寄成ギョウに転生したから、キャラの良さガン無視して善人になるニョロ〜!   作:ライダー☆

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新・十六話 今度は本当にヤベェやつ!破滅邪王ニガ=ヴェルムート!

「遊ばせてくれ、だと?」

 

 俺ちゃんの声は、喉を擦って出たような乾いた音だった。

 意識してないのに、声が漏れていた。思考が追いついていない。口が勝手に現実を確かめようとしてる。

 

「あぁ。」

 

 その返事は、重力だった。

 斧の刃がギリリ……と静かに軋むと、この場所が音を失う。

 風が止んだ、のではない。風そのものが“消えた”。

 

 空気が引き攣る。耳鳴りすらしない。

 時間の流れさえ、こいつを中心に“沈んで”いく。

 

「ゲジの目は腐ってたけどな。お前のは、少しマシだ。少しだけ。」

 

 言っている意味はわかる。

 でも、その言葉は皮膚の表面にすら届かない。まるで空虚に響く声劇のように、現実感がない。

 

 俺ちゃんの脳が、情報を拒絶していやがる。

 この男の“存在”そのものが、現実の構造に合致していやしない。

 

「……なあ、知ってるか?」

 

 声色が変わった。

 柔らかく、優しく、まるで子守唄のように。

 

「本当に美しいのはなぁ、“絶望の音”なんだよ。生き物が、どう足掻いても逃げられないと気づいた瞬間――骨が軋む音がするんだよ。カチリ、カチリってな。」

 

 その一言で、背筋に凍った水が流れ込む。

 こいつはそれを“聞いたことがある”んじゃない。

 何度も、何度も、それを“味わってきた”顔だ。

 

 斧が、音もなく肩から下ろされる。

 ただそれだけ。たったそれだけの動作で――

 世界が壊れた。

 斧の刃が地面に届く前に、周囲の“構造”が崩壊した。

 酸素が逃げる?違う。空間そのものが怯えて身をすくめていた。

 静寂――という言葉では足りない。

 これは、沈黙にすらならない無。

 

 ――ドゴッ。

 

 音すら反響しない、その衝撃の中心で。

 さっき、数十秒前まで、ゲジスキーの立っていたその地面が、跡形もなく“消えた”。

 爆発でも、斬撃でもない。

 ただ、そこに存在していた“空間”が、まるごと抉り取られたように消滅していた。

 

 見間違いじゃない。

 その場所だけが、ぽっかりと、文字通り抜け落ちてる。

 

(攻撃……?斧を、振ったのか?)

 

 違う。いや、違う違う違う。

 そんな理屈で片付けていいもんじゃない。

 

 斧は振られてない。あいつは一歩も動いてない。

 ただ――

 

 見た。

 

 それだけで、“何か”が起こった。

 もしあれを、あのムカデ野郎が喰らっていたら、多分アイツは、叫び声すら上げられず、ただ存在ごと“否定”されていただろう。

 逃げたまま、振り返らずに、恐怖のまま、消されてただろう。

 

 ……息ができない。

 

 空気が冷たいんじゃない。この場にいるという事実が、既に“詰み”なんだ。

 その瞬間、俺ちゃんははっきり悟った。

 逃げられない。

 速さの問題じゃない。強さの問題でもない。

 この男の前では、「在ること」そのものが間違いだ。

 

 重力も、時間も、俺の意志すら、全部――通用しない。

 こいつの視線に捕らえられたら、もう……終わりだ。

 

 でも。

 それでも。

 

 脚が震えても。歯が鳴っても。胃液が逆流しそうになっても。

 俺ちゃんの指だけが、ゆっくりとデッキに向かっていた。

 

「へッ……いいぜ、やってやるよ。」

「ボッさん!?」

「ダチッコ、お前は口を挟むなよ……こいつはさっきのムカデ野郎なんか、足元にも及ばねぇぐらいバッドなやつだ!!俺ちゃんが、片付ける…!!!」

「………いいねぇ。そうでなくっちゃ!!!」

 

 奴が、嬉々として口角を吊り上げる。

 歓喜の熱で瞳孔が開いてる。まるで、今にも誰かの命を啜り上げそうな顔で。

 

 だが――こっちだって、負けてねぇ。

 

 俺の体はボロボロだ。足元もフラついて、立ってるのがやっと。

 でもよ――それがどうした。

 

 だったら、火を点ければいいだけの話だろ?

 

 この状況、この極限、逃げ場もなく、存在すら否定された舞台で――

 逆に、燃えるんだよ。

 こんな地獄でデュエルをやるなんて、バカで、無謀で、どうかしてるって?

 ……上等だよ。

 それが俺だ。それがボルツだ。それが、俺ちゃんの生きざまだ!

 

「へへっ……ダチッコ聞こえるか?この鼓動。これが“デュエ魂”だ。全身が叫んでやがる……デュエマしろってな!!!」

「おう…聞こえるッスよボッさん!!俺も、めちゃくちゃに燃えてるッス!!!」

「行くぜ……おいてめぇっ!!覚悟は良いなぁ!!!」

「当たり前だろうが。」

 

『真のデュエル、スタート!!!』

 

 

 

【こうして始まった、ボルツと謎の男の真のデュエル!ボルツは序盤、チュチュリスを2体バトルゾーンへ出し、後続を大量展開するための準備をする。対する謎の男は、すべての文明を使ったデッキにより、大量にマナ加速をしていく!!】

 

 

ボルツ 手札2 シールド5 マナ4 バトルゾーン チュチュリス2体

 

謎の男 手札3 シールド5 マナ8 バトルゾーン なし 

 

 

ボルツ ターン5

 

 ドロー……だが、このターンで決めきることはできねぇ。となれば、アイツが悠長にマナ加速してる間に、シールドをできる限りブレイクするしかねぇ!!

 

「B・A・D・2!更にチュチュリス2体の効果でこいつのコストは4下がる!“滅砲”戦車ヘビーベビィをバトルゾーンに!」

「……へぇ、このターンでシールドを全部割る気か。なんっつぅ火文明らしい、後先考えない行動……。」

「チュチュリス2体でシールドを攻撃!」

 

 ……っ、あの野郎、傷がついちゃいねぇ…!?シールドの破片を、全部避けたってのか?!

 

「ったく荒っぽいことしやがる……もうちょいしっかりとした攻撃してこいよなぁ。……そうでねぇと、お前、自分のせいで困っちまうぜ?」

「っ!?シールド・トリガーか!!」

「そういうこったなぁ。シールド・トリガー、地獄門デス・ゲート。そのでっかいだけの置物を破壊。さらに墓地からゾルゲをバトルゾーンに!!」

 

 なんだあのクリーチャー……見たこともねぇぞ!?

 

「そしてバトルゾーンに出たとき、こいつはクリーチャーを選んで、そいつとバトルすることができる。チュチュリスとバトル!抵抗はすんなよ………害虫駆除だッ!」

「クソッ……ターンエンドだ。(ヘビーベビィでシールドをブレイクしたほうが良かった……俺ちゃんのクリーチャーを巻き込んで攻撃しちまうから、あとに取っておいたんだが…!!)」

 

 

謎の男 ターン5

 

「俺のターン。そしてお前に見せてやる。本当の絶望ってヤツをォッ!!」

 

 ッ!?この覇気……マジに、BADな何かが来る…!!!

 

「マナチャージ!これで9マナ揃った!!まずはディメンジョン・ゲート!これで確実にクリーチャーを手札に加える…行くぜぇ。」

 

 飢えているか……?痛みに、渇きに、絶望に……魂を喰われて呻いているか?」

 ならば聞けッ!! この世界の底で蠢くすべてのモノたちよ――

 凶器を抱け。狂気に舞え。狂喜に焼かれろ……!!!

 そして俺に見せてみろ!!全てに絶望せしその顔をォッ!!!!!

 

「……いま手札に加えた、こいつを……6マナで召喚!!!」

 

 その瞬間だった。

 

 何かが、ぶちりと音を立てて切れた気がした。

 空気が一変する。凍りつく、じゃ足りねぇ。皮膚の内側まで“縛りつけられる”ような感覚。

 現れたのは、異様なクリーチャーだった。だが……威圧感は、なかった。

 強そうに見えるわけでもない。怖そうでもない。ただ――“違う”んだ。

 俺ちゃんの背筋が、ギシギシと音を立てて冷えていく。

 その存在から溢れていたのは、力じゃない。

 「支配」だった。

 そのクリーチャーは、自分の意志で立っていない。

 目は虚ろで、魂が剥がれ落ちたように、空っぽだ。

 鎖に繋がれ、引きずられ、無理やりこの場に立たされている。

 

 “あの男”の意思だけが、クリーチャーを動かしている。

 完全な、操り人形。

 

(……あれは……囚われてやがる……!)

 

 思考が追いついた時、俺ちゃんはもう言葉を忘れてた。

 そのクリーチャーを見ているだけで、背中が、心臓が、何かに飲まれていくような気がして――

 

「ボボボ、ボッさん……ありゃあなんなんすかぁ!?」

「わ、わからねぇ…だが、あれは…!!!」

「俺の切り札、いや、操り人形……!」

 

 ―悪龍覇ロイヤル・アイラ―

 

「そしてマナ武装5、発動!こいつがバトルゾーンに出たとき、コスト5以下のドラグハート・フォートレスをバトルゾーンに出せる!!」

「ドラグハート・フォートレス……!?」

「ダチッコ、なんか知ってんのか!?」

「知ってますよボッさん。……その名の通り、ドラゴンの城!見たものはその力に震え、立ち向かうことすらできないと言われていたッス……け、けど!」

「ドラゴンはいねぇはず、絶滅したはずだろう!?」

「そりゃあ、お前らの中での話、だろう?………違うんだなぁ、それが……おーいアイラ!!お前の大切な人を呼んでやれ!!」

 

 ……さぁさぁ、お出ましだぞ……クソッタレ野郎の愛す、クソッタレの城がなぁ!!!

 

「ドラグハート・フォートレス!暗黒龍城モルト=ノーハート!!!」

 

 マジで言ってんのかよ……!?ありゃあ、本当にドラゴンじゃねぇか!

 だけど、あのアイラってクリーチャーと同じだ……あれも操り人形!

 中心にいやがる人が、城に組み込まれてるって考えたほうが良いなぁありゃ……とんでもねぇことしやがってんなぁあの野郎!

 

「さらに!ここでゾルゲの能力を発動し、残ってる害虫も破壊!そんでダブルブレイク!!……ターンエンド。こん時にアイラの能力を発動。自分の手札を2枚捨てることで、相手のシールドを1枚ブレイク!!」

「なっ……マジかよ…!?」

「ボッさん……あのでっかい城をどうにかしないとまずいっすよ!!」

「あぁ。だがどうしようもねぇ……となれば……!このターンで決めきって、アイツをぶっ倒すしかねぇ!!!!行くぜぇ!!!」

 

 

ボルツ ターン6

 

 マジで……バァァァッドだぜ!!!!!

 行くぜ、ミュージック……クゥァライマァックスだぜぇ!!!

 ドッ、ドッ、ドッ!!ドッ、ドッ、ドッ、ドドド、ドローーーッ!!!!

 来たぜ、俺ちゃんの切り札!!!

 

「行くぜ……ダチッコを召喚!」

「よっしゃー行くッス!!」

「そして、ダチッコと自身のB・A・D・3の効果で合計6マナ軽減!“血煙”マキシマムを2マナで召喚だ!」

「へぇ〜…。」

「マスターB・A・Dォ!来やがれ、“罰怒”ブランド!!!!」

「出てきやがったなぁ!!!それが、お前のマスターか。」

「そういうこったこの野郎!そして効果により、全員スピードアタッカー!一気にトドメまで行けるんだよ!!」

 

 面白ェ。一気に3体攻撃してくるってわけか……

 シールドを割って、正解だったな。じゃなかったらあの盤面は、作られなかっただろうしよぉ……!!

 

「行けぇ“罰怒”ブランド!!シールドをダブルブレイクだ!!」

「よっしゃぁ〜!!これでアイツのシールドは0ッス!!それに、マキシマムは破壊されるときクリーチャーを身代わりにできるから、生半可な攻撃じゃあ止められねぇッス!!」

「トドメだぜ……行けぇダチッコ!!」

 

 ネズミごときが……

 ドラゴンでもなんでもねぇ、後から生まれた下っ端共が……

 

「調子こいてんじゃあねぇぞ、コラァァァァァアアアアアア!!!!!!!!」

 

 地割れのような怒声。

 次の瞬間、空が裂けた。

 まるで世界が震えたような、衝撃。

 その中心から、黒いイカヅチがフィールドを引き裂きながらねじ込まれるように降りてきた。

 

「なんだ、あの雷は…!?」

「シールド・トリガー、侵攻するイカヅチ!効果で、相手のクリーチャーを1体選び、それよりもコストの小さいクリーチャーを1体選び、マナゾーンからバトルゾーンに出せる!!マキシマムを選んだ後、来い!俺の第二の切り札……俺自身!!!!!」

 

 その名を呼ぶと同時に――空間が裏返った。

 空間を斬り裂いて飛び出してきたその存在は、呼び声に応えるかのように咆哮する。

 アイツが放った斧が、寸分の狂いもなく――その復活者の手に収まった。

 

「俺自身が現れる――!!」

 

 そして名を告げた。

 

破滅邪王(デストロイ・イビル)ニガ=ヴェルムート!!!!!」

 

 名を聞いた瞬間、周囲の空気が震えた。

 ただのクリーチャーじゃない。見ればわかる、圧が違う!

 それに……あ、アイツは………!!!!ドラゴンじゃねぇかッ!!!

 

「すべての文明を持った……カードッスかぁ!?」

「見たことねぇぞ、そんなヤツ…!」

「さぁって……お仕置きタイムの始まりだ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニガ=ヴェルムート キーカード:破滅邪王ニガ=ヴェルムート

 

ボルツ キーカード:“罰怒”ブランド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっからは…俺のターンだぞ…!!!」

「うっ……!!」

「ヴェルムートの能力発動!山札上から2枚をマナゾーンへ!!」

 

 ……それだけか?いや、そんな気もしねぇ……何か来やがる!!

 

「そしてこれにより、ゾルゲの能力発動〜!!お前の“罰怒”ブランドとヴェルムートを選んでバトルだ!」

「何してるッスかぁ?マキシマムのほうがパワーは上っすよ?」

「いや違うぞダチッコ!!!アイツのような奴が……くだらねぇ自爆特攻をするはずがねぇだろう!」

 

 おおっとぉ勘が鋭い。…って言っても、こんぐらい気づいてもらわねぇと困るんだがな。

 

「ヴェルムートはバトル中、パワーを2倍する。よってこいつのパワーは14000!お前のマスターってのを……ぶっ壊してやる!!」

 

ーーー

 

 「……お前みてぇなバケモン、地上にはいらねぇんだよ。」

 

 その声は冷徹。だが、熱を孕んでいた。

 一方、ニガ=ヴェルムート。

 闇より這い出る、破滅の斧王。

 その身は、五色すべての魔力をねじ伏せて形成された異形の巨人。

 背丈はブランドの倍以上。

 全身を包む黒鉄の装甲からは、赤黒いオーラが常に噴き出し、空気が腐蝕していく。

 

 斧を地に叩きつければ、ただそれだけで地面が割れる。

 

 「――燃やしてみせろよ、“機械人形”。だが、燃えカス一つ残せると思うなよ。」

 

 開戦の号砲は、ブランドのジェットダッシュ。

 背中のブースターが火を噴き、刃と化したスケボーが火花を散らす。

 重力を無視したような軌道――天を駆け、ヴェルムートの頭上を斬る!

 

 「はああああああッ!!」

 

 だが、巨斧が弾いた。

 その一撃は、防御ではない。迎撃だ。

 ヴェルムートの斧は重力そのものを歪め、衝撃波を広範囲に撒き散らす。

 ブランドの刃が、空中でブレる。

 

 「……てめぇ……やるじゃねぇか。」

 

 ブランドは空中で体勢を立て直し、すぐさまスケボーを剣として使うこととした。

 刀身が展開し、瞬時に巨大な大剣へと姿を変える。

 

 「これが俺の真骨頂だ……ッ!!!」

 

 斬撃、斬撃、斬撃――!!

 高速で空を裂き、連撃がヴェルムートの肩口、胸板、脇腹を次々に切り裂く。

 だが――そのどれもが、致命には至らない。

 

 「効かねぇよ……そんなちまちました刃はよォ!!」

 

 ヴェルムートが斧を振るう。

 地面が砕け、空気が鳴き、“一撃で三日月を描く”。

 ブランドの胴に、直撃。

 

 「――ッぐあああああああああああああああああッ!!!」

 

 スチームの吹き出す音が変わる。

 悲鳴に似た、機械の断末魔。

 

 それでも、ブランドは立ち上がった。

 片膝をつきながら、右腕の剣を持ち直す。

 

 「……まだだ……俺は、終わっちゃいねぇ……」

 

 その言葉に、一瞬、沈黙が落ちた。

 

 だが次の瞬間――

 

 “それ”は、空から降ってきた。

 

 ヴェルムートの斧。投擲。

 重力を置き去りにする一閃。

 斧の形をした、落雷。

 

 「俺は“破滅”だ。“終わり”を告げに来た存在だ――この戦いに、“未来”はねぇ!!!」

 

 ドン――!!

 

 全身を貫くような衝撃。

 ブランドの胸部が抉れ、内蔵のコアが爆ぜた。

 爆煙の中、立ち尽くす巨影。

 ヴェルムートが斧を回収しながら、ただ一言――

 

 「お前の歯車は、止まったんだよ。」

 

ーーー

 

「“罰怒”ブランドォッ!!」

 

 地響きと共に崩れ落ちる鋼の戦士。

 コアを砕かれ、スチームが哀れな悲鳴を上げて散っていく。

 その光景に、誰かが叫んだ。怒り、悲しみ、そして……恐怖の混ざった声だった。

 

 「結局、お前のマスターなんぞ――そんなもんだ!!」

 

 嗤いが響く。

 勝者――破滅邪王ニガ=ヴェルムートの咆哮が空を裂いた。

 

 「だが、終わっちゃいねぇ……終わっちゃいねぇんだよォッ!!!」

 

 ヴェルムートの鎧が軋みを上げる。

 彼の足元に、マナの奔流が逆巻いた。

 

 「このカードの真価は……ニガ=ヴェルムートの第二の“能力”にあるッ!!」

 

 黒いオーラがマナゾーンから迸り、空を裂く。

 

 「各ターン、自分のクリーチャーが初めてバトルに勝ったとき!自分のマナゾーンから、その枚数以下のコストのクリーチャーを―――バトルゾーンに出すッッ!!!!」

 

 ヴェルムートの咆哮に合わせて、地面が爆ぜた。

 裂け目から現れたのは――二体目のヴェルムート。

 

 「来い、第二の破滅……俺自身ッッ!!!!!」

 

 その瞬間、場に響くのは“敗北の予兆”そのもの。

 誰もが言葉を失い、ただその暴威を見つめるしかなかった。

 

 「そしてさらにァ! この展開によってッ!!――“ゾルゲ”の能力が誘発する!!」

 「ゾルゲ……まさか……!」

 

 あの狡猾なる悪魔。

 戦局を攪乱し、相手の防衛線をズタズタに引き裂く、策謀の支配者。

 

 「能力発動ッッ!!」

 

 フィールドの片隅にいたダチッコが、影から抜き出た触腕に絡め取られ、空中へと放り上げられる。

 

 「そこのドブネズミ……」

 

 ヴェルムートが、狂気じみた笑顔で唸る。

 

 「――ぶっ飛ばさせてもらうぜェ!!!!!」

 

 まさに暴虐の舞台。

 地が裂け、空が泣く。

 だが、まだ――希望は、残っていた。

 

 「ダチッコまで……だ、だが!まだマキシマムが残ってる!!!こいつでなんとか……」

 「……まさか、まだ“なんとかなる”と思ってんじゃねぇだろうな?」

 

 その声が、頭蓋を貫いた。

 

 「な……に……?」

 

 言いようのない嫌悪感。

 視線を向けた先には、微動だにしなかった“それ”が、黒き瘴気を放ちはじめていた。

 

 「忘れちまったか?お前が最も恐れていた存在……」

 

 暗黒の中心。静かに沈黙していた“城”。

 

 「――《ドラグハート・フォートレス》を、よォ……!!!」

 

 それはただの装備カードではなかった。

 “意志”を持った、戦場の執行者。

 

 「そ、そんな……今まで動かなかったはずだ……!!」

 

 今までも危機は幾度となくあった。

 絶体絶命も、一撃の希望で覆してきた。

 だけど――今度だけは、そうじゃない。

 

 ドラグハート・フォートレスが、深黒の瞳を開いた。

 

 「各ターン、自分のクリーチャーがバトルに勝ったとき、それが2度目の勝利なら……条件成立だ。」

 

 そして――次の瞬間。

 “黒い雷”が、全域を貫いた。

 バトルゾーンが焼かれ、クリーチャーは歓喜の叫びを上げて膝をつく。

 フォートレスが展開したのは、ただの能力ではない。

 ――戦場そのものを“崩壊”させる、禁忌の領域だった。

 

 「ボルツ……」

 

 その声は、酷く静かで、異常なほど冷たかった。

 

「てめぇ、喚いて、苦しんで、絶望しながら――死ぬ準備はできてんのかよォ?」

 

 皮膚が粟立つ。背骨が凍る。

 脳裏に浮かぶのは、ただ一つの言葉――戦慄。

 否、違う。

 もう一つある。

 

 ――絶望。

 

 全てを砕くかのように、ドラグハート・フォートレスが、軋みを上げて形を変え始めた。

 

 ギィ……ギギ……ギチィン……

 

 鉄の悲鳴。蒸気の唸り。

 それは、まるで過去に縛られた魂が呻いているかのようだった。

 

「お、お前……何をする気だ……!」

 

 ボルツの叫びは空虚に響いた。

 もう、止められはしない。

 

「――龍・解!!!!!!」

 

 ヴェルムートの声が、天地を貫いた。

 そして次の瞬間、フォートレスは人型の姿へと変貌した。

 巨腕に重装甲。背には砕けた竜の意匠を宿し、その全身が憎悪の塊と化している。

 

「おうらぁあああああああああああッッッ!!!!!!!」

 

 それは、もはや“存在してはいけない存在”だった。

 

ーーー

 

 かつて――

 

 《クリーチャーワールド》には、ひとりの英雄がいた。

 

 その名は――グレンモルト。

 

 竜と共に戦い、世界を救った、誰もが認める勇者。

 仲間の信頼を背に、幾多の災厄を打ち破ってきた、誇り高き戦士。

 

 だが、今この場にいるのは……その彼ではない。

 

 彼の意志は殺され、魂は封じられた。結ばれた存在と、二人の子供とともに。

 

 ヴェルムート――かつて英雄によって滅ぼされたはずの邪王の残滓によって、

 英雄の心は、打ち砕かれ、ねじ曲げられた。

 

「英雄サマよぉ。………こっからは俺の好き勝手に使わせてもらうからな。」

 

 ヴェルムートが、グレンモルトの肩に手を置く。

 重苦しいその装甲が、微かに震えていた。

 

「さぁ……思う存分、こき使わせてもらうぞ?抵抗できぬ自分の弱さを思い知りながら暴れるんだな!英雄さんよォ……!!」

 

 その名は――

 

 《闇に堕ちし英雄(ダークファイア) グレンモルト「(イビル)」》!!!!!!

 

 その存在は、“神話の破壊”。

 善悪の区別すら溶け落ちた狂気の象徴。

 かつて世界を救った英雄は、今、世界を滅ぼす側に立っている。

 その黒き瞳に、もはや“救い”は無い。

 

 その瞳は、英雄の一人になるのかもしれないデュエルマスター、ボルツに向けられていた。

 

 




オリジナルカード紹介

悪龍覇ロイヤル・アイラ コスト6 パワー5000 文明:火/闇 
種族:ヒューノマイド爆/ドラグナー/デーモン・コマンド
レアリティ R

・このカードは、マナゾーンに置くときタップして置く。
・マナ武装5:このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、マナゾーンに火のカードが5枚以上あれば、コスト5以下のドラグハートを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出しても良い。(それがウエポンであれば、このクリーチャーに装備して出す。)
・ターン終了時、自分の手札を2枚捨てても良い。そうしたら、相手のシールドを1枚選び、ブレイクする。

フレーバーテキスト 幸せな日々は、そう長く続かなかった。




暗黒龍城モルト=ノーハート コスト5 文明:火
レアリティ ビクトリーレア
ドラグハート・フォートレス

・自分のクリーチャーは、相手のターン中にパワーが減らない。
・龍解:各ターン、自分のクリーチャーがバトルに勝ったとき、それがこのターン中2度目の勝利なら、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。

フレーバーテキスト 彼の手にあった平和は砕け、希望は焼かれた。平和を望んだ彼の拳は、笑うように破壊を選ぶ。



侵攻するイカヅチ 呪文 コスト7 文明:自然
レアリティ R

・S・トリガー
・相手のクリーチャーを一体選ぶ。そうしたら、そのクリーチャーよりもコストの小さいクリーチャーを一体選び、自分のマナゾーンからバトルゾーンに出しても良い。

フレーバーテキスト 空が怒りを落とすとき、それは裁きではない。侵攻だ。



破滅邪王ニガ=ヴェルムート コスト7 パワー7000 文明/すべて
種族 ジュラシック・コマンド・ドラゴン 
レアリティ マスターレア

・マナゾーンに置くとき、このカードはタップして置く。
・このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、山札の上から2枚を、タップしてマナゾーンに置く。
・バトル中、このクリーチャーのパワーを2倍にする。
・各ターン、自分のクリーチャーが初めてバトルに勝ったとき、自分のマナゾーンの枚数以下のコストを持つクリーチャーを一体、自分のマナゾーンからバトルゾーンに出しても良い。
・自分のマナゾーンにあるカードはすべての文明を得る。
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