仮面ライダーヒューム   作:熊澤しょーへい

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どうも、熊澤しょーへいと申します。
今回から仮面ライダーの二次創作を描いていきたいと思います。
良ければ評価・感想などよろしくお願いします!執筆の励みになります!

それでは、どうぞ!


交錯する者達
No.1 HUMAN/証明する者


 

 ―15年前 とある研究所

 

 

『警告、侵入者』

 

 

『警告、侵入者』

 

 

『直ちに避難を開始してください』

 

 

『繰り返します』

 

 

 本来なるはずのない警告音。

 

 

 燃え盛る研究所。  

 

 

 転がる死体。 

 

 

 あるものは胸を貫かれて、またある者は頭を潰されている。

 

 

 そしてまた目の前で、

 

 

 人間だったものが崩れ落ちた。

 

 

 それを為したのは人間ではない。

 

 

 異形の、人間からかけ離れた、怪物たちだった。

 

 

 怪物の一人が僕の耳に口を寄せた。

 

 

 あの時彼女は、なんと言ったのだろう。

 

 

 

 

 

―現在 日野森学園

 

 

 東京郊外に建つ児童養護施設である日野森学園では、子供たちや職員がせわしなく動いている。時刻は午前7時。小学生たちは登校のための準備をし、中高生は登校までには時間があるものの、小テストや宿題に追われていた。

 

「海翔~!」

  

「たすけて~!」

 

「はいはい順番にね。どこが分からないの?」

 

 そんな時、いつも彼らはこの青年に助けを求める。

 

 青年の名は伊藤 海翔(かいと)。今年で20歳になる保育士の男性だ。年齢の近さや人当たりの良さ、そして高校三年生まで日野森学園にいたことから皆に慕われている。

 

「これはこうやって整理してから公式を使うといいよ」

 

「なるほど!」

 

「こっちは...」

 

「海翔、こっちも!」

 

「はいはいちょっと待ってね。」

 

 次々に質問が舞い込むが、彼はそれに嫌な顔一つせずに答えていく。

 

「なあなあ海翔兄、これどう思う?」

 

「ん?どうしたの愛斗」

 

 しばらくして、彼らが一通り質問を終えたタイミングを見計らって、一人の高校生―中村《なかむら》 愛斗(まなと)がとあるネットニュースを見せてきた。

 

「えーっと、『怪人出現!?都市伝説は真実か』…なにこれ」

 

「知らないの、最近噂になってるんだけど」

 

 海翔はスマホこそ持っているものの、電話やメモ帳替わりなど本当に最低限しか使わないので、流行に乗り遅れることが度々ある。

 

「それアタシも知ってるよ。ウチの学校でも結構話題になってた」

 

「私のところでも」

 

「自分の学校もです」

 

 海翔以外の全員が知っていた。曰く、怪物たちが夜な夜な人を襲っている。曰く、人間が怪人になった。曰く、警察も捜査に乗り出している。曰く、曰く、曰く。

 

「怪物ねえ…」

 

(なんか引っ掛かるんだよな)

 

 ふと、海翔の頭にもやもやとしたものが残った。海翔がここに来たのは7歳のことでそれ以前の記憶は綺麗に抜けている。もしかしたら何か関係があるのか。

 

 (いや、そんなわけないか)

 

 怪物なんてありえない。あくまで都市伝説なのだ。なのだが…やはりどこか引っ掛かる。

 

「まあありえないよね」

 

「フィクションかっての」

 

「皆、今何時だと思ってるの!?早く学校に行きなさい!」

 

 背後から急に声が飛んできて全員がビクッとなる。そして時計を見るや否や大慌てで飛び出していった。時刻は8時30分を回っていて、学校に間に合うか、間に合わないかギリギリの時間だった。

 

「ヤバいヤバい!」

 

「海翔、またあとで!」

 

「行ってきます!」

 

「急げー!」

 

 学生たちが飛んで行ったあと、海翔は声の主に向き合った。彼女―小川 明奈(あきな)は海翔と同い年で、同じく日野森学園生だった保育士だ。

 

「ありがとう。助かったよ、明奈。」

 

「いいわよ。その性格は昔っから変わらないもの。でも、それは仕事をサボる言い訳にはならないわよね?早く洗濯干すの手伝いなさい」

 

 ドン、と海翔の目の前に洗濯籠を置いた。海翔がおそるおそる明奈を見ると、明奈は白い肌に目立つように青筋を浮かべていた。

 

「わかったわね、海翔?」

 

「ハイ…」

 

 こうして数時間、海翔は明奈にこき使われるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―都内 警視庁本部庁舎

 

 国会前を守るように存在する警視庁本部。地上18階建ての威容は、高層ビルが立ち並ぶ東京においても決して見劣りするものではない。

 

『松下君始めてくれ』

 

「分かりました」

 

 公には存在しない地下5階。捜査第零課会議室と記されたそこで国家の方針を決める会議が開かれていた。といっても会議室にいるのは二人だけ。一人は松下と呼ばれた眼鏡をかけ髪を七三でキッチリと分けた真面目風なスーツの男。もう一人は松下とは正反対にボサボサの髪で欠伸をする私服姿の男だ。

 

 そしてその会議室のスクリーンに映っているのは警視庁総監を始めとした警察組織の上層部。それだけでなく各省庁の大臣、挙句の果てには現内閣総理大臣である日野基哉(もとなり)までもが参加していた。

 

「本日は日本各地で発生しているある事件についての報告をさせていただきます。まずはこちらをご覧ください」

 

 そう言って、松下は一本の監視カメラ映像を送る。

 

 移していたのは裏路地。一人の酔っぱらった男が女に絡んでいた。男が酔った勢いで女にまくし立てているように見える。女はそんな男を相手にしていないようだ。男は転がっていた鉄パイプを握りしめ女に向かって振り下ろす。しかし、男は女に鉄パイプを当てる寸前、何かに絡めとられたかのように不自然に動きを止めた。そして―

 

『―!』

 

 誰かが息をのんだ。

 

 女は瞬時に薔薇の怪物に変化し、男の胸を貫いた。

 

 映像はそこで途切れた。

 

『…』

 

 会議室に沈黙が流れるが、それを破るように松下が話始める。

 

「これは数少ない奴らの存在を示す証拠です。この事件に類する死体が日本各地で発見されています。我々はこの怪物をプレイスターと仮称し、一部の捜査一課の捜査員・機動部隊員、それに自衛隊員と共に捜査に当たってきました」

 

『…松下君、この映像は、その…本物なのかね』

 

 映像を本物だと信じたくないのか、一人の男が訊ねた。松下はかぶりを振って答える。

 

「残念ながら本物です。死体も既に確認しています」

 

 映像の先から複数の溜息が聞こえてくる。

 

「続けます。難航しましたが捜査の過程で我々はあるカードの存在に行き当たりました。村上」

 

 もう一人の男―村上が頭をかきながら立ち上がり、机の上に置かれていたアタッシュケースを開けた。中には三枚のカードが厳重に入っていた。

 

「このカードは例の監視カメラの映像の女の家宅捜索を行った際に発見したものです。勿論ただのカードというわけではありません」

 

 一枚は「RUBY」。赤の宝石が描かれたカード。

 一枚は「WOLF」。灰色の狼が描かれたカード。

 一枚は「BEETLE」。黒茶色のカブトムシが描かれたカード。

 

 村上は仕事は終わったとばかり着席しようとするが、松下は視線でそれを遮る。村上は渋々話始めた。

 

「…解析を担当した村上です。まあ解析といっても一割もできてないんですがね」

 

 ぶっきらぼうな態度に画面上の人物達は顔をしかめ、松下はやっぱりかという風に溜息を吐いた。村上は周囲のそんな反応を意にも返さずに続ける。

 

「簡潔に言うとこのカード―レコードカードとでも言いましょうか。これにはその物品・生物のありとあらゆる情報が記録されています」

 

 村上はウルフレコードカードを指で軽く叩きながら続ける。

 

「例えばこのカード。あらゆる狼の歴史・進化の過程・生息地域、挙句の果てにはDNA情報まで。言葉どうり全ての情報が今我々の手の中にあるわけです」

 

 まあ角度が高いとはいえ推測にすぎませんがね、と続ける。

 

「机上の空論ですが、これら一枚からありとあらゆる狼とカブトムシ、それにルビーが無限に作り出せるわけです。宝石市場は大混乱ですなあ」

 

 村上は何ともないように告げる。勿論これは机上の空論だ。解析できているのは一割未満。それだけの膨大な情報から狙った情報を引き出すのがまず困難。そうして情報を引き出せたとしても、どうやってそこからルビーを生み出すのか。村上のいうことは百年は起きないだろう。だが、将来的な危険性を孕んでいるというだけで、国のトップにとって無視することができない。

 

 加えて、と松下が続ける。

 

「我々が有しているのはこの三枚のみであり、敵が他に何枚レコードカードを所有しているか全くの不明です。さらに言いますと、これらのカードは偶然入手出来ましたが、セキュリティーの甘さなどから全体でも下位に位置するものであると思われます」

 

 ざわめきが大きくなる。この三枚だけでも日本を、そして世界を揺るがすには十分すぎるのだ。それが無数にあり、下位のもの一枚でも人類に大きな影響をもたらすのだ。

 

「外務大臣、他国では日本のような事件は起きていないのですか」

 

 場がシンとした。外務大臣が首を横に振る。

 

『大使館に確認したがどの国からもそのような報告はされていない。最も我が国のように隠蔽している可能性もあるが…』

 

 何人かが目に見えてホッとする。

 

 日本ではプレイスターの情報は初期から隠匿されてきた。殺人についても公表されたのは最初の数件だけで、以後は発表時期をずらす、事故死・行方不明で打ち切るなどでごまかしてきた。だが、それにも限界がある。被害が目に見えて増加しているのだ。それに民間でプレイスターの情報が広まり始めている。

 

「改めてですがプレイスターの脅威に対抗するため、我々捜査第零課はレコードカードを用いた戦闘システムの開発を提言します」

 

 プレイスター相手では通常の兵器は意味をなさない。約二か月前、捜査第零課は一度だけプレイスター相手に戦闘を仕掛けた。

 

 結果は、惨敗。一体の怪物に二十を超える隊員らが即時に殲滅された。

 

 あの悲劇を繰り返してはならない。そうした思いから捜査第零課は水面下でレコードカードの兵器化、そしてその実用化に取り組んできた。

 

『もちろん、承認する』

 

 日野首相が肯定する。事前に会議をしていたのだろう、大臣らを初めとして反対意見は上がらなかった。

 

 「では、本日はお忙しい中ありがとうございました」

 

 数十分後、正式に、そして内密に日本の限定的な再軍備化が決定された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後、海翔と明奈は大型ショッピングセンターへ買い物に来ていた。

 

 もう放課後だからだろう、ショッピングセンターには多くの学生が訪れていた。

 

「どうしたの?」

 

 明奈は海翔に問いかける。海翔は今日一日中どことなく落ち着かない様子だったのだ。

 

「怪物が出る、ていう都市伝説知ってる?」

 

「知ってるわよ。でもまあ都市伝説でしょ。それがどうしたの?」

 

「…」

 

「なんか言いなさいよ」

 

 海翔は言いたいが言えなかった。言葉で言い表せないもやもやが海翔を覆っていた。焦燥感や嫌悪感、好奇心がごちゃごちゃになったような何とも形容しがたい感覚に。

 

 明奈はその海翔の様子を見て溜息をついた。

 

「まあいいわ。海翔がこうなるなんて相当だもの。まとまったら教えなさいよ」

 

「分かったよ、明奈」

 

「うんよろしい。さて、とっとと買い物を終わらせるわよ。海翔のせいで長引いてるんだから」

 

 海翔はバツが悪そうに苦笑し、一方の明奈の口調には棘がない。海翔は老若男女問わず困っている人が放っておけずに助けてしまう。それはいつものことで、今更明奈もどうこう言わない。

 

 ショッピングモールの通路の一角からざわめきが起こっている。

 

「さあ?有名人か誰か」

 

 いるんじゃない、と海翔は言いかけた。このショッピングモールは都内から近すぎず、遠すぎずといった距離にあるので、芸能人がプライベートで訪れることがある。実際に海翔も何度か有名人らしき人をこのショッピングモール内で見かけたことがある。

 

 しかし、そのざわめきは段々と大きくなっていきついには

 

「キャー!」

 

「逃げろー!」

 

「うわー!」

 

 悲鳴へと変化した。

 

 そこには、サバイバルナイフを持った男が暴れていた。髪はぼさぼさで表情は詳しく見えないが、ちらりと見える目は狂気に染まっている様だ。すでにナイフは血で赤く染まっていて、二人の人間が地に伏していた。

 

「ハハ八!やっぱこの感覚はたまらねぇ!」

 

「!」

 

「ちょ、海翔!」

 

 思わず海翔は走り出した。まだ事態を把握できていないのか、慌てて明奈は海翔を追って死地へと向かった。

 

「ハア、ハア、」

 

「ヒ、ヒィー!」

 

 男の近くにはまだ逃げ遅れた人達がいた。彼らは恐怖故か腰が抜け、上手く逃げることができずズリズリと這って動くことしかできない。男はそれを見逃すことなく凶刃を彼らに振るおうとする。

 

 しかし、寸前で刃が逸らされる。海翔が真横から男に体当たりを浴びせたのだ。

 

「早く逃げて!」

 

 男は、そう叫んだ海翔に標的を向けサバイバルナイフを向けるが、海翔は床に倒れ、転がるように男のそばから離れる。

 

(―!もう助からない…)

 

 逃げた先には女が倒れていた。首を深く切り付けられ血が池のように彼女の周囲にあふれ出している。開かれた瞳はすでに濁っていた。

 

 「邪魔をするなら、お前から殺してやるよぉ」

 

 男は意地の悪い笑みを浮かべながら懐から、剣をふるう男の姿が描かれた一枚のカード―セイバーレコードカードを取り出し、胸に突き刺した。そして、セイバーレコードカードが男の体内に入り切った瞬間、男は目を見開き、狂ったように笑いだした。

 

「ハハハハハ!」

 

《SABER》

 

 男の全身から黒色の幾何学文字があふれ出し、男を覆いつくした。

 

 幾何学文字が晴れたとき、甲冑を身にまとった化け物と化していた。甲冑といっても禍々しい黒色の棘が生え、血で赤く染まっている。さらに兜のバイザーはなく、そこからは焼け爛れ、目と口が剥ぎ出しになった醜悪な見た目をしていた。ナイフは長剣に置き換わり、血が滴り所々錆びていた。

 

 怪物―セイバープレイスターの瞳が海翔を捉える。

 

(マズい!)

 

 海翔は急激な悪寒に襲われ、数歩後ずさりする。

 

「―ッ」

 

 幸運か、それとも剣が錆びていたことによる必然か、兎に角その数歩が海翔の命運を分けた。

 

 目には留まらない速さでセイバープレイスターは海翔に接近し、上斜めから海翔を切り付けた。

 

 気が付いた時には海翔の体に激痛が走り、血があふれ出していた。

 

 倒れこむ海翔。それを見て怪物は満足そうに笑みを浮かべた。そして次の標的に定めたのは、

 

「へ?」

 

 一連の惨劇を目撃し、呆然としていた明奈だった。

 

「う、そ…」

 

 逃げようとするも時すでに遅く、怪物が目の前に迫っていた。

 

 ケタケタと笑いながらセイバープレイスターが命を刈り取らんと剣を振りかぶる。しかし、

 

「待、て…」

 

 振り下ろされる直前、怪物の背後から聞こえるはずのない声がセイバープレイスターに浴びせられた。

 

 

 

 

 

(僕は死ぬのか)

 

 海翔は床に倒れながら、やけに冷静な頭で思考する。

 

 昔から死というものは怖くなかった。何故かはわからない。ほかの人が尻込みしそうなことも平気でした。その結果ひどい怪我を負っても笑い飛ばせた。

 

(でも…)

 

 海翔はうっすらと目を開ける。怪物が明奈に近づいていた。明奈は海翔を見たまま動かない。

 

 明奈の顔を見て、やっぱりと思う。

 

(その顔を見るのはとても嫌いだ)

 

 それが身近な人なら猶のこと。

 

 そんな顔をさせてはいけないと体の奥底が叫ぶ。海翔はその叫びのままに全身に力を入れる。

 

 

 

 

 

「…ハァ…ハァ…」

 

「海翔…」

 

 海翔が立ち上がり、明奈はそれを見てようやく正気に戻る。だが、海翔の惨状を見て顔を青ざめる。

 

 海翔は立ち上がったものの、傷からは赤い血が流れ続け、立っているのがやっとという状態だった。

 

 セイバープレイスターは標的を明奈から海翔に変更する。それは殺し損ねた獲物を屠らんとする殺人鬼の狂気か、それとも僅かにあるせめて苦しまぬようにとする剣士としての矜持か。

 

 海翔に向かってセイバープレイスターが走る。手負いが相手だとしても速度は衰えることはなく、容赦なく海翔との距離を詰める。

 

 一方海翔の視点では先ほどとは違い、ひどくゆっくりと時間が進む。

 

 その十分な時間の中で本能が叫ぶ。死ぬぞ、逃げろ、痛い、熱い。

 

 しかし、海翔はそれらに微塵も臆することない。それに応えるように魂が海翔の叫びを形にする。

 

 剣が迫る。しかし、その剣は海翔に届くことはなく。

 

 光が海翔を包んだ。

 

 怪物は怯み、距離をとる。そして光は海翔の腰と手に集中する。

 

 やがて光は消え、海翔の腰には長方形のドライバーが、手には一枚のカードが収められていた。

 

 ドライバーの左側にはカードの差込口とボタンがあり、上側にも丸いボタンが付けられていた。カードには透明な人間のシルエットが描かれ、絵の下には『HUMAN』と書かれていた。

 

 ドライバーはその発現を祝うように高らかに告げる。

 

《エヴィデンスドライバー!》

 

(…使い方がわかる)

 

 まるで体の一部のように、使い方を見てきたかのように、取扱説明書を見たことがあるかのように、海翔にはエヴィデンスドライバーの使い方が手に取るように分かった。

 

 いつの間にか胸の血は止まっている。しかし、血が止まっただけで傷はそのまま、痛みもある。

 

(でも、これで戦える!)

 

 上側のボタン―ウェイクアクセッサーを押し込む。

 

《AUTHENTICATION!PROVE THAT WHO YOU ARE!》

 

 ベルトは高らかに宣言し、軽快な音楽が流れ始める。海翔は『HUMAN』と書かれたカード―ヒューマンレコードカードをエヴィデンスドライバーに差し込む。

 

《HUMAN!REALLY?》

 

 声と共にベルトの中心から大量の光の幾何学文字が放たれた。幾何学文字は海翔の右前に収束していき、やがて透明な人影が現れ、海翔の周囲に何かのシステムのように、又は魔法陣のように数多の幾何学文字が旋回する。

 

 怪物が海翔を殺そうと向かって来るも、それを庇うように人影が怪物へと向かっていく

 

 怪物は上段から剣を振るうが、人影は寸前で避け怪物に回し蹴りを浴びせる。怪物は怯んだものの、ダメージは少ない。だが、短時間であるものの時間は稼いだ。その隙に海翔は最後のシークエンスを行う。

 

「変身!」

 

 海翔は叫び、右手で思い切りエヴィデンスドライバーの左側のボタン―アクティブローダーを叩き押した。

 

《ALL RIGHT!YOU ARE HUMAN!》

 

 図形が海翔に収束し、海翔の体に白いアンダースーツが構築され、アンダースーツの両方の横側に青いラインが刻まれる。人影が海翔に重なり、消えると同時に純白の装甲が海翔の体に構築される。

 

「ハアッ!」

 

 海翔がセイバープレイスターに蹴りを入れる。それに怯んだ隙に、明奈を守るように明奈と怪物の間に立つ。

 

『DON'T FORGET THIS ANSWER』

 

 ドライバーが静かに告げるのと同時に、怪物が距離を詰め戦士へ凶刃を振るう。

 

「フッ!」

 

 直前までは回避すら不可能であった攻撃。だが戦士は自ら距離を詰め、怪物の腕を左腕で抑える。そして、空いている右手の拳をセイバープレイスターに浴びせた。

 

 怪物が怯み数歩下がる。その隙に海翔はセイバープレイスターに回し蹴りを放ち、剣を叩き落とした。

 

 剣を拾う隙を怪物に与えず、さらに拳や蹴りを放つ。怪物は鎧でダメージを抑えているが、それを補うように戦士は数で怪物を責め立てる。

 

 勿論怪物もただではやられない。戦士の蹴りを両腕をクロスさせて受け止め、お返しとばかりに海翔に一撃を与えようとする。

 

 だが、速度は戦士の方が上。余裕をもって怪物の反撃を回避し、ラッシュを再開する。乱闘の中少しずつ移動し、明奈のそばから離れることを忘れない。

 

 怪物はラッシュから逃れるように海翔から大きく距離を取り、鎧の棘を二本無理やり抜く。その棘は抜かれた瞬間、元々セイバープレイスターが持っていたものと同じ長剣になった。

 

 海翔はそれを見て、どこからか一枚のカードを取り出した。そのカードには『ELECTRIC』とあり、黄色い雷が描かれていた。

 

 二本の剣を持ち、再び海翔に接近する怪物。

 

 海翔は慌てることなく、二度ウェイクアクセッサーを押し、ドライバーにエレクトリックレコードカードをかざす。

 

《ELECTRIC!》

 

 海翔がアクティブローダーを叩くのと同時に、戦士の体をバチバチと電気が覆う。怪物の剣は海翔には掠りもせず、代わりに電撃をまとった連撃が文字通り光の速さでセイバープレイスターを襲った。

 

 一撃一撃は通常よりも軽い。だが、その電撃は鎧を貫通し、内側からセイバープレイスターを焼いた。

 

 海翔が纏っていた雷は数秒で消失した。しかし、怪物に浴びせたダメージは大きかった。

 

 セイバープレイスターが大きく後退する。海翔は追い打ちをかけるように怪物へと迫り、新しくカードを取り出して読み込ませる。読み取らせたカードには『BLAZE』とあり、爛々とオレンジ色に燃える明るい炎が描かれていた。

 

《BLAZE!》

 

 戦士が叫び、オレンジ色に燃える拳がセイバープレイスターを穿った。遂に怪物が倒れ伏す。海翔はチャンスはここしかないと、ウェイクアクセッサーを二度押す。

 

《AUTHENTICATION! WHAT HAPPENED?》

 

 軽快な音楽が流れ、同時に海翔の右足にエネルギーが集中する。

 

 怪物が起き上がるが直後、セイバープレイスターに飛び蹴りを浴びせる海翔のシルエットが怪物の目の前に現れる。セイバープレイスターはその陰に縫い付けられたかのようにその場から動けなくなった。

 

「――ハアアア!」

 

《ALL RIGHT! HUMAN FINISH ATTACK!》

 

 気合一発、戦士がアクティブローダーを叩き、セイバープレイスターに飛び蹴りを浴びせる。陰に縫い付けられた怪物は回避することができず、海翔がその陰と重なった瞬間、セイバープレイスターは大きく吹っ飛んだ。

 

 吹っ飛んだ怪物はセイバーレコードカードを吐き出し、そのあとにはこの惨状を引き起こした男が気絶して転がっていた。

 

 海翔もエヴィデンスドライバーからヒューマンレコードカードを取り出し、元の姿に戻っていた。

 

 セイバーレコードカードを拾い上げると、一息つく間もなく胸に傷があることを思い出す。そして、アドレナリンが切れたのか傷が燃えるように痛みだした。

 

「海翔!」

 

 遠くから明奈の声が聞こえた。

 

(無事でよかった)

 

と思うのと同時に、海翔は意識を失った。

 

 

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