零 ~イヌツキの少女達~   作:もふもふたぬきねこ

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チャプター4、最終話です。ここまでお疲れ様でした。

今回もよろしくお願いします。


35. 呪いを越えて、その先へ

「私の先祖が……怨霊や、あの絶対霊なる存在に関わっている……と?」

 

みづはさんの顔がどんどん蒼白に染まっていく。

 

「まだ何も。あくまでマヨイガにあった書籍に文字として書かれていただけです。伺ったお話では、駒川先生の家系は朝武家のお抱え医師だったのでしょう? 戦国時代に江戸の様な西洋医学書はなかったでしょうが、平民に比べれば遥かに多くの文献を残されているのが道理。その一つがマヨイガの元となった建物に存在した……今言えるのはそこまでです。こちらから示しておいてなんですが、結論を焦らないでください」

 

「駒川先生のご先祖様が朝武家のお抱え医師なら、その文献は朝武家を経由して市井なりに出回っている可能性が高い――私と先生が今の時点で申し上げたいのはそこです。あのマヨイガは何かしら当時の朝武家と所縁があると、そう考えています」

 

放生さんと鏡宮さんの説明を聞かれて、みづはさんの身体の震えがようやく止まり始めます。

まだ胸は苦しそうですが……。

 

「大丈夫ですよ、みづはさん。偶々あっただけかもしれませんし、関わっていたとしても直接関係のない事です。みづはさんが居なかったら私たちは大変な事になっていますから」

 

「駒川家の皆さんが穂織に留まられていなかったら、とうに滅んでいそうですね」

 

「仮に関わってる本だったとしても、みづはさんたちは今も穂織に残られてるんですから後ろめたい事じゃあないんじゃないですか?」

 

「……医者をやっていた甲斐があったと言えるかもしれないけれど、常陸さんは例え話でもそういうのは止めておくれ。ありがとうございます、芳乃様。取り乱しました、お恥ずかしい所を。有地君もありがとう、そうであると願いたいね」

 

冗談じゃなさそうなんですよね、茉子の例え。でも落ち着かれたようで良かった。

有地さん、ナイスです。

 

「取り敢えず、武実乃山のマヨイガには駒川先生の先祖が著したとみられる書籍が存在しているって事が一つ判明した。それと……昨日武実神社からお借りした日誌からも少し情報があります」

 

「やはり麻生博士から我々武実神社に対して言伝が?」

 

「言伝というよりは()()されたようなんですよ。この穂織は日上山と陽炎山の間の町ですから、「この地にも同様の文化が存在していないか」と。そしてその答えを深羽さんが持ち帰ってくださいました」

 

「そんな事が?」

 

「……何か見つかってたんですか?」

 

私も茉子も把握していない。犬神の言葉の中にいくつか聞きなじみのない言葉はあったけど……。

それとも、また過去視的な?

 

「朝武さんも常陸さんも一回は聞いたかな? 『永久花(とこしえばな)』って言葉」

 

とこしえばな、とこしえばな……確か。

 

「深羽さんたちがいらっしゃった初日に仰られていた? 犬神も口にしたような」

 

「まさか日上山以外でこの言葉を聞く事になるなんて思いもしませんでしたね……蓮さんが不老不死のお話をされたかと思いますけど、日上山では不老不死になった存在を『永久花』と呼びます。とある特殊な(はこ)、『柩籠(ひつぎかご)』という物に封じられた存在は永久花、つまり不老不死になるというものです。これが何の話題に上がった事か覚えておいでですか?」

 

不来方さんからの確認が私たちに返ってきた。つまりしっかり聞いているはずなんですね。

犬神が誰に放った言葉かも明白。これはもう一つしか思い浮かばない。

 

「「「ムラサメ様(ちゃん)ですか?」」」

 

『話に聞いた、吾輩の身体がまだ生きておるという話か。今の吾輩も生霊の扱いらしいな』

 

「ムラサメ様が不老不死ですと!?」

 

「ええ。ムラサメ様がご存命である可能性は、皆さんがいらっしゃった日に伺っておりました。そのお身体が何処にあるのかがまだ分からないのですが」

 

「……そうでしたか。ムラサメ様のお命が、まだ」

 

玄十郎さんは思わず立ち上がられるほどの驚き。

武実神社の氏子総代として、誰よりもムラサメ様を信仰してくださっている方です。

そういう反応にもなりますよね。

 

ただ……。

 

「その()()()()というお話は……信じられるものなんですか?」

 

あくまで想像上のもの、伝説レベルの話では――そう思っていたんですが。

 

「それがあるんですよ、本当に。これに関しては保障しますから」

 

「マジっすか」

 

「マジよ。ゲームにはちゃんと元ネタがあるものでしょう? 有地君。結構馬鹿にならないのよ」

 

まさかの深羽さんの即答。こんな時に冗談を仰られるとも思えない。

思わず夕莉さんを見て……頷かれた。じゃあ本当に不老不死となる術が?

 

「話を戻すぞ。ムラサメさんが生きてるって事も大事だが、ここで話したいのは穂織にも日上山ないし陽炎山の文化が入り込んでいたという事だ。これも話したと思うが、日上山における不老不死の存在の取り扱いは碌なものではなかった。人柱として永遠に使う為だったからな」

 

『成程、辻褄は合うのだな。500年以上吾輩は人柱として残っておるが本来は単なる管理者、にもかかわらず自我を得て記憶も蓄積されて居るのは「肉体が生きておるから」。吾輩が人柱とした方法が、最後の宴の後にその柩籠なる物に入れられて永久花と化したという事か』

 

「ですが……日上山における永久花は真に永遠の存在ではないんです。柱となって柩籠の中で悠久の時を過ごし、やがて意識があちら側に融けるまでの事。肉体が残っていても精神が摩耗しきってしまうとその力は失われるとの事です」

 

この件は深紅さんも知っているご様子。にしても随分と具体的なような?

精神が摩耗する……現世に残るのに疲れた、とかじゃないですよね。やはり何かの代償が?

 

「ただ、恐らく500年以上も残った柱はいません。ですからムラサメ様が人柱とされたのは日上山とは別の、それこそ伝承の通り叢雨丸と神の力の橋渡しであり、穂織の土地神……姉の方ですか。その方の力を管理される立場になっているんだと思います」

 

不来方さんの見立てでは、ムラサメ様は人柱としては長く保てて過ぎていると。

日上山と同じような永久花という存在にはなられたけど、求められた役割は違ったんでしょうか。

では日上山の人柱の方々は何のために?

 

とにかく。

 

「……永遠に神の力を使う為にムラサメ様を人柱にされただなんて、私が言うとおかしいかもですがイラッとします」

 

『本当にだ、芳乃がそれを言うのか? 人の世に人知を超える神の力を降ろすのに、人一人の命で済むなら安いくらいなのは理解しておろう。あまり当時の状況は覚えておらぬが、それだけ切迫した状況だったのかもしれぬ。吾輩としては納得した上で人柱となる事を決意したはずだぞ。寝たきりだったと思うが、前日には我が家ではあり得ぬほど皆に盛大に祝ってもらったはずだ』

 

「それじゃあ寂しいじゃありませんか。ワタシたちがその時を過ぎたとして、何時まで経ってもムラサメ様にお会いできないという事なんですから」

 

お身体を見つけ出してムラサメ様が「人」に戻られれば、お役目から解放されれば。

ムラサメ様が本来歩まれるはずだった日々を取り戻せるかもしれない。

そして、普通の人として旅立たれる事も。

 

「そうですよ、ムラサメちゃん! わたしも神様候補らしいですから、そうなってしまうと二人だけで残ってしまうですよ? さすがに故郷のお話も尽きてしまいそうであります」

 

『もう少し建設的な事を考えた方が良いと思うがな? だが付き合いには感謝するぞ』

 

「仮にムラサメちゃんが本当に永遠の存在だったとして……ムラサメちゃんに触れる人は結局貴重なんだろ? 今のうちにして欲しい事を言ってくれよ。高い高ーいとか?」

 

『ご主人のそれは吾輩に対する冒涜か宣戦布告と捉えてよいな? 眠ったところで足の小指に爪を立ててやる。今晩は覚悟しろ』

 

「将臣、明日はムラサメ様と叢雨丸に礼を捧げる修業を課す。三時間は正座するつもりでおれ」

 

「げえっ!?」

 

なんで有地さんはこう……励ますというか、冗談を言うのは下手なんですか?

 

「悪いが不老不死の話も()()()だ。大事なのはその目的なんでな」

 

それは、まさにさっき疑問に思った事。

 

「日上山において何故人柱を立てる必要があったか、ですか?」

 

「そうですね。そしてその答えも安晴さん達はお聞きになっています。密花さんのお話を覚えていらっしゃいますか?」

 

「…………ちょっと待ってください。ムラサメ様のお役目がそこに繋がるんですか?」

 

みづはさんはもう答えに行き着いてしまってます。

ええっと、不来方さんのお師匠様のお話はマヨイガでの出来事の後に伺った事で――まさか。

 

 

 

「穂織に……『黄泉への門』 が、本当にあると? 日上山の人柱の方々も門を封じられている?」

 

 

 

「優秀だな、巫女姫っていうのは」

 

「先生、後ろのお言葉は余計です。朝武さんに失礼ですよ」

 

あのお電話の際、黒澤さんはムラサメ様に対して「貴女もでしょう?」と仰った。

それは人柱という括りだけでなく、その時話題に出していた事も含めてかもしれなくて。

 

「……つまり、穂織に存在している日上山や陽炎山の文化は。ムラサメ様の本来のお役目は」

 

「多分ですけど穂織のどこかにある黄泉への門を封じる何かに関わっていると思いますよ。私が不思議に思っていたのは、封印に関わって門に縛られていてもおかしくないはずなのに、こうやって目の前でフヨフヨされてる事です。封印としては自由過ぎます」

 

『別に浮きたくて浮いているわけではないのだぞ? 割と自由に行動できておるのは事実だが』

 

そういえば最初、深羽さんはムラサメ様に確認されていましたね? 神ではないのかと。

完全な霊体でもなければ、縛られ方も曖昧。疑問の理由はそこにもあったんですか。

 

「犬が言ってましたけど、長男は瘴気を穂織に撒いたらしいです。瘴気は黄泉の代物で、怨霊ってのは簡単に言うと「瘴気に触れた幽霊」。ならまあ考えられる経緯は大体予想がつきます。駒川先生的には不自然ですか?」

 

伝承において裏側の歴史は「朝武長男による隣国の引き込み、内乱」から話は始まる。

だけど本当は更にその前に?

 

「朝武義和が……黄泉の門を開けたって事ですか?」

 

「そうかもしれませんし、門が開いた所に出くわしたという可能性もあるのかと。過去そういった場にいた存在は例外なく発狂しているようですが……極めて強力な自我を持っていた場合、すぐには狂死していない事もあるみたいで」

 

「深紅さんのそのお話は俺も初耳ですが……怨霊の目的までは分からないが、俺の仮定も含めて流れを作るとこんな感じになる」

 

今までのお話から、怨霊関係の事をまとめると。

 

 

 

「戦国時代に開いてしまった穂織の黄泉の門が何らかの方法で閉じられ、今再び開こうとしている。閉じる手段に陽炎山の文化を使った可能性があって、ムラサメさんがこれに関わっているかもしれない。当然穂織の神々もな。怨霊達は当時の被害者か、あるいは関係者ってところだ。朝武さんの呪詛がどう関わっているかは分からないが、恐らく別口だろう。ここからは俺の想像の域だが……マヨイガとして取り込まれた建物が何らかの施設だったとしたなら、それは黄泉への門を調べるためじゃないかと思っている。そしてその資料の一つに駒川先生の先祖が関わられていた。勿論まだまだ未確定で情報不足、断言にも程遠いが……道筋は出来たんじゃないか?」

 

 

 

表の歴史の妖の女や、裏の歴史の犬神や祟り神とは全く別に、穂織には脅威が存在していた。

あちら側に通じる黄泉の門。開いてしまえば瘴気がまき散らされ、生者は飲まれてしまう。

怨霊たちは前に開いた時の被害者か、あるいは関係者。襲ってくるのは本能か、或いは。

 

そして。

 

「その感じだと、門の封印を直接担っていたモノってのが……」

 

有地さんの口は重い。質問の答えは恐らく人柱を使った何か。そんなもの、一つしかない。

つまり。

 

「まあ……叢雨丸って事ですよね。はは、やっぱとんでもない事やらかしちまったな、俺……幽霊の封印どころか、あの世との扉を開けちゃったなんて」

 

「将臣……」

 

今度は有地さんが真っ青に……。

どうしよう、私も言葉が見つからない。決して有地さんのせいではないのに、安っぽい励ましの言葉にしか思い浮かばない。有地さんはもっと深刻に悩まれているというのに。

 

 

 

「ん~、一肌脱ぎますか。青少年には効果ありそうだし流石にとばっちりでトラウマは可哀そうだし、上書きと。夕莉さんがやる? 私の考え分かってますよね?」

 

「私なんかがやって効果があるんですか? それに記憶を見てしまうのは……」

 

「まだコントロール出来てないんですか? あとちょっとは自分の魅力を自覚してください、ケンカ売ってます? まあいいか、画がすっぱ抜かれたら週刊誌数面レベルの大サービスですよ」

 

 

 

深羽さんが立ち上がられて……?

 

 

むぎゅっ

 

 

有地さんを、後ろから抱きしめられた――えっ!?

 

「みっ深羽さん!?」

 

「本当なら高いですよーこれ? 最低でも一本のギャラの五倍くらいは貰うやつ。SNSに載ったら大炎上案件ですよ」

 

「深羽、こんな時にお金の話は止めなさい。おばさんでいいなら私が代わるから」

 

「お母さんはその顔でおばさん自称止めてくれない……? それ私にはキッツいんだけど」

 

なかなか冗談気味たトーンでお話されていますが……。

 

「有地君、君は盛大に勘違いをしているわよ」

 

「勘違い……いや、だって俺が穂織に来なきゃ今も怨霊や黄泉への門は――」

 

「有地さんが穂織に来られて、叢雨丸を抜かれて、芳乃さん達に関わられたからここまで分かったんですよ」

 

「そうそう、夕莉さんの言う通り。封印っていうのはね、いつかは解けちゃうものなのよ。今回は有地君がそのタイミングに関わった。だけど無理矢理解かれたわけでも、時間切れだったわけでもないくさいからまだ猶予がある。第一おチビさんのナマクラを抜いた事で封印が解かれただなんてまだ決まってないし、そうだったとしても今現在完全開放には至っていないんだから。過去にはね、自暴自棄(ヤケクソ)で門を開けた馬鹿もいるのよ」

 

そうだ。決めつけてしまったけれど、まだそうだと確定していない。

それに穂織は表向き安定を保てている。門は開き切っていないんだ。

なら、開き切るまでに再度閉じる事が出来れば。

 

「500年間散らばっていたらしい憑代を、最初に見つけたのは有地君なんでしょ? おチビさんとも唯一の関わり方が出来てるんでしょ? これまで朝武さん達を守って来てるんでしょ? 有地君がこの件に関わった事で、ちっとも先が見えてなかった祟り神のお話は解決してる。君がやってきた事と稼いだ時間で今があるって事、自覚してくれない?」

 

「私も穂織に住んではいたものの……何一つ為せていませんでした。有地さんはご自分の努力を称えられてください。そのままで居たら、この先何も知らないうちに平和が終わっていたのかもしれないんですから」

 

「そうですよー。一年間毎日毎日おんなじ事ばーっかやってて、町の配置すら頭に入ってない人よりずっとすごい事をしてるんですよー」

 

「深羽、不来方さんをいじめるんじゃありません」

 

「私、夕莉さんの名前出してないんだけど?」

 

「……………………あっ」

 

「いえ、深紅さん、大丈夫ですから……」

 

そうですよ。前にもこういうお話をしたじゃないですか。

 

『すぐに言葉が出ずに悪かったな、ご主人。雛咲娘と不来方の言う通りなのだ。この数年は吾輩と芳乃、茉子、安晴、駒川の5人だけで基本やっておった。芳乃は玄十郎が申し出ても受け入れん頑固ものだったからな。だが見よ、今この場に何人居る? 最初の一人がご主人なのだ。ご主人が繋いだ縁でもあるのだよ。吾輩は本来叢雨丸の管理者、故にご主人がいなければここまで現状に関わる事もなかっただろう。当人なのに、管理者の立場にかまけてこの500年で裏事情など知ろうともせんかったしな。怠惰の一言だ』

 

「そうですよ有地さん、ムラサメ様の仰る通りです。以前も言ったじゃないですか。それに経緯は何であれ、ワタシは有地さんに直接命を救われているんですよ? 叢雨丸を抜いて「はい終わり」でもよかったのに、芳乃様の嫌がらせに耐えて、生活基盤を変えてまでその責を果たそうとしてくださっているじゃないですか。そんなご自身を責められるのはカンベンしてください。ワタシたち常陸家も、今まで何をやってたんだっていう盛大な流れ弾になります」

 

ムラサメ様と茉子に先を越されちゃった。おまけにさらっと私を刺してくるし――事実だけど!

なら私は深羽さんに倣って行動にも示しましょう。

 

今まで私たちを守って来てくれた手を取って。来られた時より間違いなく剣タコだらけですよね。

 

「……こんな時にすぐ動けないというのは、婚約者失格ですね」

 

(仮)とはいえ、最初が懺悔から始まるのもどうかと思ってしまいます。

 

「もう色々言われてしまっていますけど――有地さんが穂織にいらっしゃったから、有地さんが叢雨丸を抜かれたから、有地さんが残ってくださったから、祟り神祓いに参加してくださったから。茉子を助けて下さったから、私を助けて下さったから今のこの時間があるんです。この先の方針が見えているんです。あんな事を言わせてしまった私が何を、とも思いますけど……貴方のせいなんて事は絶対にありませんから。これからも、よろしくお願いします」

 

「ここで逆プロ?」

 

「深羽」

 

「ヨシノも大人の階段をぉぉぉぉ……」

 

「若いな」

 

「先生が若い時にこんな事言えたんですか?」

 

「そうだったら多分七股問題は起きていませんよ」

 

何だか外野が違う話をしている気がしますが……少しは励ましになったでしょうか。

 

 

 

「………………なんか、ヤバイ」

 

 

 

そんな事を言い出す有地さん。一体何がです?

 

「俺にモテ気が来た気分」

 

ガクゥッ。

 

「何を言ってるの? 青少年が女優に後ろから抱きしめられて、手を巫女に握られている展開とか、エ〇ゲの主人公でもありませんよ?」

 

「……深羽? あなたも何を言っているの?」

 

「耳を塞いでください。深紅さんは生涯知る必要のない事です」

 

なんで第一声がそんな発言になるんですか……もう。

とにかく元気が戻られたようで良かったです。

 

「いや、真面目な話…………ガチでヤバい事しでかしたって思ってたけど。そうやって捉えてもらえるなら、俺もまだ頑張るから。こっちこそよろしくお願いします」

 

有地さんを握っている私の手に、軽く握り返される感触。

うん、それでいいんです。

 

「すまなんだな、将臣」

 

「いいよ、祖父ちゃん。俺も勝手にヘコんじゃってた感じだから」

 

「いや、お前の頑張りを一番昔から知っておるワシが真っ先に励ましの言葉を掛けられんなど。挽回と言っては何だが、巫女姫様との祝言に関してはこちらで全面的に執り仕切り、穂織を上げて盛大に行わせてもらう。早速都子(みやこ)達にも連絡を入れねば」

 

 

 

「「…………はい?」」

 

 

 

えっ? 祝言? 一体玄十郎さんは何のお話を? 都子さんって有地さんのお母様でしたよね?

 

「将臣君、ありがとう……そして本当に色々と申し訳ない」

 

なんかお父さんはガン泣きしてる!?

 

「君に全てを預けてしまっているのは僕の責だ。だからせめて――君の義父となる者として、勿論玄十郎さんとは連携させてもらって、僕達の時とは比較にならないくらい出来る限り最大の形でお祝いをさせてもらうよ。秋穂、こんな立派な婿を迎え入れられるなんて僕達は果報者だね。みづはさん、ご協力願えますか」

 

「言われるまでもなく。宜しければ段取りはこちらで組ませて頂きます」

 

待て待て待て。

 

「ストップストップ、当人を置いていかないで?」

 

「ちょっと待って。お父さん、みづはさんも。何のお祝いなの? 義父?」

 

「えっ? 朝武さんが有地君に逆プロして、有地君がそれを受けたんでしょ? 有地君はこうやって私に抱き着かれてる状況なのに。なに? たかが宗方美優程度眼中にないってわけ? これでも一応女優のプライドはあるんだけど。私の身体ってそんなに()っすいの? 結構ショックだわ」

 

「深羽さんはこれ以上事態を混沌にしないでください。喜ばしい事なのは事実ですけど」

 

「…………兄さん、ごめんなさい。私はこの辺りが全然分かってなかったみたい」

 

逆プロポーズ!? 健やかなる時も(中略)を誓います的な発言をいつの間に私が!?

 

「はぁっ!? えっちょっどこからそんなお話の展開に!?」

 

「芳乃様がわざわざ「婚約者失格」なんて前置きをされて、「失格」を覆す形で有地さんに今後をお願いしたんじゃないですか。なら(仮)を外します宣言も同義じゃないですか? これで有地さんもワタシの主という事ですね。誠心誠意お仕えいたします」

 

『いやあ、吾輩は嬉しいぞ。あの芳乃が自分の口からあんな事を言えるようになるなど……無論夜はお主らに近づかんようにする故、安心して励め』

 

「婚約。けっ、結婚……しょ、しょしょおぉぉー……ぷしゅぅ~~~~~……」

 

 

 

 

 

 

「先生、どこまで書記を取ればいいでしょうか?」

 

「俺がまとめた話以降は捨てろ。真面目かお前は」




という事で、チャプター4終了です。
千恋*万花の共通ルート終了という所ですね。

次のチャプターからは個別ルートを交えつつ、
零の要素である怨霊関係をメインに話が進みます。


ここまでご読了お疲れ様でした。
よろしければ評価やご感想を頂けると嬉しいです。ホントどうなんでしょう……。

予告しておりました登場人物紹介を挟み、チャプター5へ進みます。
少し間を頂く予定です。
次回も楽しんで頂けたら嬉しいです。
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