零 ~イヌツキの少女達~   作:もふもふたぬきねこ

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夜会話。
やーっと寝る所ですよ……。

今回もよろしくお願いします。


79. フラグ乱立の決戦前夜

 

 

 

「任せてください! こういうの夢だったですよ、三の字ですね!」

 

「間違い方が絶妙ですね。川の字ですよ? 違いは分かりませんけど」

 

「巫女姫様やムラサメ様と同じ部屋で寝る日が来るだなんて……」

 

「私は小春さんの一つ上の先輩でしかありませんよ。話に聞く修学旅行というのは、こういう感じなんでしょうか」

 

『穂織の学び舎にはないからな。ご主人が帰ってきたら聞くとよいさ』

 

 

 

日上山の皆さんは喫茶・こずかたに泊まられるという事で、お清めも兼ねて放生さんと鏡宮さんとみづはさん以外の女性陣みんなで湯殿へ。鏡宮さんは徹底されていますね。

 

詳細は省きますが、雛咲さん親子のお身体を視界に入れるのは目に猛毒だった……。

 

 

 

「何をどうしたらそうなるんですか!?」と馬庭さんは興奮され。

「10年後にああなれるのかな……」とムラサメ様と小春さんが死んだ魚のような目で呟かれ。

「これがジャパニーズナデシコ……」とレナさんは感動され。

「天は二物も三物も与えますよねー」と茉子は何処かの誰か(神様)に白けた言葉を向け。

 

 

 

私は目を回し始め、不来方さんに介抱される始末でした。いいですよね、不来方さんはそちら側で……というか、私の反応って正しいんでしょうか? 本当に思春期の男性の方の思考だったりしない? 着替えをお借りした時点で、どういうスタイルをされているかは知っていましたが。

 

なお、馬庭さんの質問に対する回答は「「さあ?」」でした。慈悲はありませんでした。個人的には深羽さん以上に深紅さんの胃袋の在り方が気になります。

 

馬庭さんとみづはさんは、不来方さんたちによる護衛と共に帰られて。お父さんは今晩もぶっ通しで祈祷――大丈夫かしら。玄十郎さんがお傍に。鞍馬君は自宅へ。ちなみに鞍馬君とみづはさんは深羽さんから髪の毛を一本渡されています。

 

曰く、「並のヤツならビビって寄ってこない」と……それ最早呪物じゃありません?

 

ムラサメ様のご容態そのものは安定されているとの事で、お身体はリビングでお眠りのままですが霊体はこちらへ。現在ウチの客間、有地さんのお部屋の隣で布団を敷いています。流石はレナさん、圧倒的にベッドメイキングが御上手でお速いです。

 

 

 

部屋の真ん中に置いてある射影機があまりに異質だけど、お札扱いだから仕方がない……実際この射影機はお札貼りまくってありますし。破れてますけどね。

 

 

 

「巫女姫様たちやムラサメ様は、いつからこんな事を? レナ先輩もご存じだったんですよね?」

 

そして小春さんは「朝武」としての魂の縁が強くなられたのか、ムラサメ様を見聞きできるようになられました。霊感が上がっていなければいいんですが。

 

「それは……幽霊退治のお話ですか?」

 

「それもですし、祟りのお話もです。おとぎ話も噂も、大体が本当の事だったんですよね?」

 

「そうですね。祟り神に関しては秋穂様がお亡くなりになって以降ですが、幽霊退治はごく最近ですよ。初遭遇から三週間くらいしか経っていませんから」

 

「なんだか遥かに長く戦っている気分よね……」

 

『間違いではないだろう。芳乃はひと月程度らしいが、茉子は15年加算されておるし。吾輩に至ってはまた500年経っているからな』

 

「わたしがタタミ神に会ったのは一回だけですよ。5日前だったと思いますけど……わたしもあちらで数年は過ごした気分ですね。そういえば、あの後ムラサメちゃんはどうしていたのですか?」

 

『お主らが神楽殿を去った直後から綾としてもムラサメとしても意識を失い、単なる「叢雨丸の人柱」として一旦眠りについた。ある程度自我を持ち、目覚めて巫女姫や常陸の者と会話できるようになったのは……刀狩(かたながり)よりは前くらいだったか。あの頃は叢雨丸を力づくで抜こうとする無礼者が山のようにおったものだ』

 

勇者の剣イベントとして形を成したのは、割と最近の事ですからね。それは結果的に信仰の維持と使い手探しに繋がっていたわけですが、当時はただただ取り上げようとしただけ。ムラサメ様は相当イラッとされていたでしょう。

 

「その叢雨丸を、春祭りにお兄ちゃんが折る形で抜いたわけですか」

 

「有地さんが受け継がれている魂は、叢雲様が恋され、叢雨丸を授けられた男性なんだと思います。私たち朝武の始祖ですね……レナさん的に、叢雲様は始祖様をどうお感じになられていたんですか?」

 

「あの地にお住いの方の中で、一番ストイックでしたね。他の皆さんがトレーニングをしつつも、当然たまには遊ばれたり、ファミリーを持たれたりだったわけですけど。あの人だけは雨が降ろうと雪が降ろうとスコールだろうと熱波だろうと、同じ場所で一日と欠かさずトレーニングしてました。ムラクモ様も最初は「なんだコイツ」的な感じでしたよ?」

 

「まさかの筋肉フェチ疑惑?」

 

『神様方も個性があられる。そういう事もあるだろうさ』

 

「マッスルというよりは、ひたすらに真っすぐだった事に興味を持ち始めましたですね。人であり、人の営みに則りつつも、だけどいい意味で人間らしさがない。何があろうとブレない心……だからこそ、生きて欲しかったのだと」

 

なるほど。

叢雲様は自らの身を削られつつも、それも人の営みとして理解されていた。その理解から外れる存在だった朝武の始祖に、興味を持たれた感じだったわけですね。

 

「お兄ちゃんはそこまでストイックじゃなかったですけど、人助けが絡むと頑固になるのは似てるかもですね」

 

「そうですね。危ないから関わらないようにと散々言ったのに、祟り神祓いに同行されたり、そこからコソッと鍛え始めたり……身を挺して私を庇ったり」

 

「芳乃様がそれを言います? お役目を継がれて以来ほぼ一切娯楽を嗜まれず、神楽舞については取り憑かれたかのように練習され続け、ムラサメ様と安晴様と玄十郎さんがいくら言っても護衛すらつけようともしなかったのに。「婚約なんて認めない」「私の代で終わらせる」「関わらないで下さい」が以前までの三大口癖だったのに」

 

『ご主人に対しても超塩対応だったからの。よくまあご主人も嫌わなかったものだ』

 

公開リンチ止めてもらえません……? 本当にそうだったから言い返せないけれど。まあ確かに、逆の立場だったら拒絶に向かいそう。実際当時はそれを望んでいたんだし。

 

「わたしが知っているヨシノとはずいぶんな違いでありますね? それがマサオミからの影響という事ですか?」

 

「私も神社のお手伝いの時以外、巫女姫様とお話する事はほぼ無かったですからね。お兄ちゃんがこっちに来なかったら、先輩方のクラスでお昼食べていないでしょうし」

 

「まあ……そうですね。私にとって男性というのは、「巫女姫」か「朝武家」としての私を欲しがっている大人の方が多くて。同年代の皆さんには、最初から「巫女姫」として接して頂いていましたし」

 

色々と()()()に該当する方ですね。

 

「私とは全く別の視点をお持ちで、今までに知らない立場で、朝武芳乃という一個人として接して頂いた男性は……有地さんが唯一なのかもしれません」

 

「それに関しては仕方がなかったですね。今の御年であれだけの見合い話を持ち込まれたら、気が滅入るのは当然でしょう。巫女姫という存在は、穂織において叢雨丸と並ぶ生ける伝説のような扱いですし、外の方にとっては穂織の大地主になれる目に見えたシンボルでしたから。有地さんが芳乃様でも断り切れない正当な理由がある、ワタシ達常陸の人間が芳乃様の傍にいる事を認められるイレギュラーなのはその通りです」

 

お陰で外の視点を色々取り入れられて、私が相当思い込みが激しくて頑固な人間だったという事は自覚させてもらいましたね。

 

『でだ。実際の話、芳乃はご主人の事をどう思っておるのだ?』

 

「どうって……」

 

「そういえば、戦国で有地さんもボヤかれていましたよ。扱いどうなるんだろうって」

 

『今回の一件が無事に終われば、本人達の意思を無視した婚約関係である必要は無くなる。結局お膳立てしてやっても同衾までに済ましたお主らだ、ご主人が朝武家を離れればまず進展せん。以前よりマシになったとはいえ、芳乃が他の男と夫婦(めおと)を成す未来は正直想像できぬ。ようやく呪いが解けるかもというのに、結局今代が朝武の最後かもしれんぞ?』

 

揶揄っている風ではなく、真面目にそう言われてしまうと刺さりますね。ただそう言われても、私自身ハッキリとした事は――

 

 

 

「……まだ、私にもチャンスはあるんですか?」

 

 

 

そう思った所で、小春さんからお言葉を頂いた。小さくも圧を感じられる真剣な気配。

 

「お兄ちゃんと、話はしたんです」

 

「それは……コハルが、マサオミを好きだって事ですか?」

 

「はい」

 

驚き。まさか直接お話をされていたとは。かなり勇気がいる行動だったと思いますが。

 

「あの時のキスを、うやむやにしたくなかったから。意識こそなかったですけど……あれは私の意思だったって話はしました」

 

『ご主人はどうだったのだ?』

 

「悩まれました。お兄ちゃんにとっての鞍馬小春は、異性である前に年に数回会うかどうかの親戚で、廉兄の妹で、世話を焼くべき年下の従妹……私も表向きにはそう振舞ってきましたから、お兄ちゃんの反応は当然だと思います」

 

有地さん、ムラサメ様に対してはふざける一方で、恋愛については真面目に考えられる方だった。キスについては「悪い事をした」と思われていたし、ムラサメ様の時の事を掘り返した事もない。私との夜に関しても、何となくの流れに任せず留まられたんですからね。

 

そういえば茉子が犬化して志那都荘にお邪魔した時、小春さんは既に落ち着かれていた。あれは既にきっちりお話されたからでしたか。

 

「それに……仮って事だそうですけど、今は巫女姫様の婚約者。その状態で他の誰かと付き合うのはあり得ないし、私は知りませんでしたけど祟り神と幽霊退治にかかりきりだった事もあって。今は返事を出せないって事でした。でも……それだけでもすごく安心したんです。ノータイムで「気持ち悪い」って思われないかって」

 

「……そう、だったんですか」

 

 

 

自分の事しか考えてなかった。私の曖昧な態度が、他の方にも影響を与えていただなんて全く。

 

私が取り敢えずでも「はい」と言ってしまえば、それは穂織の頂点の判断と同じ。有地さんと小春さんは建実神社の氏子総代である玄十郎さんの孫でもある。非常に断りにくい雰囲気となり、加えて近縁である小春さんの願いはほぼ叶わない。

 

今のままで居続けた場合、有地さんには自由がない。そして……縁がどうであれ、あれだけ誠実な方なのに、ただでさえ束縛してしまっている状況なのに、人生すら捻じ曲げてしまっているのに。私は今でも「いいえ」が言えるの? 私はお相手に何を求めているの?

 

 

 

そして……人を好きになるってなんなの?

全てが終わって……朝武芳乃はどうしたいの?

 

 

 

「お兄ちゃんが学院を卒業するまで穂織にいるって話を聞いた時は、奇跡だと思いました。これを逃せば二度と機会は来ないって。だから逃したくありません。私だけお話の場があるのはフェアじゃないので伝えておきますけど、もちろんお姉ちゃんも同じです」

 

更に別のお話が入って来た。お姉ちゃん――馬庭さんも?

 

「何だか驚いた顔されてますけど」

 

「ヨシノは気付いてなかったですか?」

 

オマケに茉子とレナさんから顔を向けられた。気付いてなかったの、私だけ?

 

「負い目もあったんでしょうけれど。血縁的な繋がりもない年頃の義理の姉弟的な関係で、普通あそこまで親しくするわけないじゃないですか」

 

『交際の経験もない身で、好きでもないのに間違っても「我慢出来ないなら相手してやる」だなんて言うはずあるまい。吾輩達にとって、一生に一度だけなのだぞ?』

 

「マサオミがいるととても元気になりますからね、ロカは。気持ちはよく分かります」

 

ほとんど会っていないムラサメ様までお気づきに? 確かに自分に置き換えたら、一生言えないだろう発言ですけど。

 

「お兄ちゃんが溺れた時の事は皆さんご存じなんですよね? 多分ですけど、今この瞬間純粋にお兄ちゃんの身を一番案じているのはお姉ちゃんだと思いますよ。自分の事より圧倒的にお兄ちゃんを大事にしてますから。だから恋敵であっても、お姉ちゃんは尊敬できるお姉ちゃんなんです」

 

「……何と言うか、自分の無知加減をどんどん知らされる気分です」

 

「鈍っっっっ感で」

 

『クッッッッソ頑固だからの。仕方があるまい』

 

ひっどい言われよう……身内の二人は容赦がなさすぎます。

 

 

 

「せっかくなので、皆さんのご意見も聞かせてもらえませんか? レナ先輩は?」

 

「おおう、お話を振られましたですね? こういう場面の粗大ゴミというやつですか」

 

今度はレナさんに飛んだ――粗大ごみじゃなくて醍醐味です。叢雲様のお気持ちは知っていますけど、レナさん本人はどうなんでしょう?

 

「そうでありますね……今までに会ったファミリー以外の男性で、一番お話しやすいのがマサオミなのは間違いないです」

 

「そうなんですか? お国が違うと文化も違うわけですから、レナさん基準の男性感とはズレるものだと思っていたんですが」

 

「そこはマコの言う通りであります。ですけどわたしは……祖国での男女関係は、わたしが思っているものより少しオープンでして。ミウさんが言うにわたしは「おくゆかしい」らしいですね? 男の子への苦手意識、というのがちょっとありました」

 

「深羽さんにご相談を?」

 

「アクトレスのミウさんなら、自分にどう自信が持てるか聞けるかと思ったですよ。周りに合わせる必要は無いとアドバイスいただきました!」

 

方向性が違うとはいえ、私も深羽さんに相談に乗ってもらっている。日上山の時の事を考えると、相当変わられたんだなあ。

 

「そんなわたしは祖国の男性より、ニッポンの人の性格の方が合うのかもですね。とはいえ、マサオミに関しては初めて会った時から安心感がありました。わたしが起こしたアクシデントだったとはいえ、マサオミが胸にダイブした事も全然イヤとか思わなかったですし」

 

「「ちょっと待ってください何ですかそのお話」」

 

「その件に関しては、有地さんは完全に不可抗力ですから。その場に居たワタシが保証します」

 

『超絶ヘタレのご主人だぞ。自分からそんな事出来るはずもあるまい』

 

私も散々ですけど、有地さんも散々評価ですね……そのお陰の安心感でもあるんですけど。

 

「そういう意味で、マサオミはとてもいい男性だとは思っています。が……恋愛と言われると、今のわたしは自分でも区別が難しいかもですね」

 

「それは……叢雲様だった時のご経験から、ですか?」

 

「はい。長い間マサオミのそっくりさんを見続けてきて、期待とか心配とかしていましたから。やはり似た方となってくると、ダブってしまうですよ。そしてその気持ちのままにマサオミを思ってしまうと……わたしとの関係より、マサオミ本人の幸せを願ってしまうですね。まだ出会ってひと月と経っていませんから、お付き合いの前にもっと知りたいと思うでしょうか」

 

叢雲様は最終的に身を引かれた。その時の感情がレナさんに残っているんでしょうか。

 

「そういえば、先輩方はお兄ちゃんと関わるようになったのって春休みからなんでしたね……すみません、気が逸ってしまって」

 

「いえいえ、わたしにとっても気持ちの確認をするいい機会なのですよ」

 

「芳乃様にとっては貴重な勉強の場ですから」

 

「茉子も一緒でしょ?」

 

「「そうですね」と言えたらどれだけよかったか……」

 

うん? てっきり軽口が返ってくるか、「あは」で流されると思ったのに。

 

『芳乃。茉子の精神年齢を思い出してみろ』

 

……あ。

 

「ええっと……常陸先輩のそれは、伺った通り?」

 

「もう三十路超えなんですよ。何一つ女らしさのない精神的二十代でした」

 

「Oh...」

 

「ごめん、茉子……」

 

そうだった。茉子は精神的には完全に大人なんだった……隠密だったから、平和な生活ですらなかったのよね。ホントにごめん。

 

「加えてワタシの場合、有地さんは男性である前に客人で主人の婚約者で見張りの対象で元部下なんですよ。まあお付き合いの経験はありませんから、そういう意味なら参考にもなるでしょう。ただ……皆さんのやり取りを「若いなあ……」とか思ってしまう状態です。正直このアオハル空間がキツかったりします」

 

あまりに乾いた茉子の笑みに、なんだか土下座をすべきなんじゃないかと思えてくる。小春さんもすごく申し訳なさそうな顔してるし。

 

 

 

「一応それを前提に置かせてもらいますが……なんか、ムカつきますね?」

 

『何がだ?』

 

「戦国で勘太郎殿としての有地さんが、朝武の姫達と契りを交わされる事になった際。気を遣って「不安なら私で練習しますか」と提案した時、それを断りやがった事です。こっちが何の覚悟もなく、取り敢えずで発言したと思っているんですかね? あっちでの経験を含めても唯一ワタシの全てを見ている男なのに、どうせ関係を持つ間柄なんですから後腐れなく好きにしていいと言ったのに、「考えさせて」とはどういう了見だ? と。アレ悩む形から断ってくる気配でしたよね? そこまで女として範囲外(アウトゾーン)です? ワタシって。小声で眼福って言ってましたよね?」

 

「そんな提案をしていたの? あと確かに言ってた」

 

「ヨシノはその時、駒川先生の娘さんとお話されていたですね。ユーリさんとコマさんすら「それはない」って言ってましたし、わたしもそう思いました。自分に置き換えたらショックが大変です」

 

『あのままご主人が宿っておったら、500年前に朝武は終わっておったかもしれんな』

 

まさにタイムパラドックス。

 

「まるで一方的にワタシが意識してるみたいなので、意地でも目を向けさせたくなってきました。そうすれば有地さんの記憶を消去する必要も、一応は無くなりますから。恋愛云々というより女のプライドをかけて有地さんを落としてみせましょう。芳乃様がお気になさらないならワタシも朝武直系なんですから、跡継ぎも問題ないですよね? もう巫女姫は要らないかもなんですし」

 

「ああ、やぶ蛇になっちゃった……本気の常陸先輩相手とか巫女姫様よりヒドイ……」

 

男性が誠実である事も、時には問題なわけですね……私たちのプライド的な意味で。確かに問題ないかもだけど、茉子はそれでいいの?

 

 

 

『茉子のも酷いが、こっちも中々だぞ? 吾輩なんざ無抵抗に全裸を見られておる上に、直接散々言われておるな? 初対面で乙女の胸を「硬い」だの「幼刀」だの抱き着かれて感触が「残念」だの「守備範囲外」だの……噛み付きたくなってきた。ああ、小春には伝えておくべきだな。緊急事態の対処で最初の接吻は吾輩が貰っておった。すまんな』

 

「控えめに言って社会的制裁案件ですよね、有地さんのソレ」

 

「ムラサメ様がファーストキスの相手……いえ、そこは飲み込みます。教えて下さってありがとうございます」

 

ムラサメ様のお身体は……勘太郎殿として戦国でご覧になっていますか。そして私が知っているだけでも失礼発言は他にまだある。最も気心知れていると考えられなくもないですけど。

 

『身体が元に戻ったなら、こっちから襲ってそんな女に反応した事を一生後悔させてやろう。まあ美の極致、男の憧れの具現と言えそうな雛咲娘に抱きしめられておる状況でさえ、他の事に意識を向けられるご主人だ。不来方への印象を聞いた通りの感性ではあろうが、下手をすると芳乃より鉄壁かもしれん。芳乃とは違う方向性、ご主人は妙に自己評価が低いからな』

 

「深羽さん相手ですらですか? ……つまり、顔や身体がそうじゃなくても勝ち目はある?」

 

「まずは胃にアタックですよ、コハル! ボディーブローです!」

 

「それ意味違いますよ、レナさん。そういう事ならワタシ、ぶっちぎりに有利ですよ? 既に点数稼いでますし。芳乃様はぶっちぎりで最下位ですね、卵の味で言い合いする低レベルですから」

 

なんか茉子に鼻で笑われた――むぅ!

 

「ぜ、全部終わったら料理の練習するもん!」

 

「言いましたね? ワタシ手伝いませんよ? 裁縫だけワタシより上手なのは奇跡でしょうし」

 

「そこは手伝ってよ! 私の従者でしょ!? それに奇跡って何よ!? ちゃんと努力の賜物でしょ!」

 

「えぇ~? 祟り神関係が終わってぇ、呪詛も解けてぇ、まぁだお世話をする必要がぁ? いい加減お終いでしょー?」

 

茉子がすっごいムカつくキャラに!

えっと、ええっと茉子の弱みは――そうだ!

 

 

 

「……オタカラ、バラすわよ?」

 

「三十路メンタルの女に何を今更。そんな可愛らしい恥じらいなんて、とうに失いましたよ。ここに持ってきますか? 芳乃様のお部屋に数冊置いてあるんですし」

 

 

 

はぁ!? 私の部屋!? 確かに置いていいって言ったけど!

 

「いつの間に!? しかも数冊!?」

 

「何の本ですか?」

 

「エ○本です。本棚の奥、表から見える本の列の裏側にあります。今から勉強会にしましょうか」

 

「ファッ(キン)本がヨシノの部屋に!? ムッツリでありますか!?」

 

「ちょおっ私のじゃありませんからね!? 勘違いしないで下さいね!? それ茉子の隠し方じゃない!」

 

『若いのう、お主ら。ま、それは後に取っておけ。いい加減明日に備えよ。それを乗り越えねば何一つ始まらん』

 

ううぅ……なんか誤解を解く前に終わっちゃった空気……。仰られた事はぐうの音も出ないですけど。

 

「それで私ってその……道案内? 的なの以外に出来る事ってあるんでしょうか?」

 

「何ともですが、今はお気持ちだけで。私たちがやる事は、言い方が悪くなりますけど普通の人間ではいられなくなるかもしれない行為です。小春さんまでこちら側に来ていただく事はありませんよ」

 

「芳乃様は射影機を以前より十全に使えますし、ワタシなんて怨霊と格闘戦が可能ですからね。ご自分の身を第一に考えてください」

 

『朝に伝えた通り、あそこに居るだけであちら側の住人に近づく事になる。黄泉の呼び声に呑まれてはならん。しっかり現実を見据え、自分を持つのだ』

 

「ホラーハウスもびっくりですね。わたしは皆さんと別の道になりますけど、そっちで頑張りますね!」

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

 

 

切り替え切り替え。またこんなお話が出来るようにしないと。

さあ、明日に備えましょう。穂織の命運をかけた一日に。




さて明日、ではなくもう一話あります。
(一応)もう一人の主人公側へ。

次回も楽しんで頂けたら嬉しいです。
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