寄成ギョウに転生したから、キャラの良さガン無視して善人になるニョロ〜!   作:ライダー☆

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新・二十一話 シンラを取り戻せ!ボルツ、漢の大勝負!!

「…………」

 

 ジョーから聞かされた。――シンラを見ていない、と。

 どうやら二週間も前から姿をくらませてるらしい。誰も目撃していないし、学校にも来ちゃいねぇ。家に行って呼んでみても、返事はゼロ。鍵は内側からガッチリ閉ざされてるらしく、扉を叩こうが揺らそうが沈黙が返ってくるだけだって話だ。

 

『ボルツ、シンラちゃんのこと……頼めないかな?ごめん、俺は……キラと一緒に、どうしてもやらなきゃならないことがあるんだ。』

 

 ジョーの声音は強がっていたが、その奥に焦りが滲んでいた。たぶん本人も「ただ事じゃない」と思ってんだろう。だが、あっちはあっちで背負うものがある。なら――何の予定もなく、ヒマを持て余してる俺ちゃんが動くしかねぇだろうが。

 

 けどよ……胸の奥がやけにざわつくんだ。いやな勘が拭えねぇ。足が重くなるほどの、BADな予感がひしひしと迫ってきやがる。

 ……あいつに、いったい何が起きてんだ?

 

 俺ちゃんはスケボーを蹴り出し、昼の街を駆け抜けていた。

 アスファルトのざらつきが足裏に伝わり、耳を裂くような風が横を過ぎていく。

 シンラが行きそうな場所――校舎裏、公園のベンチ、カードショップ、あの川沿いの土手……考えつく限りを端から当たってみたが、どこにもいねぇ。街灯の下を何度も通り過ぎるたび、空っぽのベンチや賑わっている店のシャッター……それらが、不気味な沈黙を突きつけてくるだけ………。

 

「チッ……シンラの奴、本当にどこに消えやがったんだ……!」

 

 焦りで舌打ちがこぼれる。胸のざわつきは増すばかりで、ペースを落とすことができなかった。

 ――気がつけば、俺ちゃんの目の前に、シンラの家が立っていた。

 

 薄暗い玄関先。窓からは一切の灯りが漏れていない。昼間だというのに、どこか夜みてぇな陰鬱さが漂っていた。

 ドアノブを力任せに引いたが、やっぱり開かねぇ。カギはしっかりかかってやがる。

 

「……ったく、どうすりゃいいってんだ。」

 

 そんな俺ちゃんの隣で、ダチッコがひょいと顔を上げた。

 

「ボッさん、ここは俺ッチに任せてくれっす!」

 

 そう言うなり、ちょこんと尻尾を鍵穴へ差し込む。ぐりぐり、カチカチ、と器用に動かし――「よしっ!」と小さな声をあげると、カチャリ、と乾いた音が鳴った。

 

 扉が、開いた。………こいつ、こんな特技あったの?マジで?

 

 まぁ何はともあれ、シンラの家には入れた。

 

 …………は?

 

 俺ちゃんはシンラの家の中に足を踏み入れた瞬間、息が詰まった。

 ……真っ暗だ。カーテンが閉め切られてるせいで、昼だってのに視界がほとんど効かない。

 しかも、他にもマジにひどい有様だった。床一面に散らばった紙くず、食べかけで放置されたままの皿、倒れたイス。まるで嵐でも通り抜けたみてぇな散乱ぶりで、生活の気配と同時に――不穏さがむせ返るほど漂っていた。

 

「……おいおい……何だよ、これ……」

 

 胸のざわつきは、もはや胃を締め付けるような圧迫感に変わっていた。

 

「ボッさん、これはちょっとヤバいんじゃねぇっすかァ!?」

「……あぁ。」

 

 踏み込んだ瞬間から、息苦しさが胸を押し潰していた。

 闇に目を凝らしても、浮かび上がるのは歪んだ輪郭ばかり。足先で散乱した紙や衣服を踏み分けるたび、ざらついた音とともに、鼻を突く腐臭が漂う。湿った食べ残し、乾きかけた飲み物、汗と塵の混じり合った淀み――その全てが混じり合って、部屋をひとつの「壊れた空気」に変えていた。

 

 俺ちゃんは思わず肩を竦める。

 

「……シンラ……どこにいんだよ!」

 

 低く漏れた声は闇に吸い込まれ、返事の代わりに、床板の軋む音が応えた。俺ちゃんの足音じゃない。反射的に振り返れば、背後には小さく震えるダチッコの影だけ。

 

「ボッさん………!」

「怖ぇなら隠れてたほうがいいぜダチッコ、これ、本当に何が起こるかわかんねぇぞ……!!」

 

 視線を戻すと、闇の奥に階段が口を開けていた。上へと続く暗がりは、不自然なほど重たく、湿った布を頭から被せられたように息苦しい。まるで「近寄るな」と唸っているかのように見えた。

 それでも、俺ちゃんの足は止まらねぇ。心臓が叩きつけるように脈打ち、衝動が背を押す。

 一段、一段。軋みが神経をかき乱しながら、二階へと進む。廊下は一層酷い有様だった。窓は新聞紙で貼り潰され、昼の光は一切遮断されている。空気は淀みきり、吸うたびに喉がひりついた。皮膚ににじむ汗は暑さのせいじゃねぇ。そこに漂う「異様な気配」のせいだ。

 

 ――いる。間違いねぇ。

 

 確信は理屈を超えて背骨を這い上がった。

 廊下の突き当たり、ひときわ重苦しく閉ざされた扉。そこから滲む気配は、静かで、それでいて圧倒的だった。喉が鳴る。理解してしまった。あれを開ければ、何かが決定的に変わる――後戻りはできねぇ、と。

 

 それでも、足は勝手に動いた。

 衝動に突き動かされるままにドアノブを握り、力任せに押し開ける。

 

 ――瞬間、鼻腔を突く。

 乾ききった汗の臭い、皿にこびりついたままの腐臭、閉じきった部屋が孕んだ重苦しい空気。

 その奥に、シンラはいた。

 

「――――――っ。」

 

 痩せ衰えてはいない。身体は確かに「生きている人間」の形を保っていた。だが、その眼だ。

 空虚、という言葉では足りなかった。絶望に沈み、光を拒み、映すものすべてを切り捨てた瞳。黒い深淵のような虚ろが、彼女の眼の奥に広がっていた。

 

 肩まで伸びた髪は梳かれることなく乱れてて、衣服はそのまま放り出したみたいに整えられていない。だが、そんな表層的な荒れなど瑣末に思えるほどに――その眼が、全部、物語っていた。

 見ているのか、見ていないのかさえ分からない。焦点を結ばないその視線は、まるでこの世を拒絶し、関わりを断ち切ったかのように冷たく、深く、底知れぬ淵を湛えていた。

 

「……シンラ……」

 

 声がかすれる。

 確かにそこにいるのはシンラだった。呼吸をし、生きて、俺ちゃんを見返している。だが――その荒んだ眼差しが突きつけていたのは、残酷な現実だった。

 

 シンラは「生きている」。

 けれど同時に、「死んだように在る」んだ。

 

 荒んだ眼差しと向き合ったまま、俺ちゃんは喉の奥が乾いていくのを感じていた。声を出すことさえためらわれたが、それでも口を開かずにはいられなかった。

 

「……シンラ。お前、何してんだよ……こんなとこで」

 

 闇に溶けるような声だった。だがシンラは応えない。唇がかすかに動いたかと思えば――か細く、ひとことだけ。

 

「……帰って」

 

 その言葉は、吐き捨てるでもなく、泣き叫ぶでもなく。ひたすら冷えて、無機質で、存在を拒む刃のようだった。

 俺ちゃんは一瞬、息を呑む。

 

「なにがあったんだ、シンラ……」

 

 踏み込むように問いかけても、彼女は首を振るだけだった。

 

「……話したくない」

 

 壁に弾かれるみてぇな拒絶。だが、その沈黙の奥には、ただ隠しているだけじゃねぇ、もっと深い、崩れきったものが滲んでいた。

 思い出す。ジョーの顔。あいつの真剣な眼差し。

 ――頼む。シンラを見つけてくれ。

 その声が脳裏で反響する。

 俺ちゃんは奥歯を噛みしめ、視線を逸らさずに言った。

 

「……悪いが、俺ちゃんは出ねぇ。お前の口から聞くまでは、ここから一歩も動かねぇ。…もう一度訊くぜ、何があったんだ!!!」

 

 沈黙が続いた。

 そして。

 

「やめろッ!」

 

 張り裂けるような声が、閉ざされた部屋を震わせた。

 次の瞬間、シンラは身をよじり、傍らに転がっていた空き缶を掴むと、俺ちゃんへ向かって全力で投げつけた。金属の衝撃音が壁に跳ね返る。

 止まらない。散乱した本、皿、破れた衣服――手に触れるものを次々と掴んでは、半狂乱のように投げつけてくる。

 

「……出てけ!出てけよ!帰れって言っただろォッ!!!」

 

 その叫びは怒りじゃねぇ。恐怖と、絶望と、自己嫌悪が絡み合って滲み出る、どうしようもねぇ慟哭だった。

 涙は流れていない。だが、声の奥には、泣くことさえ許されない心の軋みが渦巻いていた。

 崩れ落ちるように荒れていくシンラを前に、俺ちゃんの胸は鋭い杭で貫かれたみてぇに痛んだ。

 

 部屋の中は、シンラの絶叫で満ちた。紙くずや皿、倒れた椅子が飛び交い、ぶつかる音が鈍く響く。窓から差し込む光は散乱する破片に遮られ、部屋全体が歪んだ異形の世界のように見えた。

 

 シンラは震え、嗚咽混じりに声を絞り出す。

 怒りでも悲しみでもない。ひたすらに「絶望」そのものが彼女の口から噴き出していた。

 

「帰れ……帰れ……!出て……行け……!」

 

 言葉は無数に飛び交い、壁や天井にぶつかって跳ね返るたび、まるで部屋の空気そのものが裂けるかのようだった。

 

 俺ちゃんはひたすらその叫びを見つめた。胸の奥が痛くなる。どうしようもない虚無が、シンラの体を通して空気にまで染み出しているのを感じた。手を伸ばしても、言葉をかけても、何も届かない。届かない――そんな無力感が、心を締めつけた。

 そして、限界が来た。

 胸の奥でくすぶっていた抑えきれぬ感情が、一気に弾ける。

 俺ちゃんは一歩踏み込むと、シンラの肩に両手をかけ、胸ぐらを掴んだ。妥協とかしねぇ、全力でつかんだ。全ての怒りと、守りたい思いをぶつけるための力だった。

 

「シンラ、聞け――今、お前がどれだけ叫ぼうと、泣こうと、俺は離さねぇ!俺が聞くまで、ここを出ることはねぇ!」

 

 シンラの瞳が瞬きをする。荒れ狂う絶望の海の中に、わずかに光が差し込むようだった。しかし、まだ逃げ場のない部屋の中で、彼女は混乱と恐怖に縛られ、反射的に手近な物を掴み投げる。皿、紙束、空き缶。ボルツの肩をかすめてぶつかり、床に叩きつけられる。

 それでも、俺ちゃんは目を逸らさない。逸らすもんか。手を緩めず、胸ぐらを掴んだまま、声を震わせず、ひたすらに言い続ける。

 

「お前は、お前の父親助けるんだろ?」

 

 俺ちゃんがその言葉を吐いた瞬間、空気が裂けた。

 シンラの眼の奥で、何かがぷつりと切れたのが見えた気がした。

 次の瞬間、俺ちゃんの顔に、拳がめり込んだ。

 衝撃で視界が一瞬白く飛ぶ。ぐらついた俺ちゃんの胸に、彼女は獣みてぇに飛びかかってきた。馬乗りになり、両拳を振り上げ、絶叫を叩きつける。

 

「知ったふうなこと言わないでよ……!」

「アンタに……アンタなんかに、私の何がわかるっていうのよォォッ!」

「見下されて、罵られて、笑われて……努力しようとしても、何もできなくて!全部、全部、無駄で……!」

「顔を思い出すだけで息が詰まる!声が響くだけで心が千切れるの!」

「私の存在なんて、最初から間違いだったんだッ!私なんか、いない方が……!」

 

 シンラの声は、叫びというより呪詛に近かった。

 拳は弱々しいはずなのに、振り下ろされるたびに胸の奥まで突き刺さる。涙と唾と、憎しみと絶望が入り交じり、顔を歪め、喉を引き裂くように言葉を連ねる。

 

「お願いだから……もう、私に近づかないで!」

「………シンラ………。」

「ボルツ…どうせあなたまで裏切るんでしょ!どうせ最後には笑うんでしょ!?」

「私を助けるだなんて……そんなの、信じられるわけないじゃないッ!」

「誰も、誰も、私を必要としてないんだよ!」

 

 部屋中が震えていた。

 散乱していた物を掴み、力任せに投げつける。皿が砕け、紙束が宙を舞い、空き缶が俺ちゃんの肩を打ち、床を転がる。その一つ一つが、シンラの心臓の悲鳴の破片みてぇだった。

 

 俺ちゃんは……ただ、必死にこらえてた。

 殴られても、罵られても、崩れ落ちそうな自分を押しとどめて、シンラの絶叫を、全部、耳で受け止めた。痛ぇ。苦しい。けど、それでも目を逸らすわけにはいかなかった。

 

 やがて、振り落とす覚悟を決めた。

 全身に力を込め、シンラの腕を振り払い、どうにか体を押し離す。荒い息をつきながら、床に膝を突き、それでも立ち上がった。

 

「……そうかよ。」

 

 喉が焼けるみてぇに痛ぇ。けど、声は濁さねぇ。

 

「やっぱり、父親が絡んでるんだな。」

 

 シンラは泣き笑いのような顔で、なおも荒く息を吐いていた。怨念と絶望の中で、まだ抗うように俺ちゃんを睨みつけてくる。

 俺ちゃんは拳を握りしめた。

 逃げねぇ。目も逸らさねぇ。

 

「……なら、一つ言わせろ。………デュエマしろ、シンラ。俺ちゃんとだ」

 

 声が部屋に落ちた瞬間、空気がぴんと張り詰める。

 俺ちゃんは一歩踏み込む。

 

「俺ちゃんはお前のことを分かった気にはなってねぇ。全然だ。何も理解できちゃいねぇよ。」

「けどな……それでも俺ちゃんは、お前のことを助けたい。協力したいんだ。どんなに堕ちてても、どんなに絶望の中に沈んでても――俺ちゃんはお前を見捨てる気はねぇ!」

 

 さっきの胸ぐらを掴んでるときみてぇな眼差しで、俺ちゃんは彼女を見据えた。

 シンラの荒んだ瞳の奥で、微かな揺らぎが震えたのを、俺ちゃんは確かに見た。

 

「……わかったわよ。やってやるわよ!」

「その精神だけは、変わってねぇらしいな。ありがてぇ、それじゃあマジにいくぜ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボルツ キーカード:“罰怒”ブランド

 

シンラ キーカード:希狩りの悪種羅樹

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『デュエマ、スタート!』

 

 

 

 

ボルツ 手札3 シールド5 マナ3 バトルゾーン チュチュリス

 

シンラ 手札4 シールド5 マナ4 バトルゾーン なし 

 

 

 

ボルツ ターン4

 

「行くぜ、シンラ。」

「………うん。」

 

 これといった動きはねぇ、……いや、できねぇのか。………デュエマをすること自体に首を横には振ってねぇが、どこかで自分を責めてやがるな……多分。だから思うように動けねぇし、自信を無くしてる。

 だったらどうにかして、俺ちゃんがそいつをたたき起こしてやるしかねぇよなぁ!

 

 

「ドロー、マナチャージ!そして………マジでBADにいくぜぇ!」

 

 

 B・A・D!!

 

「B・A・D・2の効果で、“襲斗”戦車ガランガを2マナで召喚!さらに……それをもう一体!」

「……………」

「黙りこくってるのはいいが、もう一度言う。俺ちゃんはお前を見捨てる気はねぇ!必ずお前を昔みてえにしてやる!」

「っ……昔、みたいに………っ!!!」

「行くぜ!チュチュリスでシールドを攻撃!」

「………チッ。」

「ターンエンド!その時、ガランガ2体は破壊される。だがしかし!ここでガランガの能力を発動!破壊されたとき、相手のシールドを1枚ブレイクだ!」

 

 一気に2枚!合計3枚割ってやった。次のターンにはとどめを刺せる。……が、あいつ、トリガーを引かなかったな。シンラのことだ、今のブレイクでリターンを得てくると思ってたが…。

 間違いなく弱くなってやがるな。

 それに、いつまでカードを見て止まってやがるんだ?

 

「………昔みたいに、ですって?」

「…?」

「簡単に言ってくれるじゃない!そんなことしたこともないくせに!!口で言うのは簡単なのよ、けどねぇ!やってみればわかるわよ!無駄よ、無意味よ!無価値なのよ!!結局失敗に終わるのよ!私を戻せる理屈がある?具体的な方法がある!?ないでしょ?」

 

 俺ちゃんの胸が締め付けられる。名前を呼ぶしかなかった。

 

「……シンラ………」

 

 だがそれすらシンラには毒だ。

 

「名前だけ呟いたところで何が始まるってのよ……」

 

 視線を逸らし、唇を噛み、嗚咽混じりに吐き出す。

 

「もう嫌。アンタみたいなやつがここにいるだけで腹が立つのよ……」

 

 肩が震え、机の上のカードを握りつぶす勢いで押しつける。

 

「もう希望なんてない………希望のないデュエマを見せてあげる……!!アンタみたいなやつ、ぶっ潰してやるわよッ!!!!!」

 

 絶叫。濁った喉から絞り出される、怨嗟と狂気の混ざった声。

 それは勝ち負けを超えて、ただ存在を否定するための叫び………。

 

 

 

 

シンラ ターン4

 

「私のターン!!ドロー!」

「呪文、ポジトロン・サイン!!効果で山札の上から4枚を見て、その中から「S・トリガー」を持つ呪文を1枚タダで唱えることができる!」

 

 って、てことは、5マナでマジに強ぇ呪文が打てるかもしれねぇってことかよ!?

 

「4枚………その中から、こいつを唱えるわ……「希狩りの悪種羅樹」」

「見たこともねぇカードっス!?」

「闇文明……だけのカード!?」

「その効果で!山札から6枚を墓地へ。そのあと、墓地からコスト3以下のクリーチャーと呪文を1枚ずつ選び、使うことができる!まずは来い!!!墓地進化、死神人形デスマーチ!!!」

「1コストのブロッカー?……それがどうしたってんだ?」

「まだ終わりじゃないわよ。3コストの呪文!………龍脈術落城の計!これでコスト6以下のカードを1枚選び、手札に戻す!」

「コスト6以下?チュチュリスを戻すってことか?」

「はッ、馬鹿じゃないの?私が戻すのはデスマーチよ。」

「なにっ!?どういうことだ?」

「落城の計の効果は、「コスト6以下のカードを手札に戻す」効果。私が戻すのは「デスマーチ」であって、「デスマーチの進化元」はその場に残る。だって「デスマーチ」じゃないから。」

 

 なんだと!?つまり、まさか……!!

 

「デスマーチを手札に……そしてお出ましよ。最強のクリーチャー!」

 

 

 ――世紀末ヘヴィ・デス・メタル――

 

 

「パワー39000だと!?」

「ととと、とんでもねぇヤツが出てきたっスー!!!!?」

「力の差を知れ!お前なんて足元にも及ばないのよ!!!ヘヴィ・デス・メタル!シールドをワールドブレイクよ!!」

 

 さっきまで5枚あったシールドが……一気に割られやがった!

 だが……トリガーはある。

 

「シールド・トリガー、オリオティス・ジャッジ!!」

「光文明のカード……!?」

「火文明のシールド・トリガーは、ある程度でけぇやつには無力なことが多いからな。保険ってやつだ。こいつの効果で、お前のヘヴィ・デス・メタルを山札の下送りだ!!」

「チッ、ターンエンド。」

 

 ……静寂。

 だが次の瞬間、シンラは小さく嗤った。

 

「……くだらないわね。」

「あ?」

「せっかく……“私の力”を見せつけてやろうと思ったのに。あんたが一枚のカードで消した……?……ハハ、笑わせないでよ。」

 

 指先が震え、机を爪で引っ掻く。

 

「どうせ……全部無意味よ。私が何を出そうと、何を壊そうと……あの人の声が響くのよ。“お前なんて無価値だ”って……聞いたこともないはずなのに、まるでそれが、生まれたころから言われてたのかってぐらい、鮮明に残ってる。」

 

 シンラが、俺ちゃんを血走った目で睨みつける。だけど……違う、さっきみたいな目じゃない。狂ってはいない……。

 

「そうよ……無価値なのよ、全部。だから……あんたも、ここで無価値になりなさいよ……っ。」

 

 その声は、絶望だけが塗られた、呪詛………だ……。 

 ――相当なトラウマを叩き込まれてきたんだろうな。だが、それがシンラを諦める理由にはならねぇ。ましてや、こいつが自分自身を「無価値」と切り捨てる理由にも……絶対にならねぇ。

 が、問題はどうやって伝えるか、だ。ていうかこいつ自身のこの状況を変えなくちゃ意味がねぇ。

 俺ちゃんは一瞬だけ考え、ある話を持ち出すことに決めた。思いつきだが、これしかねぇ。

 

「……なぁ、シンラ。ジョーが今、何やってるか知ってるか?」

「はぁ?……何、いきなり。知ってるわけないでしょ……」

「だろうな。じゃあ教えてやるよ。」

 

 俺ちゃんは一呼吸置いてから、声を強く張った。

 

「――あいつは今、“大親友と命懸けのデュエマ”をやってる。」

 

 シンラの瞳がわずかに揺れる。

 

「……何が言いたいの。私に何を押し付けようってのよ!!」

「まぁ聞け。ジョーにとって、キラは大親友だ。かけがえのねぇ存在だ。」

 

 言葉を噛みしめるように、俺ちゃんは続けた。

 

「だがな……そのキラは、デュエルウォーリアってやつを倒した。当たり前のことに聞こえるかもしれねぇが、その状況をジョーに見られたんだ。しかもそいつは、何の悪意もねぇ、ただ優しいだけの爺さんだったんだとよ。ジョーにもすげぇ親切にしてたらしい。」

 

 シンラが小さく息を呑んだ。

 

「さらに言えば……キラはジョーに、そんなこと一切話してなかった。裏切りに近ぇ行為だよな。友達に隠し事して、信頼をぶち壊すようなことをしたんだ。」

「……っ」

「だが、それでもキラは“自分の正義”を執行し続けた。友情よりも、世間の理解よりも、自分の信じる正義を優先したんだ。」

「だから何……ッ!『結』を言え!!」

 

 シンラの声は震えていた。

 

「結論はこうだ。」

 

 俺ちゃんは目を逸らさず、真っ直ぐにシンラを射抜く。

 

「ジョーは――そんなキラに、“真のデュエル”を申し込んだ。」

「ッ……!」

「理由なんざ、立派なもんじゃねぇかもしれねぇ。ただ『親友を助けたい』、それだけだ。だけどな、その覚悟は本物だった。」

 

 拳を握りしめる。

 

「親友が裏切りのような行動を取った。親友が正義に酔って、人を裁いていた。……それを知ったら、普通はもう信じられねぇ。心に一生残る傷を背負うかもしれねぇ。誰に支えられようが、消えねぇほどの傷だ。」

 

 シンラは沈黙し、爪で自分の腕を押し込んでいた。

 

「……それでもジョーは諦めなかった。親友を信じて、自分を信じて……どれだけ差があろうが、どれだけ痛みを味わおうが、弱音を吐かずに真正面からぶつかり続けたんだ。」

「………………」

「ジョーはまだ、俺と同じ十歳だ。そんな歳で持てる勇気じゃねぇよ、普通は。……だが、あいつはやった。親友のために。覚悟を決めて、命を懸けて。」

 

 俺ちゃんは一歩踏み出す。

 

「お前だって……父親を助けるために戦ってた。“はず”だろう?」

 

 声に熱がこもる。

 

「なら今のお前は……どうしちまったんだよ、シンラ!!」

「っ……私は…………私は………!!」

 

 

 

ボルツ ターン5

 

「決断できねぇか、まだ自分が怖いか、自分を信じられねぇか!!!!だったら………俺ちゃんがそれを燃やしてやる!全部、全部燃やし尽くして、お前の助けになってやる!!!!」

 

 ドローッ!!!行くぜ、切り札はもう手札にある!このまま押し切れば……こいつを……!!

 

「まずは、ダチッコ・チュリスを召喚!」

〈よーっしゃ、行くっスよぉ~!!〉

「さらに!B・A・Dォ!ダチッコとチュチュリスの能力も併せて、1コストで“血煙”マキシマム!」

「ボルツ………。」

「まだだ!このターン2体のクリーチャーを召喚した。コストは1!“罰怒”ブランドォォッ!!!!」

 

 私は…………何がしたかったの?お父さんを助けられなくて、自暴自棄になって、自分で、自分の限界を決めて…………全部諦めて……

 

「やれっ、“血煙”マキシマム!」

 

 ダブルブレイク。これでシンラのシールドは0。何もなけりゃぁ俺ちゃんの勝ちだ。

 

「シンラ。どうした………シールドチェックだ。最後の2枚、そこに、全部かかってんだぜ。」

「…………わかってるわ。」

 

 なんで、私は諦めたのかしら………今思えば、もっとみんなに協力してもらえばよかった。誰かにこのことを言えばよかった。もっと、もっと、私を強くしてほしいって……そうすれば、私はもっとお父さんに近づけた、お父さんにもっと真剣に向き合うことができた!!

 ずっとわからなかった。お父さんを助ける理由が。具体的な理由が………

 そりゃそうよ。わからないんじゃない!ないんだもん!!大切な人を助けることに「具体的な理由」なんてない!ただ助ける!その思いがあれば、それ以外は何も寄せ付けない理由なのよ!!!

 だから、だから………

 

「これ以上自分に負けるわけにはいかない!!」

「ッ!!いいぜ………そうだよ、シンラ!お前はそうじゃなくちゃいけねぇだろ!!!」

 

 S・トリガー、マスター・スパーク!

 

「これでボルツのクリーチャーをすべてタップ!!」

「やるじゃねぇかシンラ!マジでBADだぜ!…ターンエンド。その時、“罰怒”ブランドの効果でチュチュリスを、“血煙”マキシマムの効果でダチッコを破壊。さぁ、シンラ、お前のターンだぜ!!」

 

 ターンが回ってきた。多分このターンに決め切らなくちゃ負けるわ………けど、その前に……

 

「ボルツ!」

「ん?」

「…………ありがとう。うまく言葉は出ないけど……すごく、助かった。」

「まぁな。どうなろうが、シンラも俺らと同じデュエリストだ。大切な友達だ。………話が長くなっちまうといけねぇなぁ。さて、お前はこのターンどうするつもりだ?」

「どうする……?」

 

 シンラの眼がキラリと光りを宿す。

 

「ある程度BADな気は治ったらしいが、まだちょっと抜けてるところがあるかもしれねぇな。言っとくが、俺ちゃんは“血煙”マキシマムの効果で敗北を一回逃れることが可能だ。そうしたら、俺ちゃんは次のターンに“罰怒”ブランドでダイレクトアタックをしてお前に勝てる。つまるところシンラ、お前は………」

「“血煙”マキシマムを破壊したうえで、ダイレクトアタックをしなくちゃいけない。ってところかしら……しかも、バトルで破壊したりするだけじゃ無謀よね、そいつ、破壊されるときほかのクリーチャーを身代わりにできるんでしょ?」

「そういうことだ。俺ちゃんの手札にスピードアタッカーがいるってところも考えもんだぜ?それに、お前のデッキに光文明のカードはあれど、ブロッカーは見えねぇ。それに文明がばらばらだから、ブロッカーが手札に何体もいる可能性だって低い。」

「本当に、このターンで終わらせなくちゃいけないみたいね。」

 

 ………方法が思いつかない。けど、それでもやるしかない!

 自分でつなぎとめたチャンスなのよ、それを活かさなくちゃ………せっかく復活したってのに、情けないったらありゃしないわ!!

 

 

 

 

シンラ ターン5

 

「私の、ターン!!」

 

 今やるべきことは、ひとつだけ。目の前に立ちはだかる敵を倒す。それが、力を得るための第一歩。父さんを助けられるのは、この私しかいないのだから。なら、私がやらなければ誰がやる。

 私はもう絶対に負けない。勝って、勝って、勝ち続けて――必ず辿り着く。

 

「ドローーッ!!」

 

 指先が弾いた一枚を引き抜いた瞬間、胸の奥に火が灯った。

 

「……これ……まさか……!?」

(なんだ……?知らねぇカード……?だが、シンラなら期待を裏切らねぇはずだ。やれよ、やってみせろシンラ!)

「……ありがとう、あなたの力を借りるわ。そして…私は必ず勝つ!」

 

 シンラは迷いなくマナを揃える。手の動きにもう、かつての半狂乱な影はなかった。

 

「6マナをタップ……来て!新しい切り札……“招勝妖精サンフラワー”!!!!」

「サンフラワー……!?まさか……!」

 

 見覚えがあった。俺ちゃんがシンラと初めてデュエマをしたとき、場にいたカード――だが、姿形がまるで違う。強化どころじゃねぇ……完全に別物にすら…!?

 

〈久しぶりです、シンラ様。〉

「サンフラワー……なのね? ごめん、最初引いた時、誰だか全然わからなかった……」

〈ええ、無理もありません。けれどこうして戻れた。シンラ様が立ち直ってくださったから。もしあのまま沈んでいたら……我々も、何もできないままでした。〉

「……そうだったの。私、全然知らなかったわ。」

〈それでいいんです。ずっと消耗しきっていたんですから。ですが、もう違いますね。ご友人方も、そのうち戻ってくるでしょう。皆、シンラ様の力を信じて探しているはずです。〉

「……ありがとう。」

〈礼はいりません。それよりも今は――私の力を存分に使ってください。シンラ様のために磨き続けてきた、この力を。〉

 

 ……あぁ、やっぱり。シンラのクリーチャーも大変だったんだな。俺ちゃんなんかよりずっと……支えきれなかった分、余計に重かったろうに。

 

「さぁ、能力を使うわよ!」

「おっと、そうだったな。見せてもらおうじゃねぇか!」

「……サンフラワーがバトルゾーンに出た時、山札の上から5枚を見る!そしてその中から……1枚を選んで相手に見せた後に手札に加える!」

「キリモミ・スラッシュ?」

「そして、相手に見せたカードの持つ文明のクリーチャーを1体選び、持ち主のマナゾーンに送ることができる!“血煙”マキシマムをマナ送りに!」

「考えたな…“血煙”マキシマムの身代わり効果は、破壊されなくちゃ発動しねぇ……が、そっからどうすんだ?そいつはスピードアタッカーじゃねぇだろう?」

「えぇ、確かにスピードアタッカーじゃないわ。「今は」ね…。」

「……つーことは、まだあるってのかぁ!!」

「えぇ、もちろん……手札に加えたカードがコスト4以下のカードなら、ただで使ってもよい……!キリモミ・スラッシュの効果は、自分のクリーチャーすべてに「スピードアタッカー」を与える効果。“血煙”マキシマムがいない今!もう邪魔するクリーチャーはいないのよっ!!!」

 

 場の空気が一変する。

 “血煙”マキシマムはマナ送りにされて、壁は消えちまった。残るは――ダイレクトアタック…。

 

「……なるほどな。俺ちゃんの負けってわけか。だが……」

 

 俺ちゃんは笑う。

 

「お前はそうでなくちゃな、シンラ!さぁ、思いっきり来い!!」

「ええ、言われなくても!“サンフラワー”で――ダイレクトアタック!!!」

 

 光が弾け、勝敗は決した。

 

「………ありがと、ボルツ。」

 

 シンラのその声は、勝利の叫びでもなく、半狂乱の絶叫でもなく……確かな決意を帯びた、静かな感謝の声だった。

 

「もう聞いたぜ。礼はもういらねぇよ。……まぁ、お前が戻ってきてくれてよかった。」

「うん。一人じゃ絶対、戻ることはできなかったから…………。」

「…そーいやよぉ、お前、マスターカードはどうしたんだ?このデュエマ中、一回も見せなかったじゃねぇか。」

 

 その瞬間だった。

 記憶の底から、あの日の光景が蘇る。

 自暴自棄になる直前――まだ心が砕け切る前の時間。

 シンラバンショーは、他の妖精たちと同じように私を慰めてくれた。

 泣きじゃくる私のそばに寄り添い、言葉を重ね、どうにか立ち上がらせようとしてくれた。

 けれど、それでも私は自分に自信が持てなかった。

 「無理だ」「できない」と、己を縛りつけ、差し伸べられた手を掴むことができなかった。

 

 その結果――

 

「……シンラバンショー、どこかへ行っちゃったの。」

「……え?」

 




オリジナルカード紹介

希狩りの悪種羅樹 コスト6 文明:闇
レアリティ R

・S・トリガー
・山札の上から6枚を墓地に置く。その後、墓地からコスト3以下のクリーチャーと呪文を一枚ずつ選び、コストを支払わずに使ってもよい。


フレーバーテキスト
朽ち果てた樹に、何の希望があろうか。






招勝妖精サンフラワー パワー6000 コスト6 文明:自然
種族:グランセクト/ゴッド・ミニ
レアリティ SR

・W・ブレイカー
・このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、山札の上から5枚を見る。そのうちの1枚を相手に見せ、手札に加え、残り4枚を好きな順序で山札の下に置く。このようにして見せたカードと同じ文明を持つクリーチャーを1体選び、持ち主のマナゾーンに置いてもよい。
・クリーチャーの効果によってカードを手札に加えるとき、それがこのターン初めて手札に加えるコスト4以下のカードなら、そのカードをコストを支払わずに使ってもよい。
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