寄成ギョウに転生したから、キャラの良さガン無視して善人になるニョロ〜! 作:ライダー☆
「またね、ももちゃん!」
「ばいばーい、ジョーくん!!」
――時は少し遡る。ボルツが“あの男”とぶつかる直前のこと。
ももちゃんの笑顔がすっかり戻ったのを見届けた俺は、どうしても伝えたい思いを抱えながら、あのとき別れた場所へ足を運んでいた。
「……やっぱり、ボルツがやっつけたんだよな。ももちゃんの熱の原因だった、あのデュエルウォーリアを……」
ボルツはやっぱり、本物のデュエリストだ。俺の、永遠の憧れだ。
だけど。だけど、どうしてだろう――
胸の奥が、チクリと痛んだ。
嬉しいはずなのに、なぜだろう――どうして、こんなにも不安が胸を締めつけるのか。
まるで、見えない何かが世界の隙間からじわじわと滲み出してきていて、それが確実に俺たちのすぐ近くに迫っているような、そんな言いようのない“怖さ”が、腹の底から静かに湧き上がってくる。
「ジョー様……ジョニー様が、まだ戻りませんね……」
すぐ隣から聞こえたデッキーの声も、どこか心細げだった。
俺は小さく頷く。言葉が、うまく出なかった。
「……うん、デッキー。」
――ジョニーが、帰ってこない。
あの日、あの“真のデュエルフィールド”で俺たちを逃がすために、一人で残ってくれたジョニー。
キラを倒した、あの恐ろしく強い敵……得体の知れない“あれ”と戦うために。
――そして、姿を消した。
でも、今ジョニーのマスターカードを見ても……何もいない。気配すら、ない。まるで、ジョーカーズの世界に“ジョニー”という存在が消えてしまったかのように。
思い出す。あのとき、俺が見たことを話したときの、シンラちゃんのあの一言――
―お父さん……?―
シンラちゃんのお父さん……って、たしか――
……まさか。嘘だ!でも、もし……もし、万が一、それが――!
「ジョー様! 前を――!!」
デッキーの鋭い声が俺を現実に引き戻す。
その瞬間まで、俺はずっとうつむいて歩いていた。
そして――気づくのが、遅れた。
眼前に、いた。
空気が張りつめる。
世界が静まり返り、風さえ止まったように感じる。
そこに立っていたのは、ただの人間じゃなかった。
圧倒的な存在感。空気を切り裂くような威圧感。鍛え抜かれた体躯に、まとうは闇のオーラのような不穏な気配。
深緑の服、背中で束ねた緑の髪、鋭く研ぎ澄まされた視線。
その姿、その顔――
……見間違えるわけがない。
懐かしい感じがする。俺の口から、自然に声が漏れた。
「ギョ、ギョウおじさん……?」
それは、再会の喜びではなく、凍りつくような恐怖とともに出た言葉だった。
昔、俺がまだ小さいとき、優しく、楽しくデュエマしてくれた、頼もしくてあったかい“ギョウおじさん”。
……だったはず、なのに。
目の前に立つその人は、まるで別人だった。
濁った目。まるで生気を失ったような、どこか底冷えする光。温かみなんて欠片も感じられない。その視線はただただ、俺を“値踏みする目”だった。口元には不気味な笑み。痛みに悦ぶような、歪んだ笑み。ひとつも優しさなんて残ってない。
いや――違う。優しさも、温もりも、“人”としての何かすら全部剥がれ落ちて、そこに立っていたのは……ただの邪悪と狂気の器みたいだった。
「よぉ……ガキンチョ。」
声が響いた瞬間、背筋が氷のように凍った。
あの懐かしい声の“形”だけをしてる。けど、そこにはもう、俺が知っていた“ギョウおじさん”の魂なんてなかった。
「ひっ……!」
全身が、条件反射で震えた。
間違いない。この人が……ジョニーを……!
「久しぶりやな。そうや、お前……前に黄色い髪のガキと一緒におったなぁ。切札、ジョー……だったか?」
(やっぱり……やっぱり……この人が、ジョニーを――! でも、どうして!?)
「ジョー様、この方は……!」
「……うん、デッキー。間違いないよ……この人は……シンラちゃんのお父さん。ギョウおじさん、だ。」
口にしながら、俺はゆっくりと腰のデッキケースに手を添える。
でも、それは“ギョウおじさん”の名前を借りた、何か別の存在だった。
もう、俺たちの知っているあの優しいおじさんじゃない。
――戦わなきゃいけない。
でも、できるのか? 本当に、あの“ギョウおじさん”と……!
「何をコソコソ話しとる。……見た目はガキでも、“戦う覚悟”はあるんやろ?」
その声は、昔の記憶にあった穏やかなギョウおじさんのものではなかった。乾いた、鋭い刃のような響き。まるで、こちらの迷いや恐れを見透かして笑っているような――そんな不気味な声だった。
ギョウおじさんの目が細くなり、まるでこちらを値踏みするように、じろじろと俺を見つめてくる。その双眸が、ほんの一瞬、ギラリと光った。
「……ッ!」
次の瞬間だった。空気が、重くなる。いや、空気というより、世界そのものが歪んだような――そんな錯覚。
足元が震える。いや、違う。地面が、現実が、震えていた。
バリバリと音を立てて、空間の一部が亀裂を走らせる。そこから、濃密な黒と緑の光がほとばしり、俺たちの足元を一瞬で飲み込んだ。視界が揺れ、体が浮き上がったような感覚。気がつけば、そこは――
――真のデュエルフィールド。
空間は変わっていた。遠くに渦巻く異界の空、ここは普通のデュエルフィールドとは違う。ここには、カードゲームの理屈すら超えた“本物の戦い”のルールが息づいている。負けた者はただの敗者じゃない――何か、大切なものを失う場所。
……ここで逃げたら、もう、何も守れない。
「……っ……ここで逃げたら、ジョニーにも……ももちゃんにも……皆にも顔向けできない!!」
俺は歯を食いしばった。心臓の鼓動が耳を塞ぐほど響いてくる。ドクン、ドクン、ドクン――いや、心臓だけじゃない。全身の血管が叫んでいた。怖い。でも、逃げたくない。
俺は、デッキを取り出した。少し震える指をぎゅっと握って、腰の位置にデッキケースを構える。ジョーカーズのカードたちの温もりが、手に伝わってくる。……大丈夫。俺には仲間がいる。
――ジョニーがいないのなら、俺が戦うしかない!
「いくぞ……ギョウおじさん!!」
叫んだ俺の声に、ギョウおじさんは一瞬、目を細めた。口元に、嘲るような笑みを浮かべる。
「フン……今さら“おじさん”なんて呼ばれても、懐かしくもなんともねぇよ……」
その言葉とともに、彼の体から溢れ出すのは、深い黒と暗緑のオーラ。それは風でも重力でも説明できない“圧”となって、デュエル空間を支配していく。空が濁り、地が呻く。ギョウおじさんの全身から、悪意と狂気が渦を巻きながら溢れていく。
「お前に教えてやる。絶望ってやつをなぁ……!!」
それは宣告だった。この戦いは、ただのカードゲームじゃない。魂と魂のぶつかり合い。勝てば何かを守れるかもしれない。でも――負けたら。
「デュエル!!スタート!!」
叫びと同時に、眩い光が俺の体を包んだ。ジョーカーズのみんなが俺の背後に立ち、まるで「任せろ」と囁くように、俺の心を支えてくれる。
怖い。だけど――俺は、逃げない。
「……ジョニー……俺が、やるよ!」
――俺は絶対に、負けない!!!!
『真のデュエル、スタート!!』
【こうして始まった、ジョーとギョウの真のデュエル!!ジョーは、小型ジョーカーズを展開し、ギョウのシールドを2枚ブレイク。シールドの数で有利な状況に!!】
「ターンエンド。」
……ヤッタレマン、パーリ騎士、バッテン親父。……ここまでクリーチャーを展開できているけど、まだ全然だ。どうしてギョウおじさんがあんな事になっているのかは知らない、けど………今は勝つ、それしかない!!勝って、おじさんから理由を聞き出すんだ!!
【果たして、ここからどうなるのか……そして、ここまで一切動かぬギョウは、一体何を企んでいるのか…!?】
ジョー 手札1 シールド5 マナ5 バトルゾーン ヤッタレマン パーリ騎士 バッテン親父
ギョウ 手札5 シールド3 マナ4 バトルゾーン なし
ギョウ ターン4
「ったく、雑魚クリーチャーをポンポン並べて……鬱陶しいったらありゃしない。」
っ、あの目……お、おじさん……本当にどうしちゃったんだよ…!?
「マナチャージ。まずはフェアリー・ミラクル。これで2枚加速……そして呪文、
「そんな、一気に2体も破壊されてしまいましたよ!?」
「うん、わかってる……!」
「ターンエンドや。ほれ、お前さんのターンやで。」
ジョー ターン5
このターンで行けるとこまで行くしかない……そうじゃないと俺が不利なまんまだ!!
迫る嵐も、風のうち……
この俺が、追い風に変える!!!
いっぱぁっっつ!!!ヴァッキューン!ズッキューン!!ドォッキューン!!!!!ドローーーーッ!!!!
俺の風……ビュービュー吹いてきたぜ!!!
「来た!行くぜ6マナ!超特Qダンガンオー!!」
〈行くぜジョー!ここで決めきる!〉
「おう!!」
………見たこともないクリーチャーやな。あのときのガンマンと同じ……。
「ダンガンオーでシールドを攻撃!こいつはバトルゾーンに出たターン、相手プレイヤーを攻撃できるんだ!!」
「とはいえダブルブレイカーやろ?それじゃあトドメまでは行けへんなぁ。」
「いいや!こいつはバトルゾーンにある他のジョーカーズ1体につき、シールドを追加ブレイクすることができる!つまり、トリプルブレイカーだ!!!」
「っ!!!」
「いけぇダンガンオー!トリプルブレイクだ!!」
〈ダンガン……フラーーーーッシュ!!!!〉
シールドがなくなったか。侮ったらあかんみたいやなぁ………なぁんてな。そんなん思うのは、「あの化け物」にだけで十分やねん。こんなただのガキンチョに……そんなこと思わんくたって勝てるんよなぁ〜!!
「このままトドメを……!!!」
「んなことできると思うなよ。シールド・トリガー2枚を発動や。」
「2枚ですとぉ!?」
「まず1枚目……シールド・トリガー、
「バッテン親父!!」
「全く緊張感のないやつやなぁ。この期に及んで仲間の心配とは……。」
「うっ…!!!」
「2枚目、ザルディング・ゲート!カードを1枚引き、その後、手札からコスト7以下の闇の進化ではないクリーチャーを1体選びバトルゾーンに出せる。」
……っ、この感覚……まさか……!!
俺はその瞬間に理解した。そして同時に信じられなかった。あの1枚目には……!!!
「ほないくでぇ。」
絶望の覚悟は、できとるか……?
死を迎える覚悟は……できとるんやろなぁぁッ!!!!!
泣けぇッ!!叫べぇッ!!そして、滅びろぉぉぉッ!!!!!
──暗黒ドロー!!!!!
来たでぇ……来たでぇ……!
「お前をぶっ殺す切り札がなぁ!!」
「ジョ、ジョー様…あの人の持っているカードのあの雰囲気……まさか!!」
「う、うん。嘘だ、嘘だよ……どうして…!!!!」
「さぁ、来い!全部ぶっ潰せ!」
………ジョニー。
あの壮絶な激闘の果て、彼は静かに、しかし無惨に地へと崩れ落ちた。
かつて誰よりも熱く、誰よりも自由だった魂は、たった一瞬の怯み——それだけで、無惨に砕かれた。
ギョウとの死闘に敗れ、抵抗する術もなく、彼の存在は圧倒的な暴力の渦に呑み込まれたのだ。
──新たな存在として、生まれ変わるために。
だが、それは救済ではない。
彼の名も、誇りも、かつて「ジョニー」と呼ばれた存在すらも、すべては無慈悲に踏み躙られた。
ジョーカーズとしての記憶も、自我も、ひとつ残らず削ぎ落とされる。
どれだけ叫び、どれだけ心を引き裂こうとも、ギョウの創り出す悪夢の中では、その痛みすら無意味だった。
彼が愛したものも、守ろうとしたものも、無慈悲に汚され、黒く塗り潰される。
己の誇りすら、血と怨嗟にまみれて──。
そして、今。
その絶望と憎悪は、腐り落ちた肉体の奥底で、どす黒く脈動し始める。
まるで、世界そのものを呪うかのように。
かつての栄光も、友情も、全てを屠る復讐者として。
──その名を呼べ。
血に濡れた亡者。
憎しみの檻に囚われた、かつての英雄。その名は——
「ブラッド・ザ・ジョニー!!!!!」
奇成ギョウ キーカード:ブラッド・ザ・ジョニー
切札ジョー キーカード:バレット・ザ・シルバー
「ギョッギョッギョ……どうや、ガキンチョォ。お前の切り札がこうして! 何もかも、闇に染まっていくのを見て!! どんな気分やァ!!!?」
……ジョニーが、あんな姿に。
その光景を前に、俺は声を失った。胸が締めつけられ、涙が今にもあふれそうになる。
隣にいたデッキーも、顔を真っ青にして、小刻みに震えていた。
「そんな……!?ジョニーが、あんな……あんなことに……!!!!」
信じたくない。否定したい。けれど、目の前の現実は、あまりにも残酷だった。
「へッ、ようやく気づいたかいな。けどなァ、手遅れや。お前らはなァ、お前ら自身の切り札に、血ィ流されて死ぬ運命なんやでぇ!!?」
「うぅっ……ジョニー……ジョニー!!!」
涙声で、俺は叫ぶ。必死に、必死に。
「目を覚ましてよ!!俺だよ、ジョーだよ!!!!お願いだよ、戻ってきてよ!!」
だが。
「無駄や。無駄無駄無駄やぁ。」
ギョウは肩を揺らし、楽しげに嗤った。
「どんだけ叫んだところで、届くわけあらへん。心はなァ、ずーーーーっと奥底に沈められとるんや。二度と戻れへんところまでなァ!」
「……ッ、なんでだよ!!」
怒りと悲しみで震えながら、俺は叫んだ。
「なんでこんなことするんだよ、ギョウおじさん!! あんなに優しかったじゃないか!! 昔は、俺たちに笑いかけてくれたじゃないか!!!!!」
……その言葉に、ギョウの表情が、一瞬だけ歪んだ。だけどすぐに、ひび割れた笑みで応じる。
「……昔の話なんざ持ち出すなや。」
声が低く、苦々しく響いた。
「思い出させるな。……頭にくる。」
一拍。静寂。
そして。
「俺はなァ、ただ本当の自分に目ェ覚ましただけやぁ!!!!」
ギョウは狂気じみた声で叫び、両手を広げた。
「破壊!殺戮!!絶望!!!そいつらこそが生きる意味なんや!!誰が止めようと、誰が泣き叫ぼうと!!その苦しみこそがァ……!この、ワイの、快感なんやぁああああああああああッ!!!」
「そ……そんな……」
俺はただ、立ち尽くすことしかできなかった。
「……ったく。こんなつまらんお喋りで時間潰すつもりなかったんやけどなァ。」
ギョウはニヤリと嗤った。
「けど、ま……お前らの、その絶望に塗れたツラァ、よう拝ませてもろたわぁ……。」
ギラリと光る牙。赤黒い笑み。
「ほな、行くでぇ。」
ギョウ ターン5
「ドロー。そしてここでブラッド・ザ・ジョニーの能力発どーう!自分のターン中に初めて山札からカードを引いたとき、それを捨てることができる。」
「自分から捨てに行った!?一体なぜそんなことを……」
「そうすることで…自分の墓地からカードを1枚選び山札の下に置ける。ザルディング・ゲートを下に。かぁらぁのぉ!?そのカード以下のコストを持つ進化ではない闇の進化ではないクリーチャーをコストを支払わずに召喚できる。コスト6の増悪神
「また見たことのないクリーチャーが出てきましたよ…!?」
「更にこいつの能力でぇ……山札上から4枚を墓地に置き、そしてその中からコスト4以下の呪文を1枚選び、使うことができる。呪文、フェアリー・シャワー。2枚を見て、1枚を手札に、1枚をマナに。」
怒涛の展開。ジョーは、完全に押されていた。
「かーらーーのーーー!1マナタップでポレゴン、8マナタップで……クイーン・アマテラスを召喚!!更にこいつの能力により、山札からクリーチャーではないカードをタダで使うことができる!」
「山札から……っ!!そう言えばさっき、おじさんは山札にあの呪文を……!!」
「お?察しがえぇなぁガキ。そういうこった。……ザルディング・ゲートを発動!これによりカードを1枚引いてからのぉ、ロマノフ2世をバトルゾーンへ。そしてこいつの効果で……墓地を肥やし、更にもいっちょザルディング・ゲート!カードを1枚引き……キリュー・ジルヴェスをバトルゾーンへ!これで全員スピードアタッカーや!」
クリーチャーが一気に4体も……!!まずい……!!
「行くでぇ、やれ、ブラッド・ザ・ジョニー!!!」
ジョニーが銃口を、ジョーのシールドへと向けた。
その手は、かすかに震えていた。……だが、すぐに震えは止まり、轟音と共に、巨大な鉛玉が放たれる。
「ジョー様!あれは一体!!?」
「どういうこと……!?」
「……血に染まったことにより新たに生まれた能力……そう、マスター・
轟音。
シールド5枚が、一瞬で粉砕される。
ダンガンオーさえ、黒き砲弾に押し潰され、沈んだ。
ジョーは必死に身をかがめた。だが、衝撃は肉体を裂き、心をもズタズタに引き裂いていく。
もう、まともに立つことさえできなかった。
「ジョ、ジョー様!!」
「ギョーッギョッギョッギョッ!!!お前もここまでや。攻撃できるクリーチャーは他にあと4体、そしてお前のシールドは0!どう足掻こうともお前はここから勝てへんねやぁ!!!それになぁ……たとえ攻撃をすべて防げたとしても、ジョニーのエクストラウィン能力が待っとる。」
「な……エクストラウィンですと!?」
「その通り。ターン中にクリーチャーを4体以上出しとって、かつマナゾーンに闇文明のカードが7枚以上揃っとる状況下で、相手のクリーチャーもシールドもなければ、その時点でエクストラウィンや。つまりトリガーが来ようが来まいがお前の負け。ここでおしまいや。」
「そ、そんな……!!」
ジョーは、今まさに絶望のどん底に沈んでいた。
トリガーを引かなければ即座に敗北。引けたとしても、目の前の"ジョニー"を止めなければ、結局は終わる。救いの糸は、かすかな希望すら、指の隙間から零れ落ちていく。
膝をつき、ジョーは嗚咽を堪えきれなかった。恐怖もあった。勝利を手繰り寄せられない自分への無力感もあった。
だが、胸の奥で最も強く締め付けていたのは――
かつて自らが創り上げた、誰よりも信じたはずの"ジョニー"が、見る影もなく闇に侵されていたことだった。
あんな、無惨な姿に。
いつも笑って、自分の傍にいてくれた存在が、今や冷酷な殺意を剥き出しにして、こちらを見下ろしている。
信じたくなかった。心が叫んでいた。「違う」と。「こんなはずじゃない」と。
だが現実は、無慈悲だった。
――このままでは、自分は"彼"に殺される。
"ジョーカーズ"の手によって、夢を託した仲間たちの手によって、自分はここで終わるのだ。
そんな結末を、受け入れたくないのに。逃げられない現実が、ジョーを容赦なく押し潰していった。
しかし、それを嘲笑うかのように、ギョウの声が響く。
「………なにずっとしょぼくれとんねん。さっさとシールドチェックせぇや。できへんねやったらワイがやってもええんやぞぉ?」
「ジョー様……ジョー様!!!!」
「デッキー……俺、どうしよう……このままじゃ、俺……ジョニーも助けられないし、ジョーカーズのみんなも…!!」
泣いていたジョーに、デッキーは何も言えなかった。何を言えば良いのかわからず、困っていたのだ。
しかし、そんなジョーに声をかけた存在があった。それは、マナゾーンや墓地にいた、ジョーカーズのみんなだった。
〈ジョー様……大丈夫!!自分を信じて!!〉
「ヤッタレマン……。」
〈ジョー様以外に、ジョニーを助けられる人はいなァい!けど、そのためにワタシ達ジョーカーズ!精一杯頑張る!〉
「パーリ騎士……。」
〈そうっすよ!自分を信じてくださいってば!!俺も、ここにいるんです!!!〉
「この声って……!!!」
最後に聞こえてきた声の場所、そこはシールドであった。他のみんなの声も聞こえてくる。
〈ジョー様、ワタシ達がやるでゲラッチョ!〉
〈ジョー様は自分を奮い立たせてくれれば良いんだよぉ〜。一人で背負う必要はない……ハックション!!〉
〈……そういうことっすから!あとは俺達に任せときぃ〜。〉
その声たちは、ジョーの心に灯をともした。
重く沈んでいた胸の奥に、ふつふつと力が蘇る。
ひとりじゃない。
みんながいる。
みんなが、自分を支えてくれている――!!
ジョーは涙を拭い、顔を上げた。その表情は、もはや絶望に濡れてはいなかった。
そこには、立ち上がる意志が宿っていた。
「ジョー様!!そうです、その意気です!!」
「うん!!みんながいる……俺は!みんなとジョニーを助けるんだ!!」
「……なんや、アイツ……急に立ち直りおって……どうでもええけど、さっさとシールドチェックしろや。」
「……頼んだよ、みんな!!!!」
シールド・トリガーは、3枚。そしてその中の3枚で、すべてを切り抜けられた。
「頼んだよ、みんな!ゲラッチョ男爵、ハクションマスク、ウラNICE」
なっ、3枚やと…………!!
「そして、ウラNICEのスーパー・シールド・トリガー効果とハクション・マスク!」
〈オッケーっす!ハァイ、占いますよぉ〜〜〜〜!!!〉
「ウラNICEの効果で、まずは1枚ドロー!!(……このカードは!!!よし、行けるかもしれない!)」
「なんや?気味悪く笑いやがってあのガキ…。」
「次に!スーパー・S・トリガーの効果を発動!自分のマナゾーンとバトルゾーンにあるジョーカーズの枚数以下のコストを持つクリーチャーを全て破壊!!」
「チッ、せやけどこいつの能力でマナに行く。……で?それで終わりか?せやったらこっちの番やけど。」
その瞬間だった。
ブラッド・ザ・ジョニーの思考回路に、微かな――だが決定的な「ひずみ」が走った。
先ほどウラNICEが放った衝撃波。それが、ジョニーの奥底に封じ込められていた"ジョーカーズとの思い出"の一片を、かすかに呼び起こしたのだ。
黒く染まった鎧の内側で、何かが蠢いていた。ブラッド・ザ・ジョニーとしての呪縛が、ほんのわずかに――剥がれ始めていた。
それを、ジョーも、デッキーも、そしてギョウさえも、確かに感じ取った。
あと少し。あと三つほど、"かけら"が揃えば、ジョニーは完全に、本来の姿を取り戻す。
――だが。
ジョーにはもう、差し出せる"かけら"が残っていないはずだろう。
ギョウは、そう思っていたし、それに自信も持っていた。
彼は余裕の笑みを浮かべ、静かに告げる。
「自分のクリーチャーが、これで3体以上破壊された。……なら発動や。"インフィニティ・ヘブン"!!」
「な、なんですかその呪文は!?」
デッキーが悲鳴をあげる。
「山札の上から2枚をシールドに置く。この一撃で、ワイの守りも完璧や。」
ギョウの場に、2枚のシールドが追加される。
ジョーが積み上げたわずかな望みも、さらに遠のいたかに見えた。
「まずいですよジョー様!!相手のシールドが回復しちゃいました!!!」
デッキーの声に、だがジョーは静かにうなずくだけだった。
「うん。」
「ジョ、ジョー様……?な、なんでそんなに落ち着いて……?」
「破壊されても効果は発動できる!ハクション・マスク!最後に残ったクイーン・アマテラスを破壊してもらうよ!」
「チッ。ま、んなことしたってどうしようもないやろ。お前さんのクリーチャーの数は0。ワイのシールドは2つ。何したって無駄ニョロよ〜!」
デッキーが言葉を失う中、ジョーはそっと、手札の中の一枚を握りしめる。
その目には、静かだが揺るぎない光が宿っていた。
「いや、無駄じゃない!俺には、こいつがいる。こいつで――ジョニーを、助けるんだ!!」
一瞬、場の空気が止まった。
ジョニーを助ける?
耳を疑うようなその言葉に、ギョウも思わず眉をひそめた。
(そんなもん、できるわけあらへんやろ……)
ギョウは心の中で笑った。
確かに衝撃波で"わずか"に剥がれかけたとはいえ、完全にブラッド・ザ・ジョニーの殻を破るには、圧倒的な力と絆が必要だ。
そんなもの、今のジョーにあるとは思えない。
それに、ギョウが知っている"メラビート・ザ・ジョニー"は、孤高の戦士。誰かと心を通わせるなど、到底考えられなかった。
いや、違う。
ギョウは――知らなかったのだ。
本当のジョニーの隣には、常に"アイツ"がいたことを。
誰よりも、深く強く結ばれた絆があったことを。
「なんや知らんが……小細工でもするつもりなら、やめときや。時間の無駄や。ターンエンドや。」
ギョウが肩をすくめて言い捨てる。
だがジョーは、迷わなかった。
その手札に込めた、全ての想いを込めて――叫ぶ。
「小細工なんかじゃない……!!」
ジョーの声が、震える空気を突き破った。
「――ジョニー!!目を覚まして!!!!」
ジョーが静かにカードをバトルゾーンに置いた。
その瞬間――地を裂くような蹄の音が響く。
現れたのは、一頭の馬だった。
銀色に輝くその肢体は、疾風のごとく戦場を駆け抜ける。
まさに「銀の弾丸」。
馬は迷いなく、一直線に――ブラッド・ザ・ジョニーのもとへと向かっていった。
その存在感は、まるで雷光。
あまりにも強烈で、"たった三つのピース"を埋めるには余りある。
いや、これはジョニーにとって、"それ以上"の存在だった。
かつて、自分と共に戦場を駆け抜けた、最愛の相棒――。
「バレット・ザ・シルバー!!!」
ジョーの叫びが、場に轟く。
「こいつは、相手ターンの終了時、相手が3体以上クリーチャーを出してたら、タダでバトルゾーンに出せる!!」
「な、なにィ!? 馬……やと!?」
ギョウが目を見開いた。
想定の範囲外。完全に予想外の一手だった。
「馬なんてアイツにおったんかいなぁ!?」
動揺を隠せぬギョウをよそに、バレット・ザ・シルバーは駆け寄り、ブラッド・ザ・ジョニーの前で静かに歩みを止めた。
その大きな瞳に、何一つ恐れの色はない。
ジョニーの血塗られた手が、彼に触れようとする――。
だが。
ジョニーは、拳を振るわなかった。
銃を向けなかった。
ただ、かつての日々のように。
穏やかに、その額を撫でた。
「シルバー……すまなかったな。」
低く、震える声。
それは、ブラッド・ザ・ジョニーではなく、かつての――ジョリー・ザ・ジョニーの声だった。
血と憎悪で塗り固められた偽りの鎧が、音を立てて崩れていく。
偽善によって作り上げられた虚像は、ただひとつ、本物の"絆"によって打ち砕かれた。
ジョニーの体を覆っていた黒い装甲が、次々に剥がれ落ち、砕け、消えていく。
白銀の光が、戦場を満たした。
――そして。
そこに立っていたのは、誰もが知る、あの姿。
ジョーカーズの魂を背負いし者、ジョリー・ザ・ジョニーだった。
笑っていた。
誇り高く、清々しく。
かつてジョーと共に、どんな絶望も蹴散らした、あの"ジョニー"が、そこにいた。
「ジョニーが……戻ってきましたよ!ジョー様!!」
「うん!!よっしゃあこのまま行くぜぇ!!!バレット・ザ・シルバーの効果で山札から1枚目を見る!!」
迫る嵐も、風のうち……
この俺が、追い風に変える!!!
いっぱぁっっつ!!!ヴァッキューン!ズッキューン!!ドォッキューン!!!!!ドローーーーッ!!!!
俺の風……ビュービュー吹いてきたぜ!!!
「行くぜ……ジョリー・ザ・ジョニー!!!!!」
ジョニーはシルバーへとまたがり、ギョウへと銃口を向ける。これまで散々やってくれた存在への倍返し。ジョニーの手は震えもしていない。撃つべき存在を撃つために、しっかりと狙いが定まっている。
「……まさか……こんなことになるとはな。しっかりまさか馬コロがおるなんて思っとらんかったなぁ。……はぁ、こんなことならさっさと「あれ」持ってくればよかったかもしれへんなぁ。もう完成しとるんやし…。全く調子乗らずに真面目にやっとったらこんなことには………反省やな。」
ジョー 6ターン目
「行くぜぇ!ジョリー・ザ・ジョニーでダブル・ブレイク!!!」
鋼のように硬い銃弾が、シールドを貫通する。
だが、トリガーに引かれるのは、ただのマスター・スパークだけ。つまりどうしようもない。
彼は負けたと認めると、その場を飛び上がり、ジョニーの銃弾を軽々避けた。
「なっ!?」
「全く多少でもお前を甘く見とった自分に腹が立つ。せやけどそれも今回限り。次会う時はこうは行かへんってことを教えたるわ。切札家のガキンチョ……!!!!!」
〈逃がすか!〉
ジョニーはテキサス・ストームでムチと銃弾をかけ合わせ、あり得ないような動きをする銃弾でギョウを撃ち抜こうとする。しかし、それが当たる刹那、ギョウは消え去った。
「……消えて、しまいましたね……。」
「うん。……けど!!」
ジョーは目の前にいる存在を見る。ジョリー・ザ・ジョニー。彼はジョニーにグッドサインを送った。ジョニーもまた、彼にグッドサインを返した。
火文明の力はなくなってしまったが、ジョニーは戻ってきたのである。
ジョーカーズたちもその喜びを分かち合う。そんな中、ジョーはジョニーに聞いた。
「ねぇジョニー。戦ったあのとき、ジョニーの身に、一体何がおきたの?」
「……俺も詳しいことはわからない。しかし、たった一つわかることがあるとするなら……」
―俺はアイツを知っている。「奇成ギョウ」。今よりも壮大かつ強大であったクリーチャーワールド全体を統べていた、最強の王………だがあのとき見た顔にはまるでそのときの面影もない、ただの………死人だった。そして、ジョ―。お前が戦っていたあのギョウは………「ギョウであってギョウではない」。「俺が見た顔とは一切違っていた」。これ以上はわからないが…………何かを隠していることは確かだな。―
そうして、時は現在、ボルツとヴェルムートの真のデュエルに至る。
《闇に堕ちし英雄 グレンモルト「邪」》!!!!!!
その存在は、“神話の破壊”。
善悪の区別すら溶け落ちた狂気の象徴。
かつて世界を救った英雄は、今、世界を滅ぼす側に立っている。
その黒き瞳に、もはや“救い”は無い。
その瞳は、英雄の一人になるのかもしれないデュエルマスター、ボルツに向けられていた。
「なんだ……あのクリーチャーは!!」
「ドドド、ドラゴンッス〜〜〜……信じられねぇッス、あんなとんでもねぇのがいるなんてェ!!」
「ヒャーッハッハッハ!!怯えてきたか?絶望してきたか?けど残念。これはまだ始まりに過ぎねぇんだよぉ!!」
ヴェルムートの声が高らかに響く。それと同時に、グレンモルト「邪」の体も黒に包まれていく。
闇の奔流、それが彼の体には流れ込んでいた。
「ボルツ、てめぇをぶっ殺す!!!!」
オリジナルカード紹介
レアリティ UC
・このターン中、相手のクリーチャーすべてのパワーは、−2000される。(パワーが0以下のクリーチャーは破壊される。)
フレーバーテキスト 不要だと思われた存在は、即刻この世から消え去り、彼らの道具となる。
レアリティ VR
・マナゾーンに置くとき、このカードはタップして置く。
・S・トリガー
・相手のクリーチャーを1体選び、破壊する。その後、破壊したクリーチャーよりもコストの小さい呪文を1枚選び、墓地からコストを支払わずに唱えても良い。そうした場合、唱えた後、呪文は墓地に置く代わりに手札に戻す。
フレーバーテキスト 古き大帝など、ただ光に呑まれ、利用されるだけ。
ザルディング・ゲート コスト6 文明:光/闇
レアリティ R
・マナゾーンに置くとき、このカードはタップして置く。
・S・トリガー
・カードを1枚引く。その後、闇のコスト7以下の進化ではないクリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
フレーバーテキスト 「あ〜あ。こっちに来なけりゃもうちょっと寿命が伸びてたってのに、どうしてこうも生き残りの聖騎士は復讐をしに来るのか……。」 ―破滅邪王ニガ=ヴェルムート―
増悪神
種族 ダークロード/デーモン・コマンド/ナイト
レアリティ VR
・マナゾーンに置くとき、このカードはタップして置く。
・このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、山札の上から4枚を墓地に置いてもよい。そうしたら、その中からコスト4以下の呪文を1枚選び、コストを支払わずに唱えても良い。
フレーバーテキスト クリーチャーの中には、崩壊と殺戮から逃れるため、自ら囚われの身となった存在もいる。
インフィニティ・ヘブン コスト8 文明:光
レアリティ R
・各ターン、自分のクリーチャーが3体以上破壊されたとき、この呪文を手札からコストを支払わずに唱えてもよい。
・山札の上から2枚を裏向きにして、それぞれ新しいシールドとして自分のシールドゾーンに置く。
・次の自分のターンのはじめに、自分のシールドを2つ手札に加える。(その「S・トリガー」を使ってもよい。)
フレーバーテキスト 救いを求めた者たちは、かつて高貴であった無限の天蓋に押し潰され、祈りすら許されなかった。
ブラッド・ザ・ジョニー コスト7 文明/闇 パワー9500
種族 ジョーカーズ
レアリティ マスターレア
・自分のターン中に初めてカードを引いたとき、それを捨てても良い。そうしたら、墓地にあるカードを1枚選び、山札の下へ置き、下においたカード以下のコストを持つ闇の進化ではないクリーチャーを手札から1体選び、コストを支払わずに召喚する。
・マスター・D・ブレイカー:(このクリーチャーはシールドを2つブレイクする。各ブレイクの前に、そのターン中にバトルゾーンに出したクリーチャーの数、このクリーチャーはシールドを更に1枚ブレイクし、相手のクリーチャーを1体破壊する。)
・各ターン中、マナゾーンに闇文明のカードが7枚以上あり、バトルゾーンに自分のクリーチャーを4体以上出していて、攻撃の後、相手のシールドもクリーチャーもなければ、自分はゲームに勝つ。