ある日、家に帰ったら。
何もかもが、燃えていた。
親も、車も、家も。全て。
あの日から、まともに笑えなくなった。
「ハッ!ハーーッ…フーーーーッ………」
また、また!あの夢だ、クソッタレ。
この部屋は未だ春なのに既に蒸し暑い。
そんな状況なのだというのにこんな夢を見せられるなんて。
汗だらけの布団が嫌に身体に絡まって。
最悪だ。何もかも最悪だ。どうなっているんだ。
新しい空気を吸おうとして窓を開ける。直射日光に当てられて余計に暑くなった。
「水…何か…」
喉が渇いて仕方ない。冷蔵庫へと向かい、扉を開けた。
「…水だけ買ってねぇし。クソッ!」
ガン、と冷蔵庫に蹴りを入れ、コップを見繕い、水道の蛇口を捻った。
俺の個性は“ハイテンション”。
自分の脳に快楽物質が出ていれば出ている程自分の能力が上がる。それだけ。なんともまぁ寂しい個性である。
「あ〜…また白髪が増えてるよ…最悪だ………」
鏡に向かってみれば、また若白髪が何本も増えている。
これでは元の黒色が完全に無くなるのもそう遠くない。これでは老爺のようではないか。
そのストレスを抱えながら、歯ブラシに手を伸ばした。
さて、俺の仕事はとある人物の護衛、それも夜番。
そもそも狙われるような奴じゃないし、既に一人その役目の奴がいるが、【先生】は随分と過保護なようで。
さっとフォーマルスーツに着替えてなんとなく埃を払う動作をし、首からヘッドホンを提げる。
そして、ここから然程遠くない彼の隠れ家へと足を運んだ。
とある町中、その中にある目立たぬバー。
あまり鳴る事のないドアベルは、今日もほぼ同じ時刻に鳴った。
「こんばんは。」
店内を見てみれば、今日もいつもと変わらぬ二人…いや、あともう一人?が。
「…2秒早かったなぁ、多笑…」
「2秒程度誤差だろう。そう突っ込まないでくれよ、死柄木。」
俺の2秒のズレに対してとってもほくそ笑む、ついでに手の形をしたオブジェが顔にくっついた前衛的ファッションをした青年─死柄木 弔。
「殆ど定刻通りに来ましたね、多笑 幸汰。」
俺の誤差を指摘したりしない彼…今度は身体が黒靄に包まれた奇抜な男…黒霧。
そしてバーの端に佇む筋骨隆々とし、脳味噌が剥き出しの怪物…いや『改人』だったかな…脳無。
奇抜な面々が揃っているが、いつもの事だと割り切れば居心地も悪くない。
「さて、今日も普段と変わらずでいいかい?」
普段と変わらず。平常運転。平和っていいよね。…俺らはその平和を壊す側、だけど。
そう思いながら適当な椅子に腰掛けようとしたとき…
「いや、違う。」
ガタタッ!ゴンッ!
…思いっきり体勢を崩して頭を机に強打した。
弔よ、普通に飲み物を飲みながらそんな重大な話をしないで欲しい。驚いてしまう。
「…………へ?【先生】でも来るの?それとも何?また脳無?」
驚愕の表情をしながら、俺は弔に駆け寄る。
思わず口調がおかしくなっている。何か事が起こるのは久々な物であるから、仕方なし。
「ほら…」
そんな困惑を持った俺の事はお構いなしに、弔は新聞をカウンターに放った。
「見たか?これ。教師だってさ……」
先程より更に声が高くなる弔。
見ると、新聞の一面に『オールマイト 雄英の教師に!!』と大きく書かれていた。
「……本当か?俺は情勢に疎くてな…」
そう言いながら弔から離れ、壁に寄りかかる。
いきなり大ニュースを受けると混乱するものだ。
「どこのマスコミもやってる情報さ。嘘な訳がない…」
そう言って彼は飲んでいたコップを、態とオールマイトの写真の上に置いた。
結露した水が新聞紙に染み、写真の部分が黒くなっていく。
「なぁ、どうなると思う?」
「平和の象徴が……」
「ヴィランに、殺されたら…」
「……どうなる、か…」
問われても直ぐには結論に至れない。そもそも、
そんな奴を倒す事など、無理に等しいのだ。よって、そんなパターンを想像もしていない。意味が無いから、だ。
「もし、出来たなら……俺らの、天下だな。」
それを聞いた弔の目が更に細まる。
「そうだよなぁ…そうだよな!!オールマイトをぶっ壊したら、俺達の天下だなぁ!!」
子供じゃないのだから、妄想で燥ぐなんて恥ずかしいぞと言いたくなる口をきゅっと噤む。
「少しお静かに、死柄木弔…」
おぉ、ナイスタイミング黒霧。
「五月蝿い、黒霧。」
キッ、と黒霧の方を睨む弔。あぁ…残念。
そして彼は、また俺の方を向いて言った。
「なぁ…多笑。俺達は近々…」
「雄英を、襲撃する。」
……はぁ!?
「いやいやいや!!??普通出来ないでしょそんなの!?!?死にに行くような物だ………そうか。」
「その為に【先生】と【ドクター】から脳無を貰ったんだ。それに襲撃するのは奴等が孤立する時。俺達なら出来るさ……」
ご満悦な所悪いが、もしやその作戦って…?
「……死柄木?…無論、俺も参加だよな…?」
「当たり前だろ。壊すぞ?」
…まさに死ににいくような物じゃないか。逃げて〜〜〜〜なぁ………
…まぁ、うだうだ言っても仕方ない。
久々に戦える。ワクワクしてきた。
俺が幸せを感じられるのは戦いぐらいだから。
「……分かった。その日は夜番無しでな。」
さて、いっちょ頑張ろう。
ここまで読んでくださり、感謝です。
多笑さんの年齢は28ぐらいに設定しています。
次回はUSJ襲いに行きます。