【ソードアート・オンラインRTA】ラフコフ殲滅Any%『■狂者』   作:GARAKU

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 あと6話くらいで完結なのでサッと行きます。
 そして篁さん、単行本表情デビューおめでとう!


18話.前夜

 夢の中にいるようだった。

 自分という存在を、最初から偽物だと自覚した上で。

 その上で、自分は()()の生き方を強要される。

 

 所詮、外聞から作られた贋作の人格。

 

 事故崩壊を引き起こしかねない、矛盾した精神構造。

 辺り一帯が暗闇に染まる、たった一つだけ、小さな椅子の置かれた空間。

 そこに、彼女は座っている。

 

「…もうそろそろ限界か」

 

 足元に転がる、自分以外の誰か。

 そこにいたのは、齢は30を超えているであろう、成人女性。

 小さな男の子、青年。転がる死体の特徴はどれもバラバラで。

 同時に、彼らにある共通点を、彼女は聡明に、察する。

 

「…キリトくん変わったなぁ」

 

 最初期(プログレッシブ)のアスナ。

 ガラクの脳内に宿る、最も新しく作られた人格。

 彼女は何とか、この主人格の縄張り争いに勝利し、一時的に、ガラクの肉体のコントロール権限を手にした。

 

 目を瞑れば、最後に彼が、こちらを見つめる様子が見える。

 最後に出会ってから、そしてこうして、主人格として相対するのは、一体何時ぶりだろうか。

 だが、それも――

 

「………待ってくれたの?」

 

 椅子に座ったまま、アスナは背後に潜む、その殺意の亡霊に問いかける。

 白のシャツ、黒いスーツ。それは先程、アスナが奪った肉体が着ていたのと同じ、アインクラッド世界の姿。

 光を失い、虚空を見つめているかのような、暗い眼差し。

 それが持つ、何十もの人間を斬り殺し、人斬り道具として大成した、日本刀。

 それが、音もなく、ゆっくりと引き抜かれる。

 

「………あーあ」

 

 これから、きっと"彼"が、これからの人生を生きる。

 外では、もうオレンジギルド《タイタンズハンド》の生き残りである、ロザリアを筆頭にした者たちを、キリトが黒鉄宮の入口へ繋がる、ゲートを開き、そこに潜らせている。

 もう、彼女たちを、ロザリアらを殺すことはできない。

 悪を斬る。

 その行為は、聞こえだけは良い。

 

「じゃあね」

 

 背後で煌めく、命を絶つ刃の銀。

 それを尻目に、彼女は笑いながら。

 ――ゴト…

 

「…………」

 

 一筋の血潮と共に。

 静かに、その椅子から崩れ落ちた。

 

 

 

 

 目を開ける。

 

 

 

 

 真っ黒な空間ではなく、仮初の現実。

 ポリゴンで構成され、偽の視覚情報と、嗅覚を刺激する鉄の城。

 のどかな野原。

 その中央に、たった一人、"彼"は立つ。

 

「…………」

 

 正真正銘、自分以外の全て。

 数多の形成された人格を消し(殺し)

 たった一人、存在していたストッパーを滅ぼしたことで。

 もう、誰も彼を止めることはできなくなった――

 

 

 

 


 

 

 

 

 ボス攻略会議。

 もはや今のSAOプレイヤーの中に、それを知らない者は一人も存在しない。

 浮遊城アインクラッド。その各層に存在する迷宮区から、ボスのいるエリアまで辿り着くのでさえ、油断すれば犠牲者が発生する。

 レベルの平均は如何程か、装備はどれほどか。

 万一にも、犠牲者など出してはならないという、徹底された予防線の元に、彼らはこのデスゲームの世界を生きる。

 その最前線に立つ彼ら――《血盟騎士団》の空気は、重い。

 

「交渉の為、ラフコフの一味と接触を図りましたが…」

 

 巨大な、ターンテーブル形状のオブジェクトの上に置かれた資料。

 そこには、依然として変わりのない、ラフコフ…《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》によるPKの餌食となった、哀れな犠牲者が数名。

 

「和解の余地なく、派遣されたプレイヤーは全員殺されています」

「……そうか」

 

 もはや彼らは、狂人と称するしかないモノなのだろう。

 血盟騎士団に所属する彼らは、全員が憂鬱そうに、そして理解の及ばない、理性のタガを外したレッドプレイヤー達に、畏怖の感情を抱く。

 止まられるものならば、止めたい。

 しかし、彼らのように、最前線の攻略を担うプレイヤーにとって、一日は決して、無駄に消費することの出来ない資材そのもの。

 日にリポップする数が限られ、得られる経験値にも限界があるSAOのシステムにおいて、解決の目処がない事件。それの一つや二つに、人員を割く余裕がない。

 なかったのだが――

 

「PKの被害数は以前よりは減った…が、悪質な攻略妨害が目立つな」

「本格的に資源の収集もままならなくなって来た。…もう見て見ぬふりはできないのだろう」

「…では?」

 

 その言葉を区切りに、彼らは一人の男へ、視線を向ける。

 その男は、現アインクラッドにおいて最強とされ。

 この場において、地力でも権力でも、全ての頂点に立つ彼が、言葉を発する。

 

「…では、そうしよう」

 

 ――血盟騎士団団長、ヒースクリフ。

 彼の言葉が意味することを、部下たちは瞬時に理解した。

 もはや交渉も、和解も不可能――

 

「…《聖竜連合》、そして《攻略組》にも声をかけてくれ」

 

 選ぶ手段は、殲滅。

 彼の指揮により、ラフコフ討伐戦の狼煙が上がり。

 同時に、SAOプレイヤーにとって、それは忘れようとも忘れられない。

 脳に焼き付く地獄絵図の始まり、そして"彼"にとっての天啓が訪れることを。

 この時ヒースクリフ…――茅場晶彦も知らなかったのだ。




 導入までバッと
 その後はバーッとクズ斬りオンパレードです。
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