寄成ギョウに転生したから、キャラの良さガン無視して善人になるニョロ〜! 作:ライダー☆
「これがワイの切り札……邪帝類五龍目ドミティウスや。」
ドラゴン……だと…!?馬鹿な、あり得ない!!サッヴァークDG以外に、この世界にドラゴンなんてものは……!
「お?どうした?ビビっとるんかお前。」
「っ……!!」
「無理もないか。お前の偽造しとるドラゴンとは違って、こっちは正真正銘、本物のドラゴンやからな。」
アイツのふざけた声が空気を裂いた瞬間——
それに呼応するかのように、ドラゴンが首を持ち上げ、喉奥から低く唸る。
やがて大気を震わせる咆哮がフィールドを支配し、空間そのものが軋んだ。
観客はいないはずなのに、誰かが悲鳴を上げたような錯覚すら聞こえる。
その咆哮は言葉だった。「ここからは俺らの番だ。」と、無言のまま宣言する咆哮だった。
「ドミティウスの登場時能力はつどーう。山札上から5枚を見て、その中から火・水・光・自然・闇のコスト7以下のクリーチャーをそれぞれ1体ずつ、バトルゾーンに出すことができる。」
「なんだと…!?」
「んじゃ、5枚見るでぇ!!…………おぉっとぉ!大当たりぃ。」
「破壊者シュトルムとぉ、スペルサイクリカ。セブンスにツミトバツ!そしてぇ……ドミティウスを、裏革命目ギョギョラスに、進化じゃあ!!」
い、一気にクリーチャーが……5体も出てきただと!?そんな!
ハァ……ハァ……まずい、息が荒くなってきた。この現実を直視できていない!自然と足も下がっていく……このままだと…俺は…!!!
「まずはぁ…スペルサイクリカの能力で、墓地から呪文、煉獄と魔弾の印!ボルメテウス・ホワイト・ドラゴンを墓地からバトルゾーンに!!さらにさらに!ツミトバツのマナ武装7の効果で、あんたらのクリーチャーのパワーを、マイナス7000やぁ!!」
(オブ・シディアDGのラビリンスのお陰で、俺のクリーチャーは耐えることはできている……だ、だが!最後に残ったあのクリーチャーの、能力もある……!!!)
「まだ終わりやない。お前にはもーっと絶望してもらわなあかんからなぁ。」
そうそう、そういう顔や。ご自慢の正義も、何もかもが信じれなくなるような、恐怖で引きつったその顔!!!ワイが求めとったのはそれなんやぁ…!!
えぇなぁえぇなぁ、調子出るでぇ!!
「…次に、シュトルムの効果でシーディアスを破壊。」
「くっ……!」
「んじゃあ最後に、お待ちかね、ギョギョラスの能力発動じゃあ!!オブ・シディアDGを、マナゾーンに送らせてもらおかぁ!!」
ーーー
――オブ・シディアDG。
感情を持たぬ一つ目の神秘。喉奥から漏れた唸り声が、空間を重たく染める。
咆哮ひとつで精神を削る音波を放ち、対峙するものすべてに警鐘を鳴らす異端の存在。
だが――
「黙れや、目ん玉野郎がぁ!!」
次の瞬間、地を割って突進してきたのは、血の臭いすらまとった暴風だった。
裏革命目ギョギョラス。
戦においても異常な速度で肉薄し、大きくそびえ立つ鋭利な爪を、問答無用でオブ・シディアDGの水晶装甲に叩き込む。
音を立てて軋む装甲。だがギョギョラスは止まらない。
「ケッ、十分に硬ェのは認めるが、いつかは潰れるはず。そうだろう?」
笑いながら、何度も何度も殴る。
水晶の表面にヒビが入り、粉塵が水中に舞う。
オブ・シディアDGは一度、咆哮で応じようとするが――
「吠えんじゃねぇって言ったろォがッ!!」
羽での振り下ろしを叩き込んだ。
今度は音が違う。砕ける音だ。
装甲の一部が弾け、奥の組織が露出する。
ギョギョラスは口元を歪めて笑い、
それを「そんなもんがあるんだなぁお前みたいなやつにも……心臓か?」と呟きながら、何のためらいもなく拳を深く突き立てた。
咆哮が消える。
オブ・シディアDGの存在が、そこから消えた。
「あっけねぇ。」
ーーー
「オ……オブ・シディアDGが…そんな!」
「お前さんの切り札ってのもその程度やったみたいやなぁ。うわー、かわいそー。…あぁーあ。パワーをプラスされてたのにあの目玉いなくなったせいで、お前のクリーチャーぜぇんぶ死んでもうたなぁ!」
俺のクリーチャーが…みんな…!!!
クソっ、完全に……アイツのペースだ!………だけど、ど、どうにかしてこのターンを凌がなくっちゃいけない!ここからは完全に運頼みだ、次のターンが回ってくるように……!!!
「お前、次のターンが回ってくれば、どうにかなると思っとるやろ?」
「!?なっ…!」
「あのなぁ、お前のようなアホが考えてることなんてお見通しやねん。そして……その対策っちゅうもんは、適当なアドリブ一つでどうにかなるってこと、教えたるわ………。」
「うぅっ……。(だ、駄目だ……気圧されるな……気圧されるな、キラ…!!!)」
「ギョギョラスの能力はまだ終わっとらん!!マナゾーンに送ったクリーチャーよりもコストの低いクリーチャーをマナから場に出せる!つーことでぇ?出てこぉい!!!伝説のドラゴンよぉ!!!」
その瞬間、キラの中で何かが崩れ落ちた。
信じていた“正義”が、ひどくちっぽけに思えた。
積み上げてきた“実力”が、ただの思い上がりに過ぎなかったと、身体が、心が、理解してしまったのだ。
目の前に現れたのは、存在そのものが災厄の具現。
天地の律すら捻じ曲げるほどの威圧。空気が震え、視界が歪み、心拍が自然と早まる。
——キング・ボルバルザーク
伝説。
怪物。
この世の均衡を打ち砕く者。
戦慄とは、こういうものを指すのだと、キラはただ、立ち尽くしていた。
「行くでぇ……煉獄と魔弾の印の効果でボルメテウス・ホワイト・ドラゴンはスピードアタッカーになっとることを覚えとるかぁ?」
「ひっ…!!」
「ボルメテウス・ホワイト・ドラゴンでシールドをダブルブレイク!こいつは、相手のシールドを直接焼き払う、焼却持ちクリーチャーや!」
「シールド・トリガーが!!」
「さぁて…お楽しみはこれからやで?せいぜいあがいてくれよなぁ。」
ーーーー
「…よいしょっと。」
「どうにかして真のデュエルフィールドに着きましたけど……ここ、多分端っこあたりですね。」
「転送位地、ミスってない?」
「はい……どうやらそうみたいです。えへ!デッキ―お茶目!!」
…俺はデッキ―の口から無理やりメラビート・ザ・ジョニーを出して、ジョニーのスケボーに乗り、デュエルフィールドまで行くことにした。
「けどデッキ―。一体この先に何があるっていうの…?」
「わかりません。しかしジョー様…この先に、わたしたちの想像をゆうに超えるクリーチャーがいるということは、確かなんです…!!!」
ーーーー
「キング・ボルバルザークで、ダブルブレイク。」
「ぐわああっ!!」
「さぁて、シールド、0枚になってしもうたなぁ。傷もいっぱいついとるし…どうや?もう降参したら。そうしたほうが楽やろ。」
……そうだとしても、屈するわけにはいかない。
怖気づいた心が叫ぶ。けれど、それ以上に魂が吠えた。
「いいや……! そんなことで折れてたまるか!!」
膝が震えてもいい。心臓が逃げ出しそうでも構わない。
でも俺は、ここで目を逸らすわけにはいかないんだ。
「俺は……正義を名乗ったんだ。だったら――」
血管が脈打ち、声が喉を突き破る。
「お前を裁かなくちゃならないんだよッ!!!」
自分でも驚くほどの咆哮だった。
立ち上がる脚は、確かに重かった。
だが俺は、這うように、踏みしめるように、
あの災厄を睨み返した。
「っ。何やお前……さっきと様子が…」
拳が震えていたのは、恐怖のせいじゃない。
――覚悟が、ようやく追いついたからだ。
「何かわからんが、ここから逆転なんてできるわけあらへん!とっととシールドチェックして、負けを認めろや!!」
「まだわからない!!俺はキラ!正義の執行者だ!!」
キンキラキンに、引いてやるぜ……!!
スリー、トゥー、ワンッ!!
キラめけ、俺の正義!!俺はキラめく、正義の星!
………お前を、サッヴァーク!!
キンキンキンキラ、キンキラキン!!マッキンキンキラ……スターダスト、ドロ―――ッ!!!
来たぜ、キンキラキンに、大正義だぜ!!
「来たぞ、スーパー・S・トリガー、ノヴァルティ・アメイズ!!」
「なんやてぇ!?」
「能力で、相手のクリーチャーをすべてタップ!更にカードを1枚ドロー!……そして!光のコスト8以下の、進化ではないクリーチャーを1体、バトルゾーンに出せる!!ワンダータートルをバトルゾーンへ!!」
やったぞ!!これで相手のクリーチャーは俺を攻撃できない!そして俺は、クリーチャーを1体展開できた!!て、ことは……
「ば……馬鹿な……こんな、ことが……っ!!」
崩れ落ちる相手の表情。震える手。
勝利を確信したキラは、拳を握りしめた。
「やっぱりそうだ……俺の勝ちだ!諦めなくて、よかった……!」
胸に熱が満ちる。喉の奥から言葉が飛び出す。
「どうだ! 俺の正義、思い知ったか!!」
「ちくしょう……こんなことがぁ……こんなことがぁぁぁ!!!!!」
「後悔したってもう遅いぞ! 俺の勝ちだ!!!」
「……くっそぉ………!!」
そして、その時――
「……とか、言ってみたりしてぇ♪」
空気が凍りついた。
その声は、敗者のものじゃなかった。
一瞬前まで膝をついていたはずの相手が、顔を上げる。
ニタリと口元が歪む――まるで、最初からすべてが計算だったかのように。
「……な、なに……?」
キラの鼓動が跳ねた。
目の前の“勝利”が、音を立てて崩れていくのを感じた。
「お前さんのそういう反応、最期に見たかってん!勝ちを確信して、調子に乗るその姿をなぁ!!……えぇもん見れた、満足や……。」
「何を言っている?お前はもう、クリーチャーで攻撃することはできないはず!」
「そう思うか?……ほんじゃあ、キング・ボルバルザーク!やれ。」
その瞬間だった。
伝説の竜が、天を裂くような咆哮を放った。
大気が震え、空間が歪む。まるで世界そのものが、その声に怯えていた。
巨大な剣が、ゆっくりと振り上げられる。
誰もが、それが正義の味方――あの「敵」へ向けられるものと信じて疑わなかった。
だが違った。
竜の剣先が向かったのは、己が呼び出したはずの、栄光に輝く伝説の龍たち。
その身を焼き尽くすような一閃が、かつての味方たちを次々に切り裂く。
キラの目が見開かれる。理解が追いつかない。なぜ……?
そして、最後の一撃は、迷いなく。
その巨大な剣は――ゆっくりと、自らの腹へと突き立てられた。
赤黒い輝きが弾け、沈黙が辺りを支配する。
キラは立ち尽くすしかなかった。
この竜は、いったい何を背負い、何を終わらせようとしたのか――。
それが、いま明らかになった。
風が吹いた。悪に向かって、吹いている。自分の体が動かない、自分のターンが、回ってこない。
希望は、絶望に早変わりした。
「……キング・ボルバルザークは攻撃の終わりに、自分の他のドラゴンがあれば……自分のクリーチャーをすべて山札下送りにすることで、もう一度!ワイのターンや。」
「そ、そんな……。」
「残念!!お前の正義っちゅうもんは、結局その程度なんだよぉ!!!!」
バチン、と音がして、キラの指から滑り落ちたカードが宙を舞う。
一枚、また一枚。
まるでそれは、彼の信じたものが剥がれ落ちる音のようだった。
キラは何も言えなかった。ただ、目の前に立つ“現実”を見つめることしかできなかった。
「お、俺の……負け……?」
「そういうわけやな。んじゃ、ワイのターン。」
ファイブカラー? EXターン
「ドロー。そして……キリモミ・ヤマアラシからの、龍覇イメン=ブーゴを召喚。……ダイレクトアタックや。」
全く面白いものが見れた。満足や。……これで1つ目の目標達成。
さぁてこいつを殺したあとは誰を殺そかなぁ。……うーん、パッとしたのが思いつかへんけど、まぁ……
「キラーーー!!!」
……あ?なんや?誰か来た?おかしい、ここにはあのガキとワイしかおらんはずなのに……。あのガキの名前を知っとるってことは、お友だちってところか。全く面倒な客人が来たもんだ……
「……しっかしあいつ……誰や?」
「この声は……ジョー…?」
キラ……傷だらけだ……早く助けないと!!
「ジョニー、デッキ―、行くよ!!」
ジョーの叫びと共に、空気が張りつめる。三人の気配が重なるように戦場へと踏み込む。殺気の渦巻くその場に、一歩も臆することなく。
ギョウは唇の端を吊り上げた。
「……三匹まとめて、客人やて。おもろいやんけ」
背後に倒れ伏すキラを一瞥し、ギョウは黒い影のようなイメン=ブーゴを滑らせながら、彼らの動きを値踏みするように観察していた。
だが、動いたのはジョニーの方が早かった。
「……てめぇがギョウか。こいつに何をした?」
「お?怒っとるんか?……クリーチャーの分際で小生意気な…。」
「……答えろって言ってんだよ!!!」
ジョニーの熱き拳が閃光のようにギョウへ伸びる。轟音と共に、地面を抉るような一撃が振るわれる――が、ギョウはそれを易々と見切り、わずかに身を引いてかわす。
「アッハッハ!ええパンチや!ええわ!……お前が最初の玩具やなァ!」
即座に反撃に転じるギョウのイメン=ブーゴ。その刃が襲いかかるも、ジョニーは踵を返してスウェー、反転した肘で返し、腕ごと叩き返す。
一方、ジョーとデッキ―はキラのもとへ駆け寄っていた。
「デッキー、状態は!?」
「……気絶しています、しかし、死んではいません!かすかに息があります!!!」
「よかった!……デッキ―、キラを連れて帰ろう!」
「し、しかしジョニーは……?」
「俺のことはいい!!早く地球に帰れ!」
その言葉には、迷いのない決意があった。 静かに頷いたデッキーは、慎重にキラを抱き上げると、薄く光るゲートを開く。ジョーは名残惜しげに振り返るが、すぐにその視線をギョウと向き合うジョニーに向ける。
「……絶対に、帰ってきてね、ジョニー!」
「任せとけ」
ジョニーの背中が、頼もしげに立っていた。
ゲートが消え、静寂が戻る。
ギョウが笑った。
「ふん、残ったか。まあ、その方がええ。お前、見込みあるわ。もっと壊したくなってきた」
「……こっちのセリフだ。てめぇをここで止める。地球に行かせるわけにはいかねぇ!」
「なら……お前がワイを止める、最初の犠牲ってわけやな!」
イメン=ブーゴが、喉の奥から獣のような咆哮を響かせた。
黒き龍覇――その巨体が地を割る勢いで降り立ち、周囲の空気が揺れる。重く、圧倒的な殺気が地面を這うように広がった。
だがジョニーは怯まなかった。
右腰のホルスターから、銀のリボルバーを引き抜く。その銃身は、まるでこれから起こる運命を悟っているかのように、静かに光を返した。
「来いよ……地獄のど真ん中で、テメェの幕引きをしてやる。」
その瞬間、激突。
イメン=ブーゴの影から解き放たれた黒閃が、鋭利な刃となって空間を裂き、ジョニーに迫る。彼は咄嗟に身を沈め、リボルバーを構えた。
――バン!
雷鳴のような銃声が響く。弾丸は闇を裂き、ブーゴの前脚をかすめた。だが直後、影の斬撃がジョニーの腕を掠める。袖が裂け、血が舞う。
「ぐ……っ!」
痛みに顔を歪めながらも、ジョニーは一歩、いや二歩――否、それ以上に踏み込んだ。足元に魔力の残滓が散る。
そして叫ぶ。
「てめぇのそのふざけた仮面……ブチ抜いてやるッ!!!」
右手に力を込め、再び引き金を絞る。
――バン!
直撃。弾丸がギョウの肩をかすめる。狂気の笑みを見せながら歩く。
「この一発で、すべてを決めるッ!!!」
ジョニーはリボルバーを逆手に構え、渾身の一撃をそのまま――銃身ごと、ギョウの仮面めがけて叩きつけた。
――グシャリ。
仮面が粉砕される、確かな音が響いた。
飛び散る破片。地に転がる欠片。その奥から現れた素顔。
「…………っ!」
ジョニーの動きが止まる。
銃口は、震えていた。
時が止まったかのような静寂。仮面の下の顔を見たその瞬間――
彼の心に、何かが突き刺さった。
「お……お前は!!」
夜の帳が下りる中、ジョーはキラの体を慎重に抱えながら、その家の扉を静かに開けた。
「……よし。ここなら、もう大丈夫だ」
キラの家には、彼の家族の姿があった。驚きと安堵の入り混じった表情でジョーを迎え入れると、すぐに医療用の設備が整えられ、キラは安静に寝かされた。
その場を一通り任せると、ジョーは短く礼を言い、また夜の街へと消えていった。
──シンラの家。
玄関の戸を開けると、やや重たい空気が漂っていた。リビングの灯りがぼんやりと揺れている。
「……ただいま」
返事はない。しかし、聞こえてくる小さな咳払いが、居間から漏れていた。
そこにいたのは、ももだった。ソファにうずくまるようにして横になっており、顔は赤く、うっすらと汗を浮かべていた。
「……ももちゃん?」
駆け寄って額に手を当てると、熱い。明らかに体調を崩している。
「ももちゃん、ももちゃん!!………シンラちゃん、ももちゃんは一体……?」
ジョーが視線を巡らせた先、奥の部屋からシンラが姿を現した。心配そうな顔で近づいてくる。
「彼女、さっきから調子が悪くて……急に、寒気がすると言い出して……」
「そ、そうなんだ……すぐに、ももちゃんの家に連絡を入れて、迎えに来てもらおう!まだ、自分で歩ける状態じゃなさそうだし。」
「いいえ、もう入れたわ。今この場所に来てるはず。」
数分後、迎えが来るまでのあいだ、ジョーはももをシンラの部屋へと運び、布団を敷いて寝かせた。寝汗で湿った彼女の額にタオルを置き、水の入ったコップを枕元に置く。冷えた静寂だけが、部屋に横たわっていた。
リビングに戻ったジョーは、ソファに腰を下ろすと、深く長い息を吐いた。
「……色々あったよ、今日」
肩を落としたその声に、シンラは小さく首を傾げた。
「ラーメンを食いに行ってたんじゃなかったの?」
ジョーは鼻で笑うように息を漏らした。
「うーん、まあ、最初はね。でも、そのあとがさ……。えーっと、まず、キラが――襲われてたんだよ」
キラの名が出た瞬間、シンラの表情がわずかに強張った。
(キラが……?)
彼はファイブカラーと出会い、そして、真のデュエマを始めたことも知っている。つまり、今日の戦いはキラにとっての敗北であり――そして、ジョーが彼を助けたということを意味していた。
それ以上、ジョーは多くを語らなかった。というよりかは、そもそも語れなかったと言ったほうが正しいだろうか。
言葉数は少ない。だが、一つ一つの言葉が、確かな重さを持っていた。曖昧な語尾の奥から滲み出る緊張感と、まだうまく整理できていない感情の残滓。
そして――その話の途中に出てきた一言が、シンラの胸を鋭く貫いた。
「キラの相手……すっげぇ怖かったんだ。仮面をかぶってて、顔は見えなかったんだけど……一目見た瞬間、背筋が凍った。……なのに、なぜか、どこかで会ったことがあるような気がしたんだよ。遠い昔に……どっかで、確かに」
その言葉を聞いた瞬間、何かが脳の奥底で弾けた。
速く、強く、記憶が暴れだした。
電流のような感覚が脳髄を駆け巡り、景色が、歪んでいく。
思い出した。
金属の焦げた匂い。瓦礫の中で、自分を庇うように立ちはだかった、あの背中。振り向くことはなかったけれど、確かに聞こえた、低く優しい声。
「―――シンラ―――」
それは、たった一言で全てを包み込む、無償の愛だった。
あれは夢ではない。幻でもない。十何年、胸の奥深くに封じ込めていた記憶だ。蓋をして、忘れたふりをして、目を逸らしていた――
でも、ずっと見てきたのだ。
心のどこかで、毎日のように、あの背中を探していた。
喉がかすれ、言葉にならない震えが彼女を襲う。
そして、声にならない衝動が、唇から零れ落ちた。
「………………父さん……」
呟きは、ガラスが割れるように、静かに響いた。
ジョーは一瞬、目を見開いたが、それ以上は何も言わなかった。彼には、わからなかった。ただ、その言葉が持つ重みだけが、部屋を満たしていた。
記憶が、確信に変わる。
ジョーの話の中にあったその“仮面の男”。仮面の奥にいたその存在――それこそが、自分の父だということを、シンラは直感で知ってしまった。
(……父さん……な、何があったの……?)
混乱。怒り。悲しみ。愛しさ。
感情が奔流となって、シンラの内側を破壊していく。
それでも、彼女はただ座っていた。すべてを静かに受け止めるように。何もかもを、理解しようとするように。
「父さんを……私が助けなくちゃ……」
その事実は、痛みよりも先に、温かさを連れてきた。
ついに、彼女は、目的を目の前にいれることができたのだった。
灰すらも沈黙する、焼け落ちた戦場の果て。
崩れた建物の残骸に、燻る熱と破壊の記憶だけが残る。だが、その中を一人、無言で歩く者がいた。
ギョウ――その背に纏う闘気は、もはやかつてのものではない。
狂気と邪悪が交わり、粘ついた闇を纏わせる。
彼の足は、地上から遠く離れた領域へと向かっていた。
それは、文明の死骸――《闇文明》。
神々すら視界から閉ざす、理を外れた場所。
天も地もない、ただ「終わり」の匂いだけが漂う深層。
だが、ギョウの足取りは迷いがなかった。
むしろ、待ち望んでいたかのように、微かに口角を吊り上げていた。
この底の底、常識の最果てこそ、今の自分に相応しいとでも言うように。
やがて、空間がねじれるようにして姿を現す――
漆黒の霧が渦巻き、あらゆる感覚を摩耗させる広間。
その中心に、“男”はいた。
黒衣をまとった痩躯。
髪は煤のように乱れ、目元には凍てついた笑みと、病んだ涙が同居する。
その視線は、見ていながら見ていない。
理性の皮をかぶった狂気そのものであり、世界にとっての「異端の中の異端」。
彼は椅子に腰をかけ、指先で虚空をつまむようにしていた。
ギョウが現れても、顔を向けることなく呟く。
「やぁっと来たか。てめぇの“破壊”は長いんだよ。もうちょっとさッとやれ、さッと。」
言葉は囁きに近い。だが、脳髄を直接叩くような圧がそこにはあった。
ギョウは返さない。
代わりに一歩踏み出し、沈んだ声で呟いた。
「今回からは、お前にも協力してもらうぞ。お前も、そっちのほうがいいだろう?」
「当たり前だろうが。凶器を作るのはもう飽きた。壊すのもな。……壊すならもうちょい生気のあるものがいい。」
男は顔を上げ、そう言った。
片目だけが大きく見開かれ、異様な輝きを放つ。
ぱちん。
指が鳴る。瞬間、周囲の霧が一変し、無数の情報が空間に浮かび上がる。
記録。映像。記憶。全てが歪みながら構成されるのは、ひとりの男の存在だった。
その男は、火文明の意志を背負い、拳で道を切り拓く者。
仲間の前では兄のように頼もしく、敵の前では獣のように獰猛。
…最強のデュエリストの一人であった。
「……このガキからにしよう。こいつが倒れれば、あの女の“盾”はひとつ減る。」
男は無言で頷いた。その頷きに、一切の含みはない。今の彼にあるのはただ一つ。破壊だ。感情も、記憶も、道理も捨て去ってまでなお、突き進む意志がある。
男は言う。
「まずは地上に“混乱”を撒こう。バラバラにして、焦らせて、疑心に落とす。……そうすれば、心の支えなんて、いともたやすく砕ける。……それに、水文明の奴らの情報によれば、あの裏切り者のムカデ野郎も動いているらしいしな。」
ギョウの影が広がる。黒い笑みを見せ、静かにその場を後にする。
「んじゃ、展開はあのカスの裏切りムカデに任せて……仕上げはお前がやればええ。ワイはあの…邪魔をしてきたクソッタレのガキをぶっ潰す。」
「んじゃ、そうさせてもらうよ。全くありがてぇ!!お前の邪魔なく誰かをぶっ壊すことができるなんてよぉッ!!!「旧友」!!」
――ターゲットの名は、ボルツ。
二人の邪悪な声が、廃棄処分となった凶器の山の上で響き渡った。その中で男は1枚のカードを手に取る。
「さてと………こいつを使う時が来たぜ。さぁてと、全く、幸せを掴み取れたと思ったかよ…。憎き英雄め!!!コキ使ってやるからなぁ〜………!!!!!」