仮面ライダーヒューム   作:熊澤しょーへい

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No.9 MUSICIAN/共に戦う者

 いつもは子供たちの話し声で賑わっている日野森学園の広間は、それとは真反対の異様な空気感を醸し出していた。大人の男女が机を挟んで対面している。男が一人会話を続け、女は複雑な表情でそれを聞いている。そしてもう一人、青年が縮こまるように一人冷たい床に正座していた。

 

「というわけで、俺もこいつの秘密を知ることになったってわけ」

 

「・・・」

 

 亮介が先日起こった一連の出来事を話し終える。明奈は無言のまま机を指でトントンと叩く。視線は正座している海翔の方を向けられている。絶対零度の視線を直視できず、海翔は下を向いたままだ。

 

「・・・なるほどね。状況は概ね理解できたわ」

 

 明奈は机をたたく指を止める。

 

「海翔?私がどうして怒ってるかわかるかしら?」

 

 優し気に声を掛けられた海翔はピクッと子供のように反応する。そこに仮面ライダーとして戦いに身を投じる戦士の姿はどこにも無い。日野森学園におけるヒエラルキーが如実に表れている。

 

「・・・人目も憚らず、変身した、からです」

 

 明奈からあふれ出る怒気に震えつつも海翔は何とか答えた。その答えに不満があるのか、明奈は深々と溜息をつく。

 

「違うわよ。話を聞いていた限り変身したのは正解よ。多分ガレスとかいう仮面ライダーだけだとジリ貧になって犠牲は大きくなったでしょうね」

 

 明奈の言動が少し優しくなり、海翔はホッとする。明奈は本気で怒らせてしまうと本当に怖い。昔一度だけ明奈の逆鱗に触れたことがあったが、その時は一か月ほどまともに口を効いてくれなかった。そのくせすれ違いざまに正論という言葉のナイフでめった刺しにしてくるのだ。何とかそのルートは回避したようで海翔は安堵する。

 

「ただ!」

 

「―――ッ!」

 

 海翔の気のゆるみを察知したか、明奈は声を張り上げた。不意打ち気味だったこともあり、海翔の背筋が伸びる。

 

「生身で戦う必要は無かったでしょ!」

 

「・・・なるほどそっちか」

 

 明奈の怒りの原因を聞いて、亮介が得心がいった、という風に呟く。仮面ライダーに変身したならば防御力も攻撃力も生身のソレよりも格段に上昇する。今回の敵は偶然生身でも対応できたが、相手が違えば大怪我では済まなかっただろう。またしても病院送りということもあり得た。

 

 それだけではない。聞く限りガレスは海翔とヒュームをイコールで結びつつあるようだ。キッカケの一つは海翔の生身での戦闘だ。そのことも明奈の怒りに拍車をかけている。

 

 明奈の口から正論が放たれ続け、海翔が助けを求めるように亮介に視線を送る。確かにこの状況になっているのは亮介にも非がある。友人を助けようと亮介は口を開く。

 

「なあ、反省してるようだs―――」

 

「アンタは黙ってなさい」

 

「アッハイ」

 

 ぴしゃりと明奈に遮られ亮介は閉口する。悲しいかな、学生時代の経験から亮介も明奈に頭が上がらない。半眼で睨みつけられるだけで何もできなくなる。心の中で親友に謝罪しながら亮介は明後日の方向を向いた。

 

 海翔は絶望したような表情を浮かべ、そんな海翔に明奈が溜息を吐く。

 

「・・・まあいいわ。結果的には海翔も亮介も生きて帰ってくれたし。それよりも今後のことを話しましょう」

 

 ようやく床から解放され、痺れる足に涙目になりながら椅子に腰かける。

 

「・・・相変わらず難儀な性格してるよな」

 

「何か言った?」

 

「いや、なんでも」

 

 亮介はポツリと呟く。少しでも二人と関わると明奈が海翔に対して複雑な感情を持っていることは簡単にわかる。恋愛感情に疎い海翔と、クソデカ複雑感情を抱いている明奈。この二人の関係に悶々としたことは一度や二度ではない。

 

 明奈は耳聡く呟きを拾ったが、亮介は誤魔化すように声を上げた。

 

「で、海翔の秘密を知ってる奴は俺と明奈の二人だけか?」

 

「そうなるわね。・・・誰にも話さないわよね?」

 

「そんな訳ないだろ?親友の秘密をむやみに広める趣味はないぞ?」

 

 明奈は亮介を疑うような視線を向け、亮介は呆れたように言う。

 

「知ってるわよ。念のためよ」

 

 明奈も亮介の性格は学生時代に熟知しているつもりだ。海翔を警察に売ったり承認欲求の為にインターネットに仮面ライダーの情報を書き込むような人間ではない。

 

 二人の会話を聞いていた海翔はポツリと呟く。

 

「・・・いや、祈里さんも知ってるよ」

 

 唐突にもたらされた新情報に、二人は目を見開いて海翔の方を見る。そんな二人と態度に海翔は首を傾げた。

 

「あれ、言ってなかったっけ」

 

「「言ってないわよ(ぞ)!」」

 

 二人は前のめりになって海翔の言を否定する。明奈は今すぐにでも口止めしに行こうかと立ち上がったが、亮介によって静止させられる。

 

「まあ待てって。海翔の正体が広まってないだろ?少なくともやたらめったらに秘密を明かすつもりはないんじゃないか?」

 

 明奈も納得したのか、再度席に戻る。

 

「それにしてもよりによって有村神父か・・・あの人苦手なんだよな」

 

「そうなの?いい人なのに」

 

「それは分かるぜ?でもな、なんか底が見えないんだよな」

 

 三人の頭の中に微笑んでいる祈里の姿が想像される。いついかなる時も張り付いている笑みは、胡散臭いと言われればそう感じてしまう。同居している優月も似たようなことを言っていたな、と海翔は思い出していた。

 

『あの人、自分のことを何にも言わないんっスよ!過去はともかくとして、せめて好きなもの一つや二つ言ってもらわないと夕飯を作るときに困るんっスよ!』

 

 と言って憤慨していた。

 

「じゃあ祈里さんには後で話を付けておくとして・・・」

 

 海翔がそう口にしたところで突然着信音が鳴り響いた。海翔と明奈の視線がそれぞれ設置型の電話とスマートフォンに向く。だがその二つは発信源ではないようで、沈黙を貫いている。

 

「悪い、電話だ」

 

 着信音の主は亮介のスマートフォンで、少し会話した後慌てた様子で席から立ち上がる。

 

「悪い、親父から呼び出しだ。そこに置いてる奴は差し入れだから好きに使ってくれ。それじゃあな!」

 

 急いだ様子で出ていく亮介を二人は呆然と見届けた。椅子に置かれたビニール袋の中にはバイクの手入れ用品がギッチリと詰まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『白い仮面ライダーが所有しているとみられるバイクを特定した』

 

 休暇を終えた詩音が管制室に呼び出されるや否や、耳を疑うような情報がもたらされた。巨大なスクリーンには議題となっている白いバイクがナンバープレートを含めて写っていた。

 

『推定車種はホンダのCBR250FOUR。ナンバープレートから購入者の特定に成功した。それが彼だ』

 

 優成がそう言うと、スクリーンの一部に新たな写真が写し出される。神父服を着こなし、首から十字架(ロザリオ)を吊り下げた微笑みを浮かべた男。端から見れても荒事に向いていると思えない人物だ。

 

『名前は有村 祈里。有村教会の現代表で唯一の神父だ。彼を特定調査人物とし、瀬良隊員、君に証拠の確保と彼に対して情報収集を行ってほしい』

 

 詩音は零課に所属する前は機動隊に配属されていた。そのため人物の調査を行うには不適当ではないかと感じたが、優成がその点を考慮していないはずがない。適当であるとされた理由があるのだろう、と考え了解の意を示した。

 

『相手が神父だからといって油断するな。我々の情報網をもってしてもこの男の過去を暴き切ることはできなかった』

 

 曰く、約十年前、有村教会の先代代表の養子となった地点までは遡ることはできたが、それ以前の経歴や有村 祈里と名乗る前の名前すら特定することができなかったとのことだ。

 

 零課は警視庁に所属してはいるが、指揮系統は独立している。行政に対しても独自の情報網を張り巡らせており、人ひとりの人生を追うことなど動作もないはずだった。それをもってしても祈里の半生を特定することができないでいる。間違いなく異常だ。

 

『相手もプレイスターか、その協力者である可能性がある。警戒して向かえ』

 

 そうして現在、詩音は有村教会の目の前にいた。涼しくなってきたことを利用して一回り大きな上着を着、その下にインベスティドライバーを装着している。相手が本当にプレイスターだった場合にすぐさま対応するためだ。

 

「ここが有村教会ですか・・・」

 

 居住スペースと合わさっているためか、周囲の建物よりも一回り大きい。しかし記憶の片隅にある地元の協会と比べるとこじんまりとしており、行き先が教会ということで身構えていた詩音はいささか拍子抜けした。

 

 警戒しつつ備え付けられたインターホンに指を伸ばす。相手がプレイスターならどこから攻撃されてもおかしくはない。周囲が静寂に包まれているためかそれとも緊張の為か、詩音の心臓がひどくうるさく鳴り響く。

 

 しかしそんな詩音の緊張とは裏腹に、教会の入り口は一向に動く気配はない。それどころか教会の中に人がいるような気配すらない。

 

 訝しんだ詩音は周囲を散策することに決めた。情報によると祈里は近隣住民と友好な関係を築いている様だ。もし捜査の手が及ぶことを察知して逃げたのだとしても、住民は彼の居場所を知っているのかもしれない。知らなかったとしてもここで立ち往生するよりも何倍もいい。

 

 散策するうちに住宅街の一角から物音が聞こえた。情報を聞き出そうと発生源の方へと足を向けた。どうやら何かの施設のようで、周りにある住宅の二倍ほどの大きさがある。表札には「日野森学園」と書かれている。

 

「・・・よっし!洗車完了!後は?!」

 

「えっと次はサビ取りで、その次はタイヤの空気圧の確認。で、それが終わったら・・・」

 

「うっ・・・やることが多いね・・・」

 

 男女の話し声が聞こえる。男の方の声に既聴感を感じつつも中の様子を覗き見る。広々とした庭の一角では男がバイクの手入れを行い、女はスマホを見ながら男に指示を出していた。

 

「―――ッ!」

 

 詩音は驚愕で漏れ出そうになった声を必死になって押さえつける。彼らが手入れをしているバイク、それは詩音が探しているバイクだったのだ。

 

「―――?」

 

 詩音の気配を感じたか、海翔が詩音の隠れている方を振り返る。

 

「どうしたのよ?」

 

「視線を感じたんだけど・・・気のせいかな?」

 

 既に詩音はその場から立ち去っており、影も形も無かった。詩音は足早に歩きつつ思考をまとめる。

 

(やはり彼がヒュームなのですか・・・)

 

 先日のデパートでの件でもしかすると、とは感じていた。引っ掛かる点は幾つかあるが、正体は彼で間違いないだろう。

 

 持っているドライバーについて、ヒューマンレコードカードを始めとする所持しているレコードカードについて、戦いの技術は何処で身につけたなどの疑問点は残る。だが詩音にとってそれは考量するに値しない。それに―――

 

『―――あれらは、もう既に人間じゃない』

 

 先日詩音の目の前から立ち去るときに彼が残したセリフ。詩音らよりも間違いなくレコードカードについて、プレイスターについての知識がある。

 

 思考しながら、詩音の足は人気の少ない路地裏へと向けられる。表通りから十分に離れた地点で詩音は唐突にインベスティマグナムを取り出し、後方にいる人物のこめかみに当てた。

 

「―――おーこわ。もしかしたら思たけど、ホンマに気付かれてたんか」

 

 詩音の首にヒヤリとした金属の塊が当てられている。インベスティカリバーの刃が詩音の命に手を掛けているが、彼女の表情は全く変わらない。

 

「その銃降ろさへんか?レコードカードがあらへんと弾丸(タマ)撃たれへんやろ?」

 

「貴方こそ剣を降ろしては?レコードカードがないとただの鉄の塊でしょう?」

 

 お互いに数秒間にらみ合い、溜息と共に同時に武器を降ろす。

 

「最初から私を試していたのですね。妙だとは感じていました。捜査なら元探偵である貴方の方が何かと都合がいいはずです」

 

「そういうことや。例の事件、デパートは完全にプレイスターで封鎖されとった。にも拘らず白い仮面ライダーはデパート内で出現した。やから―――」

 

「同じくデパートにいた私が何かを掴んでいて、それを隠しているのではと睨んだわけですね」

 

「そういうことや」

 

 互いに探るように会話を続ける。その最中も相手の一挙手一投足を観察しており、戦場に居るかのような緊張感が漂う。

 

「「・・・」」

 

 流れる沈黙。それを破り、確信に踏み出したのは景虎の方だった。

 

「で、アレの正体は誰や?心当たりの一つや二つ、あるんやろ」

 

「・・・」

 

「・・・何や言わんつもりか?それやったら―――」

 

「空賀君、貴方は彼の正体を知ったらどうするつもりですか?」

 

 話を遮る詩音に景虎は少し鼻白むが、彼女の態度は真剣そのものだ。無視をすることもできたが、景虎は返答を返すことにした。

 

「そらカードとベルトを回収して、本人は生活に戻すんが理想やろ。もし奴らと関わりがあっても何体も怪物を倒してるんや。協力関係にはあらへんから最悪監視付きでも―――」

 

「そこですよ、私が不満に思っているのは」

 

「・・・キミ、まさかやけど」

 

「ええ。彼を勢力に組み込むべきだと私は思います」

 

 詩音の静かな声に激高したように景虎が掴みかかる。

 

「―――何を言ったか分かっとんのか!オレらの復讐に一般人巻き込む気か!?それは―――」

 

「貴方こそ!」

 

 殺意すら滲む景虎の気迫に一切怯むことなく、詩音は正面から景虎を睨みつける。

 

「貴方こそ忘れているではないですか!私たちが第一に行うべきことは怪物を殺すこと!彼は強い!それこそ私たちに匹敵するほどに!だから!」

 

「ちゃうやろ!これ以上犠牲を出さんために戦っとるんちゃうんか!アイツ等殺すために一般人を戦わせる?そんなん怪物とやってること同じやろ!」

 

 似ているようで交わることのない主張の応酬が続く。零課に所属するに至った経緯は千差万別。怪物を憎む心は同じだが、その過程に関する認識は人によってまるで異なる。

 

「ドライバーは回収する言うてるやろ!レコードカードも込みでオレらん中から適合者探せばええ!」

 

「彼が持つ全てのカードに適合者が現れるという保証はありません!それに彼は私たちには使えないカードすらも使うことができる!戦力としては十分です!」

 

 一般人をこれ以上巻き込むべきではないと主張する景虎、怪物を殲滅することを優先すべきだと主張する詩音。言い争いは白熱していき、今にも武力行使に移りそうな気配すらある。

 

 とうとう二人が懐からレコードカードを取り出そうとしたところで、路地裏に手の鳴る音が鳴り響いた。

 

「そこまでよ~、二人とも」

 

 夕夏が二人の間に割り込み、毒気が抜かれたように二人はバツが悪そうにレコードカードをしまい込む。そんな二人に苦笑しながら、スマートフォンを見せる。

 

「プレイスターが出たわ、それも三体。景虎君は私と一緒に来ること」

 

「・・・了解や」

 

 頭を冷やすように深呼吸し、景虎は路地裏から外に出ていく。

 

「あの、私は―――」

 

「ダメよ~、詩音ちゃん。今あなたと景虎君が組んでも連携なんて絶対にできない。だから落ち着くまで本部で待機、いいわね?」

 

「―――分かり、ました」

 

 不承不承といった風に詩音がうなずいたのを見届けて、夕夏は身体を翻す。一人になった詩音はゆっくりと外に出る。言い合いが遮られ、言い知れない倦怠感が全身に広がる。呆然としている詩音の目の前を一台のバイクが通り過ぎた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり力どころか記憶も戻っていないのか・・・」

 

 女王(クイーン)は一人呟く。閉じた右の瞼の裏には仮面ライダーと戦う同志(プレイスター)の視点が映っている。

 

「新たな三体の戦士も今の奴と同程度・・・やりようはあるか?」

 

 反乱を起こした当時、確認されていた約半分のレコードカードがこちら側にある。質や量を踏まえても仮面ライダーらを倒すには十二分な戦力がある。しかし―――

 

「だが問題は第三者の奴ら、か・・・」

 

 仮面ライダーらは彼女らにとっての目標ではない。「奴ら」はここ数年活動していないようで、痕跡すら見つけることができないでいた。「奴ら」が所持しているレコードカードが残りの半分。それだけを見れば戦力は五分だが、こちらには障害として仮面ライダーがいる上、「源泉」が抑えられているためレコードカードの枚数でも劣っている可能性がある。

 

「・・・」

 

 しかし仮面ライダーを放置したままでいいのかと言われればそんなことはない。特に注意すべきなのは白い仮面ライダー(仮面ライダーヒューム)。完全に力を取り戻してしまえば目的を達成させるどころではない。

 

「―――やはり今のうちに叩いておくべきだな」

 

 女王(クイーン)は立ち上がり、久方ぶりの戦場へと歩みを向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一帯に叫び声が響き渡る。惨劇が起こっているのは一か所だけではない。四方八方から同じような甲高い声が響く。大人、子供、老人・・・一切の区別なく死体へと変わっていく。

 

 三体の怪物がそれぞれの手段で殺戮を行っている。そのうちの一体、人のサイズまで巨大化させた猿のような怪物が逃げ遅れた男性に向けて襲い掛かる。

 

 怪物は奇声を上げて男性に飛び掛かる。怪物となった影響か、従来の猿よりも爪や牙が大きく、鋭くなっている。普通の人間であればなすすべもなく肉塊へと変わる。その証拠としてその凶器には血がべっとりとついており、周囲にはズタズタに引き裂かれた人間だったものが転がっている。彼もその一員になるかと思われたその時―――

 

 ギィン!

 

 寸前で甲高い金属音と共に防がれる。受け止めたカタナはそのまま力を受け流し、怪物の爪を真横へと誘導する。

 

「はよ逃げぇ!」

 

 刃狼の言葉に男性は青ざめながら何度も頷き大慌てで逃げ去った。その間も猿に似た怪物にインベスティカリバーを向け警戒していたが、刃狼の死角から細長い尾が鞭のように高速で迫った。刃狼がそれに気づいた時には既に目前に迫っていた。

 

「危ないわよ~」

 

「・・・助かったわ」

 

 しかし尾は寸前で槍によって弾かれる。ストラスが咎めるように刃狼に告げ、バツが悪そうに刃狼が呟いた。

 

 怪物らは脅威である仮面ライダーを優先すべきだと考えたのか、虐殺の手を止め刃狼とストラスに注視する。民間人たちはその隙に全員逃げたようで、戦場に一時的な静寂が訪れる。二人は並び立ち怪物たちを観察する。

 

 三体のうち一体の怪物は身体に蛇のような尾が巻き付いており、二股に分かれた舌がはみ出ている。

 

(MONKEY)(SNAKE)と・・・後一体は何かしら?」

 

 最後の一体は全身に螺旋のような突起が生えている怪物。足元に全身が引き裂かれたような死体が転がっている。

 

 奥に佇むその怪物の正体を探っていた二人だが油断していると見たか、モンキープレイスターとスネークプレイスターがそれぞれ刃狼とストラスに襲い掛かった。

 

 爪とカタナ、尾と槍がそれぞれ打ち合う。怪物化するにあたって硬度も強化されているようで、金属でできているはずのカタナや槍と重なり合っても欠けたり血を流すような様子はない。

 

 力は互いに拮抗している。ならば勝敗を左右するのは技量の差。レコードカードの力が強大なためかプレイスターに人間の思考力は残っていない。特に動物系や宝石系ではその傾向が特に顕著だ。ライダーシステムはその点でプレイスターとは異なる。レコードカードの力を利用はしていても、飲み込まれるほどには踏み込んでいない。レコードカードが持つ強大な力と人間の積み上げた戦闘技術の融合。それこそがライダーシステムの真価なのだ。

 

 このままいけば仮面ライダーが勝利するだろう。しかし中央に佇む異形がそれを許さない。

 

 刃狼はフェイントを織り交ぜながらモンキープレイスターを誘導していく。対応する知性などはなく、がら空きになった胴体にインベスティカリバーの刃が吸い込まれる。

 

「―――ッ!」

 

 ウルフレコードカードによるものかそれとも幾度も死線を超えてきた景虎本人の能力か。嫌な予感を感じた刃狼は寸前で刃を停止させ、その場から大きく飛びのいた。その判断は間違っていなかったようで、刃狼が立っていた地点が一抹の風と共にズタズタに引き裂かれた。

 

 コンクリートを容易く切り裂く威力もさることながら、真に恐ろしいのは攻撃が全く見えなかったという点。少しでも躊躇っていればなんの反応もできず地に伏せていただろう。

 

 モンキープレイスターを視界から外すことなく、元凶とみられるプレイスターを見る。怪物は異形の腕を掲げ、刃狼に向けて振り下ろした。刃狼に再び悪寒が走り、大きく転がることでその場から離れる。

 

 辛うじて不可視の攻撃を避けることに成功したが、それだけに集中することはできない。集中力が割かれた刃狼に向けてモンキープレイスターが攻勢を強める。

 

「―――ッ!厄介やな、ホンマに!」

 

 攻撃の性能もさることながら、視界から外したタイミングや目前のプレイスターの攻撃に対処しきって気を緩めた瞬間を狙ってくるものだから一層性質が悪い。ストラスは身に着けているカブトムシの鎧で対処できるが、防御力の低い刃狼は一撃が致命傷になりかねないので一瞬たりとも油断することができない。二人とも遠距離に対する攻撃手段を持ってはいるが、その余裕がないのが現状だった。

 

 

 

 

 

 一方詩音は離れた位置から海翔を追跡していた。つかず離れずの距離を維持しているお陰かそれとも相手に後方を気にする余裕がないのか、追跡に気付かれた様子はなく現場に向けて直進していた。

 

『これ以上犠牲を出さんために戦っとるんちゃうんか!』

 

 追跡しながら景虎の言葉を反芻する。先ほどの言い合いは明らかに詩音の方に落ち度がある。なぜなら彼の過去を知ったうえであの発言をしてしまったからだ。

 

 零課に所属するに至った経緯は千差万別。しかしただ一点において共通していることがある。

 

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 怪物(プレイスター)に家族を、恋人を、友人を、恩人を奪われた者達の集まり。その中では詩音の過去などありふれた物語の一つに過ぎない。

 

 もちろん景虎も同じような過去を抱えている。それを知ったうえで詩音は自らの復讐を優先するような発言をしたのだ。夕夏が介入するのが少しでも遅ければ戦闘に発展していただろう。

 

「―――ッ」

 

 詩音は思わず歯ぎしりをしてしまう。

 

 景虎の言うことはもっともだ。詩音も進んで一般人を巻き込みたいとは思わない。巻き込んだ末に詩音らのような惨劇が起こってしまうと取り返しがつかない。

 

 しかしヒュームという戦力を見逃すことはできない。彼が使用するドライバーは自分たちの扱うものとは根本的に違う可能性がある。ミュージシャンレコードカードが自分たちのシステムでは扱えない以上、セイバーレコードカードやアーチャーレコードカードも同じような構造だと想定される。にも拘らずヒュームは問題なく使用している点から、インベスティドライバーよりも使用に求められる条件が厳しい、あるいは彼にしか使用できない可能性もある。

 

 加えて怪物の中にはヒュームすらを圧倒するような化物(しょうじょ)がいるなど戦力の底が見えないところがある。貴重な戦力であるヒュームを逃す手はない。

 

(私は―――)

 

 悶々としながら追跡するうちに現場から少し離れた地点で前方のバイクが停止する。

 

 海翔はヘルメットを脱いで現場を見渡す。既に死者が出ている惨状に歯噛みしながらエヴィデンスドライバーを装着する。選択したレコードカードは剣士(セイバー)。奥に佇む刃を体中に纏ったかのような怪物が最大の脅威であると判断し、セイバーフォームの分厚い装甲を持って接近して一気に倒そうと考えたためだ。

 

「やはり貴方が・・・」

 

 丁度その時詩音が海翔に追いついた。海翔の顔と腰に装着しているドライバーを見て無意識に呟いた。すぐに霧散するはずであったそれはやけに煩く海翔の鼓膜を叩いた。

 

 戦場であるにも関わらず大きく動揺する海翔。しかしそれは詩音のほうも同じだった。

 

 どうやってそのドライバーを手に入れたのか、少女との関係は、去るときに残した言葉は一体どういう意味なのか、怪物について何を知っているのか。様々な疑問が喉を通り、言葉になる寸前で霧散する。

 

「・・・」

 

 互いに黙ったまま時が流れる。数秒かあるいは数分か。静寂を破ったのは詩音の方だった。

 

「貴方はどうして戦っているのですか?」

 

 混沌とする詩音の思考の渦からようやく言葉にできたそれは、とても陳腐で、ありふれた問いかけ。彼女自身、何故このような言葉を発したのか疑問に思ってしまう。

 

 しかし混乱する詩音に海翔は安心させるように笑みを浮かべる。

 

「目の前に助けを求めている人がいる。僕にはそれを解決するための力がある。それ以上の理由はありませんよ」

 

 そう言い放つと海翔は詩音に背を向けて歩き出す。目指す先は戦場。その足取りに死地へ赴くという動揺は全く見られない。

 

 あまりにシンプルな物言いに、詩音は呆気に取られる。彼の処遇について先ほどまで悩んでいたことを馬鹿馬鹿しい、と真正面から否定されたようで、毒気を抜かれたように苦笑を浮かべてしまう。

 

(ああ、そうでしたね。初めから貴方は―――)

 

 分かり切っていたことだ。自分にとって復讐がそれであるように、彼にとって「人を助けること」こそが決して他人に譲れないものなのだと。自分たちをダイヤモンドプレイスターから助けたのも打算などから来るものではなく、その心のまま行動したからだということを。

 

 詩音は思わず目を細める。自分では、いや彼以外の人類では決して成ることはできない輝きを目にしたような。「兵器」であることを受け入れた自分たちとは違い、ただ純粋に人のために戦うと言った姿は正しく「英雄」のようで。

 

《AUTHENTICATION!PROVE THAT WHO YOU ARE!》

 

 ならば自分の答えは決まった。復讐を成し遂げるための同志(どうりょう)ではなく、利用するだけの道具(へいき)でもなく。共に戦う仮面ライダー(なかま)として―――

 

 セイバーレコードカードを装填しようとした海翔の隣に詩音が並び立つ。

 

「・・・瀬良さん?!」

 

「何ですか。目の前で変身したので知っているでしょう?当然戦いますよ。あ、あと同僚らには貴方のことは秘密にしておきますので安心してください」

 

「それは嬉しいんですけど・・・」

 

 先ほどまでとは打って変わった詩音の態度に海翔は首を傾げる。詩音はまあまあ、と誤魔化してルビーレコードカードを取り出す。

 

「行きますよ、伊藤君!」

 

「―――ッ!はい!」

 

 二人は同時にレコードカードをそれぞれのドライバーに挿入する。

 

《SABER!REALLY?》

 

《Set Ruby》

 

 海翔の身体を護るように数多の幾何学文字が魔法陣のように展開し、詩音の正面にライダーシステムの設計図が投影される。剣士の幻影が海翔の右前に現れ、詩音の周囲には真紅の宝石が空中を漂う。

 

 それぞれのドライバーから鳴り響く音楽はデュエットのように互いに溶け合っている。構えを取った二人は同時に戦士となるための符号(キーワード)宣言した。

 

「「変身!」」

 

 海翔がアクティブローダーを、詩音がインベスティマグナムの引き金を同時に押し込む。

 

 幾何学文字が収束し、アンダースーツが形成される。体の両側面に血管のように一本のラインが刻まれる。

 弾丸によって宝石が削り取られ、鎧へと変化する。その過程で発生した残骸が降り注ぎ、黒いアンダースーツとなる。

 

《Burning, Breaking, Victory!》

 

《ALL RIGHT!YOU ARE SABER!》

 

《Kamen-Rider Gares Mode:Ruby!》

 

 半透明なヒトガタと重なり合い、ヒュームの身体にアンダースーツと同じ純白の鎧が生成される。

 真紅の宝石の鎧がガレスの全身に装着される。

 

《DON`T FORGET THIS ANSWER》

 

《System All Green》

 

 ヒュームとガレスにそれぞれ変身した二人は戦場へと駆け出す。狙いは奥に佇む刃を纏った怪物。援軍の接近に気が付いたようで、怪物は腕を振り上げる。

 

「―――ッ!」

 

 しかしその腕をガレスが光弾で狙撃する。寸分の狂いもなく撃ち抜かれ、怪物はヒュームの接近を許してしまう。

 

 ガレスは残る二体の怪物にも銃弾を喰らわせる。刃狼とストラスが一か所に集まり、二人を庇うように奥の怪物との間に立つ。

 

「お二人とも、そちらの二体は任せます。奥の一体は私たちが対処します」

 

 それだけ言って立ち去ろうとしたが、ふとガレスは足を止めた。

 

「・・・空賀君、先ほどは申し訳ありませんでした。貴方の過去を知っていながら・・・」

 

 視線を合わせることができず、少し俯きながら謝罪する。そんなガレスに刃狼はズカズカと近づき、低い位置にある彼女の頭をグリグリと撫でまわす。

 

「な、何するんですか!」

 

 仮面で隠れていて表情は伺えないが、不満そうに抗議の声を上げた。

 

「ええわ。あんときはオレも熱うなりすぎたからな」

 

「・・・前々から思っていてのですが、貴方、私のことを年下と勘違いしているのでは?」

 

「え、違うん?」

 

「違うわよ~、景虎君。貴方より二歳は年上よ~」

 

「嘘やろ!?」

 

「・・・」

 

 ストラスのフォローもあって、ガレスは殺気を何とか抑え込む。しかし何か嫌な予感を感じ取ったのか刃狼は身震いをする。身長が低いせいか年下にみられることはよくあることだが、嬉しいかと言われれば全力で否定する。後で刃狼を血祭りにあげることを誓いながらガレスはヒュームの援護へと向かう。

 

 一方のヒュームは怪物相手に苦戦を強いられていた。その理由は怪物が操る刃の厄介な特性にあった。

 

「―――ッ!」

 

 ヒュウ、という一抹の風と共に射線上にあったはずのエヴィデンスカリバーを無視して、ヒュームの鎧に傷がまた一つ増える。怪物の放つ刃は不可視なだけでなく、障壁をある程度貫通するのだ。その分威力は減衰されるようで、致命的なダメージには至っていない。

 

 攻防で生まれた隙を狙い、エヴィデンスカリバーを振るう。しかし怪物からヒュームに向けて強大な力が加わり、刃は怪物に通ることなく寸前で停止する。そしてその隙に怪物は腕を振り上げた。

 

「ヒューム!」

 

 ガレスがワザと注目させるために大声を張り上げ、怪物に向けて銃弾を撃ち込む。怪物は振り上げた腕を弾丸に向ける。銃弾は怪物に向かうにすれ徐々に減速し、エヴィデンスカリバーと同じく怪物に当たることは無かった。

 

 怪物にダメージは与えられなかったが、ヒュームにもダメージは無い。ガレスは銃弾を撃ち込みながらヒュームの元へ向かう。

 

「これも防ぎますか・・・」

 

 悔し気にガレスが呟く。ガレスは戦場の惨状からこのプレイスターの能力は(BLADE)切り裂き魔(RIPPER)のような斬撃に特化したものだと考えていた。しかしこれらの能力では剣撃や銃弾を防ぐことはできない。

 

「なら奴のカードは―――」

 

「多分ですけど、(WIND)だと思います!」

 

 ガレスの呟きにヒュームが反応する。それを聞いてガレスも得心がいく。風を圧縮することで銃弾やエヴィデンスカリバーを防いだのだろう。それに射線上にエヴィデンスカリバーがあったのにも関わらず貫通してヒュームの鎧に傷がついたことにも納得がいく。

 

 怪物―――ウインドプレイスターの攻撃がガレスへと降り注ぐ。しかし宝石の鎧を傷つけるには至らず、ガレスの攻撃も空中で受け止められる。

 

 ウインドプレイスターは業を煮やしたように手を上空に掲げる。手のひらから上空に向けて大量の風の刃が放たれる。それは刃狼やストラスを含めた四人の仮面ライダーに降り注いだ。

 

「詩音ちゃん、どうするのよ~」

 

「こっちはあんま持たんで!」

 

 特に刃狼とストラスにとって致命的だ。なにせそれぞれモンキープレイスターとスネークプレイスターも相手にしているのだ。不可視の刃だけに集中することはできない。

 

「―――ッ!」

 

 ウインドプレイスターに近い位置にいたヒュームとガレスには特に多い刃の雨が降り注ぐ。ガレスは宝石の鎧に守られていてほとんど無傷だが、ヒュームの方はそうはいかない。エヴィデンスカリバーを盾にしてはいるが、数秒ごとに鎧に傷が増えている。

 

(この状況を打開するには―――!)

 

「―――フッ!」

 

 ガレスは防御を捨ててウインドプレイスターに銃撃を浴びせる。腕を向けた方にしか風を発生させることができないようで、もろに銃弾を浴びて大きく怯む。

 

「ヒューム!」

 

 刃の雨が止んだところでヒュームに向けて一枚のカードを投擲する。慌てて受け止めたヒュームはレコードカードに刻まれている記憶(なまえ)を読み上げる。

 

「ミュージシャン・・・?」

 

「それを使ってください!」

 

 ガレスはウインドプレイスターに向けて移動しながら銃撃を浴びせ続ける。相も変わらず圧縮された風によって防がれるが相手はガレスに集中せざるを得ない。

 

「―――ッ!分かった!」

 

 この現状を打開できるようなカードなのだろう。ガレスの提案に頷いてミュージシャンレコードカードをドライバーに装填する。

 

《ONE MORE!PROVE THAT WHO YOU ARE!》

 

《MUSICIAN!REALLY?》

 

 エヴィデンスドライバーの音声と共に、従来と同じく半透明のヒトガタが出現する。セイバーやアーチャーとは異なり、どのような武器を持っているのかが読み取れなかった。しかし何かの楽器を持っていることだけは理解できた。

 

「再証明!」

 

 ヒュームは高らかに宣言し、アクティブローダーを押し込む。セイバーフォームの鎧が消失し、アンダースーツだけとなったヒュームの身体に半透明のヒトガタが重なり合う。

 

《ALL RIGHT!YOU ARE MUSICIAN!》

 

 現れたのは一枚の上着を羽織り、イヤホンマイクを装着したヒューム。生成された上着はアンダースーツと同じ白色で、ジャケットにもスーツにも見える不思議なものだった。

 

 ヒュームは虚空に手をかざすと一本のギターが生成される。従来の武器たちと同じく白色で、普通のギターとは異なりヘッドの部分にレコードカードを挿入する機構が備え付けられている。

 

《DON`T FORGET THIS ANSWER》

 

 仮面ライダーヒューム ミュージシャンフォーム。音楽家の記録をその身に宿したヒュームの新たな姿だ。

 

 ガレスの攻撃の合間を縫って、怪物がヒュームに向かって不可視の刃を放つ。慌ててヒュームはエヴィデンスギターを一つ掻き鳴らすと、発生した衝撃波が不可視の刃を完全に飲み込んだ。

 

「・・・なるほど!」

 

 得心がいったように呟き、ヒュームはギターの弦を弾く。ウインドプレイスターは自身の正面に風の壁を展開するが、防ぎきることはできず、戦闘で初めて傷を負う。

 

「―――ッ!」

 

 激高したのか、それともこのままでは敗北すると悟ったのか。防御をかなぐり捨てて上空に風の刃を放っていく。ミュージシャンフォームはアーチャーフォームよりも防御力がない。一つ一つがヒュームにとって必殺となりうる。

 

 刃の半分以上はヒュームに向かって落下する。避けようのない刃の雨に慌てることなく、エヴィデンスギターにエレクトリックレコードカードを挿入し弦を弾く。

 

《ELECTRIC!》

 

《ALL RIGHT!ELECTRIC PLAYING!》

 

 甲高い音が周囲に鳴り響く。まるでライブ会場にいるような感覚に陥り、状況が違えばずっと耳を傾けていたいと思ってしまう。四人の頭上から少し離れたところにスピーカーが形成され、ヒュームがギターをかき鳴らす度に黄色の衝撃波が発生し、上空の不可視の刃を次々と飲み込んでゆく。

 

 そしてウインドプレイスターは攻撃のために防御を捨ててしまった。それを見逃す二人ではない。

 

《ELECTRIC!》

 

 ヒュームはウインドプレイスターの背後へと回り込み、相手の身体にエヴィデンスギターのボディを押しつける。

 

《1-Reading,2-Reading》

 

 正面ではガレスがインベスティマグナムの銃口をウインドプレイスターの身体に当てている。銃口には真紅のエネルギーが集中しつつある。

 

 気づいた時には逃げ場はなく、ウインドプレイスターはただ絶望することしか許されなかった。ヒュームは挿入されているエレクトリックレコードカードをそのままドライバーに読み取らせて弦を弾き、ガレスは十分にエネルギーが溜まったのを確認し、ヒュームに合わせて引き金を引く。

 

《ALL RIGHT!MUSICIAN ELECTRIC PLAYING FINISH!》

 

《Ruby Shooting Breaking!》

 

「―――ッ!」

 

 背後からは破壊力を伴ったエネルギーが注入され、前方からは巨大な真紅のエネルギーがが叩き込まれる。ゼロ距離からの攻撃はいくら風を操ることができても対処はできず、そのままなすすべなく爆散した。

 

《Wolf Slash Hunting!》

 

《Beetle Strike Flying!》

 

 同時にストラスと刃狼も決着をつけていた。ウインドプレイスターによる援護が無くなったことで劣勢に陥っていたプレイスターたちは、それぞれ必殺技をもろに受けて爆散した。

 

「瀬良さん、これを」

 

 ヒュームはヒューマンフォームにチェンジし、ミュージシャンレコードカードをガレスに返却しようとするが、ガレスは頭を振って拒絶の意思を示す。

 

「いえいえ。これはい、・・・じゃなくてヒュームが持っていてください」

 

 どうせ私たちには扱えないので、と付け足す。渋々納得するが一方的に貰ったのではヒュームの気が済まない。ならばと先ほど拾い上げたウインドレコードカードをガレスに渡す。

 

「戦力が多いに越したことはないでしょう?」

 

 とは彼の言葉。仮面を下では先ほど詩音に向けたような笑みを浮かべているのだろうか。そう考えると断ることはできなかった。

 

 戦勝ムードが漂い、戦士たちの空気もどこか弛緩したものになる。しかしそれを打ち消すように甲高い拍手が響き渡る。

 

「見事だ。流石は巫女、技量までは衰えていないようだな」

 

 戦いはまだ終わっていない―――




どうも、熊澤です。

というわけで2号ライダーであるガレスがヒュームの正体を知ることとなってしまいました。

彼女は自分のことをどうしようもない人間、一歩でも間違えれば怪物らと同じものに成り下がると自覚しています。だからこそ自分たちのように私怨などではなく、誰かのために戦う彼は一層輝いて見えたわけです。

三体のプレイスターを退けた仮面ライダー達。しかし、戦いはまだ続きます!敵の幹部である女王(クイーン)と対面し、生きて帰ることはできるのか!?

感想・評価などいただけますと本当に執筆の励みになりますので、ぜひお願いします!
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