寄成ギョウに転生したから、キャラの良さガン無視して善人になるニョロ〜! 作:ライダー☆
「遊ばせてくれ、だと?」
俺ちゃんの声は、喉を擦って出たような乾いた音だった。
意識してないのに、声が漏れていた。思考が追いついていない。口が勝手に現実を確かめようとしてる。
「あぁ。」
その返事は、重力だった。
斧の刃がギリリ……と静かに軋むと、この場所が音を失う。
風が止んだ、のではない。風そのものが“消えた”。
空気が引き攣る。耳鳴りすらしない。
時間の流れさえ、こいつを中心に“沈んで”いく。
「ゲジの目は腐ってたけどな。お前のは、少しマシだ。少しだけ。」
言っている意味はわかる。
でも、その言葉は皮膚の表面にすら届かない。まるで空虚に響く声劇のように、現実感がない。
俺ちゃんの脳が、情報を拒絶していやがる。
この男の“存在”そのものが、現実の構造に合致していやしない。
「……なあ、知ってるか?」
声色が変わった。
柔らかく、優しく、まるで子守唄のように。
「本当に美しいのはなぁ、“絶望の音”なんだよ。生き物が、どう足掻いても逃げられないと気づいた瞬間――骨が軋む音がするんだよ。カチリ、カチリってな。」
その一言で、背筋に凍った水が流れ込む。
こいつはそれを“聞いたことがある”んじゃない。
何度も、何度も、それを“味わってきた”顔だ。
斧が、音もなく肩から下ろされる。
ただそれだけ。たったそれだけの動作で――
世界が壊れた。
斧の刃が地面に届く前に、周囲の“構造”が崩壊した。
酸素が逃げる?違う。空間そのものが怯えて身をすくめていた。
静寂――という言葉では足りない。
これは、沈黙にすらならない無。
――ドゴッ。
音すら反響しない、その衝撃の中心で。
さっき、数十秒前まで、ゲジスキーの立っていたその地面が、跡形もなく“消えた”。
爆発でも、斬撃でもない。
ただ、そこに存在していた“空間”が、まるごと抉り取られたように消滅していた。
見間違いじゃない。
その場所だけが、ぽっかりと、文字通り抜け落ちてる。
(攻撃……?斧を、振ったのか?)
違う。いや、違う違う違う。
そんな理屈で片付けていいもんじゃない。
斧は振られてない。あいつは一歩も動いてない。
ただ――
見た。
それだけで、“何か”が起こった。
もしあれを、あのムカデ野郎が喰らっていたら、多分アイツは、叫び声すら上げられず、ただ存在ごと“否定”されていただろう。
逃げたまま、振り返らずに、恐怖のまま、消されてただろう。
……息ができない。
空気が冷たいんじゃない。この場にいるという事実が、既に“詰み”なんだ。
その瞬間、俺ちゃんははっきり悟った。
逃げられない。
速さの問題じゃない。強さの問題でもない。
この男の前では、「在ること」そのものが間違いだ。
重力も、時間も、俺の意志すら、全部――通用しない。
こいつの視線に捕らえられたら、もう……終わりだ。
でも。
それでも。
脚が震えても。歯が鳴っても。胃液が逆流しそうになっても。
俺ちゃんの指だけが、ゆっくりとデッキに向かっていた。
「へッ……いいぜ、やってやるよ。」
「ボッさん!?」
「ダチッコ、お前は口を挟むなよ……こいつはさっきのムカデ野郎なんか、足元にも及ばねぇぐらいバッドなやつだ!!俺ちゃんが、片付ける…!!!」
「………いいねぇ。そうでなくっちゃ!!!」
奴が、嬉々として口角を吊り上げる。
歓喜の熱で瞳孔が開いてる。まるで、今にも誰かの命を啜り上げそうな顔で。
だが――こっちだって、負けてねぇ。
俺の体はボロボロだ。足元もフラついて、立ってるのがやっと。
でもよ――それがどうした。
だったら、火を点ければいいだけの話だろ?
この状況、この極限、逃げ場もなく、存在すら否定された舞台で――
逆に、燃えるんだよ。
こんな地獄でデュエルをやるなんて、バカで、無謀で、どうかしてるって?
……上等だよ。
それが俺だ。それがボルツだ。それが、俺ちゃんの生きざまだ!
「へへっ……ダチッコ聞こえるか?この鼓動。これが“デュエ魂”だ。全身が叫んでやがる……デュエマしろってな!!!」
「おう…聞こえるッスよボッさん!!俺も、めちゃくちゃに燃えてるッス!!!」
「行くぜ……おいてめぇっ!!覚悟は良いなぁ!!!」
「当たり前だろうが。」
『真のデュエル、スタート!!!』
【こうして始まった、ボルツと謎の男の真のデュエル!ボルツは序盤、チュチュリスを2体バトルゾーンへ出し、後続を大量展開するための準備をする。対する謎の男は、すべての文明を使ったデッキにより、大量にマナ加速をしていく!!】
ボルツ 手札2 シールド5 マナ4 バトルゾーン チュチュリス2体
謎の男 手札3 シールド5 マナ8 バトルゾーン なし
ボルツ ターン5
ドロー……だが、このターンで決めきることはできねぇ。となれば、アイツが悠長にマナ加速してる間に、シールドをできる限りブレイクするしかねぇ!!
「B・A・D・2!更にチュチュリス2体の効果でこいつのコストは4下がる!“滅砲”戦車ヘビーベビィをバトルゾーンに!」
「……へぇ、このターンでシールドを全部割る気か。なんっつぅ火文明らしい、後先考えない行動……。」
「チュチュリス2体でシールドを攻撃!」
……っ、あの野郎、傷がついちゃいねぇ…!?シールドの破片を、全部避けたってのか?!
「ったく荒っぽいことしやがる……もうちょいしっかりとした攻撃してこいよなぁ。……そうでねぇと、お前、自分のせいで困っちまうぜ?」
「っ!?シールド・トリガーか!!」
「そういうこったなぁ。シールド・トリガー、地獄門デス・ゲート。そのでっかいだけの置物を破壊。さらに墓地からゾルゲをバトルゾーンに!!」
なんだあのクリーチャー……見たこともねぇぞ!?
「そしてバトルゾーンに出たとき、こいつはクリーチャーを選んで、そいつとバトルすることができる。チュチュリスとバトル!抵抗はすんなよ………害虫駆除だッ!」
「クソッ……ターンエンドだ。(ヘビーベビィでシールドをブレイクしたほうが良かった……俺ちゃんのクリーチャーを巻き込んで攻撃しちまうから、あとに取っておいたんだが…!!)」
謎の男 ターン5
「俺のターン。そしてお前に見せてやる。本当の絶望ってヤツをォッ!!」
ッ!?この覇気……マジに、BADな何かが来る…!!!
「マナチャージ!これで9マナ揃った!!まずはディメンジョン・ゲート!これで確実にクリーチャーを手札に加える…行くぜぇ。」
飢えているか……?痛みに、渇きに、絶望に……魂を喰われて呻いているか?」
ならば聞けッ!! この世界の底で蠢くすべてのモノたちよ――
凶器を抱け。狂気に舞え。狂喜に焼かれろ……!!!
そして俺に見せてみろ!!全てに絶望せしその顔をォッ!!!!!
「……いま手札に加えた、こいつを……6マナで召喚!!!」
その瞬間だった。
何かが、ぶちりと音を立てて切れた気がした。
空気が一変する。凍りつく、じゃ足りねぇ。皮膚の内側まで“縛りつけられる”ような感覚。
現れたのは、異様なクリーチャーだった。だが……威圧感は、なかった。
強そうに見えるわけでもない。怖そうでもない。ただ――“違う”んだ。
俺ちゃんの背筋が、ギシギシと音を立てて冷えていく。
その存在から溢れていたのは、力じゃない。
「支配」だった。
そのクリーチャーは、自分の意志で立っていない。
目は虚ろで、魂が剥がれ落ちたように、空っぽだ。
鎖に繋がれ、引きずられ、無理やりこの場に立たされている。
“あの男”の意思だけが、クリーチャーを動かしている。
完全な、操り人形。
(……あれは……囚われてやがる……!)
思考が追いついた時、俺ちゃんはもう言葉を忘れてた。
そのクリーチャーを見ているだけで、背中が、心臓が、何かに飲まれていくような気がして――
「ボボボ、ボッさん……ありゃあなんなんすかぁ!?」
「わ、わからねぇ…だが、あれは…!!!」
「俺の切り札、いや、操り人形……!」
―悪龍覇ロイヤル・アイラ―
「そしてマナ武装5、発動!こいつがバトルゾーンに出たとき、コスト5以下のドラグハート・フォートレスをバトルゾーンに出せる!!」
「ドラグハート・フォートレス……!?」
「ダチッコ、なんか知ってんのか!?」
「知ってますよボッさん。……その名の通り、ドラゴンの城!見たものはその力に震え、立ち向かうことすらできないと言われていたッス……け、けど!」
「ドラゴンはいねぇはず、絶滅したはずだろう!?」
「そりゃあ、お前らの中での話、だろう?………違うんだなぁ、それが……おーいアイラ!!お前の大切な人を呼んでやれ!!」
……さぁさぁ、お出ましだぞ……クソッタレ野郎の愛す、クソッタレの城がなぁ!!!
「ドラグハート・フォートレス!暗黒龍城モルト=ノーハート!!!」
マジで言ってんのかよ……!?ありゃあ、本当にドラゴンじゃねぇか!
だけど、あのアイラってクリーチャーと同じだ……あれも操り人形!
中心にいやがる人が、城に組み込まれてるって考えたほうが良いなぁありゃ……とんでもねぇことしやがってんなぁあの野郎!
「さらに!ここでゾルゲの能力を発動し、残ってる害虫も破壊!そんでダブルブレイク!!……ターンエンド。こん時にアイラの能力を発動。自分の手札を2枚捨てることで、相手のシールドを1枚ブレイク!!」
「なっ……マジかよ…!?」
「ボッさん……あのでっかい城をどうにかしないとまずいっすよ!!」
「あぁ。だがどうしようもねぇ……となれば……!このターンで決めきって、アイツをぶっ倒すしかねぇ!!!!行くぜぇ!!!」
ボルツ ターン6
マジで……バァァァッドだぜ!!!!!
行くぜ、ミュージック……クゥァライマァックスだぜぇ!!!
ドッ、ドッ、ドッ!!ドッ、ドッ、ドッ、ドドド、ドローーーッ!!!!
来たぜ、俺ちゃんの切り札!!!
「行くぜ……ダチッコを召喚!」
「よっしゃー行くッス!!」
「そして、ダチッコと自身のB・A・D・3の効果で合計6マナ軽減!“血煙”マキシマムを2マナで召喚だ!」
「へぇ〜…。」
「マスターB・A・Dォ!来やがれ、“罰怒”ブランド!!!!」
「出てきやがったなぁ!!!それが、お前のマスターか。」
「そういうこったこの野郎!そして効果により、全員スピードアタッカー!一気にトドメまで行けるんだよ!!」
面白ェ。一気に3体攻撃してくるってわけか……
シールドを割って、正解だったな。じゃなかったらあの盤面は、作られなかっただろうしよぉ……!!
「行けぇ“罰怒”ブランド!!シールドをダブルブレイクだ!!」
「よっしゃぁ〜!!これでアイツのシールドは0ッス!!それに、マキシマムは破壊されるときクリーチャーを身代わりにできるから、生半可な攻撃じゃあ止められねぇッス!!」
「トドメだぜ……行けぇダチッコ!!」
ネズミごときが……
ドラゴンでもなんでもねぇ、後から生まれた下っ端共が……
「調子こいてんじゃあねぇぞ、コラァァァァァアアアアアア!!!!!!!!」
地割れのような怒声。
次の瞬間、空が裂けた。
まるで世界が震えたような、衝撃。
その中心から、黒いイカヅチがフィールドを引き裂きながらねじ込まれるように降りてきた。
「なんだ、あの雷は…!?」
「シールド・トリガー、侵攻するイカヅチ!効果で、相手のクリーチャーを1体選び、それよりもコストの小さいクリーチャーを1体選び、マナゾーンからバトルゾーンに出せる!!マキシマムを選んだ後、来い!俺の第二の切り札……俺自身!!!!!」
その名を呼ぶと同時に――空間が裏返った。
空間を斬り裂いて飛び出してきたその存在は、呼び声に応えるかのように咆哮する。
アイツが放った斧が、寸分の狂いもなく――その復活者の手に収まった。
「俺自身が現れる――!!」
そして名を告げた。
「
名を聞いた瞬間、周囲の空気が震えた。
ただのクリーチャーじゃない。見ればわかる、圧が違う!
それに……あ、アイツは………!!!!ドラゴンじゃねぇかッ!!!
「すべての文明を持った……カードッスかぁ!?」
「見たことねぇぞ、そんなヤツ…!」
「さぁって……お仕置きタイムの始まりだ……。」
ニガ=ヴェルムート キーカード:破滅邪王ニガ=ヴェルムート
ボルツ キーカード:“罰怒”ブランド
「こっからは…俺のターンだぞ…!!!」
「うっ……!!」
「ヴェルムートの能力発動!山札上から2枚をマナゾーンへ!!」
……それだけか?いや、そんな気もしねぇ……何か来やがる!!
「そしてこれにより、ゾルゲの能力発動〜!!お前の“罰怒”ブランドとヴェルムートを選んでバトルだ!」
「何してるッスかぁ?マキシマムのほうがパワーは上っすよ?」
「いや違うぞダチッコ!!!アイツのような奴が……くだらねぇ自爆特攻をするはずがねぇだろう!」
おおっとぉ勘が鋭い。…って言っても、こんぐらい気づいてもらわねぇと困るんだがな。
「ヴェルムートはバトル中、パワーを2倍する。よってこいつのパワーは14000!お前のマスターってのを……ぶっ壊してやる!!」
ーーー
「……お前みてぇなバケモン、地上にはいらねぇんだよ。」
その声は冷徹。だが、熱を孕んでいた。
一方、ニガ=ヴェルムート。
闇より這い出る、破滅の斧王。
その身は、五色すべての魔力をねじ伏せて形成された異形の巨人。
背丈はブランドの倍以上。
全身を包む黒鉄の装甲からは、赤黒いオーラが常に噴き出し、空気が腐蝕していく。
斧を地に叩きつければ、ただそれだけで地面が割れる。
「――燃やしてみせろよ、“機械人形”。だが、燃えカス一つ残せると思うなよ。」
開戦の号砲は、ブランドのジェットダッシュ。
背中のブースターが火を噴き、刃と化したスケボーが火花を散らす。
重力を無視したような軌道――天を駆け、ヴェルムートの頭上を斬る!
「はああああああッ!!」
だが、巨斧が弾いた。
その一撃は、防御ではない。迎撃だ。
ヴェルムートの斧は重力そのものを歪め、衝撃波を広範囲に撒き散らす。
ブランドの刃が、空中でブレる。
「……てめぇ……やるじゃねぇか。」
ブランドは空中で体勢を立て直し、すぐさまスケボーを剣として使うこととした。
刀身が展開し、瞬時に巨大な大剣へと姿を変える。
「これが俺の真骨頂だ……ッ!!!」
斬撃、斬撃、斬撃――!!
高速で空を裂き、連撃がヴェルムートの肩口、胸板、脇腹を次々に切り裂く。
だが――そのどれもが、致命には至らない。
「効かねぇよ……そんなちまちました刃はよォ!!」
ヴェルムートが斧を振るう。
地面が砕け、空気が鳴き、“一撃で三日月を描く”。
ブランドの胴に、直撃。
「――ッぐあああああああああああああああああッ!!!」
スチームの吹き出す音が変わる。
悲鳴に似た、機械の断末魔。
それでも、ブランドは立ち上がった。
片膝をつきながら、右腕の剣を持ち直す。
「……まだだ……俺は、終わっちゃいねぇ……」
その言葉に、一瞬、沈黙が落ちた。
だが次の瞬間――
“それ”は、空から降ってきた。
ヴェルムートの斧。投擲。
重力を置き去りにする一閃。
斧の形をした、落雷。
「俺は“破滅”だ。“終わり”を告げに来た存在だ――この戦いに、“未来”はねぇ!!!」
ドン――!!
全身を貫くような衝撃。
ブランドの胸部が抉れ、内蔵のコアが爆ぜた。
爆煙の中、立ち尽くす巨影。
ヴェルムートが斧を回収しながら、ただ一言――
「お前の歯車は、止まったんだよ。」
ーーー
「“罰怒”ブランドォッ!!」
地響きと共に崩れ落ちる鋼の戦士。
コアを砕かれ、スチームが哀れな悲鳴を上げて散っていく。
その光景に、誰かが叫んだ。怒り、悲しみ、そして……恐怖の混ざった声だった。
「結局、お前のマスターなんぞ――そんなもんだ!!」
嗤いが響く。
勝者――破滅邪王ニガ=ヴェルムートの咆哮が空を裂いた。
「だが、終わっちゃいねぇ……終わっちゃいねぇんだよォッ!!!」
ヴェルムートの鎧が軋みを上げる。
彼の足元に、マナの奔流が逆巻いた。
「このカードの真価は……ニガ=ヴェルムートの第二の“能力”にあるッ!!」
黒いオーラがマナゾーンから迸り、空を裂く。
「各ターン、自分のクリーチャーが初めてバトルに勝ったとき!自分のマナゾーンから、その枚数以下のコストのクリーチャーを―――バトルゾーンに出すッッ!!!!」
ヴェルムートの咆哮に合わせて、地面が爆ぜた。
裂け目から現れたのは――二体目のヴェルムート。
「来い、第二の破滅……俺自身ッッ!!!!!」
その瞬間、場に響くのは“敗北の予兆”そのもの。
誰もが言葉を失い、ただその暴威を見つめるしかなかった。
「そしてさらにァ! この展開によってッ!!――“ゾルゲ”の能力が誘発する!!」
「ゾルゲ……まさか……!」
あの狡猾なる悪魔。
戦局を攪乱し、相手の防衛線をズタズタに引き裂く、策謀の支配者。
「能力発動ッッ!!」
フィールドの片隅にいたダチッコが、影から抜き出た触腕に絡め取られ、空中へと放り上げられる。
「そこのドブネズミ……」
ヴェルムートが、狂気じみた笑顔で唸る。
「――ぶっ飛ばさせてもらうぜェ!!!!!」
まさに暴虐の舞台。
地が裂け、空が泣く。
だが、まだ――希望は、残っていた。
「ダチッコまで……だ、だが!まだマキシマムが残ってる!!!こいつでなんとか……」
「……まさか、まだ“なんとかなる”と思ってんじゃねぇだろうな?」
その声が、頭蓋を貫いた。
「な……に……?」
言いようのない嫌悪感。
視線を向けた先には、微動だにしなかった“それ”が、黒き瘴気を放ちはじめていた。
「忘れちまったか?お前が最も恐れていた存在……」
暗黒の中心。静かに沈黙していた“城”。
「――《ドラグハート・フォートレス》を、よォ……!!!」
それはただの装備カードではなかった。
“意志”を持った、戦場の執行者。
「そ、そんな……今まで動かなかったはずだ……!!」
今までも危機は幾度となくあった。
絶体絶命も、一撃の希望で覆してきた。
だけど――今度だけは、そうじゃない。
ドラグハート・フォートレスが、深黒の瞳を開いた。
「各ターン、自分のクリーチャーがバトルに勝ったとき、それが2度目の勝利なら……条件成立だ。」
そして――次の瞬間。
“黒い雷”が、全域を貫いた。
バトルゾーンが焼かれ、クリーチャーは歓喜の叫びを上げて膝をつく。
フォートレスが展開したのは、ただの能力ではない。
――戦場そのものを“崩壊”させる、禁忌の領域だった。
「ボルツ……」
その声は、酷く静かで、異常なほど冷たかった。
「てめぇ、喚いて、苦しんで、絶望しながら――死ぬ準備はできてんのかよォ?」
皮膚が粟立つ。背骨が凍る。
脳裏に浮かぶのは、ただ一つの言葉――戦慄。
否、違う。
もう一つある。
――絶望。
全てを砕くかのように、ドラグハート・フォートレスが、軋みを上げて形を変え始めた。
ギィ……ギギ……ギチィン……
鉄の悲鳴。蒸気の唸り。
それは、まるで過去に縛られた魂が呻いているかのようだった。
「お、お前……何をする気だ……!」
ボルツの叫びは空虚に響いた。
もう、止められはしない。
「――龍・解!!!!!!」
ヴェルムートの声が、天地を貫いた。
そして次の瞬間、フォートレスは人型の姿へと変貌した。
巨腕に重装甲。背には砕けた竜の意匠を宿し、その全身が憎悪の塊と化している。
「おうらぁあああああああああああッッッ!!!!!!!」
それは、もはや“存在してはいけない存在”だった。
ーーー
かつて――
《クリーチャーワールド》には、ひとりの英雄がいた。
その名は――グレンモルト。
竜と共に戦い、世界を救った、誰もが認める勇者。
仲間の信頼を背に、幾多の災厄を打ち破ってきた、誇り高き戦士。
だが、今この場にいるのは……その彼ではない。
彼の意志は殺され、魂は封じられた。結ばれた存在と、二人の子供とともに。
ヴェルムート――かつて英雄によって滅ぼされたはずの邪王の残滓によって、
英雄の心は、打ち砕かれ、ねじ曲げられた。
「英雄サマよぉ。………こっからは俺の好き勝手に使わせてもらうからな。」
ヴェルムートが、グレンモルトの肩に手を置く。
重苦しいその装甲が、微かに震えていた。
「さぁ……思う存分、こき使わせてもらうぞ?抵抗できぬ自分の弱さを思い知りながら暴れるんだな!英雄さんよォ……!!」
その名は――
《
その存在は、“神話の破壊”。
善悪の区別すら溶け落ちた狂気の象徴。
かつて世界を救った英雄は、今、世界を滅ぼす側に立っている。
その黒き瞳に、もはや“救い”は無い。
その瞳は、英雄の一人になるのかもしれないデュエルマスター、ボルツに向けられていた。
オリジナルカード紹介
悪龍覇ロイヤル・アイラ コスト6 パワー5000 文明:火/闇
種族:ヒューノマイド爆/ドラグナー/デーモン・コマンド
レアリティ R
・このカードは、マナゾーンに置くときタップして置く。
・マナ武装5:このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、マナゾーンに火のカードが5枚以上あれば、コスト5以下のドラグハートを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出しても良い。(それがウエポンであれば、このクリーチャーに装備して出す。)
・ターン終了時、自分の手札を2枚捨てても良い。そうしたら、相手のシールドを1枚選び、ブレイクする。
フレーバーテキスト 幸せな日々は、そう長く続かなかった。
暗黒龍城モルト=ノーハート コスト5 文明:火
レアリティ ビクトリーレア
ドラグハート・フォートレス
・自分のクリーチャーは、相手のターン中にパワーが減らない。
・龍解:各ターン、自分のクリーチャーがバトルに勝ったとき、それがこのターン中2度目の勝利なら、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。
フレーバーテキスト 彼の手にあった平和は砕け、希望は焼かれた。平和を望んだ彼の拳は、笑うように破壊を選ぶ。
侵攻するイカヅチ 呪文 コスト7 文明:自然
レアリティ R
・S・トリガー
・相手のクリーチャーを一体選ぶ。そうしたら、そのクリーチャーよりもコストの小さいクリーチャーを一体選び、自分のマナゾーンからバトルゾーンに出しても良い。
フレーバーテキスト 空が怒りを落とすとき、それは裁きではない。侵攻だ。
破滅邪王ニガ=ヴェルムート コスト7 パワー7000 文明/すべて
種族 ジュラシック・コマンド・ドラゴン
レアリティ マスターレア
・マナゾーンに置くとき、このカードはタップして置く。
・このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、山札の上から2枚を、タップしてマナゾーンに置く。
・バトル中、このクリーチャーのパワーを2倍にする。
・各ターン、自分のクリーチャーが初めてバトルに勝ったとき、自分のマナゾーンの枚数以下のコストを持つクリーチャーを一体、自分のマナゾーンからバトルゾーンに出しても良い。
・自分のマナゾーンにあるカードはすべての文明を得る。