【ソードアート・オンラインRTA】ラフコフ殲滅Any%『■狂者』   作:GARAKU

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小説パート「破☆壊」
RTAパート「実況がー!実況要素そのものがー!」 


21話.閉館

「ったくこの世には……」

 

 明確に向けられる、純粋に煮詰まった殺意の怒り。

 

「生かしちゃおけねぇ」

 

 最後に、モルテの視界に移ったのは。

 

「――クズばかり」

 

 両断された、己の下半身が飛ぶ光景。

 

 

 

 

 チンッ――

 一人、またガラクによって殺された。

 たとえ悪人だろうと、人殺しを楽しむような連中相手だろうと、決して踏み越えてはいけない一線。

 それを踏み越え、蹂躙し、それでも彼らは、ラフコフや攻略組も共通して、彼と過度な接触をしようとはしなかった。

 何故なら、彼は()()()()()から。

 だから彼を、プレイヤーの大半…それこそ第一層にいる者たちは、恐れなかった。

 危害を加えなければ、敵意を向けさえしなければ、それでいい。

 

「………………ぁ」

 

 その声は、誰が漏らしたものなのか。

 刀を抜き、いともたやすく、プレイヤーの身体を両断した彼は、俯き、目を前髪に隠して立っている。

 鋭利に輝く、刃物の如きその気配。

 だが、先ほどの変貌。覚醒とも呼ぶべき進化と、そして最悪の種明かしによって、今この場を支配しているのは――恐怖。

 

 機械的な何かでもなく。

 ただ本能のままに、地を流離う亡霊などでもなく。

 彼は、一人の人間だった。

 己の意思で、明確な殺意を抱き、殺す人間――

 

 もはや、正体が知れた今の彼から、逃げようと思う者などいない。

 それどころか、本来なら敵ではない…『悪』のカテゴリに入っていないキリト達ですら、その背筋に、冷たい予兆が走るのを感じた。

 カチンッ――

 再び、彼の手に握られた、殺戮の兵器が音を上げる。

 それが次に、向けられる先は――

 

 

手前全員――テメェら全員――

 

 ――この場にいる、全ての《ラフィン・コフィン》の一員。

 

――殺す――

「ッあ――」

 

 最初に、悲鳴を上げたのは、不幸にも彼の直線状にいた男。

 彼は抵抗も、己に襲い掛かる"死"に対しての恐怖すら、満足に抱くことができず、貫かれる。

 捉えたのは首。――そのまま、横に一閃し、アバターの頸椎に当たる箇所の半分以上を破壊。

 クリティカル判定も追加され、HPカーソルは一瞬でゼロになり、消失。

 ――だが。

 

「あ、ッ、くがァあああ"ああ"あ"――ッ!!!!」

 

 思わず耳を塞ぎたくなるような、あまりにも痛々しい悲鳴だった。

 相手は人殺し。今までに傷つけ、殺し、重ねてきた罪の数々は、一つや二つではないだろう。

 だが、仮想世界でなければ、血を吐き出しているであろう、その張り裂けるような叫びに、思わず憐憫の意が湧いた。

 そもそも、アインクラッドは圏外、そして圏内エリアだろうと関係なく、常にペインアブソーバーが働いている。

 これのおかげで、たとえアバターが欠損しようと、斬り付けられようと、あくまでも鈍痛や痺れる感覚が走るだけで、現実の痛みには到底及ばない。

 

 だが、彼のこの叫びはなんだ?

 まるで、()()()()()()()()()()()()――

 

 彼の悲鳴は、数秒も持たなかった。

 本来よりも早く、アバターの消失反応が始まったことで、彼が痛みを叫び切るよりも前に、完全にこの世界からログアウトしたのだ。

 ――最も、ログアウトしたところで、彼に"生"の望みは存在しない。

 仮想世界を塗り替える心意、怒りの波動に呑み込まれ、100の力で伝わる斬撃の痛みによって、彼は現実世界で、()()()()()()()のだ。

 たとえ、奇跡的に息を吹き返す可能性が残されていようとも、SAO本来の隠された仕様である、ナーヴギアによる脳の破壊が、万が一を完全に消し去っている。

 つまり、詰みだった。

 それを嫌と言う程に思い知らされ、残された者たちは、呆然とする。

 そして、ガラクが再び動き――

 

「あ、ぁ……」

 

 ――自分たちは、どこで間違えたのだろう。

 視界の隅々で、もはや残像しか残さない程に煌めく斬撃の雨。

 部屋の中を、四方八方に走る白い幾千の剣跡。

 まるで雨のように、絶え間なく視界に焼き付くものが、一人のプレイヤーが()()()()()であると、誰が思えるだろう。

 ガラクのアバターを構成するポリゴンは、常にブレ続けており、カーディナルがエラーを引き起こしている。

 それが腕を、首を、胴体を時に、武器や防具ごと断絶し、宙を舞う。

 ショッキングで、そして無常な光景ではあるが、これでもまだ、仮想世界だからマシなのだ。

 もしも、これが現実世界で行われていたとしたら――辺りは血と臓物で、真っ赤に染まっていただろう。

 彼が持つ異次元の強さ。

 確かに恐ろしい。実際に何度も、自分たちは彼らに邪魔をされ、何度も何度も仲間を殺された。

 しかし所詮は、それはある程度いなせるだけの、対処法を知った怪異のようなものでしかなかった。

 だが、それが何もかも間違いだったのだ。

 偽狂者は、彼はずっと、自分たちに対し、明確な殺意を抱いていた。

 

「あ――」

 

 一閃。

 速度が落ちることはなく。

 むしろ、人を殺せば殺す程、その太刀筋はより洗練され、無駄が更に無くなっていく。

 ――成長している。

 彼の変貌、そして自我の有無の真実を知った者たちは、その事実に戦慄し、息を吞む。

 ――彼は、今も尚強くなり続けている。

 一足先に逃げようとした者は、後頭部から目にかけてを貫かれ、絶叫して死亡。

 仲間を盾に、必死に身を隠していた者は、盾にされた者と一緒に、仲良く首を落とされて死亡。

 あまりにも容赦のない、そして理不尽としか言えない殺戮を前に、キリトを含む、討伐部隊のメンバーは全員、言葉を失っていた。

 

 30人以上いた筈の部屋には、もう三人しか残されていなかった。

 

 PoH、ジョニー・ブラック、そしてキリトと向かい合う位置にいた、赤眼のザザ。

 それ以外の幹部、そして木端のラフコフ一員は全て、ガラクによって殺された。

 

「――ハハッ」

 

 笑い声が聞こえた。

 ジョニー、そしてザザ。残された二人だけが、その声に込められた、普段の彼らしくない感情に、気づく。

 

「HAHA…そーかよ」

 

 強いのは確か。

 だが結局は、心が潰れた狂人に過ぎない。

 以前まで、PoHにとっては、ガラクとはその程度の、それほど興味を惹かれない、むしろ軽蔑する部類の人間に過ぎなかった。

 もはや愛に匹敵する、キリトに向ける同種意識、そして執着に劣る、厄介なものに対する嫌悪。それだけだった。

 だが違った。

 まんまと、自分たちは騙された訳だ。

 ――ここまで、真っすぐに自分を殺したい(憎しみ)を向けられるとは。

 

「――最高だぜ、ガラク」

 

 PoH――ヴァサゴ・カザルスはこの時。

 産まれて初めて、キリト以外の人間に対して、同種のような親しみを覚えた。

 それは両者が互いに向ける、怒りと憎悪のベクトルが、似ていたからかもしれない。

 ガラクはクズを、ラフコフを含む全ての悪人を。

 PoHはラフコフすら、東アジアの人間を蔑み、嫌う。

 決して相容れないからこそ、互いにぶつかり合い、化学反応を引き起こす殺意の波動。

 PoHが一歩、前へ進むと同時に。ガラクも動く。

 

 ヴァサゴ・カザルスは知らない。

 キリトに対して己が向ける感情。それは憎悪をぶつけ、汚したいという嗜虐心だけでないことを。

 ――キリト、桐ヶ谷和人の横顔がかつて、一度だけ見た、腹違いの己の兄に似ていたことを。

 

 ――走馬灯。

 そう呼ばれる現象が、一歩前に出た途端、彼の脳裏に迸った。

 

 

 

 

 ヴァサゴ・カザルスは知らない。

 自分が今、ガラクに向ける既視感が、キリトに向ける感情とは違うことを。

 ――十数年前に、任務に関わらない、己の目に留まったことを理由に、殺した人間。

 ――自分が()()()()()()()()()、その顔が、ガラクとそっくりだったことを。

 

 

 

 

 斬り合いは、数秒しかもたなかった。

 鉄砲玉扱いとはいえ、犯罪組織に身を置き、数え切れない程の人間を殺して来た彼が、まるで赤子の手をひねるように翻弄される。

 モンスターを斬るとスペックがダウンし、プレイヤーを斬るとスペックアップする《魔剣》である友切包丁(メイト・チョッパー)

 それはPoHの愛用武器でもあり、何十何百とプレイヤーを斬り続けてきたことで、その単純な斬れ味は、アインクラッドでも最強レベル。

 だというのに、その全てが技術で、自分よりも遥か上の『殺意』に圧倒される。

 ありえないことだった。

 何の経験もない、銃すら持ったことがない日本の餓鬼相手に、自分が何もできていない。

 こちらが動くよりも前に、彼は既に行動を終えていて、気づいた時には数か所、庇い切れなかった箇所に傷を負う。

 HPカーソルがどんどんと減り、それどころか、何のカラクリか彼は、自分に対して『痛み』を与えてくる。

 システムすら上書きし、剣を振るって傷と痛みを味合わせるその姿。

 乾いた笑いが零れてくる。

 段々と近づく『死』に対し、恐怖など抱く筈もない。

 ただ、呆れて笑いしか出てこないだけだ。

 次第に、PoHの動きを全て"見た"ガラクにより、その均衡が崩れ始める。

 反撃と防御。そんな戦いの基本が、もはやただの足掻きに変わり、敗北まであと一歩…そんな時だった。

 

 ガキンッ!と、一際鈍い音が走る。

 真っ二つに折れた友切包丁(メイト・チョッパー)を見て、次に刀の切っ先を、こちらに真っすぐ向けるガラク。

 この時、自分が抵抗などできていなかったことを、PoHは知った。

 何度も何度も、ミリ単位で衝撃を加えられた一点に、今までのダメージが蓄積していたのだろう。

 自分が必死で武器を振り回し、いなしていたと思っていたのは全て、彼の予想通り。

 むしろ自分は、ガラクの思い通りに、まんまと武器を必要以上に消耗させ、《武器破壊》の手助けをしてしまっていたのだ。

 

 ――刹那。打ち上げられたPoHの身体、喉をガラクが貫く。

 待っているのは、『死』――

 

「――ハッ」

 

 喉を焼かれるような、想像を絶する痛みの中、PoHは笑っていた。

 まだ動く。

 まだ動ける身体を、腕を手繰り寄せ、ガラクの持つ刀を掴み、身体に力を込め、空中に固定。

 そして、宙を舞う己の愛武器である、友切包丁(メイト・チョッパー)の破片を、口に咥えて――

 

「――くたばれジャップ(クソ野郎)

 

 アバターが消失する寸前。

 PoHは、己が口に咥えた武器の破片を、一気にガラクに向けて解き放つ。

 それは文字通りの、正真正銘の捨て身攻撃であった。

 武器を抑えられ、まさに1秒後、この世界から完全に消える筈の彼が、最後の足掻きとして残した遺恨。

 それは皮肉にも、未来で《閃光》の名を冠する少女の為に戦った、黒の英雄と同じもので――

 

………

 

 初めて、ガラクは傷を負った。

 右目に走る、赤いライトエフェクトと、彼のHPカーソルの上に立つ、欠損アイコンがそれを物語る。

 PoHのアバターが、そして彼が最後まで手にした友切包丁(メイト・チョッパー)が遅れて消えて、再び場に沈黙が降りる。

 

「…………嘘、だろ」

 

 その言葉を零したのは、《血盟騎士団》の衣装を身に纏う、傍観していた男の一人であった。

 一言。だが今この現状を表す、様々な意思や複雑な感情に相応しい言葉は、これしかないだろう。

 アインクラッドを恐怖に陥れた、全ての元凶の呆気ない最後。

 あれだけ厄介だと思っていた、人殺したちを難なく殺す、それ以上の殺人鬼。

 ――だが、彼は違った。

 

………――

 

 ――今にして思えば、もっと早く気付くべきだった。

 何故、自分たち討伐部隊の襲撃時間が、こうもピッタリ予想され、迎撃されたのか。

 冷静に考えれば、答えにたどり着ける筈だった。

 

 自己防衛とはいえ、プレイヤーを殺した焦燥。

 目の前で起こった、見るに堪えない殺人と絶望の叫び。

 

 これらが、キリトを含む、彼らの判断力を奪っていた。

 チンッ――

 

「あ"、っ」

 

 一閃。

 間を空けることなく、再び鳴り響く刃物の音。

 それが意味する事、それ即ち、彼がまた動き、人を殺したこと。

 そしてその標的は――《血盟騎士団》の一人。

 

 ガラクが殺すモノ。

 

 それが意味すること――内通者の存在に、錯乱している彼らは気づけない。

 

「――ッ!?」

 

 未だ落ち着きを取り戻せていない彼らは、それへの反応が遅れた。

 一人、その首が地面に落ちるよりも前に、ガラクは次の行動に移っていて。

 再び、刀の切っ先をもう一人の裏切り者(クズ)に向けて――

 

「――ッやめろガラク!」

「ッ!」

 

 その寸前、二つの影が左右から襲い掛かる。

 チャキ――

 再び抜かれる銀色の刃と、左手に持つ鞘が宙に線を刻む。

 その軌跡がそれぞれ、キリトとアスナの両手首を打つ。

 

(コイツ……!やっぱり最初と比べて…!)

 

 僅かに仰け反り、生まれた時間で、彼は刀を逆手持ちに切り替える。

 右手に持つ逆手持ちの刃が、キリトの持つ《エリュシデータ》の側面を正確に狙い撃つ。

 左手の鞘は、アスナの持つ《ランベントライト》の持ち手を打つ。

 そのどれもが、死角から襲い掛かっている攻撃が相手なのにだ。

 

 こうして斬り合いを続けている間にも、彼は無限に成長する。

 その悲しい才能を相手に、少しでも時間を稼げるよう、必死だった。

 

 身体を前後反転させたガラクは、右側から襲い掛かる、《ランベントライト》による神速の尽きをいなす。

 刀の柄を使い、下から細剣の側面を擦り上げるようにして、刺突のベクトルを逸らしたのだ。

 同時に、左手の鞘を使い、彼は残る脅威――キリトの顎を正確に狙い撃ち、頭を揺らす。

 

手前

 

 連撃を全ていなし、生まれた僅かな空白を狙って、ガラクが疾走する。

 再び、あのアバターを構成するポリゴンがブレる程の超加速。

 それの勢いに身を任せ、彼は今、意気消沈するジョニー、そしてザザよりも更に上。

 

 今、この場にいる最大の『悪』に向かって、義侠の刃を向けていた。

 

 ――刀と、盾がぶつかる金属音が鳴り響く。

 

「――ほう」

 

 彼の次の標的は――ヒースクリフ(茅場晶彦)




 実は主人公の母は、過去PoHに殺されてたりする。
 なので本人は気づいていないが、これで復讐は達成。

 次回(明日)最終回。
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