【ソードアート・オンラインRTA】ラフコフ殲滅Any%『■狂者』 作:GARAKU
そして篁さん、単行本表情デビューおめでとう!
夢の中にいるようだった。
自分という存在を、最初から偽物だと自覚した上で。
その上で、自分は
所詮、外聞から作られた贋作の人格。
事故崩壊を引き起こしかねない、矛盾した精神構造。
辺り一帯が暗闇に染まる、たった一つだけ、小さな椅子の置かれた空間。
そこに、彼女は座っている。
「…もうそろそろ限界か」
足元に転がる、自分以外の誰か。
そこにいたのは、齢は30を超えているであろう、成人女性。
小さな男の子、青年。転がる死体の特徴はどれもバラバラで。
同時に、彼らにある共通点を、彼女は聡明に、察する。
「…キリトくん変わったなぁ」
ガラクの脳内に宿る、最も新しく作られた人格。
彼女は何とか、この主人格の縄張り争いに勝利し、一時的に、ガラクの肉体のコントロール権限を手にした。
目を瞑れば、最後に彼が、こちらを見つめる様子が見える。
最後に出会ってから、そしてこうして、主人格として相対するのは、一体何時ぶりだろうか。
だが、それも――
「………待ってくれたの?」
椅子に座ったまま、アスナは背後に潜む、その殺意の亡霊に問いかける。
白のシャツ、黒いスーツ。それは先程、アスナが奪った肉体が着ていたのと同じ、アインクラッド世界の姿。
光を失い、虚空を見つめているかのような、暗い眼差し。
それが持つ、何十もの人間を斬り殺し、人斬り道具として大成した、日本刀。
それが、音もなく、ゆっくりと引き抜かれる。
「………あーあ」
これから、きっと"彼"が、これからの人生を生きる。
外では、もうオレンジギルド《タイタンズハンド》の生き残りである、ロザリアを筆頭にした者たちを、キリトが黒鉄宮の入口へ繋がる、ゲートを開き、そこに潜らせている。
もう、彼女たちを、ロザリアらを殺すことはできない。
悪を斬る。
その行為は、聞こえだけは良い。
「じゃあね」
背後で煌めく、命を絶つ刃の銀。
それを尻目に、彼女は笑いながら。
――ゴト…
「…………」
一筋の血潮と共に。
静かに、その椅子から崩れ落ちた。
目を開ける。
真っ黒な空間ではなく、仮初の現実。
ポリゴンで構成され、偽の視覚情報と、嗅覚を刺激する鉄の城。
のどかな野原。
その中央に、たった一人、"彼"は立つ。
「…………」
正真正銘、自分以外の全て。
数多の形成された人格を
たった一人、存在していたストッパーを滅ぼしたことで。
もう、誰も彼を止めることはできなくなった――
ボス攻略会議。
もはや今のSAOプレイヤーの中に、それを知らない者は一人も存在しない。
浮遊城アインクラッド。その各層に存在する迷宮区から、ボスのいるエリアまで辿り着くのでさえ、油断すれば犠牲者が発生する。
レベルの平均は如何程か、装備はどれほどか。
万一にも、犠牲者など出してはならないという、徹底された予防線の元に、彼らはこのデスゲームの世界を生きる。
その最前線に立つ彼ら――《血盟騎士団》の空気は、重い。
「交渉の為、ラフコフの一味と接触を図りましたが…」
巨大な、ターンテーブル形状のオブジェクトの上に置かれた資料。
そこには、依然として変わりのない、ラフコフ…《
「和解の余地なく、派遣されたプレイヤーは全員殺されています」
「……そうか」
もはや彼らは、狂人と称するしかないモノなのだろう。
血盟騎士団に所属する彼らは、全員が憂鬱そうに、そして理解の及ばない、理性のタガを外したレッドプレイヤー達に、畏怖の感情を抱く。
止まられるものならば、止めたい。
しかし、彼らのように、最前線の攻略を担うプレイヤーにとって、一日は決して、無駄に消費することの出来ない資材そのもの。
日にリポップする数が限られ、得られる経験値にも限界があるSAOのシステムにおいて、解決の目処がない事件。それの一つや二つに、人員を割く余裕がない。
なかったのだが――
「PKの被害数は以前よりは減った…が、悪質な攻略妨害が目立つな」
「本格的に資源の収集もままならなくなって来た。…もう見て見ぬふりはできないのだろう」
「…では?」
その言葉を区切りに、彼らは一人の男へ、視線を向ける。
その男は、現アインクラッドにおいて最強とされ。
この場において、地力でも権力でも、全ての頂点に立つ彼が、言葉を発する。
「…では、そうしよう」
――血盟騎士団団長、ヒースクリフ。
彼の言葉が意味することを、部下たちは瞬時に理解した。
もはや交渉も、和解も不可能――
「…《聖竜連合》、そして《攻略組》にも声をかけてくれ」
選ぶ手段は、殲滅。
彼の指揮により、ラフコフ討伐戦の狼煙が上がり。
同時に、SAOプレイヤーにとって、それは忘れようとも忘れられない。
脳に焼き付く地獄絵図の始まり、そして"彼"にとっての天啓が訪れることを。
この時ヒースクリフ…――茅場晶彦も知らなかったのだ。
導入までバッと
その後はバーッとクズ斬りオンパレードです。