零 ~イヌツキの少女達~   作:もふもふたぬきねこ

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夕莉から、祟り神とは違う別のナニカの存在を知らされて。
驚きつつも一旦日常に戻ります。

チャプター2終了までデイリー投稿していこうかと思います。
今回もよろしくお願いします。


CHAPTER 2 現代における幽霊退治
4.  日常の裏の非日常


「そういえば将臣、聞いた事あるか?」

 

「何をだよ? いきなり」

 

「謎の超絶美女の喫茶店店主」

 

「ぶっ!?」

 

「芳乃様!?」

 

「巫女姫様!? 食べ物がのどに詰まったんですか!?」

 

「ヨシノ、大丈夫でありますか? ティッシュがどこかに……」

 

あれから数日。

 

祟り神の気配も、私の獣耳が出る事もなく。私は神楽舞の奉納を、茉子は私たちのお世話を、有地さんは剣の鍛錬を続けつつ普段通りに鵜茅(うがや)学院に通う日々になっていました。

 

そんな中、クラスメイトのレナさんと鞍馬君と妹の小春さんも一緒に、いつも通りお昼を頂いていたところでこの話題。

まさかここまでピンポイントに? よりにもよって鞍馬君に知られているなんて。

 

「すっすみません、大変失礼を。レナさん、ありがとうございます」

 

「大丈夫っすか?」

 

廉兄(れんにい)! こういう時は何も言わずに行動するもんだよ! お兄ちゃんはそうしてるでしょ!」

 

有地さんは表情を顔に出さない為に行動されている気もしますね。

助かっているのは事実ですが。

 

「……聞いた事ねえよ」

 

「そっか。まあお前はまだこっちに来て日が浅いもんなあ」

 

「喫茶店の店主って随分とピンポイントですが、どういう方なんですか?」

 

このポーカーフェイスは流石茉子ですね。

私はすぐに顔に出てしまうらしいので――さっき吹き出したばかりですからね。

黙って聞く事にしましょう。

 

「常陸さんも知らない感じか? すげえ美人なのはそのまんまなんだけど、その人が居た場所はコーヒーのいい香りがするらしいんだよ。って事は普段からコーヒーを扱ってるって事じゃん? バイトの小春みたいにちょっと手伝ってるくらいじゃ和菓子やらお茶の香りなんざしないから、よほど普段から関わっている人――つまりは喫茶店の店長なんじゃないかって」

 

芦花姉(ろかねえ)よりも背が高くて、だけど穂織の人じゃないみたいで。私が知ってる様な服とは結構違うらしくって。それでその人を見つけてついていった子もいたらしいんですけど、どこかで見失っちゃうらしいんです」

 

ほぼ間違いなく不来方さんですね……。

存在感という意味では強くなさそうですけど、あの美貌に珍しい服装ではそりゃあ目立ちます。

幸いあの店の場所ですからバレてはいないみたいですけど。

 

「へえ。穂織にもそんな人が居るんだな」

 

「何だよ将臣、ノリが悪いなあ。今度その人を探すのにお前を誘おうと思ってたのに」

 

「お兄ちゃんは廉兄と違って忙しいんだからダメに決まってるでしょ。お祖父ちゃんの鍛錬をまた始めてるんだよね?」

 

「ああ、朝学校に来る前と学校終わってからだな。やっぱり相当身体が鈍っちゃってるよ」

 

「よくまあ、また始めようとしたぜ。マゾなのか?」

 

「お前、この前のやつから速攻で逃げたもんな」

 

「あんなの付き合えねえって! 1日で腕も足も死ぬっつうの!」

 

「そのまま死んじゃえばよかったのに。そうすればお兄ちゃんが私の本当のお兄ちゃんになってくれるよね?」

 

「なんだと!」

 

「なによ!」

 

言葉だけ並べると、なかなか妹さんの発言が過激な事になっていますけど?

一旦不来方さんの事に関してはうやむやになったのでしょうか。

 

余計なお世話なんだと思いますが、鞍馬君に不来方さんの事を教えるのは憚られるんです。

申し訳ないですけど頑張って探してください、鞍馬君。

 

 

 

そんな事を思っていたら――視界の淵に風を感じる爽やかな緑色の髪。

ムラサメ様?

 

 

 

教室まで来られるのは珍しい。なにかのジェスチャー?

両手を頭につけて、手のひらをピョコピョコ折るような……!!

 

 

 

まさか、耳が!?

 

 

 

とっさに手を……頭にやりそうになったところで有地さんに机の下で手を止められました。

危ない。ありがとうございます、有地さん。

そんな有地さんと、向かい側に座る茉子の表情は……そうですか。

 

2人には見えている、という事ですね。

 

今晩、また穢れを祓いに向かわないと。

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

「お昼休みはありがとうございました。有地さん」

 

「どういたしまして。まあ気持ちはよく分かるよ」

 

「今までと違って、獣耳が出現する感覚が分からないというのも考え物ですね。アレはアレで授業中に起きても困りますが」

 

「朝武さんの喘ぎ声が教室に響くのはなあ……」

 

「喘ぎ声って何ですか! そんな、人を変態みたいな!」

 

「そんな事一言も言ってないよ!?」

 

「芳乃様の妄想が暴走しているだけなので気にしないでください」

 

「茉子!?」

 

『取り敢えず緊張はしとらんようで何よりだな』

 

あの後は普通に授業を受けて、有地さんも鍛錬をせず直帰して、私も神楽舞の奉納を終えて。

これから山に、というところ。

 

だって、アレってかなりムズムズするんですよ!?

くすぐったさと、くしゃみが出そうで出ないような感覚と――こんな事は口が裂けても言えませんけど、快感のような電撃が全身に走るような。

 

それを必死に我慢しているというのに人を変態扱いだなんて!

あと私の妄想って何!?

 

「それでムラサメちゃん。祟り神がどの程度のもんかとかって?」

 

『幸いと言っていいか分からんが、いつもと同じくらいだな。大量発生しておるという事はないだろう』

 

「お祓いをしていなくても、現れている数は増えていないという事ですか」

 

「幽霊の気配とかは分かりますか?」

 

『分からんし……分かりとうもないぞ、茉子よ。お主はまだ本調子ではないのだから基本的には芳乃とご主人に任せるのだぞ』

 

「分かっていますよ。ムラサメ様も心配が過ぎます」

 

そんな事を言って前みたいにケガなんて事はやめてね、茉子。

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

日も落ちて。暗闇に包まれた夜の武実乃山。

緊張する事自体はいつも通り。でも今日は別の要素も。

 

「ムラサメちゃん、いい加減腕にしがみ付くのは止めてくれよ」

 

『しっしがみ付いてなぞおらんぞ!? 何かがあった時にご主人の腕を力ずくで震えるように待機しておるだけだ!』

 

「せめてもう少しだけでもあったらよかったのに……」

 

「有地さん、堂々とセクハラ発言は止めてください。後でクナイの錆にしますよ? 芳乃様もそろそろご準備を……恐らく近いです」

 

「分かったわ」

 

くノ一装束の茉子が先頭に立って周囲を警戒してくれています。本当に頼りになる。

これでお仕事以外も真面目だとさらに助かるのに。

 

 

 

茉子に言われるまま、鉾鈴を両手にしっかり持って構えて山道を進む事数分。

 

『……! ご主人、構えよ! 来るぞ!』

 

「了解!」

 

「芳乃様!」

 

「分かってる! 茉子は直接受けちゃダメよ!」

 

前方左斜めから……来る!

 

 

ザザザッ!!

 

 

 

固体でも液体でもなさそうな、黒い泥の塊。

不定形だけど……どこか獣だと分かる。前脚が2本ありますから。

全身は暗い赤紫色で、目だけが赤い――「祟り神」。

 

 

 

いつも通り一体だけ。大きさも普通ですか。

 

「ワタシはクナイで行動を制限します! 有地さんとムラサメ様は前衛を! 芳乃様はもしもの時に備えてください――ハアッ!!」

 

 

ビュッ!

 

 

茉子のクナイが祟り神の少し右側を狙って飛んでいき、祟り神がクナイを避けるように左側へ。

ですがその先は。

 

「木で塞がれてんだ……よっ!」

 

 

ブォン!

 

 

叢雨丸での一閃。しかし簡単には当たってくれません。

本当に、獣のように素早い。

 

「シィッ!」

 

「フッ!」

 

刀とクナイの連続攻撃をかいくぐりながらも……狙ってくるのは!

触手みたいなのが来る!

 

「芳乃様!」

 

「分かってるわ!」

 

私! いつも通り呪う相手は巫女姫という事ですか!

迎撃するために鉾鈴を前に構えて――

 

「させねえ! ラァッ!!」

 

 

ビュオ! ザシュッ!

 

 

有地さんの持つ叢雨丸が祟り神に追いつき、両断しました。

私の鉾鈴だとこうはいきません。

 

――また前みたいに、私の装束だけを器用に斬られるような幻覚を見た気がしますけど。

 

「よし! ……大丈夫だったか? 朝武さん」

 

「私は大丈夫です。ありがとうございました、有地さん。茉子も」

 

「はい、お疲れ様でした。今日の祟り神はあの一体だけ……ムラサメ様?」

 

戦闘時は叢雨丸と一体化されていたムラサメ様が、いつの間にか離れられていて。

 

 

 

どこか一点を見つめられている。

――止めてください! イヤでも理由を想像しちゃうじゃないですか!

 

 

 

『……あ、あ゛ぁ、あ゛』

 

「常陸さんガード!」

 

「有地さん、ブッ飛ばしますよ? ……おいでになったようですね。芳乃様はワタシの後ろに」

 

「う、うん……前のとは、違う?」

 

間違いなく祟り神じゃない。人の幽霊と分かる存在が山道の脇の森の中に、ボウッと灯るように。

ですが前とは明らかに違う点――首が折れていない。前よりも痩せている感じでしょうか?

こんな事を基準にしたくはないんですが。

 

『ごっご主人! そんな無体な事はやめい! か弱い吾輩の盾に……ひぃ!? 近づいて!?』

 

「自分が霊のくせにか弱いもなにもないだろ? 第一祟り神にも襲われないって自分で言ってたじゃん。確かに、前のやつとは違う幽霊か?」

 

「そう、ですね。ですが害がないかどうかは別です。間違いなく目標はこっちのようなので」

 

「は、早く逃げた方が……1人だけじゃないのは分かったんだから」

 

「ワタシもそうしたいのは山々ですが、複数の個体が居るというだけの追加情報では不足です。不来方さんにお話を伺うにしてももう少し情報を得ないと。あの一体だけでない可能性は十分にありますので、芳乃様と有地さんは周囲を警戒して頂けますか? 叢雨丸は抜刀しておいてください」

 

「分かった。ほらムラサメちゃんも!」

 

『うぅ~ご主人と茉子が鬼じゃあ』

 

「左の森は私が見ますから有地さんは右を。茉子、気を付けてね」

 

「ありがとうございます」

 

茉子がクナイを構えたまま、少しずつ幽霊側に近づいて。

幽霊側は歩いているようなのに、全く音もなく。

間違いなく「ありえないはずのもの」のようですね。

 

見た感じ先日の農民の方と思われる幽霊に近いですけど、服の色はえんじ色でしょうか?

特に何も持っているわけでもなく、ただ白目をむいた虚ろな。怖い。

 

 

 

…………ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛

 

 

 

『ぴぃっ!?』

 

「しがみ付いてていいから落ち着いてくれ! 今常陸さんの邪魔すんのはナシ!」

 

「うぅっ……茉子、今のところ周囲にはいないみたい」

 

「ありがとうございます、芳乃様。それでは」

 

私の声を聞いて、茉子がより幽霊に近づいていったようです。

思わずそちら側を見てしまいます。

 

その瞬間。

 

幽霊が両腕を前に――まるで映画のゾンビのように。

 

そして。

 

 

 

ア゛ア゛ア゛ア゛

 

「ふおっ!? あぶな! これでも食らって下さい!」

 

 

ビュオッ!

 

 

幽霊が一気に歩を速めて、茉子に抱き着こうとでもしたような!

茉子は冷静に幽霊を避けてクナイを投げて。

 

 

サクッ

 

 

幽霊の胴体を貫通して、後ろの木に刺さりました。

ああ、まさに幽霊……。

 

「参りましたね、少なくともワタシのクナイは効かないようです。手裏剣もダメでしょう」

 

「じゃあ叢雨丸を試すか――ほらムラサメちゃん! いつまでベソかいてんの!」

 

『ベソなんぞかいておらんわい! ……ヒイィッ!? 目を瞑っておるぞ!!』

 

何とかムラサメ様が叢雨丸に宿って頂けて、有地さんが突撃するように。

 

「シャァッ!!」

 

袈裟斬りに一閃。

 

…………ア゛ア゛ア゛ア゛

 

「うおぉっ!?」

 

『ぴぃいいいいい!!!!』

 

叢雨丸は幽霊を一閃するように――通り抜けて。霊的な存在を斬れるはずなのに!?

今度は有地さんに抱き着くような。ムラサメ様も一瞬で分離。

 

……私だけ後方にいる様じゃダメよね!

 

「私もいきます! はあぁっ!」

 

「ダメです芳乃様っ!!」

 

 

ブオンッ!

 

スカッ

 

 

身体があったら間違いなく胴に突き立てられているのに。

祟り神だったら間違いなく感触があるのに。

 

何にも触れずに私の鉾鈴も空を切り。

 

空ぶって、冷静に戻って……幽霊との距離を把握しました。

思わず顔を上にあげて。

 

 

 

白目を剥いているはずの目と、目線があった気が。

 

 

 

「い゛い゛い゛ぃっ!?」

 

ア゛ア゛ア゛ア゛

 

「芳乃様!」

 

幽霊が今度は私につかみかかるように前進してきて。

私は茉子に横に突き飛ばされて――茉子が。

 

 

 

「あ゛あっ!?」

 

触れられた。

 

 

 

「茉子!?」

 

「常陸さん!」

 

掠ったようなだけではあったけど、茉子がその場に固まってしまって。

 

『まっマズいぞ3人とも! ほっ他のも寄ってきおったぁ!!』

 

ムラサメ様の叫び声で周囲の状況に再度目を向けられました。

 

 

 

茉子のそばに居る幽霊以外にも――4人いる。

 

 

 

「朝武さん!! 撤退だ!! 常陸さんゴメン!!!」

 

有地さんが茉子を後ろから強引に担ぎ上げるように。

少々無理矢理ですけど今はそれが最善ですね!

 

ア゛ア゛ア゛ア゛

 

オ゛オ゛オ゛オ゛

 

ヴェア゛ア゛ア゛ア゛

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

 

『ひぃっ!? ご、ご主人、急げ! これでもくらうのだ!!』

 

 

パンッ!

 

 

ムラサメ様が手拍子を打って、神力を閃光のように散らされて。

 

「急ぐぞ朝武さん!」

 

「はい! 茉子、しっかり!」

 

効果があったかは分かりませんが、何とかその場を脱出する事が出来たのでした。

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

「茉子君!?」

 

「お父さん! 茉子が! 茉子が!!」

 

「大丈夫、です。申し訳ありません、芳乃様、安晴様。有地さん、ありがとうございました。本当に、助かりました……」

 

「無事ならいいよ! ホントに大丈夫なの!?」

 

『茉子、お主の身体に何が起こった?』

 

 

 

あれから。とにかく走って走って走り続けて。

武実神社まで戻ってくる事が出来ました。

 

本当なら息が切れている所でしょうけど――今はそれどころじゃない!

 

 

 

「茉子、本当に大丈夫なの!?」

 

「大丈夫、だと思う、としか言えないですけどね。怪我をしたとか、そういう類いのものではありません。なんというか全身にものっ凄い悪寒が走ったというか、身体の重さと言いますか、気持ち悪さと言いますか。幽霊に触れられるってあんな感じだったんですね……」

 

「……っ! すぐにお祓いをしよう! 将臣君、茉子君を神楽殿(かぐらでん)に運んでもらえるかい!?」

 

「私も! 私も神楽舞を奉納します!」

 

「任せてください! 常陸さん、背負うけどおぶされる?」

 

「……お手数を、おかけします」

 

『しっかりせい茉子! もう安心だ!』

 

何があろうと気丈に振る舞う茉子なのに……今は有地さんに身体を預けて、私たちの行動を留めようともしない――本当にマズいって事じゃない!

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

「……もう大丈夫だと思います。ありがとうございました、安晴様、芳乃様」

 

「茉子君がそういうなら何よりだよ。まさかこんな事態になるとは」

 

「我慢してないのよね? 本当の本当に大丈夫なのね!?」

 

「本当の本当の本当に大丈夫ですから。ワタシから申し上げるのも変な話ですが、芳乃様も気を抜かれてください。もう身体の重さとかも感じませんよ。触れられたっていう事実の気持ち悪さは流石に残ってますけど」

 

「対峙しただけでもあの寒気だもんな。でも常陸さんはまだ休んでてよ。夕飯は……レトルトかなんかってあったっけ? 簡単でいいなら俺が作るけど」

 

「一応、緊急用に置いてあるのがいくつかあります」

 

『ではそれをご主人に頼んでおこう。茉子は先に湯殿に浸かれ。穢れの事もあるのだからとっとと洗い流してしまった方がよい』

 

「そうですね……有地さん、申し訳ないですがお願いできますか? 私は茉子をお風呂に連れていきますので」

 

「分かったよ。こっちは任せておいて」

 

「それじゃあ僕も偶には腕を振るおうじゃないか」

 

「安晴様、それはご勘弁ください。鍋が兵器になりますので」

 

あの時は台所の天井に穴が開いたものね……。

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

「ああ~、身体が温まるだけでも生き返りますね。ワタシが安晴様よりも先に頂いてしまうのは大変申し訳ないのですが」

 

「そんな事を言っている場合じゃないわよ、茉子。今は自分の身体を第一に考えて頂戴」

 

「分かりましたが……芳乃様もご自分のお身体を大事になさってくださいよ? あの状況で鉾鈴で幽霊に殴りかかるなんて。リーチがクナイ並みなんですから、腕が幽霊の身体に突っ込んでいようものならワタシの二の舞かもです」

 

うっ……。

 

『そうだな。芳乃も自分の身を第一に守れよ? 犠牲が出る事がよいなぞ絶対にないが、芳乃が倒れる様では本末転倒なのだからな』

 

「はいい……」

 

私を庇った茉子をお説教するつもりが、逆に私がお説教されてしまいました。

 

確かにあの時は思わず殴りかかってしまって、ついでに周囲の警戒も疎かにしてしまって。

今回は動きの遅い幽霊だから撤退出来ましたが、あれがもしも祟り神並みに動いてきていたら。

 

 

 

ゾッ

 

 

 

お風呂の中で熱いお湯に浸かっているはずなのに、悪寒がして鳥肌が立ちます。

肩までお湯に沈めましょう。

 

「しかしアレは参りましたね。ワタシのクナイどころか芳乃様の鉾鈴も、まさか叢雨丸さえ効果がないなんて。祟り神が事前に祓えていて芳乃様の耳が消えたのは不幸中の幸いでしたが。ああ、憑代の欠片の確認ができてなかったのは痛手でした」

 

『憑代については明日の日中にでも吾輩が確認に行こう。アレは祟り神とは間違いなく違う。正真正銘実体が無い、のだと思う。ご主人が叢雨丸をアレに振るった際になんの感触もなかったからの。寒気だけは十分に感じたが……吾輩が思う霊的存在とは違うとでもいうのか?』

 

「そうですね。今の状態じゃ打つ手なしで、幽霊が出てこない事を祈りながら祟り神を退治するくらいしか出来る事が無いのかしら……」

 

私が出来る事は神楽舞を奉納する事、お父さんが祈祷をしてくれた鉾鈴を振るう事。これだけ。

これで対処できないとなると、幽霊に対しては何一つ出来る事がない。

 

今からそういった存在に対して勉強をして、成仏してもらうというのもあるかもしれませんが。

私の寿命が呪詛に食い尽くされるのとどちらが早いのでしょう。

 

『やはり……あの不来方という娘を頼るのが一番現実的なのだろうな』

 

「そうですね。不来方さんに再度関わって頂くのは気が進みませんが、そうも言っていられません。幸い先日お話した際には「またどうぞ」とは言って頂けましたし」

 

「社交辞令だったとしても、それに縋らせてもらうしかないですか」

 

「今はお力をお借りしましょう。事が済んだらしっかりお返しするという事で」

 

そうね。

 

今の段階じゃどうにもならないし、私だけじゃなくて茉子も有地さんも危険な目に遭わせてしまう。茉子なんかはもう危険な目に遭わせてしまった。

 

不来方さんには申し訳ないですけど、何か対処法があるか伺う事にしましょう。




穂織の武器では「ありえないモノ」には通用せず。
茉子はダメージを受けましたが、1割くらい減った程度です。
対抗策は勿論……。

という事で、次は再び彼女が登場します。
次回も楽しんで頂けたら嬉しいです。
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