもっているんだけどね。そういう例えよ。た・と・え。

 

「……まぁ私は強いからね!……それで、オチはどうするの?」

「にっひひぃ!いいのがあるんだよ!これっ! ラーメン無料券!2枚あるから1枚をシンラちゃんにあげるんだ!はい!」

「ありがと。じゃあ、一緒に行く?」

「うん!!!」

 

 てな感じで、一緒にラーメンを食べに、スクリーンルームを出ていきました。

 どうやら行きつけのラーメン屋があるらしく、私はジョーについていく。

 ……これで一旦はおしまい。だけど……これはまだ始まりに過ぎない。……お母さんの願いを、叶えなくっちゃいけないわ。

 背中越しに映る空は――燃えるような夕焼けだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――

 

「…………」

 

 暗闇の中、一人の男が道を歩いていた。筋肉質だが、どこか爽やかさも感じるその男の服装はオールグリーン。髪は地につくほど長く、数年は切っていないように見える。

 

 彼の足音だけが静寂を切り裂く。ザッ……ザッ……と一定のリズムを刻みながら、男は先を見据えていた。しかし、その目には焦点がなかった。まるで何かに導かれるように、あるいは、そこに道などないかのように――。

 

 やがて、足元に異変が起こった。ザラついた土の感触が消え、ヌルリとした冷たいものが靴を包み込んだ。男は立ち止まることなく進み続ける。ふと、彼の耳に声が響いた。

 

「…………デュエルウォーリア、全員放出が完了いたしました」

 

 影から現れた、とあるクリーチャーの声だった。そのクリーチャーはムカデであった。

 

 全長数十メートルの巨大なムカデ、漆黒の甲殻に赤い帯が走る。無数の鋭い足が地面を蹴り、巨大な頭部には尖ったサングラスが鋭く光る。口から覗く長い牙と舌が周囲を威圧し、炎のような光輪が背中に燃え盛る。その姿はまさに戦乱の化身。

 

 名を、阿修羅ムカデと言った。

 

 男は彼の言葉に「そうか」と冷たく返す。更に続けて、こうも言った。

 

「しっかりと……そうするようにお前が仕組んだんやろうなぁ?」

「えぇもちろん。皆に判断を狂わせる薬を、注射しておきました。地球に行ってはならないというその判断を、確実に消して差し上げましたから」

 

 その言葉を聞くと、男の顔にゆるぎない喜びが広がる。眼差しには計画が実を結んだ満足感と、狂気が交錯している。阿修羅ムカデの冷徹な微笑みが、まるで全てを掌握した証のように輝いていた。

 

「これであやつらは終わりです。……地球にいる『正義』の名のもとに、皆、消え去っていきますよ。ギェァハハハハ!!!!」

「ほほーう……そいつは愉快やなぁ。……で、お前さんはいつ頃、地球に向かうんや?」

「明日頃には行く予定です。もうやることはすべて終わりましたからね。…………ま、最初っから狙われることのないよう、私の存在を知らない者に、私を見つけてもらうようにしますけどね」

「……? どういうことや?」

「なぁに私のことを傍観していればいずれわかりますよぉ!!!あなたはここで、地球のデュエリストの行くすえを、傍観していればいいのですから」

「それもそうやな。んじゃ、あとは頑張りなはれやぁ〜」

 

 男はそう言い残し、背中を向けて去っていった。彼の姿がたちまち闇に溶けて消える。

 

 その後、静寂が部屋に広がる。阿修羅ムカデはしばらくその場に立ち、笑みを浮かべながら一人、呟く。

 

「はぁ怖い怖い。あの方は殺気だらけで緊張しちまうぜ。さぁってと、俺も準備をするかなぁ。えーっとまずは電子ジャーを持って、俺がそこに入る形でいいかなぁ。…………あっ!そういえば、地球にはあの方の娘もいたと聞くが……それも訊いときゃよかったかな。……う〜〜〜〜〜ん……まぁいっか!!どーせいずれ出会うだろうし、何より――」

「出会わなかったところでぇ、あの方自身が、彼女を始末するだろうしなぁギィヤーーーッハッハッハァッ!!!!!ハァ。……いや、しかし、俺以上の邪悪がいるとは思わなかった。そうだなぁ、彼になにか二つ名をつけるとしたら……」

 

 ――「The邪悪!」これしかないねぇ――

 

 阿修羅ムカデの大笑いが、暗闇に響き渡った。

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