仮面ライダーヒューム   作:熊澤しょーへい

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二章開幕!

文字数少ないですがご勘弁を!


対峙する者達
No.13 ANOTHER/別の結末を求めたもの


―――■■■■年

 

 九州地方の北部のとある遺跡。一般には完全に隠匿されている―――もっとも、現在意味は成していないが―――に二つの足音が響き渡る。

 

 一人は長身で黒髪の女性。もう一人は短身の金髪碧眼の少女。どちらも同じ所属を刻む白衣を着ているが、焦げ目や切り傷で何とか形を保っている有様だ。

 

 遺跡の中は全くと言っていいほど整備されておらず、光も満足に届かないため足元の不安定さは自然の洞窟のそれに匹敵する。

 

 そんな最悪のコンディションの中、二人は目的の場所に向かって走る。二人の顔には不安や恐怖は一つもなく、ただ決死の覚悟だけが表情から伺い知れた。

 

 残り10%を切ったスマートフォンの明かりだけが二人の道を指し示している。数センチ先しかまともに見ることは出来ず、それも一時間もしないうちに消失するだろう。

 

 もう使う人はいないインターネットの中で探し出し、頭に叩き込んだ地図の通りに道を進んでいく。幸運にも後ろから迫ってくる気配はない。後は自分たちの運を信じるだけだ。

 

 走ること十五分、二人は目的地にたどり着いた。

 

 それは遺跡の最深部、過去に『封印の間』あるいは『降臨の間』と呼ばれた部屋だ。八畳ほどの広さの部屋には()()()()()()()が壁と天井にびっしりと刻まれている。そのどれもが考古学的な価値が計り知れないものだが、二人の目的はそれではない。二人は部屋の奥に鎮座している―――あるいは祀られている―――ものに近づいてゆく。

 

 そこにあったのは直径60cmほどの円形の『無』だ。そこには物体を形成する原子も光の媒体である光子も何も存在しない。ただ()()()()()()()()()が存在している。

 

 現代科学でもその正体や原理を説明することは出来ない。初めに『無』を見つけた者達も―――最高峰の研究者を何人も抱えていたのにも関わらず―――全く解明することができなかった。

 

 しかし、とある事象に関してのみ分かっていることがある。

 

 二人は背負っていたリュックサックから機材を次々と取り出していった。パソコン、USBメモリ、コネクタ、etc。どれももう使われることはない人の叡智の結晶だ。

 

 黒髪の女性はコネクタでパソコンととある機械を接続する。その機械は手のような形をしており、いわば機械仕掛けのガンドレッドとでも言うべき品だ。

 

 パソコンを操作し、ガンドレッドへとデータを入力してゆく。内容は()()()()()()()()()()()()について。時代、国、伝承か事実か―――それらの隔たりを無視して全てのデータを刻んでゆく。

 

 これらの情報が二度と人々に触れられることはない。その事実に郷愁めいたものを感じるが、キーボードを叩く手を緩めることはない。

 

 事前に入力を進めていたことも相まって、進捗は残り20%を切っている。はやる気持ちを抑えながら慎重に、しかし可能な限り早く二人は作業を進めていく。

 

 人工的な明かりが周囲を照らし、キーボードを叩く音だけがあたりに木霊する。経過した時間は一時間か、二時間か、はたまた―――。太陽の光どころか電波すら碌に届かない此処では知る由もない。

 

 不意に遺跡の入り口付近から大きな振動と共に爆発音が響いた。そしてそれを皮切りに大量の足音が彼女たちがいる奥深くに向けて近づき始める。

 

 焦りはある。しかしそれ以上に「ついに来たか」という諦めに似た感情の方が大きい。立ち上がろうとした黒髪の女性を金髪の女性が制止させた。

 

「―――いいんですか?」

 

「いいんですよー。私の役目は終わったのでー」

 

 金髪の少女はパソコンを閉じた。あたりには空になったUSBメモリが散らばっている。

 

「それにー戦闘なら私の方が向いているのでー」

 

「・・・」

 

 至極当然だ、という風に言い放つ彼女に、黒髪の女性は何も言うことができない。彼女の身体に巣くっている()()は着々と内側から蝕んでいる。人間の姿どころか理性を保っているのは奇跡と言ってもいい。

 

「その代わりにー、これ持っていきますねー」

 

 そう言って二つの武器を手に持つ。青いカタナと緑の槍。年季の入ったそれは互いに彼女の師の発明品にして友が使った武器だ。

 

 ―――そのどちらも既にこの世には居ない。

 

 金髪の少女は遺跡の入り口に足を向ける。二人を追う足音は徐々にだが確実に近づいてる。

 

「■■、さん・・・」

 

 思わず彼女の名前が口から洩れる。しかし何を言っていいのか分からず、続く言葉はその口から出てくることはなかった。

 

「―――何を言うべきかー分かりませんねー。」

 

 少女は脚を止めて女と視線を合わせる。少女はいつも通りの表情になるように出来る限り顔から力を抜いた。

 

「楽しかった、なんて言葉は不適切かもしれませんがー、この五年は悪くなかったですー。なんたってーこんなに可愛い弟子が出来たんですからー」

 

 そこまで言って照れくささが勝ったのか、再び死地へと歩みを進めた。

 

「それじゃあー、また何処かでー」

 

 そう言うなり答えも聞かぬまま少女は駆け出して行った。

 

 しばらくして遠くから戦闘音が聞こえ始める。それから極力意識を逸らし、女性はキーボードを叩き続ける。進捗は既に9割を超えている。

 

 唇から血が流れる。それを拭うことなく作業を続ける。

 

 間もなくしてデータの入力が全て完了する。彼女は機械仕掛けのガンドレッドを装着する。それは自分の身体に嫌になるほどフィットした。

 

 戦闘音は激しさを増している。

 

 彼女は機械で覆われた手を『無』に向けて突き出した。勢いに乗せて差し出されたそれは『無』と『現実』の狭間で制止した。

 

「―――ッ!」

 

 瞬間、全身に悪寒が走る。全身を隅々まで何者かに見られているような感覚に陥り、『無』へと伸ばした手を咄嗟に引っ込めてしまいそうになる。

 

 その衝動を何とか押さえつけ、手を境界線上に維持する。幸運なことに数秒で「見られているような感覚」は消失したが、その代償とばかりに嫌な感覚は伸ばした手に集約した。

 

 機械仕掛けのガンドレッドは徐々に分解され始める。破片は『無』へと吸い込まれてゆき、中心に至るころには塵一つ残さず消滅していた。

 

 問題はない。ここまでは―――追手が迫ることも含めて―――事前に予想していた通りだ。後は望んだ結果となることを祈るだけ。

 

「―――」

 

 ガンドレッドが完全に虚空に飲み込まれた時点で手を放す。一瞬でも遅ければ彼女の手も虚空に飲み込まれていただろう。そうなれば彼女の無事はともかく、実験は失敗だ。

 

 そうならなかったことに安堵したのも束の間、封印の間が光で埋め尽くされる。

 

「―――ッ!」

 

 発生源は『無』の中心部。思わず目を塞いだ女性は心の中で歓喜の声を上げた。

 

 光はすぐに収まり、『無』の正面には一枚のレコードカードが落ちていた。

 

 地面に突き刺さる数多の武器と、血塗れのまま戦場(ぼひょう)の中心で立ちすくむ人影。

 

 不吉なタロットカードにも見えるそれに刻まれている言葉を一瞥し、黒髪の女性は事前に用意していたレコードカードと真紅の銃を手に持った。

 

 いつの間にか戦闘音は止んでいる。

 

 手に持ったレコードカードには歪んだ時計の周囲に12の数字がバラバラに描かれている。レコードカードを傷だらけの銃へと読み込ませる。

 

《1-Reading》

 

 掠れた声が銃から聞こえる。最後の最後まで賭けだったが、何とかレコードカードを読み取ったようだ。

 

 後は最後の手順を完遂するだけ。逸る気持ちを抑えて照準を先ほど生成したレコードカードに合わせる。

 

《Time Shooting Transcend!》

 

 放たれた銃弾は寸分違わず標的に命中する。その瞬間、標的となったレコードカードは消え失せた。もうこの世界、時代には存在していない。

 

(後は()に届くことを願うだけ・・・)

 

 とそこまで考えて、願ってばかりだな、と苦笑する。

 

 とは言え彼女にできることは何もない。先ほど使用したレコードカードもどこかへと消失している。迫りくる足音の主に対して何も対抗策はない。

 

 どっと疲労感が襲い来るが、何とかして踏みとどまった。

 

 やがて女性の目の前に小柄な少女が姿を現した。

 

「あら、一人だけなの?(シャドウ)

 

「その名前で呼ぶな、この売女が」

 

 からかうような口調に対して、黒塗りのドレスを着飾った少女は吐き捨てるように言う。

 

 少女から濃厚な殺気があふれ出す。人を容易く殺せそうなそれだが黒髪の女性は全く動揺することなく、懐から煙草を取り出して一服までして見せた。

 

 余裕な態度に少女は忌々し気に舌打ちをするが、彼女が無防備であるのを見て表情をゆがめた。

 

「・・・どうだい、人類最後の一人になった感想は?」

 

 黒髪の女性は口から煙草を放し、フゥー、と煙を吐き出した。

 

「思ったよりも気楽なものよ。国宝指定間違いなしの遺跡で煙草を吸っても誰も叱らないもの」

 

 絶望した様子もなく冗談さえも言ってのける彼女に、少女のいら立ちは更に加速する。腕の一本でも切り落とそうと考えたその時―――

 

「―――ッ!?」

 

 突如視界にノイズが走った。

 

 壊れかけのテレビのように空間全体にノイズが広がってゆき、ブラックアウトしてゆく。

 

「・・・よかった、ちゃんと届いたようね」

 

 吐き出した煙草が地面に接する。その瞬間に煙草はノイズに包まれ、次の瞬間には影も形も無くなっていた。

 

 浸食は空間や地面だけでなく、二人の身体にも及んでいた。少女は既に身動き一つ取れず、力すらも使用することができなくなっていた。

 

「―――ッ!一体何をした、■■■■!」

 

 少女が自分の名前を呼ぶ。しかし既にその単語は意味を成さない。

 

 答える必要の無い問いかけだったが、()()()()()()()()()()()()()()()()。それまでの退屈しのぎとして応じることに決めた。

 

「さあ?ヒントはあなたたちが確保していない概念(レコードカード)で、手中に収めようと一時期躍起になっていたものよ」

 

「確保していない?そんなもの・・・まさか!」

 

 レコードカードは全て怪物たちの手に渡っている。それがこの世界の結末。にも拘らず女の言葉に心当たりを持てたのは少女が怪物たちの幹部であり、女王(クイーン)と独自に契約していたからこそ思い至れた結論。

 

時間(タイム)・・・!」

 

「そう。過去に送った()()()()()()()()()()()()()()()が過去の私の手に渡ったことで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の方が異端になった。その結果が―――」

 

 ―――これだ。

 

 崩壊する時間を止める方法はない。しいて言えばタイムレコードカードを使用することだが、『時間』という断定することのできない性質を刻んでいるため使いこなすことは不可能に等しい。加えてカード自体も時間を渡っているという噂もあり、神出鬼没を地で行く異端のレコードカードなのだ。

 

 少女は女の正気を疑った。下手をすれば自分自身どころか人類の存在すらもなかったことにしてしまう大博打。

 

 いや、これを博打と言っていいのか。少女の眼にはただの破滅願望者にしか見えなかった。

 

 少女自身も「狂っている」と言われる。だがそれ以上に目の前の女は狂気に飲まれている。

 

 既に遺跡は全てノイズに飲まれた。二人の身体も虚空に溶け始めている。

 

「―――人間、やはりお前たちは狂っている」

 

「とっくに知ってるわよ。だから私たちはこれを()()と呼ぶのよ」

 

 その言葉を最後に少女は呆気なくこの世界から消失する。夢までに見た仇敵の死だが、想像していたような歓喜は生まれなかった。

 

 少しの虚しさを抱いて、女もまたこの世界から消失する。

 

「さてと。期待してるわよ、私」

 

 ―――どれだけ繰り返すことになったとしても、必ず・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――あきせん、あきせんってば」

 

「―――ハッ!」

 

「うおっ、急に起きんじゃん」

 

 里奈の呼びかけに明奈は身体を跳ねて起き上がる。いつの間にか寝落ちしてしまったようだ。

 

 明奈は慌てて机の上の書類を確認する。寝ぼけて落書きしたり涎によってぐちゃぐちゃになってはおらず、ひとまず安心する。

 

 明奈がこうして書類の山と相対しているのは訳がある。それが先日海翔の正体が警察機関に露見したことだ。

 

 無事に敵―――ウォーリアープレイスターと言うらしい―――を倒せたものの、その後に待っていたのは海翔の処遇に対する怒涛の話し合い。全身に筋肉痛を超えた痛みを訴える海翔は一週間ほど使い物にならず、明奈が出張ることになった。

 

 詳細は割愛するが、海翔が警察機関に拘束されるような事態は避けることが出来た。最もその代案として「ある条件」を提示されたのだ。それを飲まないわけにはいかず、連日書類の精査に時間を費やしているのだ。

 

 勿論海翔にも手伝わせている。量の比率は平等だが、面倒そうなものは多めに押し付け―――もとい自発的にやってもらっている。

 

 書類仕事は苦手というわけではないが、ここまで面倒だと億劫になる。だから精神的に疲弊するのは当然であるし、血迷ったような発言をしてしまうのもまた自然なことなのだ。

 

「力、力が欲しい・・・」

 

「どんなよ」

 

「書類を一瞬で消し炭にできる力・・・」

 

「ウケる。ライター持ってこっか?」

 

「いやいい・・・」

 

 力なく答え、明奈は作業へと戻ってゆく。その頭の中には先ほど見た夢の内容など・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、外務省のとある一室にて。

 

「忙しい中よく来てくれたの、優成君」

 

 老人と若者、二人の男が机を挟んで向かい合う。一見すると年老いた父と成長した息子が対面している微笑ましい一場面のようにも見えるが、一帯を支配する空気がそれを否定する。

 

 その空気を払拭するために、老人は笑みを浮かべながら机に置いてある湯呑に手を付けた。

 

「呼んでおいてはなんじゃが、現場の方は問題ないのかの?」

 

「ええ、私が抜けたところで成立しなくなるような組織は作っていませんよ」

 

 和やかに会話のキャッチボールを続けるが、青年の眼は笑っていなかった。最もそれは老人も同様であるが。

 

「そんなことは良いでしょう?本題に移ってください」

 

 優成が老人―――現外務大臣である小野田 正之に話を促す。外務大臣は疲れたような、あるいは呆れたように息を吐きだした。

 

 二人は協力関係にあるがそれは裏での話。普段は何重にもわたって隠蔽されたルートを用いて情報のやり取りをしている。直接呼び出されたからにはそれ相応の出来事が起こったとみて良い。

 

「では単刀直入に言おうかの。―――一部の国がレコードカードの存在に気づきつつあるようじゃ」

 

「―――」

 

(なるほど、今度はこっちが活発になり始めたか)

 

 ウォーリアープレイスターを撃退して以降、怪物の仕業とみられる失踪事件は急激に減少した。怯えたのかあるいは戦力を蓄えているのか。推測することしかできないがひとまずの脅威は去ったと見ている。

 

「感づいたのはアメリカ、ロシアあたりですか?」

 

「加えて中国、イギリスもじゃ。その他の国も訝しんどるようだがの、その四か国がレコードカードを認識するのも時間の問題じゃろう」

 

 怪物と仮面ライダーの戦いの影響は簡単には隠蔽できない。死者、行方不明者を除いても多くの人が巻き込まれすぎている。そして今の時代にはインターネットという便利なものがある。情報操作はしているがいくつかの撃ち漏らしはどうしても発生してしまう。

 

 目の前の小さな老人は各国の大使館を通して現地の情報収集も行っている。情報の信頼性は高い。

 

「レコードカードが各国に渡ることになれば、必ず新たな戦争の火種になる。そうなれば()()()()以上の被害が出ることになる」

 

「分かっています。こちらからも人を出しましょう。多少強引にはなりますが情報の統制を行います」

 

 そう言って優成は立ち上がろうとしたが、外務大臣は手でそれを引き留めた。

 

 座るようにというジェスチャーに従って、優成は椅子に再度腰掛ける。外務大臣の眼は全く笑っていない。嫌な知らせはまだあるようだ。

 

「実はの、防衛大臣の動きが少々訝しいのじゃ」

 

 密室にも関わらず、老人は声を潜める。小さいはずの声は嫌に大きく部屋の中に響いた。

 

「―――」

 

 優成は無言で話を促す。

 

「どうやら幾つかレコードカードを所持しているようでの、それを利用することを考えているようじゃ」

 

「・・・本当ですか?」

 

 聞き返したが老人は首を縦にも横にも振らない。

 

「あくまで噂じゃ、儂も確証を得たわけではない」

 

 老人の言葉は何の慰めにもならなかった。

 

「・・・さらにの、レコードカードは自力で見つけたものではないようじゃ。ここ最近、不審な人物が防衛大臣の周囲で確認されとる」

 

「・・・」

 

 余りに重大な内容に優成は黙ることしかできなかった。

 

 レコードカードはそれ一枚で世界を揺るがすことのできる代物だ。防衛大臣のやっていることは独自に、それも秘密裏に核兵器を入手して研究しているようなものだ。

 

「まあの、防衛大臣の気持ちもわかる。これでも十五年前まではその地位に居たからの。じゃがその愚かさ、その慢心こそが()()()()を引き起こしたのじゃ」

 

 老人が小さい体を更に縮こませて言う。老人の長い人生の中であの一件は相当なトラウマになっている。

 

「首相は、なんと?」

 

 真実だとするならば最悪外務大臣の暗殺も検討しなければならない。勿論隠蔽は困難を極めるだろうが、第二のプレイスターの集団が生まれるよりは幾分もマシだ。

 

「・・・何もじゃ。儂も報告を上げたが特に命令は受け取らん」

 

 現在の首相、日野 基哉の立場は非常に弱い。物価高などの日本の状況や過去の首相や党の失策が脚を引っ張っているのだろうが―――

 

「優成君、君の言いたいこともわかる。あの事件の関係者の一人である彼が動こうとしないことに憤りを感じることもな」

 

 外務大臣に窘められて、無意識に握っていた手を慌てて緩めた。

 

「とにかくじゃ、防衛大臣には気を付けることじゃ。まさかとは思うがそちら(零課)にも介入しようとするやもしれん。あれは少々育ちが良すぎるからのう」

 

 その言葉を皮切りにして二人の密談は終了する。

 

 極秘の通路から零課本部へと戻りながら十五年前の事件について考える。

 

 結局昭人に海翔のことを問い詰めることはしていない、いや出来ていないといった方が正しいか。彼の経歴や昭人の態度から、例の一件と密接に関わっているのは明らかだ。

 

 しかし、だからこそ軽率に聞くことは出来ない。あの事件で彼が負った傷は優成には到底測ることが出来ない。

 

『―――何が、あった』

 

『・・・』

 

『昭人―――』

 

『何も』

 

『―――?』

 

『何もできなかった。俺だけが無事だ。なあ、』

 

『俺はなんで生きてるんだ?』

 

 忘れることはない。雨が降るあの日、昭人の眼は絶望というには生易しいものを孕んでいた。

 

 あの事件は村上 昭人という人間を一度殺したのだ。ノアを下につけてから幾分かマシになったが、それでも時折危険なところが垣間見られる。堕落しきった食生活もその一つだ。

 

 友人ということを抜きにしても、数少ないレコードカードの専門家である昭人には健康でいてもらわねば困る。これらの要因が重なって優成は海翔のことを尋ねることが出来ないでいる。

 

 しかし彼が例の事件に関わっているのなら、本筋に辿り着くための重要な手がかりだ。板挟みになった優成がとった選択は、昭人からではなく別の方向から探ることだった。

 

(そのためにも三人には頑張ってほしいところだが―――)

 

 そこまで考えて、優成はふと足を止めてしまった。

 

 夕夏はその人柄からリーダーを任せているが、それが仇となって聞き込みなどはともかく本格的な捜査には不向きだ。詩音は捜査以前に不安定なところがある。昭人と比べても遜色ないほどだ。

 

 ならば経験もある景虎に賭けるしかないが、彼も特大の前科がある。

 

「何も問題を起こさないよな・・・?」

 

 優成はそう呟かざるを得なかった。

 

 皆さんにはどうか彼を責めないで頂きたい。

 

 日本には零課以上に軍事力を持っている組織は存在しない。自衛隊すらも零課の前には霞んでしまう。そんな法ですら縛られていない暴力組織を一枚岩に纏め上げ、暴走しないように日々奮闘しているのだ。

 

 そして相手にしているのは怪物(プレイスター)。加えて隊員のコンディションの確認、情報統制の総監督など彼の仕事は減ることを知らない。

 

 優成は懐から胃薬を取り出して口の中に放り込んだ。そして普段は信じていない神に心から祈るのだった。

 

―――どうか問題を起こしませんように、と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな優成の不安をよそに、日野森学園では一大事件が起ころうとしていた。

 

 最年長の高校生組でさえも経験したことのない出来事。それも相まってか、緊迫したような空気に包まれている。

 

 最もそれだけではない。どこか非日常的なそれは子供たちが興奮するには十分だ。

 

 期待と不安が入り混じる視線を一身に浴びて、上座で立っている海翔は後ろに並んでいる三人を手で差した。

 

「というわけで今日から新しく先生として参加することになった蘆屋夕夏さん、空賀景虎さん、瀬良詩音さんです!みんな拍手ー!」

 

 パチパチと戸惑いながらも子供たちは三人に拍手を浴びせる。それを受け止めながら、三人の心は戦闘の時のように一つになっていた。

 

(((どうしてこうなった―――ッ!)))




拍手ー!

色々ありまして遅れての投稿となりました。

え?二章の一話目で主人公のセリフがラスト一つしか無いのはどうなんだ、って?いいんですよ。なぜなら作者(わたし)がそう言っているので(暴論)。










おまけ~CMその3~
『ヒューム!』

レコードカードを使って変身!

『ALL RIGHT!YOU ARE HUMAN!』

『DON'T FORGET THIS ANSWER』

ボタンをもう一度押して必殺技!

『ALL RIGHT!HUMAN FINISH ATTACK!』

DXエヴィデンスドライバー!(レコードカード3枚付属)

炎と電気の力が、更にパワーアップ!

ベルトに装着!ハンドルを回して、回して、回して!

二つの姿に変身!

DX E-ジェネレーションバックル!
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