零 ~イヌツキの少女達~   作:もふもふたぬきねこ

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チャプター4開始です。
一部キャラ崩壊じみた部分があります。大人しすぎるんですもの。

評価を付けて頂きありがとうございます。
もっと読みごたえがあるものに出来ると……いいなあ。

今回もよろしくお願いします。


CHAPTER 4 穂織の外との共同戦線
19. 女優と作家と助手と母


「なんだかすっごく緊張してきた……」

 

「今から(のぼり)を作りますか? 先方から唖然とされると思いますけど」

 

「芳乃が特別何かをする必要はないよ。夕莉君の友人の方々がここに寄られるだけの事だから」

 

 

 

朝。

今日は不来方さんのお知り合いの方々が穂織に来られる。

確かに連休中ではありますけど……社会人の方ってそんなに突然休暇を取れるんでしょうか?

 

昨晩不来方さんからお電話を頂いた分では午前10時ごろに着くとの事。

自家用車で来られるようですからそれなりに誤差が出そうですね。

穂織へは基本的に遠くの電車の駅からタクシーで来られるか、団体バスの方が多いですし。

 

今日はいつもとスケジュールが違って、有地さんのトレーニングや私の神楽舞より先に朝食を頂いています。有地さんが玄十郎さんを連れてこられますからね。

もう間もなくこちらに到着されるでしょう。

 

「お父さんは昨日の黒澤さん以外の誰かと会った事はあるの?」

 

「いや? お話を伺ったのも初めてだよ。だからどういう方だとかは全くだね」

 

「不来方さんのお知り合いの方なんですから、おそらく激しい方ではありませんよ」

 

そうよね。昨日の黒澤さんも優しい声の方でしたし。

お若い頃に不来方さんを引き取り育ててこられた方。すごいですね、ひょっとすると今の私より若い頃に後見人を務められていたかもだなんて。想像もできません。

 

「おはようございます、皆さん」

 

「安晴様、芳乃様、常陸さん。おはようございます」

 

不来方さんとみづはさんがいらっしゃいました。15分前という所ですね、いい時間です。

挨拶をお返しして。

 

「有地君達もそろそろかい?」

 

「ええ。もうそろそろ戻って……あ、今向こうの角に……あれ、鞍馬君も来たんですね?」

 

「有地さんと一緒にトレーニングされているのは聞いていたけど、今日のお客様の専属とか?」

 

「いや、廉太郎君は志那都荘の従業員というわけではないからね。そういった場に廉太郎君を駆り出す事は玄十郎さんはされないと思うよ」

 

「改めて拝見すると、有地さんと従兄弟だとは分からないですね」

 

有地さんを先頭に、隣にムラサメ様と、後ろに玄十郎さんと鞍馬君。

背丈は二人ともほぼ同じですけど、どちらかというと鞍馬君の方がやや細身。

お顔は……流石に玄十郎さんと似ているかの判断は難しいですね。小春さんなんてもっとですし。

 

「おはようございます、皆様」

 

「おはようございます、玄十郎さん。廉太郎君は志那都荘関係で?」

 

「いえ。夕莉君に改めて御礼と、今からいらっしゃる皆様のお顔を覚えさせておこうと。旅館での仕事とは別に必要そうな事をこいつにさせようと思っておりますので」

 

「改めまして、鞍馬廉太郎です! 一昨日は妹の小春を助けて頂きありがとうございました!」

 

変わりましたね、鞍馬君。少しくらいデレッとされるかと思いましたけど素振りもない。

玄十郎さんからも任されるくらいですから、トレーニングもしっかりとこなされているんでしょう。神隠しの件はよほどこたえたようです。同じ目に遭ったら私も変わるかもしれません。

 

「いえ。無事で本当に良かったと、それだけです。ただ暫くは気にかけてあげてください」

 

「既に鬱陶しがられてますが分かりました!」

 

「……ほ、ほどほどに」

 

ちょっと過保護気味になってる? 前とは別の方向で嫌われてしまいそうで気の毒です。

 

『吾輩も時折気にかけるようにしておる。二度とあんな事は起こさせまい』

 

「そう思ってても起こるのが神隠しではあるけどね……そういえば不来方さん。今日来られる方ってどんな車で来るんですか? 4人乗ってて駅より遠くからだと結構大変ですよね?」

 

私は穂織の外に出た事がないので知らないんですが、結構険しいんですか?

長時間車に乗っていると疲れそうなのは想像がつきますけれど。

 

「多分ですけど四駆のスポーツ…………あ」

 

不来方さんがなにかを仰ろうとしたところで会話を中断されて――耳を澄まされて?

 

「夕莉君?」

 

「多分もう近いです」

 

接近されているのも分かったりするんですか!? と内心思っていたところで。

 

 

 

 

ウォオオーーーーン!! ウォン! ウォン! パァン! パァン!

 

 

 

 

この音は……。

 

「山道を飛ばしてる車がいるのかな? 危ないなあ」

 

「事故は聞かねえんだけどな。ここまで派手なのは珍しいぜ」

 

「いえ、多分これ……」

 

有地さんがちょっと注意気味に口にされたのが、不来方さんはなんだか居心地悪そうな感じで。

 

 

 

 

ギャギャギャギャギャ! ギュォオーーーーン!!

 

 

 

 

「どんどん近づいてきますね」

 

「この分だと目の前を通りそうですな」

 

「まるでラリーカーのような音だね」

 

「まるで、ではなく……」

 

大人組がどうなるやら、とコメントをして。

 

 

 

そして。

 

 

 

 

 

 

ウォオーーーーウォン! ギャアアアアアアアア!!!

 

 

 

 

 

 

1台の青いスポーツカーが、武実神社の前の道路で見事に半回転されて止まりました。

神社の前の道にタイヤ痕ってどうなんでしょう? 軽く煙が上がっているんですが。

 

『今からカチコミでもかけられるのかの?』

 

「ムラサメ様、勘弁してください。シャレになりません」

 

「えっと……まさかこのお車って?」

 

「…………………………はい」

 

さっきまでの音の正体はこの車で、その目的地はここ。

 

つまり――この車が不来方さんのお知り合いの方々!?

 

ボボボボボボボボボボボという重い排気音を鳴らしたまま、助手席側のドアがガチャっと。

出てこられたのは。

 

 

 

「ふぅ~~、マスコミ対策とはいえここまで休みなしなのは流石に身体が凝る……あ、夕莉さん。久し振りですね」

 

 

 

少年帽にサングラスを掛けられた、綺麗な黒いロングストレートの髪の女性。

その両方を外されて。

 

「……ふわぁ」

 

『これはまた、随分と整った顔だのう』

 

思わず声が漏れてしまいました。

 

めっちゃ美人。こういう表現は失礼かもしれませんが、人形の如き美しさ。

童顔なんだとは思いますが大人の色気も十分にある、色々なバランスを全て持っている人。

こんな人が現実にいるとは。

 

これは若い男性2人には特に……固まっちゃってますね?

 

「お久し振りです深羽さん。あの、蓮さん達は……?」

 

「うん? あれ、また気絶してるのかなぁ……放生さん? 生きてます?」

 

後部座席の窓ガラスをコンコンされて、ドアを開けると。

 

「うっぷ」

 

「先生、ご挨拶前に粗相はやめてください。フォローしきれなくなります」

 

30代くらいの眼鏡の男性がベチャァっと崩れるように車から出てこられて。

その奥からは……男性? 女性? どちらか分かりませんけど若い方のお声が。

 

「成程、そういう事でしたか」

 

「うっそだろ……本物?」

 

「将臣でもそう思うか? なら確定だな」

 

あ、有地さんと鞍馬君が再起動した。誰を指して()()なんでしょう? やはり女性でしょうか。

と、玄十郎さんが前に出られます。玄十郎さんもなにが()()だったんでしょう?

 

「ようこそ穂織の町へ。皆様がご宿泊される志那都荘の責任者を務めております、鞍馬玄十郎と申します。どうぞお見知りおきを」

 

「お迎えありがとうございます。今日からお世話になる雛咲深羽(ひなさきみう)です。で、こちらはもう一部屋側の放生蓮(ほうじょうれん)さんです」

 

「ほ、ほう、じょう、です……」

 

「先生、しっかりしてください。あ、私は相部屋でお世話になります鏡宮(かがみや)です」

 

『……? こっちは何処かで見たような顔だな? いつだったか……』

 

奥にいらっしゃった鏡宮さんが出ていらっしゃいました。

見た目も中性的な方ですね、男装の麗人の様な。ですけどしっかりされた雰囲気の方です。

放生さんは作家さんという事ですからアシスタントさんなんでしょうか?

ムラサメ様は放生さんのお顔をご存じ? 似た人かもですが。

 

何にせよ、話はしやすそうな方々で助かります。本当に突撃されるのかと。

 

「さてと。せっかくここで合流させてもらったんだし、一回話をすり合わさせてもらった方が都合がいいかな。この辺りに車を停められる場所ってありますか?」

 

「ご案内致します。私は武実神社の神主を拝命しております、朝武安晴でございます」

 

あっと、私も挨拶しないと。雰囲気に圧倒されてました。

 

「安晴の娘で武実神社の巫女をしております、朝武芳乃と申します」

 

私が名乗ると「へ~っ、この子が」というお言葉が。不来方さんから聞いていた感じでしょうか。

 

「朝武家家事手伝いの常陸茉子と申します。ワタシが先導致しますので、ついてきていただいてよろしいでしょうか?」

 

「分かりました、お願いしますね……あの子の後についていけばいいって」

 

雛咲さんが助手席からドライバーの方に話しかけられています。

どんな方が運転されているんでしょう?

 

そして。

 

 

ギャオン!

 

 

止まったままその場で半回転した……またタイヤ痕が。綺麗に円になった。どういう運転ですか?

そのままボボボボボボと音を鳴らされながら茉子の後をついていかれました。

 

「話には聞いていたんですけどいい所ですね。来る機会があったのは幸いでした」

 

「これは嬉しいお言葉をありがとうございます。これからの休日を存分に楽しんで頂ければ」

 

玄十郎さんは流石ですね。さっきの一連の出来事に動じない。

 

「あっあの、雛咲さん」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

ようやく有地さんが言葉を掛けられました。目に見て分かるくらいに緊張されてますが。

もっとも、この美人顔の微笑みでは同性の私であろうと長時間平静では居られなさそうです。

 

「ひょっとして普段は――「宗方美優(むなかたみゆ)」って名乗られてますか?」

 

「内緒にしておいてくださいね? 今回はお忍びなもので。事務所やマスコミにバレると色々面倒でして」

 

「マジかよ……初めて間近で見る芸能人が宗方美優だなんて」

 

「二人とも、ご迷惑をお掛けする事の無いように。純粋に一人のお客様として接しなさい」

 

「よく似ていらっしゃるとは思ったけど、ご本人が夕莉君のお知り合いとはね」

 

鞍馬君はともかく、みづはさんすら知っているご様子。玄十郎さんの先ほどのご発言もそういう?

やはり芸能業界の。昨日不来方さんも仰られていましたが、相当有名な方なんでしょうか?

 

「お父さん、この方の事は?」

 

「え? 見たらすぐ分からない? 実力派と言われる女優さんの中でもトップクラスの人気を集めている方だよ。今時では珍しい、バラエティとかの番組には一切に出られない方でもあってね。僕も何本かドラマや映画を見させてもらっているんだ。穂織のチャンネル数が少ないのが残念だね」

 

私の、私の世間知らずがまた増えていく……。

やっぱり女優の方だったんですね。そういう雰囲気しかしませんもん。

以前の不来方さんのナンパ話の謙遜理由がわかった気がします――スター級の女優さんを比較対象にしないでください。

 

「見て頂いてありがとうございます。バラエティの雰囲気は苦手なものでして。それで――」

 

雛咲さんがこちらへ歩いてきたと思ったら、ニッコリ笑顔で視線を変えて、親指をグイっと。

 

 

 

「――()()撮ら(消さ)なくていいんですね?」

 

 

 

ひぇっ……。

一気に空気が冷える雰囲気と口調でムラサメ様をご覧に。しっかり見えてた。

女優の演技力のせいなのか完全に別人のごとく。

 

『ヒッ!? はっ祓わんでくれ! 吾輩は悪い霊ではないぞ!?』

 

「どうだか。腹黒い奴は自分を悪いだなんて言わないわよ。まあ何かを呪えるような力もなさそうだけど。完全じゃないみたいだし見た目幼女だしこの服装だし血色だし。何? コスプレなの?」

 

「今更説明は不要でしょうけれど、こちらの方がムラサメ様です。くれぐれも射影機を向けないようにお願いします。深羽さんだと塵も残さず消滅させそうです」

 

「分かってますよ。一応の確認です」

 

『こっ、こんな恐怖の感じ方は初めてだ……』

 

「ムラサメちゃんも俺の評価が間違ってないってわかったろ? ああっと、お話は聞かれているかと思いますけど、鞍馬玄十郎の孫で叢雨丸の使い手の有地将臣です」

 

「同じく鞍馬玄十郎の孫の鞍馬廉太郎と言います! 色々申しつけ下さい!」

 

ムラサメ様が涙目に……これはしばらく有地さんに張り付いたままですね。

鞍馬君はなんだかより一層気合が入ったように見えます。

そして確かに有地さんと雛咲さんの評価が似ています。外では本当にコスプレ扱いなんですね?

 

「先程は失礼を……作家の放生蓮です。凡そのお話は黒澤から聞いています」

 

あ、ようやく放生さんが復活されました。

背格好は鞍馬君とほぼ同じくらい、30代半ばくらいの方ですね。落ち着いた雰囲気の方です。

顎ヒゲを剃られると結構印象が変わる気がします。

 

「今回写真の検分をお願いしました、穂織で医者をしております駒川みづはです。宜しくお願い致します」

 

「宜しくお願いします。改めまして、放生先生の助手(アシスタント)をしております鏡宮(るい)です」

 

鏡宮さんは……本当にどちらの性別なんですか? 服のボタンは男物ではあるようですけど。

歳は不来方さんや雛咲さんと同じくらい? だとすると男性としては声が高い気も。

 

こちらの面々が一通り挨拶が終わったところで。

 

 

 

「お待たせしましたー」

 

 

 

と、駐車場から茉子の声が。

そしてその隣に例の車のドライバー……え?

 

「……あの人が、さっきのあの運転を?」

 

有地さんが心にものっすごいダメージを受けたかのような声。

私も内心かなりの衝撃を受けています。てっきりパワー系の男性だと思っていたのに。

 

 

 

雛咲さんによく似た、セミロングのポニーテールにされている儚げな雰囲気の女性。

本当に雛咲さんに近い雰囲気ですね。ご姉妹? どちらが姉で妹なのか判断しかねますけど。

なんにしても――この方があの運転を? 運転免許をお持ちな事すら驚きなんですが。

 

そして。

 

 

 

「ご挨拶が遅くなりました。そちらの深羽の「母」で、雛咲深紅(ひなさきみく)と申します」

 

「へっ?」

 

 

 

誰の声かもわからない。私の声だったかもしれない。

 

母!? 姉でも妹でも親戚でもなく、「母」!?

継母とかじゃないですよね!? そっくりですもんね!? 実母!?

どれだけ見た目若いんですか!!

 

「まあ驚きますよね。私も自分の母親じゃなかったら疑うでしょうから」

 

娘の雛咲さんから直接解説が――本当に実の母?

私のお母さんも実年齢のわりに若かったとは思いますけど、これは多分比較にならない。

 

「おいくつなんです……?」

 

思わず口からこぼれてしまいました。すると。

 

「もうすぐごじゅ「はいそこまで。そういう説明の仕方はしないでって、いつも言ってるでしょ?」でも……」

 

この美貌でアラフィフ!? 20代前半か、格好次第では10代後半でも余裕でいけますよ!?

一体何をどうしたらこんな事が?

 

「見た目は私の方が年上になってしまったんですよね……」

 

「いつの間にか俺達も30を超えたからな。そうは言っても、夕莉もあの頃から殆ど変わっていないだろう?」

 

「え゛っ」

 

また、誰の声だったんでしょうね?

女性の年齢のお話です。一応私が確認をとりましょう。

 

「不来方さん……30代、だったんですか?」

 

「えっ? ええ、はい。今年で30になります。お話していませんでしたか?」

 

「私も初めて聞いたよ? まさか年上だったとは思わなかった……」

 

「僕は知っていたけど、馬庭さん辺りが聞いたら驚きそうだね」

 

「芦花姉は驚くどころか、多分穂織全域に聞こえるレベルで叫ぶと思いますよ」

 

「違いねえ」

 

「普段から身体を動かしておけ。そうすれば自然と若い頃の状態を維持できる」

 

『人体の神秘だな……』

 

一体なんなんでしょう、この方々。これが穂織の外の「普通」なの?




という事で「零」側のメンバーの登場です。

本作の設定では、作中時間は2016年(「千恋*万花」発売)の4月末です。現在GW中。
深紅が生まれたのが1969年くらいなので、そこから計算を行っています。
よって「濡鴉ノ巫女」から大体11年後の世界観です。
各キャラの年齢などは本チャプター終了時に登場人物紹介で解説します。

前話、前書きの通り、雛咲親子はキャラクター像がかなり改造されています。特に深羽。
本作の深紅はハンドルを握ると何故か頭文字〇になります。どうしてこうなった。
予めご了承ください。

次は話のすり合わせです。人物が多すぎて区別が付けにくい。
次回も楽しんで頂けたら嬉しいです。
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