【ソードアート・オンラインRTA】ラフコフ殲滅Any%『■狂者』   作:GARAKU

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 残りはざっと黒の剣士編とラフコフ討伐を。


14話.お安い御用

 居酒屋での一幕は、当然ながらそれなりの規模の騒ぎとなった。

 NPCのアルゴリズムに設定された、突然の奇行に驚く声と、その他プレイヤーによる、純粋な興味。

 話の分かる者であるなら、彼らが同時に行ったそれが、まさに()()()()()、侍同士の刹那の決着であることを理解しており、結果として店内を満たす感嘆の声を漏らした者が、大勢いた。

 そしてそれは、彼も例外ではなかった。

 

 ――こっちの柄が身体で止められてやがる…これじゃ抜刀は無理だな。

 

 額にバンダナを巻いた。ギルド《風林火山》のリーダーである男、クライン。

 彼はその瞬間、一人の侍として――完膚なきまでの敗北を経験した。

 クラインがその日に()()と出会ったのは、本当にただの偶然であった。

 数か月前、突如として発見されたエクストラスキルである《カタナ》を習得している、SAOに十人程度しか存在しない、選ばれたプレイヤー。その事実が、彼のフレンドである『黒の剣士』と対等に、そして追いつく為の価値が、彼の誇りでもあった。

 まだ詳しい獲得条件は明らかになっていないものの、現時点て《カタナ》スキルを獲得した者、全員に共通して、《曲刀》スキルの熟練度が400以上だというものがあり。

 個人差こそあれど、こうしている間にも少しずつ、曲刀使いからカタナ使いに転職するプレイヤーの数は、着実に増えていった。

 だからこそ、自身と同じ道を行く武器の使い手である彼女はより――異質だった。

 持っている武器が醸し出すオーラや、それを飲み込む程の、本人から放たれる…()()にも似た危険な気配。

 しかし、彼女の脅威を示すカーソル色がグリーンなのと、彼女の傍にいたのが、アインクラッドでも一二を争うレベルで信用できる相手である、《鼠》のアルゴだったのもあって、クラインは早い段階で、彼女への警戒心を解いた。

 

 ガラク。

 それが、その場にいたアルゴを含む三人とパーティを編成する際に、クラインが知った彼女の名前だった。

 

 歳はクラインよりも、おそらくは下。それこそ『黒の剣士』と称され、最前線で今も活躍を続ける、クラインにとって一番のフレンド(友達)と同じくらいの。

 艶やかさの欠片もない、痛んで脱色した長髪と、まるで杖のように、しかしまるでその辺の棒切れでも扱っているかのような、慣れた挙動。

 髪色、そして何より――

 

 まるでボケ老――

 

 大変失礼なことだが、未だにまともな言葉も聞けず、ずっと常にブツブツと呟いているガラクに対し、クラインが思い浮かべた言葉はそれであった。

 ソードスキルで道中のモンスターを打ち倒し、そしてちらりと後ろを見れば、ルクスと名乗った、男性口調の少女が、ガラクの腕と自分の腕を絡め、ぴったりとくっついているのが見える。

 普通であれば、麗しい少女が少女相手にくっつくその景色に、眼福だの何だの言っていたのだろう。

 だが、あまりにも危険な雰囲気を醸し出す、常に濁音を垂れ流し、俯くガラクの姿を見て、そのような甘い感情を覚える間もなく。

 一瞬。介護…?と、思わず更に失礼なことを考えてしまい、ブンブンと頭を振って、その言葉を脳内から追い出した。

 ………その時、ガラクからの視線がより強くなった気がしたのは、きっと気のせいだろう。

 

「…うん。やめとこう、うん」

 

 クラインは賢明であった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 「もしよかったら、みんなでパーティを組まないか?」

 数十分前、ガラクによる、逆手持ちにした刀身を押し付けられたままのクラインに対し、まるで一緒に遊びに行くかのような、そんな気軽さで、ルクスは彼ら《風林火山》に提案した。

 「《無銘の贋剣》クエストは、今この時期だからこそ、他プレイヤーと争うことなく攻略できる」

 その言葉が示す本当の意味とは、彼ら《風林火山》による、一種の宣伝効果があったからと言えるだろう。

 クエストをクリアすれば、確実に入手できる片手剣。しかし現在、多くのソロプレイヤー…それこそ攻略組、大型ギルドには劣るものの、その段階(ステージ)を夢見て、そして断片的な情報を頼りに、決して少なくはない数のプレイヤーたち。彼らは少ない特別に、《カタナ》スキルを所持しているという付加価値を求め、レベリング作業に没頭している。

 《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》の恐怖もある為、積極的に圏外に出るプレイヤーは少ないが、だからこそ、いつもと比べて狩場を独占できる可能性も高まるのも事実。

 いい機会だ。それに、パーティ申請のメッセージを見れば――

 そんなアルゴの内心を読んだかのような、あまりにも丁度いいタイミングで、ルクスがその場にいた全員に向けて、パーティ申請を受諾し、メンバーが編成される。

 そして、咄嗟にアルゴは己の所属するパーティの、メンバー名を確認し、思わず、呻き声を漏らした。

 

 2024年、2()()1()4()()

 その日、約一年と二ヶ月の時を経て、アルゴは彼女と――ガラクと再会した。

 ――それも、変わり果てた姿で。

 

 ずっと俯き、前髪に隠れて見えなかった顔。

 居酒屋にて、()がクラインの発した鍔鳴りに反応し、そして抜刀を抑え込んだその瞬間に、ようやく気付くことができたのだ。

 思い返してみれば、彼を思わせる要素は多くあった。

 女子にしては珍しい、スカートタイプではない、男物のスーツ、そして日本刀。

 薄情なものだ。あれだけβ時代、それなりの関係性を築き、そしてSAOが正式サービスを開始してから、何回も会話を交わしていたというのに。

 今日この日まで、彼のことを忘れていただなんて。

 

「師匠。足元気を付けて」

老人扱以寸ん奈

 

 ルクスに身体を支えられながら、彼はずっとあの調子だった。

 髪の色や、普段の彼の雰囲気からしても、まるで介護される老人のそれで、やはり同年代だとは到底思えない。

 それに、彼のアバターの変化は、いささか疑問が残るもの。

 彼は最後に出会った時、髪は黒色で、それにあそこまで長くはなかった筈。

 それに、ドロップアイテムである色変えアイテムを仮に使ったとしても、変わるのは色だけで、元から設定されていた、SAOを始める前にナーヴギアがスキャンした髪質、それだけは変えられない。

 謎だらけだが、それでも唯一、アルゴが手放しで喜べることがある。それは彼が、ちゃんと生きていること。

 そして同時に、あまりにも目を疑う、歯痒い思いもあった。

 

 彼は、人を殺した。

 第一層の圏外、そしてルクスから聞いた、ラフコフとの戦いだけでも、最低でも六人以上。

 

 相手がオレンジプレイヤーだから、特にラフコフは人殺しだから。だとしても。

 それでも、彼が手を汚す必要など、決してない筈なのだ。

 何より――圧倒的な殺意。

 あの強さ、あの挙動。ガラクの今の姿を、アルゴは()()()()

 ――()()()()()

 

(強さだけで決めるならキリ坊。それかヒースクリフのどっちかだガ…あのバトルスタイルには一致しないし、そもそもあんな挙動不審じゃなイ…)

 

 黒の剣士――キリトは盾なしの片手剣使いで、ヒースクリフは盾を持った防御からのカウンターが主体のバトルスタイル。

 対するガラクはというと、彼の戦い方は神速の抜刀術。更には逆手持ちによる居合、そして超近距離での圧倒的無双スタイルを、()()()()()()()()()行っている。

 

(あの強さ、挙動の正体はガラクの人格コピー…それ以外の答えはないガ。…ないからこそ余計にわからなイ…)

 

 迷宮区を突き進む間、ずっと彼は、ルクスの傍にいた。

 モンスターが出現すると、今までと同じ、ブツブツと呟く不審な挙動のまま、左手に持った刀を持ち上げ、動きを止める。

 だがクラインの指揮による、《風林火山》のメンバーが奏でるソードスキルの旋律が、モンスターを一瞬でポリゴンの欠片に変化させる。

 それを見てから、ガラクは刀を再び元の位置に戻し、そして相変わらずの挙動不審のまま。

 

 ――敵意にしか反応しない。

 

 第一層の住民から聞いた、今のガラクを示す言葉。

 掠れた声、小さく言葉の体を成していない、常時垂れ流されている濁音。

 あれほどの強烈な個性と強さを持った者が、一体他に何人いるというのか。

 アルゴはその、常識知らずの強さもそうだが、今のガラクから溢れ出す、『危険』そのものである空気を見て、その上で思う。

 『SAOにいる全プレイヤー、その殺意の集合体』

 ルクスが戯言として呟いた、彼がサンタや幽霊のような、仮想のプレイヤーではないかという持論。

 ただでさえ、普通の人格コピーでさえ、かなりオカルトに片足を突っ込んだ事態だったというのにだ。

 

「――ガラク」

 

 一年。

 この一年で、SAOは大きく変わり、そしてある程度()()てしまった。

 朝起きて、剣を握ってモンスターを倒す。産毛の一つも生えていない、ポリゴンで作られた仮想の肉体。

 それがまるで、最初からこうであったかのような、そんな感覚がふと、自分の頭に浮かび上がる。

 街を奔走し、フィールドを必死に駆け回って、クエストやモンスターの情報を集めて回る。

 その間、彼は一体どこで、何をしていたのか。

 もはや、それを聞く資格も、聞けるような状態でもない。

 アルゴの言葉を、理解できているのか、それともただ、反射として濁音を流しているだけなのか。

 

 160にも満たない、小さな身体だった。

 隣に立つのは、自分よりも更に小さな、そして年下の…本当の意味での子供。

 

 最初、自分の秘密の一つである性別と、己が抱える病気、人格絡みの話も、自分は聞いた。

 その時の、拒絶されることを恐れた、怯えた表情を、今になって、アルゴは思い出した。

 ――思い出してしまった。

 そうなると、次にやってくるのは、第一層での罪悪感。

 彼に向けた敵意。仕方ないものだと、そう割り切るにはあまりにも、アルゴは彼のかつての姿を、小さく怯えた一人の子供を詳しく知ってしまっている。

 この一年、彼は何をして生きていたのか。

 そして、一体何を経験し、この絶技を身につけたのか。

 アルゴは、まるで罪滅ぼしのように、一言。

 

「…気づけてやれなくてごめんナ」

 

 彼を刺激しないよう、ゆっくりと頭を撫でた。

 少し掴めば、簡単に千切れてしまいそうなくらい、弱く傷んだ髪。

 その時一瞬、彼の色を映していない瞳が、揺れたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2024年、2()()2()4()()

 

「俺もあんたを探してたのさ、ロザリアさん」

「――どういうことかしら?」

「あんた、十日前に、三十八層で《シルバーフラグス》っていうギルドを襲ったな。メンバー四人が殺されて、リーダーだけが脱出した」

「ああ、あの貧乏な連中ね」

「…リーダーだった男はな、毎日朝から晩まで、最前線のゲート広場で泣きながら仇討ちをしてくれる奴を探してたよ」

「……」

「あんたに、奴の気持ちが解るか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

此乃仁波……可之知ゃ安於計禰ぇば加利…




 Q.どうしてアバターの髪が変化してるんですか?(現場猫)
 A.心意システムって凄いね♡




 次回予告
タイタンズハンド「シルバーフラグス襲ったけどアイテムしょぼくて萎えぽよ」
ガラク「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…」
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