零 ~イヌツキの少女達~   作:もふもふたぬきねこ

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小春がいなくなってしまって。
人捜しの方法と言ったら、濡鴉ノ巫女ならアレです。

今回もよろしくお願いします。


11. 人捜しの方法とは

『そっちの方は?』

 

『いえ。近隣の方にもお話を伺ってみていますが、今の所有力なお話は得られていません』

 

『わたしは海外の方を優先に聞いてみますね!』

 

『悪い! 俺は小春が行きそうなところをしらみつぶしで当たってみる!』

 

「分かりました。鞍馬君はその場所だけ教えてもらっていいですか? 有地さんは市街の南の方を、茉子は中心街をお願いします。レナさんは引き続きお願いしますね。馬庭さん、以前小春さんが気付いたら居たっていう場所はご存知ですか?」

 

『そっちに向かってみます! 場所は……』

 

自宅に落ちていたらしい小春さんのスマートフォン。

滅多に忘れ物をしないらしい小春さんの手荷物に鞍馬君が気付いて電話をしたら、まさかの玄関からバイブ音が鳴り響き。

田心屋まで届けに向かったら、馬庭さんのお話。

ここに来られる間に聞いた話でも、それらしい女性は目撃されていないとの事でした。

 

小春さんの行方不明が分かって。

今は茉子、有地さん、レナさん、鞍馬君、馬庭さんの5人が町で小春さんを捜して。

みんなの通話を聞きながら私が神社で地図に印をつけているような状況。

連絡は取れませんがムラサメ様も見て回ってくださっています。

 

「玄十郎さん、商工会の方はいかがでしたか?」

 

「いえ、今の時点ではめぼしい情報は得られておりません……申し訳ありません安晴様、お手数をおかけする事になってしまい」

 

「とんでもないですよ。僕も他の伝手を当たってみましょう。みづはさんへの連絡がまだでしたね」

 

「ワシも次の連絡を受け次第直接見て回って参ります」

 

神隠しに遭ったというフレーズが何度も頭の中を反芻する。

 

神隠し、神隠し、神隠し。

 

日中、小野さんは何と言っていた?

 

 

 

――中には山の中で気付いた人もいて。

 

 

 

もうじき日が暮れる。大変まずい。

ただでさえ夜間の山は危ないのに、ましてや武実乃山だなんて。

前のお祓いから日数はそれなりに経っている。穢れが溜まっていてもおかしくない。

なんだか天候も怪しく見える。この分だと雨が降るかもしれない。

 

私も直接探した方がいいのでは?

 

そうしようとして……茉子と有地さんに留められた事を思い出す。

一人は状況管理の人がいると、私は無理をし過ぎると。

 

これ以上出来る事は――あ!

 

「皆さんすみません! 一度通話を切ります!」

 

『芳乃様が捜しに出るのは駄目ですよ!』

 

「ううん、別の所に電話を掛けるためだから!」

 

電話を切って、元々数少ない私の携帯電話の電話帳に最も最近登録された番号をコールする。

お願い、出てください。

 

『……はい、もしもし』

 

「……!! 私です! 朝武芳乃です! 不来方さんですか!?」

 

『はい、不来方ですが……どうされたんですか?』

 

出てくれた! こういった事にお詳しいのか分からないけれど!

 

「友達が神隠しに遭ってしまって! 不来方さんはこういった事もご存知ですか!?」

 

「芳乃!? 夕莉君に連絡しているのかい!?」

 

お父さんが何か言ってるみたいだけど、それどころじゃない!

 

 

 

『…………その神隠しに遭った方の写真と、何か思い入れのある品物を用意できますか?』

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

「持ってきた! これでいいのか、巫女姫様!」

 

「おかえりなさい鞍馬君。多分としか言えないですけど……」

 

あれから通話に戻って皆を呼び戻し、鞍馬君には小春さんの写真と品物をお願いしました。

持ってこられたのは入学式の時のお写真と、学院で普段付けていらっしゃる白いリボンのヘアバンド。

このバンドが家にあるという事は、今は私服姿でいらっしゃるようですね。

これが不来方さんのご希望の物に沿っているといいんですが。

 

『不来方がこれを希望したのか?』

 

「はい……すぐにこちらに向かって頂けるとの事だったので、何のために必要かは全く伺えていないんですが」

 

「何か出来るんだと信じたいな。方法が思い浮かばないんだけど」

 

「失くしもの探しはされていたと伺いましたが、まさか?」

 

「マサオミたちのお知り合いの方なんですか?」

 

ムラサメ様も戻ってこられて、私たちは不来方さんに何が出来るだろうと噂し。

 

「申し訳ありません。アタシがもっと小春ちゃんを気にかけてあげていられれば」

 

「……また、彼女の力をお借りする事になってしまうとは。黒澤さんにも顔向けが出来ません」

 

「今は力を借りるべき時です。反省と御礼はその後で大人一同しっかりと行う事にしましょう」

 

「結局大した対策は打てませんでしたからね。一帯を禁足地とする事も視野に入れるべきかもしれません」

 

到着されたみづはさんとお父さんたちは――心配は勿論なんですが何やら別の悩み事も?

そして。

 

 

 

「御免ください」

 

 

 

玄関からお声が! 思っていたよりずっと早い!

 

「はい! 今すぐ! ――ワタシが行きますから皆さんはここに」

 

みんな思わず立ち上がりましたけど、いつものように茉子が対応に出てくれました。

居ても立っても居られないとはまさにこの事ですけど、ここは任せましょう。

 

 

 

「お待たせしてしまってすみません」

 

「こちらこそ突然お電話をしてしまって……」

 

「……申し訳ない、夕莉君」

 

「いえ、安晴さんも芳乃さんも、大丈夫ですから。それでお願いしていたものは?」

 

「小春の写真と私物ならコレです……貴女が捜してくれるんですか?」

 

そういえば鞍馬君とレナさんは初対面。鞍馬君には合わせるつもりはなかったんでした。

とはいえ今の状況は……。

 

 

 

「お願いします! 小春を……妹を! 見つけてやってください!!」

 

 

 

意外と言うと失礼極まりないのでしょうが、鞍馬君は真っすぐに不来方さんへ立礼。

 

「あいつは……小うるさいしムカつくしで……大事な、妹なんです」

 

「ワシからも宜しくお願いします。こうして孫を危険に晒した上に、また夕莉君の力をお借りするなど恥の上塗りもいい所ですが……他に縋れるものもないのです」

 

「俺にとっても従妹だけど妹みたいなもので。どうかよろしくお願いします!」

 

玄十郎さんも有地さんも頭を下げる。玄十郎さんは特に重そうな。

普段はあんな会話をしていますけど――鞍馬君はちゃんとお兄さんなんですね。

 

「玄十郎さんのお孫さんでしたか……大丈夫ですから。もうじき日も暮れますし雨も降りそうな天気です。急ぎましょう」

 

不来方さんは動揺する事もなく。見つけるための最善最速の行動を取られます。

少なからずオロオロされそうな場面でもありますけど、それだけ冷静という事ですね。

 

『それで……不来方はこれをどう使うのだ?』

 

「「寄香(よすが)」と言ってこの2つを残影(ざんえい)影見(かげみ)――人の残り香を見る、とでも言いましょうか。それに使います。直近の行動を辿れば今居る場所に追いつける筈です。日中は鵜茅学院に?」

 

「はい。授業は普通に受けられています」

 

茉子が不来方さんの質問に回答してくれます。

 

しかし……残影? 影見? 物とかから誰かの足跡を辿れるだなんて。

こういうのをなんて言うんでしたっけ。

 

「すごいですね。サイコメトリーってやつでしょうか?」

 

そうだ、それですよレナさん。

先日の憑代の時には考え付かなかったですけど、これってサイコメトリーなんですよね。

物の記憶を読み取れるとは。

 

「学院から小春の跡を?」

 

「そうですね。何処を歩いたのか分からない以上は確実に分かっている所から見ていく形になります。ある程度目星があるのであれば、その周辺からより短時間で捜せるのかもしれませんが」

 

「結局のところ、ワタシたちが穂織の街中を探しても痕跡すら辿る事ができませんでしたから」

 

つまりは。

 

『吾輩は辿れなかったが武実乃山の可能性が高いか。ご主人、叢雨丸を。芳乃と茉子も準備せい。時期的に祟り神が現れる可能性はある。十分に用心せよ』

 

「そうですね。不来方さん、学院に行く前に神社の前でその……影見? をして頂いてもいいですか? 山に入っているのであれば通っているはずですので」

 

「分かりました。時間がかかるものでもありませんので大丈夫です」

 

「山に入るのか!? なら俺も」

 

「ダメだ。普段から身体を動かしておる将臣ならまだしも、鈍りに鈍った廉太郎では二次災害にしかならん。代わりに今から志那都荘へ向かい、猪谷さん(女将)からワシの私物を受け取って戻ってこい。猪谷さんには今から連絡を入れる」

 

「……っ分かった! 急いで帰って来るから待っててくれ!」

 

「外に私の自転車が停めてありますので、良ければ使って下さい」

 

「ありがとうございます!」

 

玄十郎さんの言葉を受けて鞍馬君は飛び出して行かれました。幸い志那都荘はそこまで遠くないですからね。不来方さんは自転車で来られていたんですか。

鞍馬君は祟り神の事を知りませんから、そういう意味では本当に危険です。

玄十郎さんも旅館にお電話を……ってまさか。

 

「玄十郎さんも山に入られるおつもりですか?」

 

「そのつもりです、みづはさん。いなくなってしまったのはワシの孫。孫を捜すのに夕莉君や巫女姫様達がご助力くださっているのに、身内のワシが踏み込まぬ選択はありません。なに、最近は将臣との稽古のお陰でこの老いぼれも多少は勘を取り戻してきた所です」

 

「いくらそうは仰ってもお身体が……」

 

玄十郎さんは祟り神の事を知ってはいますが、だからといって対処できるわけでも。

みづはさんと馬庭さんの心配は当然のお話です。

 

「祖父ちゃん、本気か?」

 

「将臣が言いたい事は分かっておる。邪魔になる可能性が高い事も……だがな、これは理屈ではない。ここで踏み込まねばワシは小春の祖父失格だ。将臣達には迷惑をかけるがどうか認めて欲しい」

 

「大旦那さん……」

 

玄十郎さんが私たちに頭を……そうはいってもかなり危険である事は変わりないですし、いくら玄十郎さんとはいえお年を考えると。

 

「……芳乃、将臣君。玄十郎さんの同行を許してもらえないだろうか」

 

「お父さん?」「安晴さん?」

 

まさかお父さんから援護が?

 

「何もできない僕がこんな事を言うのはとても烏滸がましい事だけど――僕も親として、玄十郎さんのお気持ちは痛いほど分かるんだ。周りが止めようと山に入るだろう」

 

「安晴様、それは」

 

みづはさんが止めに入られそうになりましたが、お父さんは続けて。

 

「何も動けずに何も出来なかったら、僕達としても耐えられないんだ。どうか許しておくれ」

 

そういって、お父さんも頭を下げる――ああぁもう!

 

「玄十郎さんもお父さんも頭を上げてください! 分かりましたから! 不来方さんと玄十郎さんは私たち三人で守ればいいだけの事です! 茉子、有地さん、いいですか!?」

 

「ワタシは芳乃様の命に従うだけです。まあ、本音ではご自愛いただきたいところですが」

 

「俺も待っていてほしい所だけど、ほっとくと勝手に山に入るでしょ? ならついてきてもらった方がまだマシだよ。だけど祖父ちゃん――分かってるね?」

 

「勿論だ。どの程度まで動けるかはちゃんとわかっておるし、そのためのモノを廉太郎に取りに行かせておる。山中では巫女姫様達の指示に従う……ありがとうございます」

 

はぁ……ただでさえ人から頭を下げられる事が多いのに、ここまで真摯にされるのはご勘弁いただきたいです。

しかし鞍馬君が取りに行っているものって?

 

『玄十郎は純粋な腕前ならご主人より数段上だ。叢雨丸でない以上斬る事は出来ぬが受け止める事は出来るだろう。気配の察知も茉子並みだ、唯の足手纏いにはならんだろうさ』

 

ああ、そういう。大丈夫なんでしょうか? いきなり本物を振るうなんて。

 

「ムラサメ様も玄十郎さんの同行をご承認されました。ではワタシたちと玄十郎さん、不来方さんの5人で山に入る事にしましょう。芳乃様、急ぎ準備を」

 

「分かったわ。それじゃあ少しお待ちください」

 

「承知致しました。ムラサメ様、ありがとうございます」

 

『吾輩もいつも以上に気張るとするかの。ご主人、支度だ』

 

「ああ、取ってこよう」

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……祖父ちゃん、これ、預かったもの。自転車、助かった……」

 

「……確かに。よく走った。お前は休んでおれ」

 

私たちが支度を終えると同時くらいに鞍馬君が戻ってきました――本当に早い。

持って来たのは袋に包まれた、湾曲した棒状の……ああ。これはマジのやつですね。

あれ、不来方さんは?

 

「夕莉君は先に神社の前で影見をしてくれているよ。安晴様がご一緒している」

 

「タイミング的に廉太郎と行き違いになってるかな。すぐに戻るとは言っていましたから」

 

ちょっとどういう感じなのか見てみたかったですけど、それどころじゃないですね。

茉子と有地さんはすでに準備済み。私が一番遅くなってしまいました。

もっと簡単に着れる形に改造した方がいいんでしょうか。

 

「ああ廉太郎君、戻って来ていたんだね。丁度よかったよ」

 

そして外から戻ってきたお父さんと。

 

「先程影見をした限り、この神社の前を通って武実乃山に向かったようです。それほど時間は経っていないかと」

 

「すれ違ってしまっておりましたですか……」

 

影見をしてくださったらしい不来方さんの情報。

レナさんの言う通り――タイミングが合っていれば止められたかもしれなかったのに。

 

「それでは早速向かいましょう。折り畳みの傘は人数分ワタシが持っています。安晴様たちはこちらでお待ちを」

 

「リヒテナウアーさんはここまでありがとう。先に志那都荘に戻っていなさい。この後は帰るのが大変になるかもしれん」

 

「いえ! コハルをここで待たせてはもらえないでしょうか、大旦那さん。その……多分戻っても落ち着けそうになくて」

 

「……廉太郎。遅くなってきたらお前の判断でリヒテナウアーさんを志那都荘まで送るように。その後はお前も家で待っておれ。必ず連れて戻る」

 

「……分かった」

 

「私は皆が戻るまでここにいるよ。戻ってくる際怪我をしているとかがあったら連絡をしておくれ。山の入り口まで迎えに行くから」

 

「小春ちゃんをお願いね、まー坊。巫女姫様達も宜しくお願い致します」

 

「言われなくてもだよ、芦花姉。俺にとっても妹なんだから」

 

「必ず見つけて帰ってきます」

 

「芳乃、気を付けるんだよ。夕莉君……申し訳ないが宜しくお願いするよ」

 

「はい。出来る限りの事はしてみます」

 

『では行くとしようぞ。時間が経って事態が好転するとは思えぬからな』

 

私、茉子、有地さん、ムラサメ様、不来方さん、玄十郎さんが山の中へ。

お父さん、みづはさん、馬庭さん、レナさん、鞍馬君が神社に待機。

 

――ちゃんと、連れて戻ってきますから。




人数が増えてきて人物の識別が付けにくいです。
この後さらに増えるのに……。

次は山の中へ。
次回も楽しんで頂けたら嬉しいです。
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