【ソードアート・オンラインRTA】ラフコフ殲滅Any%『■狂者』 作:GARAKU
あと今回の殺陣は座頭市(北野武Ver)を見た人はあっとなるかも。
たった数十秒。
それだけで、二人のプレイヤーが
決して少なくない数のプレイヤーが被害にあった。彼らラフコフに殺された。
たくさんの人間が、最後の自制心で踏み止まっていたその行為を、簡単に踏みにじり、そして人を貶める悪人が。
その時ルクスの目には、ゲームだから、所詮は演出だからだとは思えなかった。
あの、ポリゴンが爆散する演出と共に、消えていった男たち、死んだラフコフのメンバーは、ただゲームで死んだわけではないのだと。
ナーヴギアで脳を焼かれるよりも前に――彼らは、この辻斬りによって
そんなことを、ふと考えた。
「ジョニーサン!」
恐怖の滲んだ叫びだった。
細剣の男と、《投剣》スキルを放った男。
彼らはジョニー程ではなくとも、しっかりとレベルを上げ、そしてプレイヤースキルも充分な、それなりの強さを持った者だった。
だというのに、一切反撃ができないまま、呆気なく殺された。
その時点で、彼らの警戒心は最高潮に達しており。
残された、槍使いと片手剣使いの二人は、この場で最も優先するべき、自分たちのリーダーであり『三大幹部ジョニー・ブラック』だけでも守るように、
「ど以川毛此以川毛」
俯いた姿勢のまま、ブツブツと何かを呟きながら刀を握る辻斬り。
男たちはごくりと唾を飲み込んだ。
その辻斬りは、右手に刀を、そして左手に抜いた後の鞘を握ったまま。微動だにしない。
男たちは、それぞれが己の愛用する武器を、自分が殺したプレイヤーから奪った武器を握る。
それは攻略組の装備にも引けを取らない、攻撃力に直結するステータスを重点的に強化したもので、たとえ相手が規格外のプレイヤースキルの持ち主であろうと、一撃は与えられるだろうと確信する。
左側に立つ男が片手剣を、右側に立つ男は槍を。
彼らの背中に隠れながら、ジョニーはゆっくりと腕を動かし、あるアイテムをストレージから出すためのウインドウ操作。その動作を右手でする。
だが、それはカモフラージュに過ぎない。
ジョニーは左手。身体、そして部下の男たちを目隠しに、腰に付けたポーチに左手を突っこみ、いつでも行動に移せるようにした。
「やれぇ!!」
「――転移、タルファ湖」
男たちが片手剣、槍を力任せに振り上げ、そして振り下ろすと同時に、ジョニーはポーチから取り出したアイテム――転移結晶を掲げ、そして宣言する。
あっという間に、ジョニーの姿は青光に包み込まれ、そして消えた。
転移が完了した瞬間、男たちの顔に驚愕の表情が浮かぶ。
「…――」
だが、既に動いてしまった。
男の振り下ろした片手剣が、槍が次に、ソードスキルの光を纏い、瞬間的に加速する。
辻斬りの少女は、未だ俯いたまま、動きを見せない。
引き延ばされた視覚と、加速するVR世界特有の知覚によって、ルクスの目にはスローモーションに、あと数十cmという至近距離で、男たちのソードスキルが、とうとう予備動作を終了し、これから炸裂する瞬間を、ルクスが目撃しようと――
「屑が大人之久之天呂」
――するよりも前に。
ガギッ!という金属同士がぶつかる鈍い音が響き渡る。
猶予0.00の数秒。システムによって定められた絶対。決して抵抗できない筈のそれが、いとも簡単に防がれる音がする。
右手に持った刀。左手に持った鞘を、頭上で交差させ、そのまま
ソードスキルの必中距離。それを無視して割り込める程の、ゲームシステムに唾を吐くが如くの超反応。
だがルクスが驚愕したのは、それを持った辻斬りに対してでもあるが、一番は武器に対してだ。
銘はなく。刀身には何の装飾も付けられていない、まるで普段から使い慣れたものであるかのように、ゲーム世界だというのに、その刀にはうっすらと汚れが付着し、所々にヒビが走っている。
金色の鍔も、経年劣化によって、その色は鮮やかな金ではなく、どちらかというとくすんだ黄色。
ボロボロの柄も、元は美しい純粋な黒だったことが伺えるような、痛々しく皮が劣化し、元の鮮やかな黒色の要素は、ほんの少ししか残っていない。
だが、硬い。
武器の能力が、ルクスの想像を凌駕するものなのか、それともただ純粋に、彼女の技量が凄まじいのか――
どちらにせよ、今わかることはただ一つ。
――最強。
ソードスキル発生による優先的判定、衝撃を軽々と無視し、彼女は二人の男の攻撃、それらをそれぞれ片手で弾いた。
驚愕、そしてすぐにやってくる恐怖の感情。――だがその一瞬の間に、男たちの目の前で、鞘と刀が舞う。
ほんの一瞬で、攻防の隙を突いて起こる、戦闘態勢の変化。
刀を左手に、鞘を右手に。
先ほど、槍の柄を受け止めた鞘は、逆に片手剣を持った男の方へ。
そして、先ほど片手剣を受け止めた刀は、槍を持った男の方に。
――槍と片手剣、どちらの方が接近戦が弱いかなど、火を見るよりも明らかだった。
「がギッ――」
一閃。
槍の柄と穂の接合部分、そして男の胴を縦に切り裂く。
逆手持ちは基本、よほどのことがない限りは順手持ちに切り替える。
だが逆に言えば、そのよほどのことが――今回のように、超近距離での場合なら、話は別。
男は攻撃を弾かれ、未だノックバック状態なのに加え、更には閉所での戦いに向かない武器である槍。
抵抗も虚しく、男は一撃で武器を破壊され、そしてクリティカルが発生していないというのに、凄まじい勢いでHPが減っていき――
「ッうぁああああ!!!!」
必死に恐怖から目を逸らしながら、もう一人の男が再び、二番煎じのソードスキルを発動させようとする。
単発の片手剣ソードスキル《バーチカル》が、そして片手剣が加速し、もう一度――
その寸前、男の胸の中心に、鈍い痛みと凄まじい衝撃が走る。
揺れる視界で男が見たのは、先ほどの一瞬で、右手に鞘を持った辻斬りが、己の肉体の正中線を貫いていた。
ソードスキルの判定もなく、そこにあるのはただの衝撃、ノックバックだ。
だがその不快感は、戦闘中決して無視できるようなものではなく――
再び。剣跡が刻まれる。
「死ね」
「あっ――」
逆手持ちの剣光。一閃。
肩から腰まで、何の抵抗も許されぬまま、バターでも切るかのような滑らかな動作で、男は二等分にされる。
部位欠損のアイコンが表示されるよりも前に、凄まじい速度でHPはゼロに、そのまま死亡。
崩壊するポリゴンの光の中で、男は最後に何を思ったのか。
そして、
「あっああ…ぅあああああっああああああああ!!!???」
武器の完全破壊。
男がまだ手にする槍は、その判定目前。ギリギリの状態。
既に矛先はなく、あるのは無機質な鉄の棒に過ぎないが、それでも彼はそれを、己のセンスを信じた。
その結果として、彼は不完全な、槍とは呼べぬ木偶の坊で、最後の突きを、目の前の怪物に突き付けた。
「馬鹿が」
その抵抗は。想像を超える最悪な結果で覆される。
男が付きつけた槍の先、切断された断面に対し垂直に刃を突き立てられ、そしていともたやすく受け止められている。
そのまま、辻斬りは自由になった右手の鞘を刀の背にぶつけ、十字にして、一気に力を込めて、加速する。
男の槍が、柄が縦に半分切断され、同時に指と、添えていた左手首が切断される。
「あ――」
ザシュッ!と、今度はしっかりと、クリティカル攻撃が炸裂し。
男は鮮血代わりのダメージエフェクトを、身体から吹きだしながら、そのまま膝から崩れ落ちる。
頭から倒れる、地面に倒れて、アバターのポリゴンが爆散する。
――よりも先に、再び刀が、男の顔面を貫いた。
声にならぬ悲鳴と共に、HPの減少速度が劇的に加速し、男は悲鳴を出し切るよりも前に、呆気なくこの世界から永久離脱した。
そして、その場を支配するのは、沈黙。
思わず止めていた呼吸を、ルクスはやっと再開した。
「ッ…はっ…はあっ…!」
――助かった?
今、目の前で何が起こった?
ルクスの目には、先ほどの四人の男が、自分よりも遥かに強いであろうことが嫌という程にわかっていた。
だが、そんなラフコフのメンバーが一切の抵抗すら許されず、殺される光景。
異様だった。
そんな光景も、そしてそれを生み出した張本人である、彼女も――
「次波知ゃん止殺之天也流」
カチッ。そんな音が聞こえた時にはもう、彼女は動きを止めていた。
刀を鞘に納め、柄を逆手持ちのまま、無造作に握ったままブツブツと、顔が見えない態勢のまま、微動だにせず何かを呟き続ける。
アルビノ――とは違う、まさに老化、劣化し、痛んだ白髪のストレートヘア。
焦点の合わない目は暗く、色を映していないかのようであった。
160程の小さな身体を包むのは、ルクスがリアルでもよく目にした、白のシャツと、上下を黒で揃えたスーツ。
鎧もなく、耳飾りや指輪のような、特別なバフを持った装備品もない、その異質な立ち姿。
意識は混濁しているのか、恐る恐る様子を見るルクスにも、一切の反応を示さず、ただその場に立ち尽くしている。
その間も常に、ブツブツと何かを呟き続けており、彼女は一瞬、よくできたNPCか何かではないか…とさえも思った。
本当に、自分と同じ人間なのだろうか。
そんな疑問を覚えるくらいには、先ほどの彼女の動きは、人外じみたものだった。
それだけなら、ただ強いプレイヤーだからだと、そうして納得する選択もあった。
しかし、そう飲み込むのを躊躇するくらいには、ただ――怖い。
「ど以川毛此以川毛鬱陶之以」
――正直に言えば、怖い。
「殺寸.殺之天也流.塵波殺寸.全員殺寸」
ゆらりと。彼女は再び、この場所にやって来た時と同じように、ゆっくりと歩き出した。
その背中を、ルクスはただじっと見つめた。
しばらくして、深く息を吸ってから、覚悟を決めて両頬を叩き、立ち上がってから。
「あ、あの!」
ルクスは、彼女に歩み寄る決断をした。
《
誰もが忌避した殺人。その甘い禁断の蜜に唆された、素質あるオレンジプレイヤーたちは、決して少なくはない。
数にしておよそ百数名。SAOのプレイヤーが最初、一万人いたのに比べた場合、これを多いと感じるか、少ないと感じるかは、個人の感覚によるだろう。
彼らの多くは最初、足りない物資欲しさに、そしてほんの少しの悪意を抱いて、脅迫をして略奪を続けた。
それでも、全員が最後の一線を超えることはなかった。やるとしてもせめて、相手の身体を軽く斬りつける等の程度で済んでいた。
――殺人の枷がなくなってからは、全てが変わった。
ラフコフに加入していない、その他のオレンジプレイヤーでさえ、躊躇なく相手を殺し、PK行為そのものを楽しむようになってしまった。
第一層。黒鉄宮にある《生命の碑》。そこに刻まれたプレイヤーの数が、一日過ぎる度に増えていく。
その増えた死因のほとんどが、他プレイヤーからの直接攻撃。
決闘で命を落とした者もいる、モンスターに襲われた者もいる。
――だがそれらも、ラフコフを含むオレンジプレイヤーの仕業だと、誰もが勘付いていた。
「…おかしイ」
《生命の碑》を見上げながら、彼女は小さく呟いた。
その視線が向けられているのは、この一か月、『ある理由』でこの世を去った者たち。
――プレイヤーからの直接攻撃で死んだ者、その名前だった。
(今は攻略組以外。ほとんどのプレイヤーは圏外に出ないようにしているのニ…)
ラフコフの殺人手段は狡猾だ。
犯罪防止コードのある圏内エリアであろうとも、睡眠時にプレイヤーの指を操作し、決闘を申し込ませることで殺す…なんて事件もあった。
だからこそ、高レベルの実力を持つ攻略組を除く、その他のプレイヤーに対し、情報共有が行われた。
できる限り宿に泊まる。フィールドには一人では出ないこと。
簡単な内容ばかりだが、実際にそれでかなり、ラフコフやそれ以外のオレンジプレイヤーからの、悪質なPK被害の数は減った。
――筈だった。
(ゴズ、メリー、バラン、ウダ、ケイ…全員。目撃情報があった
――PKKをしている者がいる。
情報屋としての勘が、アルゴの推理が導く真実はそれだ。
だが、それにしてはあまりにも情報の"流れ"とも言える、動きの予兆がないのが不思議だった。
そもそも、相手にダメージを与えられるフィールド、ダンジョンで、目撃情報等を仕入れずにオレンジプレイヤーを見つける行為自体が非効率的だ。
アルゴは情報屋として、トップの位置に君臨する立場であるが故に、同業者の動きには誰よりも目を光らせている。
そんな彼女でも、誰かがオレンジプレイヤーを…プレイヤーを探している
「…厄ネタの匂いがするナ」
――正体不明の辻斬り。
その正体を探るため、アルゴは歩き出した。
RTA走者「こいつ勝手に動き回ってる…操作できない…こわ…」
既にやってる人はいるかもしれませんが、一応篁さん語は翻訳できます。
中には本誌でも実際に言ったであろうセリフがいくつか、探してみてネ。