零 ~イヌツキの少女達~   作:もふもふたぬきねこ

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説明だらけ……。
久々に射影機が戻ってきます。祟り神や怨霊は不在です。

今回もよろしくお願いします。


27. 穂織の歴史の裏の裏

「おかえり、朝武さん、常陸さん」

 

『うむ、おかえりだ』

 

「ただいま戻りました。有地さん、ムラサメ様」

 

「ワタシたちの方が遅くなってしまいましたか。放生さんたちはもうお帰りに?」

 

「ううん、多分まだ神社の方にいると思うよ。なんでも特定の期間の資料だけ見つからないらしくって、今も探してるんじゃないかな? 俺も手伝いは申し出たんだけど……」

 

『鏡宮に「先生に片付けさせますので」と笑顔で言われてしまっての。だから昼間の電話で聞いた「ご主人の中に憑代の欠片がある」というのを確認するために色々試しておったところだ。結局分からんかったがな』

 

「深羽さんが仰っていた「MRI」とは何だったんですか?」

 

「多分だけど、大きな病院の機械で身体を輪切り撮影できるやつ。そんなもん保険有りでもいくらかかるんだろう……」

 

 

 

あれから更に和菓子を3つ注文されて、不来方さんと深羽さんのお腹に収まったところで解散して戻ってきました。馬庭さんがホクホク顔でしたね。

放生さんたちはまだいらっしゃると。神楽舞の奉納もありますし、ご挨拶できそうです。

 

「小春さんのご様子はいかがでしたか?」

 

「すっかり元の小春だよ。ただ……俺を見ると大体顔を背けられるんだよなあ。やっぱ小春的にもショックだったのかな」

 

いやぁそれは勘違いだと思いますよ? ある意味ではショックがあったでしょうけど。

小春さんはこの機会を生かさないと。千載一遇じゃないですか? 婚約者(仮)の私が言うのもおかしい話かもしれませんが。

 

「それではワタシは夕ご飯の支度に入りますので」

 

「あ、うん。よろしくね茉子。志那都荘の夕ご飯があるから不要だと思うけど、もしこちらで食事されるようなら連絡するわ」

 

「かしこまりました」

 

「じゃあ俺は境内の掃除でもやっておこうかな。安晴さんもいつもほど時間が取れていないだろうし」

 

『うむ、そうしてやってくれ。芳乃は今から舞の奉納があるからな』

 

「すみません有地さん。よろしくお願いします」

 

まあ今日は流石に仕方がないか。お父さんは来客対応なんだし。

舞の奉納が終わり次第私も有地さんに合流する事にしましょう。

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

「……ん? おや、芳乃。お帰り。もう舞の奉納の時間だったかい」

 

「もういつもより少し遅いくらいよ。放生さん、鏡宮さん、お疲れ様です」

 

「お邪魔しています、朝武さん。雅な巫女装束ですね。今から何か行事が?」

 

「本来巫女ってのはこういうものだよな……ああ、思い出さないようにしないと」

 

「朝夕の2回、神楽舞の奉納を毎日行っておりますので。放生さんは……なんだかお疲れですか?」

 

神楽殿の脇にある倉庫、過去の蔵書が保管されている所にお父さんたちが居ました。

結構な数の本が取り出されて積まれているみたいですけど……。

 

「有地さんから伺ったんだけど、特定の期間の資料がないって?」

 

「うん。明治の中期、丁度麻生博士がいらっしゃったと思われる頃の記録がね。歴代の神主が付けている日誌のような記録があるはずなんだけど、どうしても見つからないんだよ」

 

「ダブり防止のために蔵書の一覧を整理して記録させてもらっています。勿論今回の件が終わりましたら破棄しますのでご安心ください」

 

「こういう探し物は俺の領分じゃないんだよなあ。密花のやつだとあっさり見つけるんだが」

 

「密花さんをそんな風に扱えるのは先生だけですよ。普段は自分で失くされているんじゃないですか、大体書斎で見つかるんですから」

 

鏡宮さんはこの膨大な蔵書の目録を取られているんですか? 消去どころかこちらで頂きたいくらいですね。後でお願いしてみましょう。

そういえば不来方さんのお師匠様、黒澤密花さんの副業は……。

 

「黒澤さんの……失せ物探しの件ですか?」

 

「ああ、君は聞いていたか。こっちで時間を掛けて探すより、あいつに来てもらう方が圧倒的に早くてね。射影機を使い始める前から勘はよかったんだ。今は夕莉に貸しているから持っていないわけだが、それでも俺より見つけるのは早い。俺の持っているやつは使いたがらなくてね。こっちとしても無理に使わせるつもりもないが」

 

「昔から何度もお世話になっているんですよ。それで見つかる場所も全然普通の場所で、何で見つからなくなるんだろうって。まあ先生が普段から整理整頓してくださればもっとマシなはずなんですけどね」

 

「そのためのアシスタントだろ?」

 

「とまあ、こんな感じでね。時間を掛けても見つかっていないところなんだ。とはいえ、そんな時間だと僕もお務めの準備をしないとかな」

 

このお話。不来方さんもされていた事、射影機。

ひょっとして?

 

 

 

「……あの、私が射影機で「呼び戻し」をしたら見つかる可能性はありますか?」

 

 

 

そう口にして、初めてまともに放生さんと目が合いました。

 

「……君は呼び戻しも出来るのか?」

 

「一応、そうですね。あの例の写真も呼び戻しの一種と聞いていますし、憑代の欠片も見つけられています」

 

マヨイガを見つけた事もそう。あの時はおかげで大変な目に遭いましたけどね……。

それを聞いて放生さんは「う~ん」という感じになって。

 

「……君に負担がかかるかもしれないから、撮影はしてもらわなくていい。射影機で周辺を眺めてみてもらえないか。凡その場所さえ分かれば、俺が撮影する形でも見つけられるかもしれない」

 

そうか。探したいものの方向を見るだけでも射影機が反応するんでしたね。

撮らなくても済むなら私であっても危険度は低そうです。

 

「わかりました。それではお借りしても?」

 

「ああ。累、お渡ししてくれ」

 

「分かりました。申し訳ありませんがよろしくお願いします」

 

「芳乃、ありがたいけど……あまり見過ぎないようにね」

 

分かってるわよ。極力使わないようにしたいのは私も同じなんだから。

 

さて鏡宮さんから渡してもらった二眼の射影機だけど。

ファインダーから見える景色は一つだけ。本当に何のための二眼なんでしょう?

おそらく茉子たちには見えていないだろう機能が見えているのは同じです。フィルムは〇七式。

それから部品として普通に見えているんだろう「四」の文字。ここは不来方さんのと違いますね。

 

 

 

とにかく壊さないようにしないと……。

 

 

 

今お父さんたちがいる周辺は特に反応なし。構えながら歩いてみましょうか。

大体どこも蔵書が積まれている状況、バラバラになっていた巻数を纏めて頂いた状態でしょうか。

大変ありがたい事です。

 

その場でぐるりと一周しても、やっぱり反応は無し。ここに探し物はなかったりします?

他には床に落ちてるとか、上の段に……ああ。

 

「――放生さん、多分ここです」

 

「分かった。こちらでやらせてもらうよ」

 

何てことない棚の端、その上段部。影になっている箇所。

そこで射影機から見える景色に青い灯りが灯りました。この辺は一緒なんですね。

放生さんに射影機をお返しして、カシャっとシャッター音が倉庫に響くと。

 

「……不思議なものですね。まるで突然現れたかのような」

 

「密花さんが仰るには、私達の認識が意図的に探し物から外されているような状態だそうです。「失くした」と思った事実が余計に見つけにくくしているのだと」

 

影の中から一冊の蔵書が。成功したみたいです。

 

「……時期はよさそうだな。中味は……結構な癖字だな、解読に時間がかかるか。安晴さん、今晩だけこちらをお借りしてもよろしいですか?」

 

「今晩だけと言わずも大丈夫ですよ。こちらからもよろしくお願い致します」

 

「それではお預かり致します。夕食を頂いたら始めましょう――食べながらは駄目ですよ?」

 

「相変わらず母親みたいな事を言うな、お前は」

 

この感じだと夕ご飯は志那都荘でとられそうですね。茉子に連絡しておかないと。

 

「ところで朝武さん達は何か見つかりましたか? 深羽さんと山に入られたんですよね?」

 

本当に何というか、鏡宮さんは性別どっちなんでしょう? 多分……女性? いや、う~ん。

何となく聞くのも躊躇われる。あえてそれらしく振舞われている感じがしますし。

 

「不思議なくらい山に幽霊はいないとの事ですが、その分マヨイガについては危険性が高いという事で見て頂いていません。一方で私たちの「祟り神」側に関してですけど……数年前に有地さんが憑代の欠片を飲み込んだ可能性が出てきました」

 

「さっき本人からも聞いたな、よく腹の中が傷つかなかったもんだ。幽霊がいないというのは本来喜ぶべき話ではあるんだが、彼女がそう口にする以上は異常事態なんだろう。どっちに転がるか予想がつかないが」

 

「その……芳乃達は夜間幽霊を目撃しているわけですが、今の状態だと何処にいる事になるんでしょうか?」

 

お父さんの質問ももっともな話。私たちは実際に幽霊と対峙しているし、マヨイガにも入り込んでいる。でも今は「居ない」。なら一体どこへ?

 

「推定の域を出ませんが、「隠世」になるのだと。例えが抽象的ですが……俺達のいる「現世」に霊が出現しようとする時、ある程度は「存在していても不思議ではない」必要があるんですよ。ただ普段の生活において霊の存在は殆ど意識を向けられていませんから、出現できるのは「隠世」の力が大した事のない、人に影響を及ぼせない浮遊霊程度になるわけです」

 

「なんでも、霊という存在も基本的に私達生者の認知があるから存在出来ているんだそうですよ。多くは人に対して「どうしたい」「こうしたい」というのがあるから留まっていられるのだと」

 

少しややこしいお話ですね。逢魔ヶ時の事を例に考えると。

 

日中は現世(うつしよ)、夜は隠世(かくりよ)あるいは常世(とこよ)、夕方はそれらが交じり合う逢魔ヶ時(おうまがとき)

逢魔ヶ時は見た目にもこちらとあちらが交じり合っている時間帯、私たち人もそれを本能的に理解している。だから常世の存在である幽霊も出てくる事が出来る。

一方で昼間は現世の時間帯。生きている人の意思が強く、霊への認知が弱い。だから居ても居なくても変わらない程度の弱い霊しか存在できない。

 

恐らく、不来方さんや深羽さんが日常的に見ているモノが後者、私たちが見る事が出来るのが前者なんでしょう。

 

「ですが……今の武実乃山の霊は隠世の力を持ちすぎているがために日中は出現できない。俺達が基本的に霊の存在など信じていないからです。加えてこの穂織には、守り神としての「ムラサメ様」の認識があります。彼女に守ってもらっているという認識が、日中はより強固に「自分達の周りに怨霊はいない」という意識を土地全体に広げている。だから夕莉すら悪影響を及ぼすような霊に遭遇する事がなかったんでしょう」

 

「逆に「夜の山は危険」という意識が刷り込まれていますから、夜間は一般的な山より出現しやすい可能性はあります。それが今まで現れなかったのは、恐らく皆さんが対処されている「祟り神」の存在があるのでしょう」

 

「随分と複雑に絡み合っているのですね。そして今の状況、夜に幽霊が出現してきているという事は……そのバランスが崩れ始めて「祟り神」、あるいは「犬神」と対抗しうるほどの力を付けてきていると」

 

夜は変なモノが居ても不思議じゃない。けど祟り神が本当に居るから表には出てこなかった。

でも今の幽霊は……。

 

「恐らくはそんなところです。まあ俺達は雛咲さん親子や夕莉のような霊感はありませんから詳細は分かりませんが、碌でもない事になっている可能性は高いでしょう。麻生博士がここに来たように、ね」

 

「お二人を不安にさせるような発言は止めてください。とはいえ……ムラサメ様をご覧になれる皆さんならまだしも、先日神隠しに遭われたとお聞きした鞍馬小春さんやオーナーさんすら見る事が出来たんですから、「幽霊なんていない」という認識を突き破るくらいの力は持っているという事です。穂織に「幽霊はいる」という認識が広まると……昼間であろうと現世に現れて、誰にでも見えるようになる可能性はあります」

 

「――私の、耳の様にですか」

 

「君の耳の場合は、昨日聞いた限り祟り神や幽霊起因ではないようだがね。まあそういう事だ。俺達が「居てもおかしくない」「恐ろしいモノ」と思ってしまうと本当にそうなってしまう。変な声掛けになるが、あれらに負けないでくれ」

 

今考える事ではないと思いますが――この方々は一体何を経験されてきたんでしょう?

 

 

 

そうして、放生さんと鏡宮さんは志那都荘に帰って行かれました。

お持ちいただいた本の解読が順調に進むといいですね。

 

茉子に連絡だけして、と。

 

「お父さん。この武実神社の禁制区域……聖域の話、何か知ってる?」

 

丁度今は(巫女)お父さん(神主)――武実神社の直接の関係者しかいない。

話をするなら都合が良さそう。

 

「……このタイミングで芳乃から聖域の話が出るという事は、何かが関わっていると踏んでいるわけだね? 僕も詳しく知らないという事は予め断らせてもらうけど、叢雨丸に関する何かが残されていると聞いているよ」

 

御隠れになった神様とかならともかく、叢雨丸に関連するもの?

ただでさえ伝説のシロモノ。実際にムラサメ様が宿られている神刀なのに、それに関わるモノ?

 

「僕も疑問に感じなかったわけじゃないんだ。神社は「御神(おんかみ)御社(おやしろ)」、神様を祀ってこその神社。なのにこの武実神社はその御神の御名(みな)が何処にも残っていない――叢雨丸はあるのにね? ムラサメ様は今でこそ「穂織の守り神」としてお祀りさせて頂いているけど、それは僕達穂織の住人の想いを受けてムラサメ様にその座に立って頂いているのであって、ムラサメ様は元々「人間」でいらっしゃる。この神社が本来祀っているのは「叢雨丸を下賜された土地神様」であるとね」

 

私よりずっと前から、お父さんはコレに関して疑問を持っていたみたい。

 

「芳乃。神様が御隠れになるのがどういった場合なのか、知っているかい?」

 

「えっ? ええっと……力を失われたとか、信仰をなくされたとか?」

 

神は不滅の存在。善も悪もあるけれど、それは私たち人の物差しでしかない。

八百万の神と呼ばれるように、ありとあらゆる事物に関する神様がいらっしゃり、祀られている。

さっき私が自分で口にした事だけど、そんな方々が御隠れになる理由なんて……?

 

「どっちも正解だね、まあ似ているんだけど。一番の理由は「御名を失くされる」事なんだ」

 

「名を?」

 

「うん。どんなモノにも神が宿るこの国では、どんなモノにも神の名が存在する。そうしないと僕達も御呼びする事や畏れる事、奉る事が出来ない。芳乃にも「朝武芳乃」という名以外にもう一つ真名(しんめい)があるよ。それを知っているのは僕と秋穂だけだけどね。芳乃は「(おくりな)」や仏教の「戒名(かいみょう)」は分かるかい? あれに近いものだよ」

 

神となった故人や仏教において涅槃に旅立つ際の名。元の名は俗名(ぞくみょう)と言うんでしたか。

私にも別名があるというのは驚きね。親になったら分かるのかしら。

ただ……。

 

「神様が名を失くされるなんて」

 

「人が知る限りで何も行われていない、何を司っておられるかも分からない神様も勿論御名はお持ちで、それを僕達は知っている。だから普通じゃありえない事だろうね、神様の範疇ですら「普通でない事」が起こらない限りは」

 

想像がつかない。

神様と人が婚姻される事は問題ないはずよね。有名な神話にいくつも語られているし。

何かしら私たちの世に干渉されるのは、そもそも神様自身が世界だ。至極当然の事ともいえる。

ムラサメ様は仰るには「直接は干渉できない」との事ではあったけれど。

 

神様の範疇ですら「普通じゃない」って一体?

 

「それが何だったのかは僕にも分からない。ただ、武実神社でお祀りしている神様がどなたなのかはシンプルだと思っているよ」

 

「……? つまり、私も知ってるの?」

 

「勿論だよ。だってこの神社には表向きにお祀りしているモノがあるんだよ?」

 

えっ?

 

確かに叢雨丸は武実神社の「御神体」、土地神様より下賜されたもの。

でも、あくまで「下賜されたもの」よね?

 

かの有名な御神体でも、太陽神を照らされた鏡は鍛冶の神が作られたもの。勾玉もそれに近い。

剣に至っては強大な邪竜に宿っていたものだ。

 

つまり御神体は神の力を宿している品物ではあるけれど、神様そのものじゃない。

だけど、そんな。

 

「……叢雨丸()()()()が、土地神様のお身体、って事なの?」

 

「僕はそう考えているよ。芳乃は見ていないけど、叢雨丸は将臣君が引き抜いた際に一度折れている。そして再生しているんだ。神具として祀られているものは数多くあるけど、実際に壊れて再生する神具がそんなにあるものかな?」

 

形有るモノ、いつか壊れる。

ファンタジーじゃないんだから、神具であろうと壊れたら勝手に元には戻らない。

その為にレプリカを作って、本当の神具は大事に祀られているわけで。

 

そんな常識を覆している叢雨丸は。

 

「土地神様が自らの御名を捨ててまで転じて頂き、この穂織を守ってくださっている存在――そう思っているよ。聖域にはそれに関する文献が残されているんじゃないか、とね。じゃあ今度は芳乃のお話を聞こうか」

 

お父さんは私の疑問に答えてくれた。なら今度は私の番ね。

 

「今日深羽さんと山を回らせてもらった際、有地さんが憑代の欠片を飲み込んだって話はさっきしたわよね。その後なんだけど……有地さんが溺れた場所に祟り神が現れるようになったらしいの」

 

「なんだって?」

 

これはお父さんも予想外らしい。

 

「深羽さんが過去視っていうので見たって。という事は、有地さんが祟り神に誘われたか、逆に祟り神が有地さんに惹かれたようなものって考えられるわよね? 加えて深羽さんと深紅さんは、憑代本体に意思も力もあって犬神と祟り神らしきナニカがとり合いをしているってお話だった。だから……私は「憑代が土地神様の御神体」なんだと思っていたの」

 

 

 

神そのものなら、数百年もの間2つの呪詛ともいえる存在の力を維持できていた事も頷ける。

 

ムラサメ様もまだお身体が生きているとのお話。

神の力を取り込んだ有地さんは叢雨丸の使い手になっていて、管理者であるムラサメ様に触れる事すら可能。レナさんも持っていただけなのにムラサメ様を見聞きできる……レナさんの場合は他にもまだ謎があるんでしたか。まあそれは置いておいて。

 

祟り神があそこに現れたのは、「有地さんに持ち去らされた憑代」を探しに来たんじゃないか?

境界として囲われている山から出た物だから、異常に気付いたんじゃないか。

 

 

 

「そういう意味でも憑代を元に戻して奉らなくちゃって、その際にその神様の名も知らないなんて失礼っていうのが元々の考えだったけど……叢雨丸が土地神様のお身体なら、憑代との関係も聖域に残されているもので分かるんじゃないかって。そういう、お話」

 

お父さんの想像が真実なら、憑代は分御霊(わけみたま)なのかもしれない。

そうなってくると、今度は何でそんな由緒正しい物が呪詛の核として機能できているかって疑問はあるのだけど。

 

「……そうかい。芳乃の考えも真実に絡んでいそうだね。憑代も土地神様のお身体の一部だというなら、それも納得できる所はある」

 

お父さんは神妙だ。何かを思い出すように、云々と考えている。

そして。

 

 

 

「今がその時という事なのかな――あそこに入るには準備がいる。僕達の穢れを完全に祓って、場を清めて、お伺いを立てる儀式を行わないといけない。前に祟り神を芳乃達が祓ってくれたのが神隠しの時だから3日前かな? となると、次の祟り神が近いうちに現れるかもしれない。その祟り神が祓われた後に……僕と芳乃で入るとしよう」

 

「私もいいの?」

 

 

 

お父さんが聖域に入る判断をしてくれた事は嬉しい。なんせ数百年ぶりの事だろうから。

お父さんにのしかかる責任は重大でしょう。

 

だけど……こう言っては何だけど、私は犬神に呪われている本人よ?

そんな存在が、神社の中でも特に神聖視される聖域に入るなんて。

 

「大丈夫だよ。芳乃は間違いなく土地神様にそのお役目を認めて頂いている。僕よりもずっとね。芳乃が真実を知る権利はあるはずさ」

 

「……そう」

 

そうお認め頂けるのなら。

必ず、私の代でこの呪いを終わらせてみせる。




作者なりの呼び戻しや幽霊の解釈はこんな感じです。特に大事な要素でもないです。
ものっすごく説明だらけで読みづらい事この上なく申し訳ないです。

千恋*万花側の設定に関しては基本原作準拠としていますが、
勿論オリジナル要素も含まれてきます。ご了承いただければ。

次は武実神社でも喫茶・こずかたでもなく……働き過ぎじゃない?
そして「千恋*万花」でも「濡鴉ノ巫女」でもないキャラが出てきます。名前は出てますが。
次回も楽しんで頂けたら嬉しいです。
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