副局長と元野良犬後輩 作:井之頭
「おーい、後輩ー。こーはーい?」
「イサムさんなら外回り行ってますよ」
コノカがイサムを連れて外回りに行こうと彼のデスクの下を覗き込んでいると、一人で外回りに出てしまったらしい。
「あんにゃろぅ」
「……連絡して合流すれば良いのでは?」
「……今日のラッキーアイテムが天然パーマだった。ついでに星座占いの順位も四位だった」
一位じゃなくても良い。二位でも三位でも良い。
だけど、四位だけは駄目だ。四という数字は不吉過ぎる。
ついでにイサムは最下位の十二位だった。
「私一人じゃあ四位だ。私だけ外に出たら何が起こるかわからない。だから後輩と一緒に行動して打ち消さなきゃあならない」
面倒臭いことを言い出すコノカに呆れた局員が複数人で彼女を囲んで胴上げでもするのかという勢いで持ち上げられる。
「お、なんだ。お前ら! よせ! 離せ!」
こういう時はジンクスを打ち破らせようとするのと同時にいい加減素直になれという意味合いも込めてコノカの背中を蹴り飛ばすことになっている。
『せーのっ!』
「あいたー!?」
局員に投げ飛ばされて部屋から追い出された。
受け身を取ってすぐに部屋の中に戻ろうとすると、鍵を掛けられた上に恐らくバリケードか何かを準備する音が中から聞こえる。
「……たく……姉御にどやされても知らねぇからな……」
こうなると言うことを聞かなくなる部下達にやれやれと言った様子でイサムに通話を掛ける。
「よっ、今何処居る?」
『あぁ!? 今、不良が──ドゴォォォン!!』
電話口から爆発音が聞こえたせいで思わず端末を投げ捨てそうになる。
音が止んでからもう一度恐る恐る耳を近づけた。
「うっせ! お前今何処いんだよ!」
『ギャリギャリギャリ!区のコンビニ!』
「……あー、もう、わかった。後で掛け直せ。すぐ終わるだろ」
今度は戦車の走る音が聞こえたため、イサムの返事を待たずにコノカは通話を一方的に切る。
冷静に考えれば、星座占い最下位に運もクソも無かった。
加えて言えば、十二位と四位を足し算すれば十六で、それを四で割ったら四と、さらに不吉だった。
(ままならねぇなぁ……おん?)
コンビニで飲み物と焼きそばパンを買って、モノレールの待ち時間中にSNSをチェックすると、見覚えのある顔がタイムラインに表示される。
ゲヘナの不良生徒の起こした騒ぎに居合わせて、それを見過ごせず鎮圧したらしい。
アップロードされた写真の道路標識や建物からイサムの現在地を割り出してコノカはモノレールを乗り継いで最寄駅まで向かう。
(おー、居た居た。横に居るのは……ゲヘナ風紀委員の──)
現着したコノカの目に入ったのは事後処理の引き継ぎをしているイサムとゲヘナ風紀委員の姿だった。
二人のやり取りはヴァルキューレの公安局員とゲヘナの風紀委員としては何もおかしなことはないし、顔見知りとして何か雑談しているようなことも、特に何もない。
そんな光景がコノカのよくわからないモヤモヤにまた痰を吐き捨てたくなるような気持ちになる。
「後輩。はよ、帰るぞ」
「あ、ちょっ、わざわざ来たんすか。暇なんですか? あ、というか、すみませんあとお願いしまーす!」
イサム視点では急に現れたコノカに首根っこ捕まれてその場を離脱させられて意味不明な状況なのだが、仕事は最後までやらないとカンナにどやされることを理解しているため、引き継ぎだけは無理矢理済ませた。
「あんさぁ。お前あんま他の学校の特定の生徒とあんま仲良くすんなよ」
「はぁ? なんでまた?」
「……そういう相手が危ない時に私情に走んなよってこと」
そういう理由で大怪我をする局員も居る。最悪の場合ヘイローが壊れることだってある。
その心配自体は本物で、困っている誰かが居たら何も考えずに突っ走りそうなイサムはそうできてしまう危うさがあった。
「じゃあ、あの時の先輩は私情無かったんすか?」
引っ張られながらも、在りし日のことを思い出しながらイサムが問うが、角度的にコノカの表情は見えなかった。
「……うっせうっせ、知らねぇ! お前、サ店でなんか奢れ」