【ソードアート・オンラインRTA】ラフコフ殲滅Any%『■狂者』   作:GARAKU

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 諸事情につき今日は短め。
 ここから…というより次回からはドンドンサクサク書きたいとこだけ書いて最後まで行きます。


12話.座頭の者

 ――まさかこれほどとは。

 一つ、二つ。またポリゴンの欠片が分散し、消えていく。

 目の前に広がる景色には、圏外フィールド特有の、草が生い茂る地面の上に落ちている、数えられる程度のモンスターからのドロップアイテムと、そしてたった今、アルゴが問題視している例のプレイヤー、辻斬りの少女がいた。

 相変わらず。彼女は漆黒の日本刀の柄を逆手で握り、ブツブツと呟き、俯きながら行動を停止している。

 

鬱陶之以青豚共

「凄まじいナ…」

 

 ただ、そう呟くことしかできない。

 モンスターを狩るという行為は、アルゴは勿論のこと、SAOの全プレイヤーが行っている、最もメジャーな金、経験値稼ぎの一つだ。

 デスゲームとなった現在では、その行為にも常に事故の可能性が付きまとい、率先してそれを行う者の数は、そう多くはない。

 特に印象が深いのは攻略組。――その中でも、更に一握りの頂点。そうアルゴが確信を抱くほどのプレイヤーである『黒の剣士』もそうだった。

 SAOはその日、時間帯で湧くモンスターの数に限度があり、如何にして自分がそれを独占できるか、どれだけ効率的に、その日の時間を消費できるかが鍵となる。

 アルゴ自身、何度か彼ら攻略組と共に行動をし、レベリング作業に参加した経験もある。だからこそ、目の前の彼女の、今に至るまでの行動の一つ一つに、不気味な何かを思わせられるのだ。

 《フレンジー・ボア》は第一層の、それこそ全SAOプレイヤーが一度は対峙した経験のあるモンスターだ。

 一度発見されると、数秒程度の溜め行動が始まり、それが終わると、見た目通り、正に猪突猛進の攻撃モーションが開始する。

 しかし動きは直線な為、こちらの姿を発見されようと、それこそ攻撃が始まろうとも、しっかりと動きを観察し、横に動いて回避すればいい。

 だが、彼女は動かなかった。

 本当にそれこそ、敵の攻撃が当たる限界、当たり判定の存在するほんの数ミリ。《フレンジー・ボア》が接近したのと同時に、アルゴの耳にカチンッという、金属音が聞こえ。

 その次の瞬間、彼女の身体を透過するかのように、先ほどまでモンスターだったものの、ポリゴンの粒が散っていった。

 

 ――あの抜刀速度、もしかしたら………

 

 情報屋として、これは正に失態だ。

 ここまでの逸材が、それこそ下手をすれば、例の『黒の剣士』と同等の速度であろう、この超常的反射速度。

 レベルも、それこそプレイヤーネームもわからない存在だが、あの《魔剣》を装備できている時点で、決して低いことはないだろうと、そう確信している。

 そんなアルゴの隣で、ふふんという、いかにも誇らしげな声が聞こえた。

 

「凄いだろう?彼女」

「…あぁ、本当にナ」

 

 ルクスと名乗ったその少女は、アルゴの言葉を聞くと、更に機嫌よく笑う。

 どこか男性らしい、それこそ一人称は私だが、大正時代を思わせる、独特な喋り方だった。

 髪は黄を帯びたベージュ色で、SAOにおいて凄まじく希少な、それこそアルゴにも匹敵する『美少女』というカテゴリのプレイヤーだった。

 ルクスが何故彼女を(まだそんな関係ではない)師と仰ぐのか、そして何より――彼女は一体何者なのか。

 それを聞いた時、アルゴは余計に困惑した。

 

「なァ、あいつは一体何なんダ?」

「何って?」

「あの風貌、強さ、何より…あいつが持っている武器、エクストラスキルの《カタナ》だロ。数か月前に、攻略組の曲刀使いが発見してから、十人くらいは使い手が増えたヤツダ」

「………」

 

 β時代から不明であった、モンスター相手でしか存在を認知できなかった武器種、それこそが《カタナ》だった。

 誰もが求めた(あいつも…)その存在。それこそ、手掛かりになるような情報であれば、かなりの高額で売れる程のもの。

 実際、最初に《カタナ》スキルを身に着けたある男は、その情報を隠すことなく、獲得した時の細かな情報を、無償で提供したのだが…

 

「わからないんだ」

 

 案の定ともいうべきか、アルゴの予想通り、ルクスも詳しい状況を知らないらしい。

 それはそうだろう。モンスターの効率的な狩場や、装備品やクエスト情報と違って、エクストラスキルは更に直接的に、プレイヤーの戦闘力に大きく関わる要素だ。

 だからこそ、より詳しい獲得条件が判明してから、《カタナ》スキルを会得したプレイヤーの名前や、より詳しい情報は、アルゴの脳内にインプットされていた。

 だというのに、今日この日まで、彼女のことを知らなかった。

 あまりにも異質。そうとしか言えなかった。

 だが、それはルクスも同じようで――

 

「いつから第一層(ここ)にいるのか。この世界(SAO)にとってどういう存在なのか……何を考えているのか……誰も知らない。あの人は、その強さ以外一切が謎だ」

「………」

「私はね、あの人がサンタや幽霊のように。人の念が作り出した空想上のプレイヤーなんじゃないかと考える時があるよ」

「ハッ…SAOの全プレイヤー、それこそ一万人分の()()の集合体…とでモ?」

「なるほど。通りで強いわけだね」

 

 とはいえ、ルクスもそれを本気で言っている訳ではないのだろう。

 その口調は軽く、ただ目の前をゆらりと歩く、辻斬りの背中をじっと、羨望の眼差しで見つめていた。

 アルゴはそんなルクスの様子を、モノ好きなやつだと認識している。

 実際、例の『黒の剣士』や『閃光』のように、圧倒的な強さ、功績を持つ者に憧れて、彼らのプレイスタイルや服装を真似するような、ファンムーヴをする者も一定する存在する。

 だからルクスの場合も、そんな者たちと、同じようなものだと思っていたし、それに対する理解もあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――だがまさか。

 

「なんだァ?喧嘩かァ?」

「勝負だってよ、圏内(ここ)なら死ぬ心配もねェしな」

「あー…またかァ」

何度何度手前ぇ波…

「よろしくお願いします!アルゴ!審判頼んだよ!」

「………あー、ウン」

 

 ――まさかはじまりの街で(観衆に囲まれて)堂々とやるなんて。

 辻斬りによって変えられた認識。そのせいか、街の時計塔の前で、堂々と両手剣を向けるルクスと、相変わらず俯いたままの辻斬り。

 彼女らを観察しながら、呑気に雑談を続ける第一層住民を見て。

 「変わったなァ…」と、どこか遠い目をして、アルゴは呟いた。

 

 

 

 


 

 

 

 

 アインクラッドの層ごとに存在する主街区。そこでは常に、『犯罪防止コード』が働いている為、一切の暴力行使は通用しない。

 それを逆手に取り、『ボックス』行為のような、相手を閉じ込める悪質な嫌がらせの手段も存在するが、システムの仕様を逆手に取り、利益を追求するのは悪質行為だけではない。

 その一つが『圏内戦闘』。つまりは模擬戦。

 重ねて言うが、圏内ではあらゆる暴力は通用せず、仮に相手を斬ったとしても、『犯罪防止コード』によってカーソルがオレンジになることもない。

 HPも減らず、デュエルとも違って万が一の事故もなく、更にはいちいちデュエルを始める前の、60の長いカウントダウンを待つ必要もない。

 だが、流石のルクスも圏内戦闘…もとい、これほどの観衆がいる場所での戦いは初めての経験だった。

 カチャリ。装備した鎧が、動かした腕に連動して、擦れて小さな金属音を奏でる。

 

「……………」

 

 両手剣を握る力が、意識せずとも、数秒ごとに強くなるのを自覚する。

 過度な緊張は死に――敗北に直結する。

 ゆっくりと息を吐き、ルクスは目の前の最凶に、彼女から目を離さないように気を付けた。

 

女流奈良久之呂

 

 刀を鞘に納め、柄を掴んだままブツブツと、彼女は何も動かない。

 ――いや、むしろ待っているのか。

 彼女は敵意に反応する。ならばこの瞬間もずっと、ルクスが放つ敵意、もとい殺意を感知し、それに反撃を打ち込む準備をしているのか。

 フー…と、二回か三回程息を吐き、吸ってはまた吐いて。を繰り返してようやく、ルクスは身体の緊張をほぐすことができた。

 

(私は、負ける)

 

 ――むしろ、それ以外の可能性を、持つことすら許されない。

 情けないのは重々承知。ならばせめて、そんな自分でもできることを。やれることをやれ。

 そうでなければ、彼女の、あの一瞬で見せた、自分だけが見れた剣跡。

 

 ――あの美しい、思わず見とれた殺人剣を。せめて…

 

 このような感情を持つのはおかしい。そうもう一人の自分が言う。

 しかしもう一人の自分が言う。ここはゲームの世界。ならば彼女の強さにも、圧倒的な力に憧れるのは当然だと。

 どちらが正しいか、その答えはきっと、どこにもない。

 あるのは今、こうして彼女と対峙し、そして他ならぬ彼女が、己の願いを聞き入れ、こうして対峙してくれている事実のみ。

 今のルクスには、これだけで充分だった。

 戦いは長引かない。一瞬で決まる。

 ――ならば。

 

「――ッ」

 

 ――その最初に、自分の全てを乗せる。

 読まれるのも、防がれるのも視野に入れ、それでもルクスは、その技を選んだ。

 両手剣専用。上段ソードスキルの《アバランシュ》。

 引き延ばされた感覚が、周りに映る景色をスローモーションに、そして一気に振り下ろした両手剣が、ガンッ!!と凄まじい()()を響かせ、炸裂した。

 ――もしも、この技がちゃんと相手に当たったなら、このような音は絶対に発生しない。

 

 

 視線の先。

 ルクスの放ったソードスキルを、鞘から抜かずに、ただ左手に握った刀を、そのまま上に持ち上げて防いでいる。

 武器の耐久力もそうだが、両手剣の上段技を防いでも、一切よろけず、スタンすらせずに不動でいられる現状も、ただ驚愕した。

 筋力値か、それとももっと単純な、武器の性能差か。

 だが、よく見れば――

 

宇奈与

 

 左手で握っている刀の場所は、柄ではなく鞘。

 ルクスの両手剣を、彼女は柄の部分で難なく受け止め。

 スキル発動後の硬直状態。その隙に、残った右手で柄を掴み。

 

遠慮奈久也っ天也流

 

 ――チャキ…

 左手で鞘を滑らせ、刀身を露わにし――

 

 

 

 

 ――ズバッ!

 周囲を染める紫の閃光。そして爆発音。

 ルクスがそれを聞いた時には、全ての景色が真横になっていた。

 遅れて湧いてくる苦痛。嫌悪感は、ペインアブソーバーによって緩和された、着地を失敗して転がった、己の身体が発する痛覚だろう。

 そして、開放感を感じる己の両手。

 いつの間にか、先ほどの衝撃で手放した両手剣。

 まさかと思い、とっさに前方にいる彼女を――その上空で回転をしながら落下している、己の武器を見つめ。

 

 ――カチンッ

 

 再び、初めて迷宮内で見たあの時と同じ。

 刀を納刀したことによる鍔鳴り。それが聞こえた途端、彼女の上空にあった両手剣。

 それが頭に落ちる寸前で、三等分に切断され、そして無数のポリゴンの欠片となって、消滅した。

 滅多に見ることも、起こることもない、その『武器破壊』と呼ばれる、システム外スキルの一つを、()()で起こしたのを見て。

 笑った。

 

「――はははははっ」

 

 ――初めて、この世界で心の底から笑った。

 まるで当初の、あの日、変わってしまう前のSAOみたいだ。

 命も、悪意もない。ただ純粋に技術を極め、そして競い合ったあの時のように。

 その時に、自分よりも上の者を見て、嫉妬を感じてしまう前に見た、絶対的な羨望。

 

 ――きっと、この感情は間違いじゃない。

 

 ルクスはその時、この厳しい世界に来て、初めて良かったとさえ思った。




 20~30近くで本編完結ですかね。
 他の細かい過去編とかその後(ALO等)はおまけで追加していく感じです。
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