零 ~イヌツキの少女達~   作:もふもふたぬきねこ

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あ゛っついですね……。

芳乃達が戦国から帰って来た翌朝。
作戦会議です。


連載開始から2年。
長くお付き合い頂き本当にありがとうございます。

今更になりますが、
フォント変更とかエフェクトとか入れ過ぎですかね?

特に作者は基本夜間モードで作文しているので、
通常モードだと更に見辛くなられているかもしれません。

一応そういうスタイルとして進めて参ります。
ご意見あればコメントいただければ。
その時はアンケートを取りたいと思います。


今回もよろしくお願いします。


74. 手がかりを繋いで

「私が、お兄ちゃんの、よすが……? よすが。お兄ちゃんの、ヨスガ。お兄ちゃんと、ヨスガ……私がお兄ちゃんとオープンにヨスガるんですか!? 従兄妹だから別に問題なし!?」

 

「何言ってんだお前」

 

「そこまでしてもらう必要ないですよ。アレについては、血縁どうこうは多分関係ないわよね……」

 

「何の事? 深羽」

 

「ウチの家庭問題の事よ。黙ってなさい」

 

「???」

 

 

 

方針を立てた翌朝。既に神楽舞は奉納し終わって、今日は皆さん朝武家へ。今回鍵になっていただけそうな小春さんと、付き添いに鞍馬君にも来てもらいました。診療所にも電話で繋がっています。

 

『確かにご主人にとって、現代に生きておる魂の縁としては最も強そうだな。朝武の始祖の正妻であり、恐らく鞍馬勘太郎の正妻でもあり、現代においても従妹だ。戦国時代も現代でも神隠しに遭っておるし、平安時代に叢雲様からの干渉もあるしの。常世との繋がりも少なからずある』

 

「現代でも思いっきりキスしてますしね」

 

「前世でもうヨスガり済みなんですか!? あと常陸先輩いきなりぶっこまないで下さい!」

 

『落ち着きなさいな、小春ちゃん。ムラサメ様曰くアタシもらしいし』

 

「ロカは戦国時代のコハルのお母さんでしたよね? そこが何か?」

 

「当時は赤の他人か遠戚です。それに今回そこまでして頂くわけではありませんから……にしても、有地さんが入っていなかった勘太郎殿は随分と頑張ったんですね、親子丼ですか。鞍馬君に切り替わったんでしょうか」

 

「取り敢えず常陸さんからロクな扱いされてない事は分かるぜ?」

 

「当時からの鞍馬の家系図が残っていない理由が、そんな事だとは思いたくないですな」

 

『廉太郎相手とか、小春ちゃんとアタシの先祖が認めるわけありませんから』

 

「よすがる」って何なのかしら。

茉子と深羽さんと馬庭さんは知っているみたいだけど。

 

「過去、小春さんの魂も朝武、しかも長男一族だった事からマヨイガとの縁が一つ分かりました。それとなんですけど……小春さん、少しこちらに」

 

「は、はい……?」

 

不来方さんに御呼ばれして、小春さんが移動。

何かを耳打ちして……?

 

 

 

「――っっ。やっぱり……ば、バレて、ました? 前から、そこまでって事」

 

「すみません。少し知ってしまっていて」

 

 

 

小春さんが沸騰したかの如く真っ赤になった。

さっきも茉子が口にした暴露話の直後を思い出しますね……大丈夫でしょうか。

 

「ええっと?」

 

「す、すみません巫女姫様。ちょっとこれは秘密にさせてください」

 

「あの神隠しの本当の対象は有地さんだったんですよ。ですが有地さんは叢雨丸をお持ちで、直接は呼べなかった。小春さんは感受性が高かったせいで呼ばれてしまったのだと」

 

なんだか分かりませんけど、小春さん本人がご納得されているならいいでしょう。あれかな、小春さんが有地さんを好きって事かな?

有地さんが招かれていたかもしれなかったのは、その時から既に呪詛に引かれていたからなのかもしれません。

 

「実践するかは別として、寄香の候補は見つかった。それとこっちの入り口の方だが?」

 

「ええ。我々で確認は行いましたが……やはりそれらしいものは何も」

 

「隅から隅まで拝見致しましたが……見つけられておりません」

 

「聖域の途中の道はどうだったの?」

 

「そちらも最奥まで入ってみたけど、やはりなかったよ。そもそも良くないものの気配は聖域で薄く、叢雨丸の鞘岩――戦国時代の殺生石の周りの方が強い。あるとしたら神楽殿だろうね」

 

「それに関しては、一つ考えている事がありますから後でやってみましょう。先にやっちゃうと影響が大きそうなので。時間はかかりませんし」

 

私にも予想は付いてます。

が、分かりやすい形ではない模様。でも深羽さんには手があるようです。

重機で神楽殿を破壊して穴を掘るとかじゃないですよね? 金銭的には余裕なんでしょうけど。

 

 

 

「それで……朝武さんの推理では、朝武義和の怨念の真の目的は現世における受肉、と伺いましたか?」

 

さて、鏡宮さんによってもう一つの作戦会議の方向へ。

一体朝武義和は何をしたいのか。

 

「日上山で白菊さんから「死んでいるけど死にたくない。だから死なない方法を捜している」と伺っています。ああ、お預かりした写真をお返ししますね。本当に助かりました」

 

「……彼女が、いらっしゃったんですか」

 

「鏡宮さんも知ってたんでしたっけ。放生さんは日上山に戻ったら、形代神社に行ってあげてくださいね。ちゃんとあの子の寄香を持って。しっかり伝えましたからね?」

 

「役に立ったならよかった。彼女の寄香……あの白髪の(ふさ)か、それは分かった。で、死なない方法っていうのは? 身体が無いしヤツはそもそも男だろう? 永久花になるって事じゃないんだよな?」

 

「……幽婚の、お相手?」

 

「あんなのを相手に選ぶ巫女に会ってみたいわね。はっ倒してでも止めてあげる」

 

多分ですけど、本人が永久花云々は関係がない。既に死んでいるから。

その答えはあまり自分で考えたくないけど……まあ今更ですね。

 

「亡くなった方が真に亡くなる……それは「名を忘れられる」事、でいいかい? 芳乃」

 

「多分正解。だから長男は、転生という形じゃなくて「朝武義和」として生き返る事を望んでる。だからまあ、有地さんに乗り移ってる今の状態は半分目的を成せているのかな」

 

叢雲様が御名を失くされたように。これは幸いか細い糸ですが残っていました。

だけど記憶や記録からも消えてしまえば、真にその人が生きていた証は無くなってしまう。

元々自分が世継ぎ、穂織の主だなんて思っていた人間。そんな事許せるはずがない。

 

現在、身体は有地さんだけれど本人の意識はそのまま残っている。

よくもまあこれだけの期間消えなかったものです。

 

それと、それとなんですよねえ……こんなのってない。

 

「あともう一つ……これはもう頭が痛いんだけど」

 

 

 

「芳乃さんを」「朝武さんを」「芳乃様を」「ヨシノを」

 

「ええ…………私を、嫁にする事、ですかねぇ……」

 

 

 

ゾッとする。アレの嫁に……?

簡単には死ねない身ですが死にたくなるんですけど。

お見合い話もお断りですけど、これはそういうのとは次元が違います。

 

「昨晩の将臣が、異常なまでに巫女姫様に固執したのはそういう事でございましたか……それを見破れず、孫に刃を向けてしまったなど」

 

「将臣だぜ? 祖父ちゃん。怒りゃしないって。あいつが一番分かってんだろうから」

 

『つまり歴代の朝武次男一族への呪い、「女子しか生まれん」というのは』

 

「はぁ……多分「朝武芳乃()」が生まれるのをひたすら待っていたんでしょう。だから子が生まれるまでは呪われませんし、生まれてきたのが私じゃなかったら次男家への怨み、及び代替わりを早めるために呪っていたと。特に茉子も神隠しに遭った時は、既に私は生まれていたわけですから」

 

「叢雲様からの呼び声に混じってワタシを乗っ取り、秋穂様を亡き者にして、芳乃様をそういう気構えにさせるつもりだった……やりそうですね、あの人なら」

 

「道理で訳の分からない呪いだったわけか。朝武家を直接滅ぼす形じゃなかったのは」

 

「長男は黄泉の門で今の芳乃さんを見ていますから、あの時点で将来「朝武芳乃」という女性が生まれる事を知っていたんですね」

 

本当に訳が分からない。私なんかにどれだけ執着が強いのか。

まあ……あの最期を見るに、凄まじい物であるのは知ってますけれど。

 

『じゃあ……まー坊は可能な限り自分の身体を巫女姫様から離すために、黄泉の門だなんて危ない所に向かったと?』

 

「有地さん自身はそうなのかもしれません。けど、多分義和にとっても都合の良い事があります。本当はあの場から私をそこへ攫うつもりだったのかもしれません」

 

「巫女姫様をわざわざ黄泉の門へ、でございますか?」

 

コッチに関しては勘も混じってる。けど、何となく確信がある。

義和本人がコレに関して知っているかは分からない。けれど磯良さんは確実に知っている。「柱様」とも仰っていたし、記録にもあった。

 

覚悟はいるけれど……()()()()に直接聞くとしましょう。

 

 

 

「――深紅さん、深羽さん」

 

「私達?」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「黄泉の門なんて、もう半分以上常世みたいな場所で。叢雲様の力を持った私と、死人であり呪詛である朝武義和が乗り移った有地さんで子をなした場合、どういう方が生まれますか?」

 

 

 

死者がいるのは常世だと考えるのが普通、だけど深紅さんは生者。と考えると、死者であるらしい旦那様と出会われたのは常世という事になる。

そこで子をなせばどうなるか。

 

深紅さんは過去、夢に囚われていた経験があると聞いた。つまりは常世に居たという事。

 

 

 

犬神様は一つヒントを下さっていた――「夜泉子に似た形」だと。

こういう事では?

 

 

 

雛咲さん親子の気配が変わった。

どういう感情なのかは分からないけれど、とても複雑な。

 

「それはもう、分かっていて聞いているんですよね? はぁ……アイツ確信犯でそんな事考えてるの? そういえば例の本に書いてあったんでしたっけ」

 

「その方が、夜泉に還られていないなら……尚更可能性は高いかもしれません。私は出会っただけでそうなりましたから」

 

当たりかぁ、こんなの考えたくもなかったけど。

 

「それって……まさか?」

 

「そ。常陸さんは聞いてましたね、『夜泉子』って存在の謂れを。朝武さんが口にした事は、私みたいなのを生む条件を満たしていると言っていい。磯良さんの助言、つまりは当時の黒澤の知識ね。時期が飛んだ時ですか、余計な事を」

 

「女子しか生まれない呪いは義和のもの。なら義和がその呪いを緩めれば、私は男子を生む可能性がある……どころか、意図的に男子を生むんでしょう。今度はそういう呪いで」

 

「長男は……芳乃の子として受肉、転生してくるつもりだと。芳乃はそう考えているのかい」

 

「だと思ってる。それは乗っ取りという形での次男家の滅亡、長男家の再興にも合致するから。同時に「姫」役が不在になってしまうかもなんだけど……生まれるまで産まされるのかな」

 

『よりにもよって、相手となるのは叢雲様が恋した男の魂を持つご主人だ。まず間違いなく子は無事に生まれる。聞いているだけで寒気がする計画だがの』

 

 

 

自分で話していて鳥肌が止まらない。こんな事のために何人もの巫女姫を?

御力のお陰か、こういう事にも頭が回るようになったせいで余計に気持ちが悪い。

 

要素が一つズレただけで成立しないだろうこの目論見。

悪運が強いと言えばいいのか違うのか。間違っている可能性もありますが。

 

多分だけど、生まれてくる子に今以上に干渉する事は叢雲様も犬神様も出来ない。

それこそ叢雲様が御名を失われた事の再現だもの。

 

そして私も今以上に呪詛を受けて、真っ当ではなくなるんでしょう。

そもそもこれが阻止できるなら、私たちへの助力なんて行われないでしょうし。

 

 

 

先日の晩、もし私と有地さんが結ばれていたら、その時点で成立していたかもしれない。

互いに離れたのは無自覚にそれを阻止したのかも――そう思っておこう。

 

 

 

仮に私が自害できるなら、義和の野望は阻止できる。けど穂織の終わりも定められる。本末転倒って所でしょうか。

ここまで繋いできた縁を、たった一人の欲望の阻止に切るのはありえない。そもそもあの人がそれを許すとは思えませんしね。出来れば私も死にたくない。

 

 

 

というわけで不可能。自害できない。死なない加護であり、自害できない呪い。

けれどこのままでは穂織は滅んでしまう。

 

つまりは、何とかして義和の野望を自力で排除する必要があります。

 

 

 

「って事は、将臣を助けに行くのに巫女姫様は参加しない方がいいんじゃないですか?」

 

「そこだけ考えるなら鞍馬君の言う通りですけど……私の使命と力と縁も考えれば、関わらないなんて事はあり得ないでしょう。本来朝武家の問題ですから」

 

「芳乃様は今や強力な戦力ですし、その前にバカ父上を滅ぼせばいいだけの話ですからね。芳乃様をお護りする為の()です。隠密の経験はこの時のためだったのかもしれません」

 

「常陸先輩がこわい……」

 

「マコは15年もあっちにいましたからね。目つきが大分鋭くなっていたですよ?」

 

私はともかく、長男に対する思い(殺意)は茉子が圧倒的に強い。

ただまあ、私も射影機を使うより先に手が出そう。有地さんには申し訳ないんですけど。

 

 

 

「さて……どうチームを分ける? 射影機は三台。使うのは夕莉、深羽さん、朝武さんの3人。護衛の常陸さんと、有地君の寄香として妹さん、神の器であるリヒテナウアーさんの6人が今の所の候補だが」

 

「深羽、私はやっぱりダメなの? 深入りはともかく、私だけ安全な場所に居るというのはどうしても思う所があって。深羽が行くなら尚更」

 

「だから別の理由で穂織があっち行きだって。とはいえ、戦力が一人でも多い方が良いのは事実ね。出し惜しみしてあんなのに負けるとか、呪い殺してもまだ足りないわ」

 

「唯では負けないんですね……? 最終手段として、水無月さん経由で最後の一台をお借りする手もないわけではありませんけれど」

 

「直に持ってきてもらう形で? ますます流歌さんに頭が上がらなくなるわね……夕莉さんは良く知っているでしょ? 私は負けるのが大嫌いだから」

 

ネットニュースのコメントで一言拝見しただけですが、どんな方なんでしょう?

深羽さんがこう仰るならば、相当お世話になっているという事になりそうですが。

 

そして射影機が四台……そんな無茶苦茶な価格ではないと伺ったとはいえ、穂織どころか周辺一帯も買えません?

 

 

 

さてチーム分けを考えると。

 

私と茉子は順当にペア。多分茉子もそのつもりでいる。

獣耳が出るのであれば、茉子は結女さんの時のように物理的な形で怨霊を制圧できる可能性もある。試したくはないけれど。

 

正直、不来方さんと深羽さんには分かれてもらいたい。

私より圧倒的に戦力になる二人を片側に固めたくない。仮に一点突破というなら三人一緒よね。

 

けれど、マヨイガから進んでいる間に神社から怨霊が出てくる可能性は否定できない。

となると、神社側からも進む必要がある。

 

 

 

出来る限りを尽くす事を考えて。相手を信頼なさい。

 

 

 

「不来方さん――神社からの道、お願いできますか?」

 

「一応、理由をお尋ねしても?」

 

もちろん聞かれますよね。

大変なのは多分マヨイガ側、つまりは経験も力も不足する私が受け持つべきではない。

合理的な判断じゃない自覚はある。義和関連の怨霊がいる所に正直行きたくない。

 

けれど。

 

「早い話、磯良さんがマヨイガに居るからです。あの人を祓うのは、私の役目だと思いますから」

 

磯良さんには500年前、必ず花守の儀を成し遂げると約束をした。

絶対霊と化しても尚、私の事を認識しているとも伺った。

 

ならば為しに来た事を、姫の魂を継ぐ私が伝えるべき。そう思うから。

 

「分かりました。では私は神社の道から。気を付けて下さい」

 

「ではワタシはマヨイガ側ですね。また怨霊と肉弾戦出来るといいんですけど」

 

「じゃあ私もマヨイガかな。数が居るのは想像がつくし、流石に朝武さんだけで絶対霊相手はきついでしょうし。闇墜ちしてた逢世さん正気に戻したくらいだから、夕莉さん一人でいけますよね? 当時も一人で特攻したんだもの……仕方ない。お母さんは妹さんを見ててあげて」

 

「何とも言えないですけど……まあやってみます」

 

「ありがとう、深羽」

 

お願いしたこちらが思うのもなんですが、そんな軽い感じでいいんですか?

 

「そのマヨイガって所……そんなに危ないんですか?」

 

『長時間居すぎると、それだけであちら側の住人になりかねん。当時の吾輩が単なる霊になりかけ、駒川の者もかなりの負担だったと聞く。特に小春は気を強く保たねばならんぞ』

 

「うわお……本当に黄泉の国の入り口なんですね……」

 

「何か引き連れて帰ってくんなよ?」

 

「わたしはどうしましょう?」

 

「私と一緒に神社から入っていただいていいですか? 穂織の神々の関係者が居ませんから」

 

「わかりましたですよ!」

 

「流石に夕莉とリヒテナウアーさんだけでは向かわせられんな、俺も同行しよう……一回日上山に戻って、使えそうな物を持って来るか。清めの火なら使えるか?」

 

「祓いの灯火(ともしび)*1として使えるかもしれませんね。よろしければ今すぐ往復しますよ?」

 

「い゛っ、いえ……タクシーを使いますから深紅さんはお休みしてもらえれば」

 

「どうせ先生じゃ置き場所分からないじゃないですか、私が戻ります。深紅さん、申し訳ないんですがお願いできますか?」

 

「分かりました。じゃあ深羽、この後行ってくるから」

 

「パトカーとかオービスとか壊さないようにね?」

 

「密花さんのお店にも顔を出して頂ければ。ひょっとすると、フィルムの残りがあるかもしれませんので」

 

「承知しました」

 

最初に来て頂いた時の事を思い出しますね。この緊張感の違いですよ。

 

 

 

マヨイガ側が私、茉子、深羽さん、深紅さん、小春さん

神社側が不来方さん、放生さん、レナさん

 

ちょっとバランスは悪いけれど、これで何とかするしかない。

 

 

 

「仮にもこの穂織の代表を預かっているというのに……皆様、役に立てず本当に申し訳ありません。神楽殿で出来る限りの事を致します」

 

「ワシも情けない限りですが……表の事は全てお任せを。何があろうと民を守ってみせます」

 

不来方さんたちが「いえいえ」と返される。

祟り神祓いもそうだったけど、適材適所なだけのお話しよ。お父さんにはお父さんにしかできない事があるんだから。

 

「小春、将臣を頼むな」

 

「言われなくてもお兄ちゃんなら助けに行くよ。廉兄なら言われても助けに行かないよ」

 

『ご縁どうこう除いても、廉太郎が人質だったら放置になりそうだよねー』

 

「問題なさそうだな、安心したぜ」

 

『廉太郎、お主……それでよいのか?』

 

「いいメンタルしてますね。ああそれと、鞍馬君が持っているらしいグラビア雑誌。私に貰えないですか? シュレッダーにかけて燃やした後で、化学的に分解しますから。ダメなら学院の女子全てを敵に回す上に、この国において社会的に抹殺されると思ってもらえばいいですよ?」

 

「最後のは学院の女子敵に回すどころの話じゃなくないですか? ……後で持ってきます。何処で知られたんだ……?」

 

「すみませんですレンタロウ……」

 

 

 

『ところで……今更なんですけど』

 

馬庭さん? 何だろう? 何か思いつかれたんでしょうか。

 

「はい? どうされました?」

 

『そちらの、みう? さん……雪さんですよね? みくさんは多分深雪さんで』

 

あ。

 

『ああ、そういえばお主は知らんだの』

 

「すみません、名前をいくつか持っているものでして。本名は雛咲深羽と言います」

 

『雪さんがひなさきみうさん……で、深雪さんがその従姉妹の井山みくさんですか』

 

「いえ。私も雛咲で、深羽の従姉妹ではなく母になります」

 

『………………聞き間違いかな? 今、母って言いました? せめて姉じゃなくて?』

 

『気持ちはよく分かるけど、聞き間違っていないよ馬庭さん。ムラサメ様、そろそろよろしいですか?』

 

『ああ、すまんな駒川の。ついでに耳を塞いでくれるか?』

 

『耳栓を失礼します』

 

 

 

『……雪さんが学院の3年くらいの見た目よね? その親だから……えっあの見た目でアラフォー?』

 

47(アラフィフ)です」

 

『え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛っ゛っ゛っ゛!?!?!?』

 

 

 

音割れしまくっている上に、それなりに離れている診療所から直で叫び声が聞こえた気がしました。まあ、これはねえ……。

*1
刺青ノ聲で登場する特殊な火。絶対霊の出現を一定時間防げる




濡鴉ノ巫女のヨスガは「寄香」ですが、
小春のヨスガ(元ネタ)は「縁」だそうです。
本話を書くにあたって調べて初めて知りました。

次話はこの日のお昼過ぎ。
クロス元作品の別名が出てきます。

次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。
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