【ソードアート・オンラインRTA】ラフコフ殲滅Any%『■狂者』 作:GARAKU
時間が足りないので滅茶苦茶短い。
目の前で繰り広げられる戦いは、まさに異次元のものと呼ぶに相応しい光景だった。
互いに片手剣。日本刀か西洋剣の違いはあれど、両者の持つパワー、そしてスピードは互角。
火花が散り、黒く輝く両者の武器が、宙に幾千もの剣跡を刻む。
今の彼らを突き動かすのは、純粋で純然たる、己の反射速度のみ。
一際大きい、金属同士がぶつかる音が響く。
その都度、大きく身体を揺らすのは辻斬り。――ガラクであった。
160cmほどの小柄な体躯と、僅かにサイズの小さい日本刀武器によるハンデ。
そして何より、今も尚最前線を走るキリトとは、鍛え上げたアバターのレベルが違う。
意識を逸らし、攻撃の余波が届かないように意識する。
並大抵の技量では成す事ができない。VRの申し子、キリトだからこそできる戦い方だが――
(不味い…)
それでも。
ガラクの斬撃をいなし続けながら、冷や汗を流す。
キリトの内心は、鍔迫り合いが拮抗しているのにも関わらず、決して良いものとは言えなかった。
(フェイントが通じないのは当然として、さっきからこっちの攻撃の初手が潰される…
今の彼女は、殺気のみ過剰に反応する殺人マシーン。
相手の放つ敵意や殺気の有無。つまりこちらが本気で当てるつもりの攻撃や、逆にそのつもりのないフェイント…見掛け倒しの攻撃の選別を完璧に行い、その隙を狙って攻撃を差し込んでくる。
最初の三回で、キリトは彼女にフェイントを仕掛けるのをやめ、ソードスキルに頼らない、自分自身が持つ反射神経、そして純粋なプレイヤースキルによる、素の剣術同士の戦いを繰り広げていた。
勿論、キリトには奥の手として
相手のHPを減らし、オレンジプレイヤーになるのを覚悟で、理性を取り戻してもらうのが一つ。そしてもう一つは、この調子で斬り合いを続け、確率で発生する武器の《
普段から慣れている、右手と左手を同時に動かし、酷使する動きのまま、首と肩を正確に狙う、ガラクの斬撃をいなし続ける。
それを繰り返す度にキリトは、恐ろしい何かを覗き込んでいるような、そんな感覚に襲われるのだった。
(
――均衡が崩れる。
プレイヤーとしての技量。反射神経や剣術の才能はほとんど同じ。
武器以外の装備品による、サブステータスの強化倍率の有無や、プレイヤーレベルの差による、筋力値やHPの総量や俊敏性。
それらを合算しても尚、ようやく互角だった二人の実力と戦い。
だが、キリトという強敵を喰らい、その技術を盗んだガラクは止まらない――
「っ――!」
加速する剣撃の雨が、その密度を変える。
全身を襲う刺突と一閃が、より最適に、より効果的な攻撃に進化し、その凶悪性を高めていく。
無駄はなく、冷静に、そしてより最大効率の一撃を――
「甘以…」
首。喉仏の中心――
「――ッ!?」
咄嗟に《ダークリパルサー》を盾に、その刺突を受け止め、同時に足を地面から離すことで、その衝撃を緩和する。
だが、その時すぐ――
「しま――ッ」
――
それは、本来モンスター相手に、それこそ階層ボス相手に行う手段であり、対処法。
広いとはいえ、限られた空間で、できるだけ
だが、今この場では。
「死禰屑」
距離を離してしまったキリトの前で、銀色の刃がギラリと光る。
その矛先は、そして彼女の視線が射抜くのは――
「――ひっ」
「シリカ!逃げ――」
アバターを構成するポリゴンすらブレる程の、超加速。
残像が映ったのは一瞬で、その次の瞬間。瞬きすら間に合わない速度で、ガラクは数十mも離れていた、ロザリアのいる方角に駆け出しており。
その刀が、無常に首を刎ね――
「――ふぅ」
――ピタリ。
引き延ばされた感覚。スローモーションになる視界の奥。
刀身を首に、ダメージが発生する判定ギリギリで、刀を振るう途中の姿勢で制止した、ガラクの姿。
「全くガラクったら。――厄介なルームメイト増やしちゃって」
その抑揚。
声も、見た目も違うというのに、キリトはそれを聞いた瞬間。今はここにいない、
「
こうして、会うのは一年ぶりだろうか。
いや、正確には、
目の前で、刀を放って、不器用に笑うその仕草も。
自分を見つめる、その優しい眼も――
「今すぐここから逃げて」
「私が出ていられるのもこれが最後。そして――ガラクが
「な、にを」
「知ってるでしょ?
あの辻斬りと同じく。作り出された存在である彼女は。
まるで他人事のように、自分という贋作を語った。
「ガラクにとってあの人格は、制御不能の殺戮マシーンなんだと思う。どんな武器を使うか、どんな戦い方をするか…
「…君は」
「こうして変われるのも、もう最後。だから――」
アスナはここにはいない。
目の前にいるのは、ただの複製に過ぎず、コピーされた人格の一つ。
だというのに、涙すら見せず、別れの言葉も出さずに、そう告げる彼女の姿を見て。
「お願い。――ここから逃げて」
――まるで半身を失ったかのような、実体のない何かが削れてしまったような気がした。
多分この世界だとサトライザーは銃弾で刀研がれて負ける。
ザスカーは微妙な顔するけどプレイヤーは大盛り上がり()