仮面ライダーヒューム   作:熊澤しょーへい

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実質初投稿。なのに主人公どころかヒロインすら出ないってマ?


No.17 FACE/もう逃げないために、そして先に進むために

 東京都千代田区霞が関、零課の拠点である警視庁の地下にて。蟻の巣が如く地下に張り巡らされた防衛拠点。その中心地点に当たる大会議室に20を超える人間が集結していた。

 

 この場の席に着くことが許されているのは零課の中でも高い地位に居る人間だけ。工作部門、実働部門、医療部門、交易部門、開発研究部門・・・そしてそれらを統括する総合部門。国のソレと見間違えるほど細分化された組織、その上層部がここに集結していた。

 

 会議特有の緊張感が一室を支配する。日本どころか世界の命運が彼らの肩にかかっている。そのプレッシャーは推して知るべし、である。

 

「すみませんー。遅れましたー」

 

 その静寂を破り、間延びした声が会議室に響く。声の主である開発研究部唯一の研究員は、扉を開けたのとは別の手で成人男性を引きずっていた。

 

 その小柄な体型からは想像できないほどの力が加えられており、昭人は抵抗の一つも出来ない。

 

(なン)で俺も行かなきゃいけねえんだよ。お前(ノア)が出ればいいだろ」

 

「そうは行きませんよー、部門のトップが閉じこもってばかりなんてー。そんなのだからー根も葉もない噂が広がるんですよー」

 

 昭人の言葉をノアはすかさず否定する。優成の命令で部屋から引きずってきたが、そうでなければ今も閉じこもったままであっただろう。因みにその光景を見ていた隊員たちによって新たな噂が生まれたのは、また別の話。

 

 会議室の残りの席、『開発研究部門主任』と書かれた机に無理やりのように座らされる。不機嫌そうに座った昭人の姿を見て、会議室の中心に座っていた優成は思わず目元を抑えた。

 

「・・・雪村研究員、彼には()()()服装に着替えさせるように言ったはずだったが?」

 

「そんな不可能を押し付けられてもー、私も困りますよー」

 

(そもそもそんな服ー私も持ってませんしー)

 

「風呂にはぶち込んでおいたのでー、これで勘弁してくださいー」

 

 無駄にフローラルな香りがすると思ったら、それか。

 

 周りの人間たちがスーツでキッチリと揃えているのに対し、昭人の服装は明らかな普段着(いつもの白衣)。嫌でも目立ってしまう。

 

 だが服装に関しても彼らの態度に対しても、呆れた表情をする者はいても咎める者は誰一人としていない。ライダーシステムを始めとした彼らの発明は、零課そのものを支えている。それほどまでに彼らの存在は大きい。

 

 だが幼馴染、そして彼の上司としては話が変わる。後で徹底的に教育することを胸に誓いながら、優成は声を発した。

 

「・・・何はともあれこれで全員だ。これより定例会議を始める」

 

 優成の声と共に会議室内の照明が消え、同時にプロジェクターが起動する。暗い部屋の中に人口の光が一つだけ。やけに眩しい。

 

「これより先、我々はプレイスターとの本格的な戦闘に突入すると予想される。その前に今会議で我々上層部の認識をすり合わせる」

 

 上層部同士の対立を原因とする組織の崩壊、そんなものは歴史の教科書をひっくり返せば幾らでも出てくる。こんなことが零課で起こってしまえば、日本の崩壊までまっしぐらだ。必ず避けなければならない。

 

「まず最初に、我々の目標は一貫して変わらない。『全レコードカードの完全封印、もしくは破壊』。これには一切の例外はない」

 

 プロジェクターの画面に『SEAL OR DESTROY』の文字が出現する。

 

「『例外はない』と言うのは言葉通りだ。レコードカードが与える被害に関しては知っての通りだ。このような悲劇を、我々は繰り返させてはならない」

 

「日本政府に対してもこれを適用する。我々は押収したレコードカードを政府に提出するつもりはない。レコードカードは我々人類にとって、早すぎる代物だ」

 

 反対する者はいない。この部屋にいる者は全員、大なり小なりプレイスターの被害を目撃してきた。そしてレコードカードが抱える危険性にも。レコードカードは着火されたダイナマイトのようなものだ。敵を殺傷したり工事用に使用したりすることも出来るが、巻き込まれる可能性が常にある。

 

「次に我々の敵対者についてだ」

 

 新たな画像がプロジェクターに映し出される。一見すると何の変哲もない、四名の男女の写真だ。

 

「プレイスターとなれば本来は自我を失う。だが奴らは違う。レコードカードの力により人間とは異なる生命体へと成り果てた集団。便宜上、この集団を敵対者(アバサリー)と呼ぶ」

 

 我ながら安直な名前だ、と優成は自嘲する。だが奴らには凝った名前など必要ない。人類の敵対者には相応しい名前だろう。

 

「目的は不明であるが、彼らが人類に対して敵愾心を抱いているのは間違いない。また、プレイスターを生み出しているもの奴らによる仕業だ。当分はこの敵対者(アバサリー)を相手取ることになる」

 

「特に今画面に出ている四人。このうち一人、戦士(ウォーリアー)は先日討ったので残り三人。仮称女王(クイーン)軍司(ストラテジスト)、そして(シャドウ)。奴らは敵対者(アバサリー)の中心人物であると考えられる。彼らの捜索、監視を現在強化させている」

 

 言葉を終えるとパソコンを操作。新たに画像が映し出される。先日ヒュームと刃狼が交戦した、アントトルーパーの写真だ。

 

「続いて先日交戦した者達についてだ。藤田」

 

「はっ」

 

 優成に促されて、暗闇の中で一人の男が立ち上がる。

 

「医療部門長の藤田です。工作部門によって回収された残骸ですが、爆発によって判別のしようがないほどに破壊されつくされていました」

 

 映し出されたのは黒焦げの死体に元は機械だったと思わしき僅かな金属片だけ。素人目にも、ここから何かを読み解くのは難しいことが分かる。

 

「―――ですが一つだけ、例外が」

 

 手元のタブレットを操作する。照射された画像は首の取れた一体の死体。他の死体と同じく火傷跡はあるが黒焦げとは程遠く、全体的に形を保っている。

 

「トリガーが脳に取り付けられていたのか、はたまた機械の不備があったのか。それは分かりませんが、彼らは唯一この検体を証拠として残していきました」

 

 だが分かったことは少ない。特に腰に埋められていた器具は徹底的に破壊されており、復元は困難であった。

 

「結論から言いますと、彼はプレイスターではなく、また人間とも言い難い存在です。腰だけでなく身体全体に手が加えられております」

 

 藤田医療部門長の言葉に部屋中がざわめく。彼の発言は「第三勢力が出現した」と言っているに等しい。敵対者(アバサリー)との戦いはここから本番であると言え、第三勢力の存在はその言葉以上に重い。

 

「プレイスターでは無いだと?」

 

「一体どこの誰が・・・」

 

「あれほどの兵器を量産できる勢力が存在しているのか?」

 

「いや、まだ第三勢力が現れたと言い切ることは出来ないのでは?敵対者(アバサリー)どもが生み出した可能性も・・・」

 

「静かに」

 

 動揺する室内を一声で静める。優成の言葉に有無を言わずに従うその姿勢は、彼がどれほどこの組織を掌握しているかを表している。

 

「彼らに対する情報は敵対者(アバサリー)と比べてもあまりに少ない。故に、以降この集団を会社(カンパニー)と仮称。彼らに対する調査も進めて欲しい」

 

 優勢の言葉に皆が頷く。「報告は以上です」と藤田医療部門長が着席すると同時に、隣に座っていた男が起立する。

 

「情報部長の服部であります」

 

 情報部。その名の通り内外の情報を取り扱っており、民間人へプレイスターや仮面ライダーの情報がいきわたらないように日々暗躍している。

 

「頼む」

 

「はっ。プレイスター及び仮面ライダーへの情報統制は概ね順調であります。幾分かの撃ち漏らしは発生いたしましたが、『○○から聞いた噂話』程度には抑えられているであります」

 

 服部の言葉に、優成は心の底で安堵する。第三勢力の存在もちらついている中、銃後がいくら安定してもし過ぎるということはない。せめて両組織の内情がほぼ解明される、欲を言えばどちらかの組織に大打撃を与えるまではこの状態を維持したいところだ。

 

「ですがこのままの勢いで戦いが激化した場合、情報統制は困難を極めると考えられるであります」

 

「工作部門長の有坂です。自分も服部部門長の意見に同感です」

 

 服部の対面に座っていた女が起立する。工作部門は主に戦いの後処理が任務だ。設立当時は殆ど任務が無かったが、ここ最近プレイスターとの戦闘が頻発したため一気にブラック化した部門だ。

 

「ウォーリアープレイスターの一件、後一歩で民間人に発見されるところでした。次に発見されない保証は出来ません」

 

「それほどなのか」

 

 想像したよりも逼迫した状況に、心の中で溜息を吐く。当然表情には出せない。ウォーリアープレイスター級の敵は後少なくとも三人残っている。遅かれ早かれプレイスターの情報は流れることになるだろう。

 

「・・・いや、問題ない。段階によって情報統制のレベルは落としていく。勿論国民が混乱しないように慎重を期す必要があるが。とにかく両部門はこれまで通り任務を遂行してくれ」

 

 頷くと、有坂工作部門長だけが席に座る。

 

「まだ何か?」

 

「はっ。二日前のことですが中国人工作員二名、韓国人工作員一名、ロシア人工作員五名の日本への秘密裏の入国を確認したであります」

 

 悪い情報は重なるものだ。優成は溜息が出そうになるのを必死に堪えた。

 

「・・・観光客と言うわけではないのだな?」

 

「はっ。ほぼ全員が他国での活動が確認されており、またプレイスターが一度現れた場所付近に滞在しているであります」

 

「身柄は?まさか捕縛したのか?」

 

「いえ。本国と念密な情報交換を行っており、尚且つ警戒を怠っていないため監視に留めているであります。指令があればすぐさま確保いたしますが?」

 

「・・・いや、いい。動きがあったのはその三国だけか?」

 

「その通りであります」

 

 アメリカが動かなかっただけよし。優成はそう自身を納得させる。零課は保有している戦力や権限に対して、秘密裏に活動するという都合上立場が非常に不安定だ。日本最大のアメリカ合衆国に圧力を掛けられた場合、現政権がどう動くか分からない。こちらには内乱なんてしている暇などない。

 

「ご苦労。他に何かあるか?」

 

 服部情報部長が着席した後、誰も挙手しようとしない。情報伝達を円滑にするため対面やオンライン、大小関わらず会議は頻繁に開かれている。別に部門長本人が出席する必要は無く、その部門で相応の地位に居る者が出席すれば良いことになっている。

 

「以上で定例会議は終了とする。解散とするが、村上開発研究部門長は残ること」

 

「・・・おい、嘘だろ」

 

 絶望する昭人を余所に、他の人は「お疲れさまでしたー」と次々と席を立つ。それは彼の隣に座っている人間も例外ではない。薄情な部下の細い腕を慌てて掴もうとするが、ウナギのようにするりと抜け出されてしまう。それでも慌てて声を上げて呼び止める。

 

「オイ薄情者」

 

「その言い草はーあんまりだと思いますー。偶には痛い目見てくださいねー」

 

 いっつも白い目で見られるのは私なんですからー。そう言い残してさっさと退室してしまう副部門長。人の心とかないんか?―――まあ、あるわけないのだが。

 

 あれよあれよと室内に残ったのは優成と昭人の二人だけになってしまった。

 

「・・・」

 

 室内は嫌な沈黙が支配しており、謎の圧迫感を覚えてしまう。そんな昭人の様子を見て優成は「はあ」と一つ溜息を吐く。

 

「昭人、もっと会議に出ろ」

 

「別にいいだろうが。いつもノアの奴向かわせてるし、アイツに持たせてる機材越しに内容は知ってるし」

 

 話半分だけど、と心の中で付け足す。優成にとって会議なんぞ時間の無駄。ノアを向かわせるのだってかなり譲歩した方だ。だが優成にとっては違うようだ。

 

「お前な、自分の零課での立場が分かっているのか?」

 

「立場ぁ?」

 

 立場も何も、自分は一介の技術屋に過ぎないだろう。

 

「ああ。零課再興の立役者の一人にしてライダーシステムを開発した大天才。私に次ぐナンバー2という声もあるくらいだぞ。そんなお前がずっと会議に出ない、それだけで痛くない腹を探られるんだ」

 

 こめかみを指で押さえつつ、疲れたような声を漏らす優成。昔なじみであり、尚且つ彼の性格を熟知しているため今のように対面で話すことができる。だがそうでなければ、最悪の場合「内部分裂を防ぐため」という名目で消していたかもしれない。それほどまでに昭人の立場は大きい。

 

 そんな優成の気持ちを察したのか、嫌々―――本当に嫌々降参の意思を示した

 

「はいはい。次からはもっと顔出します―――これでいいんだろ?」

 

 彼自身、優成にこれ以上負担をかけるのは本望ではない。だがそれはそれとして訂正はしておく。

 

「あと噂の『大天才』ってのはマジで止めさせろ。俺なんぞ高く見積もっても精々が非凡程度だ。大天才ってのは―――アイツ以外に存在しねえよ」

 

「・・・」

 

 またこれだ。優成は呆れを思わず顔に出してしまう。昭人は非常に自己評価が低い。特に『天才』『万能』などと言った評価を酷く嫌う。自分の立場がいまいち理解できないのも、この自己評価の低さが原因の一端としてある。

 

 そんなことはない、と声を大にして言える。現在敵対者(アバサリー)含むプレイスターに対して零課が正面から対峙できるのは彼が開発したライダーシステムのお陰だ。しかしその称賛を、昭人は頑なに受け取らない。

 

(恨むぞ、雪村・・・!)

 

 雪村 アリサ(世紀の大天才)。彼女と関わり過ぎたのがいけなかった。アレは異常だ。少なくとも優成はついぞ彼女を同じ人間としてみることは出来なかった。

 

 昭人は未だに彼女の亡霊に囚われている。―――いや、彼だけではない。自分を含め、関わった者全てに少なくない影響を与えているだろう。効きすぎる薬なぞ、それは毒と何ら変わりがない。

 

 だが、しかし。

 

「―――今はこんなことを言う暇はない。本題に入ろう」

 

「何だよ、説教じゃねーのか」

 

 言えるわけがないだろう。少なくとも彼と、身内であるもう一人には。

 

 心の内を必死に押しとどめ、平静を装う。仮面を何重にも被る作業を友人を前にしても平然と行えることに対する自嘲すらも、その中に放り投げて。

 

「要件は五つ。一つはライダーシステムの増産についてだ」

 

 優勢の言葉に、安堵していた昭人の視線が鋭くなる。

 

「・・・随分と意見が変わったな。『可能な限り量産すべき』っう俺の意見を蹴った人間と同一人物の意見とは、到底思えねーな」

 

「事情が変わった。二正面作戦を強いられる可能性がある以上、戦力を拡大せざるを得ない」

 

 これは優成にとっても苦渋の決断である。レコードカードを安定して運用できる兵器であるライダーシステムの技術はまず隠蔽しなければならない。例え敵対者(アバサリー)の殲滅に成功したとしても、各国に技術漏洩し戦争に使われたとあれば敗北したも同義だ。頭数が多ければ多いほど流出の可能性が高くなる。

 

 しかしその前提も「勝利したら」の話だ。組織のトップとしてその前提は守らなければならない。

 

「俺は言ったはずだぜ。会社(カンパニー)絶対(ぜってえ)介入するってな」

 

「これに関しては私のミスだ。まさかここまで早く介入してくるとは考えていなかった」

 

 会社(カンパニー)の存在は初期から認知していた。しかし零課と同じ、或いはそれ以上に深く地下に潜っていたため、その全貌どころか名称、トップ、目的すら先日まで掴めておらず、目に見える脅威である敵対者(アバサリー)の対処を優先せざるを得なかった。

 

「で同型(数優先)別型(速度優先)、どっちをご所望だ?」

 

「速度だ。一機でいいが欲を言えば二機欲しい」

 

 優勢の回答に昭人は心底嫌そうな顔をする。

 

「―――チッ」

 

 舌打ちまでした。

 

「わーったよ。但し俺じゃなくノアに開発させるがいいな?」

 

「できるか?」

 

 言外に「実力不足ではないか」という優成。だが昭人の顔に不安はない。

 

「できるね。あいつももう免許皆伝だ。ここらで好きにさせるさ。安心しな、理論はとっくの昔に組みあがってる。後は形にするだけだ」

 

 彼がここまで言うのだ。優成は全面的に信用することにした。

 

「で、他は?」

 

「二つ目は一般兵士でもプレイスターを殺傷できる兵器の開発だ」

 

「なんだそんなことかよ。直ぐにでもできるぜ?」

 

 昭人の言葉に優成は驚愕する。自分で言っていて思ったが、かなり無茶振りしている自覚があったのだ。

 

「ウォーリアープレイスターとの戦いでウォーリアーレコードカード以外にも四つのレコードカードを回収しただろ?それを使う。しかも特別なのは『プレイスターに効く』ってところだけで、他は普通の武器と一緒っつうオマケつきな」

 

 どうする?と問いかけてきたが優成の答えは一つだけだ。

 

「すぐに実行してくれ!一先ず実働部隊全員に行き渡る量があれば十分だ」

 

「任せな。運搬の手筈だけ頼むぜ」

 

 久しぶりのいい報告に、優成の声が弾む。そんな友人の様子を可笑しく思いつつ、他の三つの内容もこんなに楽なものだったらいいなと祈っていた。

 

 まあ、その祈りは次の優成の発言で崩壊するわけだが。

 

「三つ目と四つ目。この二つは『特別兵器』についてだ」

 

 『特別兵器』。優成の口から出た言葉に、昭人は思わず周囲を見渡してしまう。この兵器の存在を認識しているのは零課で優成と昭人の二人だけ。インターネット上に留まらず紙媒体にもその存在を記録していない。それどころか口頭で話題に出すことも控えている。その言葉を耳にしたのも数年ぶりだ。

 

 優成は僅かに首を縦に振り、暗に傍聴は完璧だと言った。それを見て昭人は肩の力を抜いた。

 

「マジで焦ってんだな、お前」

 

「近頃の敵対者(アバサリー)の行動は少し派手過ぎる。幹部のウォーリアープレイスターが討伐されて焦っているのか、或いは他に理由があるのか。理由は分からんが決戦は間近だと見ている。故に最善は尽くすべきだ」

 

 零課が確保しているレコードカードは、当然ながら紅玉(Ruby)(Wolf)甲虫(Beetle)の三枚だけではない。その中でも特に危険な、悪用すればそれこそ世界を一時間もかからずに無茶苦茶にしてしまうほどのレコードカードを『特別兵器』と呼んでいるのだ。

 

 現在認定されているのは二枚のレコードカード。二枚とも零課本部の更に下層の、地図にも載っていない部屋で厳重に封印されている。

 

「無論、むざむざ敗北するつもりはない。だが勝てたとしても甚大な被害、高確率でベールの崩壊が発生するだろう」

 

「・・・」

 

「だがな、会社(カンパニー)の活動が本格化している以上、それは回避する必要がある。故に―――」

 

「言いたいことは分かったぜ。ロ号を使用するための媒体を用意すりゃいいんだろ」

 

「ああ」

 

 暫定として二枚のレコードカードには「イ号」「ロ号」と名称が振り分けられている。優成の言葉を聞いて昭人は僅かに安堵する。ロ号も確かに危険だが、まだ扱いようはある。

 

 イ号は自国が自国に向けて発射する核兵器のような存在だ。自身の多大な損失を齎す代わりに、上陸戦力を確実に殲滅させる類のもの。但しイ号はそれを世界規模で実行する。作動した結果は文字通り誰も分からない。

 

「もう一つは?」

 

「イ号についてだ。アレを秘密裏に臨時拠点に移動させたい」

 

 臨時拠点とは、万一この本部が陥落した際に司令部として活用するために秘密裏に用意している拠点だ。機能や隠蔽性はこの本部に比べるまでもなく、使用されることは実質的な敗北宣言に近い。優成はそこまで危惧している。

 

「・・・近いうちに物資移転はあるか?」

 

「ああ、本部の一部システムを臨時拠点に移転させる手筈だ」

 

「それに俺も同行する。技術者の一人としてな。それに紛れてイ号を封印してくる。これでどうだ?」

 

「分かった。内部構造については今度知らせる」

 

 話が一段落する。昭人としてはこの時点で帰りたかったが、最後の要件がまだ控えている。この一時間で数年分老け込んだかのような疲労感を感じながらも、優成の言葉に耳を傾ける。

 

「最後だが・・・これだ」

 

 優成は何やら机の下から資料を取り出した。茶封筒でキッチリと封がされたそれを昭人に渡すと、開けるように促した。

 

 言われるままに開封した茶封筒の中には、A4用紙が何枚か入っているだけだった。記されていたのは海外のとある銀行の金の動きだ。

 

 目を通す度に、優成の目が驚愕に開かれていく。

 

「・・・情報提供を受けて防衛大臣周りの金の動きを洗い出した。近日に一回、それ以前にも幾つか不透明な金の動きがあった」

 

「・・・」

 

「巧妙に隠されていたがな、ミャンマーのある銀行で引っ掛かった。そこからは芋づる式だ」

 

「・・・そうかよ」

 

「調査員には箝口令を敷いている。が、いずれは公開するつもりだ。真っ先にお前に知らせるべきだと思った」

 

 青い線の丸で囲われた名前。それは昭人だけでなく日本国民の大半が知る名前だった。

 

「お前、知っていたな?会社(カンパニー)の正体を」

 

「何となく、公然の秘密みてえなもんだったよ。それも証拠が無かった・・・」

 

 思わず手に力が入る。くしゃりと紙が歪むのも意に介しない。

 

「だが証拠は出た会社(カンパニー)の正体は―――」

 

「なあ、優成」

 

「―――なんだ」

 

「プレイスターの疑いがある奴、大人しく同行したっていう。そいつ、今どこにいる?」

 

「この時間は第3取調室だ。特に頑丈に作られている取調室だったはずだ」

 

 優成の言葉を聞いて、昭人は白衣を翻す。扉に手を掛けたところで一度止まり、逡巡した後に優成に語り掛ける。

 

「―――全部だ。俺の知っていること、全部話す。お前も来てくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同所、第3取調室にて

 

「なあ、いい加減ダンマリは止めようや」

 

 狭い取調室には三人の人間。一人は調書を書いている人間。彼女も実行部隊の人間の一人だ。問い詰めているのは空賀景虎。ただでさえ誤解されやすい容貌を更に険しくしている。

 

「何度も言っているでしょう?お話しできることは何もありません、と」

 

 対面するは有村祈里。相変わらずの神父服に、人当たりのいい微笑みを浮かべている。こんな状況下でも揺るがないその態度に、賞賛を通り越して薄ら寒いものすら感じる。

 

 だが雰囲気に飲まれるかとばかりに言葉を繋げる。

 

「なあ、これでも一緒に馬鹿した仲や。あんま痛い目に負わせたくないんやで」

 

「おお、怖いですねえ。ですが猶更言うことはありませんね」

 

 プレイスター、或いは彼らとの繋がりの疑いによって連行された祈里だが、零課側の警戒と裏腹に本性を現して暴れるということは全く無く、不気味なほどに大人しい。隊員たちの中にも「誤認なのでは」という声が散見されるほどだ。

 

 景虎は高ぶる感情を必死に抑えつつ、何とか説得にかかる。

 

「やからな―――」

 

 と、その時取調室の扉が大きく開かれた。「なんだ」と文句が喉元まで出かけたが、入ってきた人物の姿を見てたちまちの内にそれは消失する。

 

「―――司令官殿!」

 

 景虎だけでなく、調書を書いていた隊員すら起立し、敬礼する。プレイスターの被害に遭い、やり場のない怒りを抱えていた自分たちを拾ってくれた優成には尊敬の念があるのだ。

 

「おや、トップが直々にお出ましですか」

 

「生憎、用があるのは私ではない。・・・おい、早く入ってこい。お前が言い出したんだろう」

 

 優成に促され、昭人がゆっくりと入室する。彼の顔を見た瞬間、祈里の表情が激変する。

 

「―――()()()()?」

 

「は―――?」

 

 間抜けな声を上げたのは優成だった。なぜここでその名前が出てくるのか、理解できなかったのだ。

 

「―――はあ」

 

 ボサボサの髪を更に掻きながら、昭人は溜息を吐く。これだから会いたくなかったのだ、と言う態度を隠そうともしない。

 

「違う。俺にその苗字を名乗る資格なんてねえよ。今はもう村上だ」

 

「まさかと思いましたが―――生きて―――」

 

「アンタもな・・・あー、なんて呼べばいい?」

 

「―――今は、有村祈里と、名乗っています」

 

「そうかよ」

 

 話しながら祈里の正面の席に辿り着く。ズカッ、と荒々しく座るとあまりに展開についていけていない後ろの三人に向けて話しかける。

 

「悪い、二人にしてくれ。調書を書くのは良いが、外で頼む」

 

「―――」

 

「止めろ。―――分かった。二人とも、行くぞ」

 

 何か言おうとした景虎を遮って、優成は二人と共に退室した。ガチャリ、と扉が閉まる音と共に、取調室に沈黙が流れる。

 

「・・・」

 

「・・・」

 

 耐え切れなくなったのか、最初に沈黙を破ったのは祈里の方だった。

 

「貴方は、少し歳をとりましたか」

 

「・・・そりゃあな。15年だぞ?逆にアンタは変わらねえな」

 

「15年。そうですか、あれから15年・・・」

 

 祈里は感慨深げに何度も「15年」と呟いた。

 

「ああ。それがレコードカードの恩恵か?」

 

「・・・やはり、御存じですか」

 

「知り合いに一人いる。成り損ない(失敗作)だったか?」

 

「ええ。レコードカードを受け入れながらも、怪物(プレイスター)にも人間にも成れなかった半端者。怪物(プレイスター)のように自在に異能を操れるわけでもなければ、人間と同じ時間を刻めるわけでもない。・・・そのお知り合いというのは、金髪で小柄な?」

 

「会ったことあんのか?」

 

「ええ。日野森学園で何度か。彼女にそっくりだったので、嫌でも印象に残りましたよ」

 

「それ、本人には絶対言うなよ。とばっちり喰らうのはこっちなんだからよ」

 

 少しだけ取調室内の空気が緩まる。だがこんな話をしに来たわけではない。これ以上逃げるわけにはいかないのだ。

 

「・・・マジで何もいってねえのな」

 

「・・・逆に、貴方なら話しましたか?」

 

 無理だ。話せるわけない。できれば墓の中までもっていきたかった。だが個人がどうのこうの言える次元ではなくなった。全面戦争は間近に迫っている。友人が友人成りに覚悟を決めたのなら、こちらも腹をくくらなければなるまい。

 

「さあ話そうぜ、全てを始めてしまった俺たちの罪を。そして―――伊藤海翔が生まれた、その理由(ワケ)を」




遂に主人公の秘密が明らかに―――なったりならなかったり?
なります!(断言)(背水の陣)

〇今回の補足
・プレイスターの集団=敵対者(アバサリー)
・アントトルーパーとかを運営してる陣営=会社(カンパニー)
・外国が探りを入れてきてるよ!
・人手が足りないから新しく仮面ライダーを造るよ!
・一般兵士でもプレイスターを倒せる武器を生産するよ!これは直にできるよ!
・なんかやばいレコードカードを零課は2枚も持ってるよ!しかもうち1枚は世界丸ごと敵を道連れにできる、核兵器よりもよっぽど質が悪いものだよ!
・もうすぐ全面戦争が起きそうだよ!
会社(カンパニー)の正体が分かったかもよ!

〇三組織の関係
零課→敵対者(アバサリー):絶対殺す
零課→会社(カンパニー):絶対殺す
敵対者(アバサリー)→零課:殺す
敵対者(アバサリー)会社(カンパニー):?
会社(カンパニー)→零課:?
会社(カンパニー)敵対者(アバサリー):?

〇零課内の部門
・総合部門
 人体で言う脳みそ。零課全体に命令を下す
 部門長:松下優成
 言わずと知れた苦労人。マジでワンマン気味。その代わりに組織の速度はめちゃ速い
・開発研究部門
 心臓部。色んな超兵器がポンポン出てくる。変な噂が色々ある
 部門長:村上昭人
 全然表に出てこない人。それも変な噂を助長してる。(例:ブラックとか、人体実験してるとか、ロリコンとか、鬼畜とか)
・工作部門
 何時も尻拭いしてくれてる。最初期は白い目で見られていたが、今は同情されるようになった。
 部門長:有坂
 女性。職人気質の姉御肌。でも優成の前では緊張気味。
・医療部門
 零課の中にできた病院。「全員救う」がポリシー。外科から心療内科まで充実。
 部門長:藤田
 年配の男性。No.11で海翔の治療をした女性は彼の親族
・情報部門
 主に国内の情報を扱ってる。監視カメラをハッキングしたり、ガセ情報を流したり。年中無休。色んな所に潜入してる。もしかしたら隣にいる人は情報部門の人間かも?
 部門長:服部
 女性―――らしい。男性かも。よくわかんない人。忍者の末裔っていう噂がある。
・対外部門
 情報部門から派生。主に海外の諜報を行う。今回ミャンマーの銀行から情報をすっぽ抜いてきたのはこの人ら。
・工作部門
 零課の物資補給を行ってる。零課内の売店や食堂はこの部門。たまに変な商品が入荷されてはひっそりと消えていく。
・実働部門
 実際にプレイスターと交戦する人ら。仮面ライダー三人衆はここ所属。一番人が多い。一番給料も高いが、一番離職()率も高い。
・人事部門
 人事担当。戸籍消したりできる怖い人ら。
・事務部門 
 雑務担当。雑事を押し付けすぎると爆発するという噂がある。
・経理部門
 お財布を握ってる。銀行みたいなことしてこっそりお金を稼いでいる。開発研究部が湯水のようにお金を使うので目の敵にしてる。

 etc。部門ごとに細かい役割あり。
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