零 ~イヌツキの少女達~   作:もふもふたぬきねこ

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実は原作に登場しない彼女のケモミミ姿。
ホラゲ出身の夕莉と深羽には一応ある(兎耳と猫耳。尻尾付き)というのに……。

今回もよろしくお願いします。


38. 獣耳、二人目

信じられない状況になった。私以外に獣耳が生えるなんて。

こんなことを起こせる存在は一体しかいない。

 

「……まさか、貴方は犬神なんですか?」

 

「『人を呪わば穴二つ、とでも言ったか? この娘の魂魄がこれほど(われ)との相性がいいとはな。流石はあの男の末裔、呪詛を受けている我は半身の扱いか。便利だな、白児(しらちご)として使える』」

 

普段の茉子からは想像しにくい低い声に、揶揄う感じとはまた違う嘲笑するかのような笑み。

呪詛返し――何時かの懸念が現実のものになった。本当にこんなことが。

 

しっかりしなさい芳乃、今は冷静に。ここには他に頼れる人はいないんだから。

街中じゃ人目につくから人の少ない所かどこかの室内へ。神社……よりあっちの方がいいかな。

 

「……ついてきてください。落ち着いて話が出来る場所へ案内します」

 

「『貴様の言を受ける筋合いはない』」

 

「玉石の欠片が二つある場所です。状態は貴方も御存じでしょう? 私たちでは片方についてお返しする方法がわかりません。それを教えてください」

 

「『ほう? 少しは頭が回るな、小娘。よかろう、案内せよ』」

 

相手は何であれ神には違いない。下手に話は聞いてもらえないか、言葉選びに気をつけないと。

そういえば。

 

「……その耳は、私以外には見えないので?」

 

「『知るか』」

 

「貴方の伝承が強すぎて、耳が生えていると注目を極端に集めます。目的地に辿りつけません」

 

「『……ちっ、面倒な事だ』」

 

なんとなくげんなり顔に見えた茉子兼犬神は。

 

 

ボンッ

 

 

という、まるでニンジャがドロンするかのように煙を出して。

そこに残っていたのは茉子の着ていた服と靴。そして――

 

「ワン!!」

 

特に黒くもない、むしろ白っぽい可愛い子犬が一匹。ギャップがすごい……。

いやまあ、確かにこれで獣耳が生えた人よりは目立つ度合いが減りましたけど。

 

「今の状態で会話は出来るんですか?」

 

「ワン!」

 

無理っぽい……こちらの言葉の理解はしているみたいですけど。

犬の散歩なんて経験無いんですが? 一先ず茉子の服と靴を回収しましょう。

 

「それではついてきてください。そう遠くはありませんから」

 

「ワウ!」

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

「あれ? 巫女姫様? 祖父ちゃんに御用でしたか?」

 

「朝武さんもこっちに用事……その犬は?」

 

「その辺も含めてお話しますので、どこか一室お借りできるかお話をして頂いていいですか?」

 

 

 

志那都荘には到着しましたが……。

 

犬を連れているのが巫女姫(朝武芳乃)というのが不味かった。この穂織では極めて珍しい光景ですからね。

加えてここはイヌツキの地、犬を飼われている家がほとんど存在しないという裏話もあります。

 

お陰で犬神(茉子?)が様々な方からモフられるわジャーキーを頂けるわで全然先に進めない。

適当に帽子でも買って被らせておけばよかった。

貴方も一々足を止めないでください。わりと嬉しい事なんですか?

 

志那都荘の前では鞍馬君と有地さんが門前の掃除をされていました。お話は終わったのかな?

中に入ろうにもペット可なのか分かりませんから、これは大変助かるタイミングです。

 

「分かりました。聞いてくるんでちょっと待っててくださいね」

 

そう言って鞍馬君が志那都荘の中へ。有地さんに軽く説明する時間が出来ましたね。

 

「常陸さんなしでこっちへ来るなんて。今日は常陸さんも別行動? 犬の飼い主捜し中?」

 

「いいえ、有地さん――コレが茉子なんです」

 

「ワン!」

 

「………………は?」

 

「こいつは何を言っているんだ?」的な顔をされますが、本当の事なんですよ!

私だって信じたくありませんって!

 

「……取り敢えず、了解。今そんな嘘吐く必要ないだろうし」

 

幸い飲み込みが早い。だてに最近無茶苦茶な状況に巻き込まれてないですね。

 

「巫女姫様、お待たせしました。大丈夫です。本来は予約なしのペットはお断りしてるんで、今回は裏からこそっとお願いします。そこから小春が案内しますんで」

 

「わかりました。ありがとうございます、鞍馬君」

 

「悪い廉太郎。俺もちょっと外していいか?」

 

「祖父ちゃんから聞いてるよ、多分将臣も同伴ってな。小春が入れ替わりの予定だ」

 

「了解」

 

 

 

「巫女姫様、こんにちは。ご案内しますね。可愛いワンちゃんですね、間近で初めて見たかも」

 

「すみません小春さん。よろしくお願い致します」

 

「悪いな小春。まだ休憩中なのに」

 

「大丈夫だよ、お兄ちゃん。まあその代わりが廉兄っていうのは落差がヒドいけど……」

 

私が小春さんに会うのって神隠しの時以来なんですよね。5日くらいですか。

元気そうで何よりです。有地さんと顔を合わせても沸騰していないようですし。

なにかしらお話をされたんでしょうか。あるいは自然解消?

 

一階の角部屋に案内してもらいました。

 

「それでは、御用件が済んだらお祖父ちゃんか女将にお話だけしてもらっていいですか?」

 

「承知しました」

 

「それでは」と、私たち二人と犬一匹を残されて小春さんが退出されます。

さて。

 

「……で、どういう経緯でこんな事に?」

 

「それは本人から説明してもらいましょう――戻ってもらっていいですよ」

 

 

ボンッ

 

 

犬に変わった時と同じく、姿現しの様に煙を上げて。

――その時の事を頭に入れておけばよかった。

 

 

 

「『小さな身体は窮屈だ』」

 

「ちょおっ常陸さん!!?? 服!! 服!! せめて恥じらって!!」

 

「有地さん!!! 目をつぶってください!!!」

 

「『(やかま)しい。(わめ)くな』」

 

 

 

元に戻った茉子の姿は、当然ながら素っ裸――しかも犬みたいに座った状態。

だって私が服持ってるんだもんね! ごめんね茉子!! こんなの事前に考えられますか!!!

 

「『我にそんな邪魔くさい布を巻けと?』」

 

「他の誰かに見られると色々マズいんですよ!」

 

「『人間の身体は不便で面倒だな、加えて乳が重い……着方なぞ知らんぞ』」

 

「私がやりますから! ああっブラを引っ張らないでください!!」

 

「朝武さん! 解説止めて!? 俺にはキツイ!!!」

 

ああもう! 仮にも神様って言うんだったら着替えの一つくらい知っててくださいよ!!

 

 

 

「『窮屈だ』」

 

「我慢してください。その身体は茉子のものなんですから」

 

「取り敢えずここまでのやり取りで、目の前に居るのが犬神って事は分かったよ。また犬耳か」

 

なんとか茉子に憑りついた犬神を着替えさせて。取り敢えず落ち着いた所です。

これ、後で茉子にどう説明すればいいんだろう……。

 

「『さて、姉君の御身を返す気になったか? 朝に「時を頂きたい」と申し出はあったが』

 

「ああ、ちゃんとお父さんの言葉は届いているんですね……それについては申し上げた通り、もう少し時間を下さい。有地さんが叢雨丸を使えない状態になると、貴方と姉君様をお祀りするどころではなくなるかもしれませんから」

 

「『まだ姉君の御身を汚すつもりか』」

 

「分かってるだろうけど、俺たちじゃ基本怨霊に対抗する手段がないんだよ。何が目的か知らないけどこっちを襲ってくるし、お前とも敵対してるんだろ? 射影機は本来穂織のものじゃないんだから」

 

仮に射影機が使えなくなった場合、最も霊的な力を持つのは叢雨丸。

現状怨霊に効果は無いようですけど、だからといって手放せる状況でも選択肢もありません。

 

「『しゃえいき……あの驚異的な霊圧を飛ばす呪具か。アレを我に向けられるよりはマシだが、姉君の御身は()()()には干渉せんぞ? 我には理解出来なかったが、姉君はこの地の人間どもを慈しまれた。大地を汚す真似を姉君がなさるわけがない。あの男の呪詛は別だろうが』」

 

「じゃあ……今まで貴方を祓う効果があったのも」

 

「『我自身が姉君に罰せられる事を受け入れていた上に、愚物の呪詛が混じっていたからだ。加えて憎らしい事に、御身を振るっているのは姉君を狂わせた罪人。この期に及んで私情を混じえられるなど、一体何を考えておられるのか』」

 

なるほど。

叢雨丸が怨霊を斬れなかったのは、在り方が変わったとはいえ元は穂織の住民だったから。

伝承で最初に使われたのは隣国の侵攻の鎮圧。内乱を防ぐのに使ったとは明記されていない。

朝武長男は穂織に仇為すものとして別扱いのようですが。

 

――今朝、深羽さんが仰っていた事を聞けるでしょうか?

 

「一体あの幽霊たちの目的は何なんですか? そもそも何故出現を?」

 

「『自力で知れ。が、一番早い方法は貴様が自害する事だ、小娘。昨日のあやつはあの愚物の側近よ。欠片一つ残さず消し飛びおって、最早常世にもおるまい。清々したわ』」

 

くっくっく、と笑う茉子の顔をした犬神。

 

中々にヒドイことをサラッと言ってくれますね。

戦国時代から今まで奇跡的な状況を維持して今があるというのに、自ら断てと?

一体何に対して「一番早い方法」なのか分かりませんが。

 

あの武者の怨霊は長男の側近だった。それは犬神にとっても怨みの対象。だから攻撃したと。

犬神にとって愉快な事なら喋ってくれるらしいですね。

 

「じゃあ本題を聞くよ。どうしたら俺の身体から姉君様の玉石を取り出せるんだ?」

 

「『御身に問いかけ、目覚めさせ、一つに戻られるよう進言しろ。さすれば罪人の身から移られるであろう』

 

「その……俺が「罪人」ってなんなの? 全く身に覚えがないんだけど」

 

「『阿呆、姉君の御身を口にするなどという大罪を犯しているだろうが。何より貴様が未だ現世に存在している事が罪だ。輪廻に乗らず、そのまま夜泉に消え去ればよかったものを』」

 

「俺、そんな取り扱いなのかよ……まあ欠片を飲み込んじゃったのは事実だけど」

 

玉石を元に戻すのは、有地さんが玉石に対して祈ればよさそうです。

有地さんが「罪人」というさっきのお話……輪廻。仏教の生まれ変わりの概念。

つまり本来は有地さん本人ではなく魂、ご先祖様の問題という事でしょうか?

 

恐らく自分にとって都合のいい話しかしてくれない。

今は玉石の話を優先しましょう。

 

「レナさんがお持ちの玉石の欠片も、今しばらくは待っていただいてよろしいですか? 彼女を怨霊から守ってくださいそうですから」

 

「『器の持つ御身は最後でよい。あの玉石は社に祀られた御身より清浄。姉君も落ち着かれているだろう。加えて器を守る為ならば我も大目に見てやる』」

 

レナさんの方は良いと。それだけでも安心感が違いますね。

 

「あと一個、他にもまだ玉石の欠片があるみたいなんだけど場所の見当は付くか?」

 

「『分かっていればとうに御身は元に戻られている。貴様と器が持ち去った場合とはわけが違う。捜し出し、返還せよ』」

 

「……じゃあ、俺やレナさんみたいに持ち出されたのとは状態が違うのか」

 

「そういう事になりそうですね。その()()というのが全く予想が出来ないですけど」

 

犬神ですら、その在り処は全くわかっていない。

どうにもその一つが失われた事が、これまで武実乃山の玉石が集まっていなかった理由でもあるっぽいですね。断定するにはまだ早いですが。

 

「『……降り続けるには重いか。近くに器がいるな? ここに呼べ』」

 

「レナさんを? ……分かったけど、手を出すなよ」

 

「『貴様ら卑しい人間共と並べるな』」

 

有地さんに連絡をお任せして、レナさんを呼んでもらいます。

その間に確認したかった事を。

 

 

 

「私の耳の事ですけど……あれは呪詛ではなく貴方の力だったんですよね?」

 

「『無為な事よ、結局どいつもこいつもくたばりおって。何故姉君はこんな道を選ばれたのか』」

 

「――ありがとうございました」

 

 

 

茉子の姿をした犬神に、「(しん)」。

 

私たちが勘違いしていただけで、この犬神と姉君様は朝武家をずっと守ってくださっていた。

ならば今出来るせめてもの最上の礼を。

 

「『ふん。形式ばった信仰を捧げる暇があったら、一刻も早く姉君の御身を戻す方法を考える事だ。猶予など与えぬ。この身体を使わずとも現世に我が意思が戻り、それでもなお御身が戻っていなければ――この地の人間全てに呪を以て死ぬまで御身を捜させてやる』」

 

「その前に必ず私たちが見つけ出します」

 

「『ここに誓いは交わされた。忘れるな? 貴様に与える力もそれまでだ』」

 

……なんか厄介な言質をとられてしまった気がします。

こういうのは茉子の領分なのに。相手が茉子に乗り移っているからそういうのに長けてるとか?

 

 

コンコン

 

 

ノック音。レナさんですかね。

 

「レナさん、入ってきていただいて大丈夫です」

 

「そうでありますか? それでは失礼致しますね」

 

レナさんが入って来られました。朝にお会いした時のまま、普段着のほうですね。

 

「マサオミ、ヨシノ、マコ、こんに……マコにもケモ耳でありますか!? 似合いますね!」

 

「『姉君、今しばらく時を。貴女の御身の再生、必ずや成し遂げて御覧に入れます』」

 

「うおっ!? なんだかマコの言い回しがカッコイイのです! なんだか分かりませんけど、無理しないでくださいね? 元気なのが一番ですから!」

 

「『……御意に』」

 

その言葉を最後に、茉子がフラっと……おっと。危ない危ない。

あ、耳が消えた。

 

「…………う~ん。あれ、芳乃様? 有地さんとレナさんも。こちらは……志那都荘?」

 

「よかった茉子、戻ったのね」

 

「戻った? 何からです?」

 

記憶がない感じですか。これ、話して信じるかなあ。

 

 

 

「死にたい……」

 

「なんつうか、マジでごめんなさい。眼福でした

 

「おおぉ、これが古式ゆかしいニッポンのDO☆GE☆ZA!」

 

「正しくはあるんですけど、ここで学ばないでくださいレナさん。そうマジマジと見られるものではありませんから」

 

凡その経緯を茉子に説明して、崩れ落ちた茉子の第一声。

それに対して有地さんの回答。半分くらい私のせいでもありますが。ボソッと何言ってるんです?

土下座とはこういう場面でするのが正しいんですね――私も勉強させてもらってますね?

 

「いや、まあ、その、ワタシの、ワタシの……は、裸、に、関しては不可抗力っぽいですし。御見苦しいものを的なのもありますし……有地さんに初めてお会いした時に半分やらかしていますから、今は一旦いいです。それよりワタシが犬神に取り憑かれているってなんなんです?」

 

おお、茉子の器が大きい。私ならパニックを起こしていそうなのに。

 

「一応犬神の言葉を借りるなら、茉子が朝武義和の子孫だからみたい。犬神本体にも長男の呪詛がかかっているらしいでしょ? 半身に近いらしいわよ」

 

「ええぇ……祟りだの呪いだのは芳乃様だけの領分じゃなかったんですか? やっとそちらから解放されたと思ったら、今度はまさかのワタシ……冗談でも言うんじゃなかった」

 

「俺も魂レベルで罪人らしいから……気付かないうちにクナイで首斬られてそう」

 

「冗談でもやめてください。今のワタシなら記憶抹消の為に本当にやりそうですので」

 

「わたしがお話させてもらった時は、全然そんな感じはしなかったですけどね?」

 

「レナさんは犬神にとって正真正銘「姉」の扱いの様です。あの時レナさんがああ返事くださったのは本当に助かりました」

 

「? 「無理せず元気に」ってやつでありますか?」

 

アレのお陰で多分縛りが緩んでいます。

もしも「全力で頑張って」なんて口にされていようものなら今頃大変な事になっていそうです。

 

「ムラサメ様の件もあるのに、もう何を優先すればいいやらですね」

 

「ムラサメちゃんの件、でありますか?」

 

「ええ。ここに来る前に私たちは田心屋にいたんですけど……一瞬だけみたいなんですけど、馬庭さんがムラサメ様を見る事が出来たようなんです」

 

「芦花姉が?」

 

しかもその理由というのが。

 

「犬神が言うには「ムラサメ様への信仰が減っている」せいであると。私なりの解釈になりますが、勇者の剣イベントがなくなった事で観光客からの信仰が。玉石が集まって、祟り神祓いに叢雨丸を必要としなくなった事で私たちからの信仰すら弱くなっています。ムラサメ様が「叢雨丸の管理者」である必要性が私たちの中で薄くなって、姉君様からの加護が弱くなっているのかと」

 

「あー、そういう。今の時点では幽霊に対して叢雨丸はただのナマクラ刀で、主戦力はもっぱら射影機だもんな。そんな理由で俺たちからも必要性が薄れちゃったせいで、ムラサメちゃんがただの幽霊になりつつある……今ムラサメちゃんは? 結構不味くない?」

 

たしかに、この状況ってムラサメ様にとっては――

 

「玉石の最後の一つを探しに出られています。山中の可能性が高いかと」

 

「ちょっと行ってくる。叢雨丸を持ってたらある程度は声も届くっぽいから。見つけたら常陸さんに連絡入れるね」

 

「承知しました。時間を決めておきましょう……17時までには一度お電話ください。それで発見できていなければワタシも山に入ります。もう祟り神は居ないはずですから」

 

「まだ幽霊や怨霊の方は何も解決してないのよ? 特にその時間は……」

 

「だからですよ。逢魔ヶ時までに見つからなければ、不来方さんや深羽さんたちのお力をお借りします。芳乃様は明日の為の儀式があるんですから絶対に入られないでください。まあ……ワタシが犬神と化しているというのなら、清浄性という点では既に手遅れなのかもしれませんが」

 

もしそうだったら、私が聖域に入らなきゃいいだけでしょ。

元々お父さんだけ入ってもらうつもりだったんだし。

 

「良ければわたしもお手伝いしますよ?」

 

「ありがとうございます。ですが今はお気持ちだけで。レナさんは昨日の事があっての今日のお休みですから。それにレナさんが姉君様の器なのだというなら、それを傷つけるかもしれない真似を犬神が許すとも思えませんし」

 

「むぅ……そうかもしれないでありますね」

 

「じゃあとにかく行ってくるよ。また後で」

 

「はい、よろしくお願い致します」

 

そうして有地さんが部屋を出ていかれました。どうかよろしくお願いします。

さて……。

 

「更に難題が増えた……」

 

「キャパオーバーですねえ。祟り神祓いだけやっていればよかったのがどれだけ楽な事だったかを、今更ながらに思い知りました。最低でも安晴様にはお知らせしたいところですが、よりにもよって今日明日の大事な日ですから。御心乱される事をお伝えはしない方が良いでしょう。まあワタシの影響を芳乃様が受けているのであれば、その時点でバレそうですが」

 

「課題が増えたなら抱え込まない方が良いと思うですよ? ヨシノのお父さんが難しいのであれば……駒川先生か大旦那さんはいかがですか? お二人とも大体はご存じと伺っておりますし、何かしらお伝えしておく方が良いと思いますよ」

 

説得力がありますね。働かれているからこそなのかの即判断。

 

たしかに現状、もう朝武家の問題だけではなくなってきています。

加えてムラサメ様にすら危険が及んでいるかもしれない。

不来方さんや深羽さんたちにもどうお話をすればいいのやらですが……。

とにかくコソコソやっている場合ではありませんね。

 

みづはさんは現在も動き回れているか、診療中の可能性もある。なら。

 

「そうですね、ありがとうございますレナさん。せっかく志那都荘にいるんですから、まずはお部屋をお借りしたお礼も一緒に玄十郎さんにご相談する事にします」

 

「ワタシ、犬になってたんですよね? 毛が残っていないでしょうか……」

 

「ダイジョーブですよ、そのためのわたしたち従業員でありますから」




という感じで、今後犬神は茉子に憑り付く形で登場します。
現時点で最も真相を知っているキャラクターです。教えてくれませんが。

次はこの直後から。引き続き芳乃視点です。夕莉仕事して?
次回も楽しんで頂けたら嬉しいです。
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