異人同士は惹かれ合う   作:どるき

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その3

晶は秋隆を連れてあけのを探し回ったが、丸一日近く休みなく歩き回っても収穫はゼロであった。

「もう三時だぞ、いい加減休憩しないと持たないぞ」

「私は疲れてないから大丈夫、行きたかったら一人で行って」

「無理やりつれてきてそれはないだろ。それに一人だけ休むのもおまえに悪いだろ」

 二人が目をつけたのはネットカフェやカラオケボックスなどの夜間に営業している店である。しかしそういった店からあけのが昨夜利用したという情報は得られなかった。

「これだけ探しても手がかりがないんだから、野宿でもしたんじゃないか?」

「でもさすがに公園で寝泊りはしないと思うけど。女の子がそんなところに夜中に一人でいたら危ないもん」

「おまえなら返り討ちだろ」

「でも別に野外じゃなければ……」

 大沢高校の前に差し掛かかった二人はあることを思い出した。

「旧校舎、あそこなら女の子一人でも野宿できるんじゃない?」

「そういわれてみれば……あそこは誰も来ないし、学校がまとめて管理しているから不良も寄り付かない。野宿にはぴったりだな」

「とりあえず行ってみよう」

 思い付きではあったが二人は旧校舎へと向かった。

「とりあえずどこから探すか?」

「そうだね……ベッドがある保健室と火元がある家庭科室は見たほうがいいね」

「それなら場所的に家庭科室が先だな」

 二人が家庭科室を目指していたころ、偵察に出ていたあけのは家庭科室に戻ってきていた。

「ハチ、ただいま」

 だがあけのの声に返事は帰ってこなかった。

大きなくぼみや引きちぎられたロープの切れ端が撒き散らされ、出かける前と比べてひどい荒れようであった。

部屋の中にはハチの姿はなく、この場所で何かがあったのは明白な有様であった。

「ハチ、どこに行ったの……一体何があったの?」

「あけの!」

 晶が家庭科室の戸を開けると、涙ぐんだあけのが立っていた。晶はあけのに駆け寄り、抱きついた。

「晶、どうしてここに?それにいきなり抱きついて」

「それを言いたいのはこっちだよ。何で突然いなくなったのよ」

「わたし、そんなつもりじゃ」

「それにどうして泣いているのよ」

 再会のうれしさに晶も思わず目に涙を浮かべた。

「ちょっと、ね……」

「はいはい、うれしいのはわかったから。昨日の今日なんだから、別に泣くほどじゃないだろ」

「秋兄はだまってて!」

 親友同士の再会に水を差し、秋隆は晶に怒られてしまった。

二人にはついていけないと部屋の置くに入った秋隆は、床のくぼみを発見した。

「あけのって言ったっけ。聞きたいんだけど、このくぼみは昨日からあったの?」

「昼間はなかったよ。さっき戻ってきたら出来てたんだわ。それはそうと、あなたは誰ですか?」

「晶の従兄妹の四象秋隆だ。同じ学校の二年だから一応君の先輩だぞ」

「ああ、あなたがよく晶が話している秋兄ですか。そういえばどこかで見た気がします」

 秋隆の質問に答えるあけのの目には涙はなかった。晶と会ったことで気持ちが落ち着いたようであった。

「さすがに野宿は危ないよ……とりあえず家に来てよ」

「そういえばさっきも聞いたんだけど、何でここに?」

「くまの家の渡辺さんから、あけのがいなくなったって聞いてね」

「それじゃあ晶はわたしを先生に引き渡す気なの?」

「それはあけのしだいだよ。昨日も言ったけど、あけのがよければ家に来てもいいんだよ」

「でもそれだと……」

「大丈夫、来てくれればあけのをこき使ってやるんだから。その代わり私もあけのの力になる……頼るんじゃなくて助け合う、これなら立派な自立だよ」

「長話はこれくらいにして家に戻らないか?話ならここじゃなくてもできるだろ」

 秋隆の一言で、三人は四象の家に戻った。

帰宅すると急に力が抜けたのか、晶は腹を鳴らした。晶と秋隆は昼抜きであけのを探していたので当然といえば当然である。

冷蔵庫を開けた秋隆はだいぶ遅い昼食を作り始めた。

「昨日、あれからあけのはどうしてたの?」

「不動産屋に行ったんだけど受け入れ拒否されて、仕方ないから銭湯に行ったあと大沢池の小屋にいたよ」

「じゃあ何で今日は旧校舎に?」

「ちょっとした恩人がいてね。池で暴漢に襲われそうになったんだけど、その人が助けてくれて……ついでに旧校舎のほうが安全だって教えてくれたのよ」

 あけのはハチのことをオブラートに包む形で晶に説明した。

いくら晶が親友とはいえ「管理社」や「異人」については話ずらかったからだ。

「恩人ね……どんな人?」

「身長が百八十センチはある大男で秋田八兵衛っていうの。助けてもらってから一緒に旧校舎に行ったんだけど、その人突然倒れちゃって看病してたのよ」

「看病までするなんて、あけのもしかして……」

「別にそういうのじゃないよ。ただの恩返しよ」

「あけのは素直じゃないから」

「ホントに違うんだから」

「もしかしてさっき泣いてたのもその人がいなくなったからだったりして……」

「晶、メシできたぞ。友達いじりもそのくらいにしておけ」

 そういうと秋隆は台所から三人前のチャーハンを持ってきた。なぜチャーハンなのかは、残り物で作れてそのうえすぐできる料理だからである。

「君のも持ってきたぞ。いらなかったら残してもいいけど、遠慮なく食べてよ」

「秋兄の料理はみんなおいしいから大丈夫だよ」

「そこまで言うなら……ホントだ、おいしい」

「だろ、特製のスープが利いてるんだよ」

「秋兄の料理好きは相当だよ。和洋中のあらゆる料理が作れるように調味料関係の材料は一通りそろえてるし、作るのに時間のかかる中華スープとデミグラスソースは常備しているほどだもん」

「ああいう煮込み料理は下ごしらえが肝心だからな。ちなみに隠し味に使ったスープも手を加えればそのままラーメンにも使える自慢の一品だから、飲んでみてよ」

 そういうと寸胴からくみ上げたスープを電子レンジで温め、あけのにさしだした。

「おいしい、まるでプロの料理人みたい」

「まあ時々屋台を引いてるから、そうともいえるな」

「屋台?」

「葉っぱのマークが目印の緑葉樹って屋台だよ」

「もしかして神出鬼没の絶品屋台って噂の……」

「神出鬼没って言っても実際にはたまにしか屋台を出せないだけだけどね」

「ってことは、このスープは屋台で出しているのと同じものですか?」

「もちろん。メシ時に切らしたくないってのもあるけど、いつでも屋台を出せるようにしておきたいからね」

 会話が弾む中、秋隆が用意した料理は瞬く間になくなった。

初めは遠慮がちだったあけのも終わってみれば全部平らげていた。

「腹も膨れたところで、君に聞きたい……くまの家に帰るか、それともここに住むのか」

「できればここに住みけど……」

「大丈夫、家出の経緯も一通り聞いてるから。晶も言ったけど、家に来るって事は俺たちにこき使われるって事だから、甘えている暇は無いぞ」

「でもくまの家の方は……」

「それも心配は無い。君しだいで家で引きとってもかまわないって話はつけてある。まあ君の方からも連絡するのが条件だけどね」

 四象家で暮らすことを決めたあけのは四象家の卓上電話を使用してくまの家に電話をかけた。

「‐はい、こちらくまの家です‐」

「‐先生‐」

「‐あけの、今どこ?心配したんだから‐」

「‐ごめんなさい、今晶の家にいます。自分でもわがままだと思うけど、わたし晶の家でお世話になろうと思います‐」

「‐あけのが出て行きたい理由、ちゃんとわかってるから……晶さんのところなら安心だわ‐」

「‐先生、今までお世話になりました‐」

「ちゃんといえたな。これで今日からおまえも家族の一員だ、よろしくなあけの」

「今日からあけのも家族だね」

「晶、秋兄、ありがとう。早速なんだけど、ちょっと頼みたいことがあるんだけど」

「なんだ?」

 あけのの突然の頼みに二人は困惑した。

「探してほしい人がいるの」

「それってさっき言っていた恩人さん?あけの、やっぱり……」

「だからそういうのじゃないって。あの人変な人たちに追われているって言ってたから心配なの」

「変な人?」

 あけのの発言に、秋隆は疑問をおぼえた。

「いいから、いいから……あけののためにもう人肌脱いであげますか。秋兄ももちろん手伝うよね?」

「そんなこといっても今日は人探しばかりだな。でも家族の恩人は俺の恩人だ。とりあえずどんなやつだ?」

 あけのは二人にハチについて特徴を詳しく教えた。

もうすぐ日も落ちようかという時間だが、三人はハチを探し始めた。

 

 家に帰った刹那と京介は再び目標の捜索を開始した。

昼間と同様に動物への接続では、これから日が暮れようとしている影響で、ほとんどの野鳥は使えないため捜索効率は大きく下がってしまう。そのため刹那は大技を使うこととした。

「刹那さん、いけるの?」

「私のことをなめてもらっちゃ困るわ。大体あんたに魔術を教えたのはほとんど私のようなもんでしょ」

「そうだけど……前にこれで失敗したじゃん」

「あれだけの大男は滅多にいないから大丈夫よ。それに今回は秘策があるわ」

 刹那は地面と擬似的に神経を繋ぎ、その重さから目標の位置を特定しようとしていた。

キログラム単位での重量測定は可能だが、ほとんど重さだけの判断のため確実性に欠け、さらに無生物との接続のため負担も大きいため実用度は低い。

だがこれ以上時間をかけずに捜索するにはこれ以外の方法を刹那は持ちえていなかった。

「フェイズⅠ、体重を上限を百五十キロに設定。フェイズⅡ、反応範囲の状況を使役動物から映像転写」

 刹那は範囲内の重量測定に反応があった地域の状況を視神経接続でカバーしようとしていた。

刹那の力量では昼間の捜索の疲れも含めて二十分が精一杯の荒技である。

「見つけたわ、南西部の雑木林よ。どうやら気絶しているみたいね。使役動物で追跡もかけるけど、バレたら追いつけないから急いで。起きだす前に倒すのよ」

「オーケー、刹那さんが見つけたらそこからは俺の仕事。今回は殺す気で行くから」

「京介、やられないように気をつけてね」

 

 秋隆たちはハチを探すとは言っても手がかりを持たなかった。

そこで思いついたのは手当たりしだい隠れるのに適していそうな場所を巡ることだった。

とりあえず戻ってきている可能性を考えて最後に居た旧校舎に向かっていたが、その道中雑木林の前であけのは突然立ち止まった。

「ここにいる気がする」

「気がする……って、あけの、そんなことわかるの?」

「いや、確証は無いんだけど……」

「確かにあんまりここに入る人はいないからな。一応見ておこうか」

「それもそうね」

 秋隆の一声で晶も納得し、三人は雑木林の中に入っていった。

雑木林とはいえ巨木が多く木々の間も広めで、範囲も広大なためほとんど森といってもいいくらいの場所である。

「こっち」

 雑木林の中でも秋隆の発案で、三人はあけののカンで道順を決めた。晶は多少理解に欠けるようであったが、秋隆には何か考えがあると思い文句は言わなかった。

「秋兄、あそこ!」

 雑木林の中心近くに差し掛かったころ晶は何かを発見した。近寄ってみると木の根元に大男が倒れていた。

「ハチ!」

「それじゃ、この人があけのが言ってた……」

「気を失っているようだな。家まで運ぶにはちと重過ぎるな」

 そのころハチを追っていた京介も雑木林に到着していた。

「なんだ?あいつら。見たところ管理社じゃなさそうだな」

 ハチを発見したまではよかったが先に秋隆たちがその場に居て出て行きづらいため、京介は木の裏に隠れていた。

京介の位置からでは暗さもあって秋隆たちの顔までは確認できない。

「おい、しっかりしろ」

 秋隆は声をかけながらハチの顔を平手でたたいた。

「そんな乱暴で大丈夫なの?」

「心配すんなって。見たところ寝てるだけだ」

「ん……」

「眼が覚めた!」

 秋隆の平手打ちの痛みでハチは目を覚ました。

「ここは?」

「ハチ!さっきはどうして?」

「あけのか……そいつら誰だ?」

「はじめまして、秋田さん。あけのの友達の村上晶です」

「俺は四象秋隆。話は家でもできるから、とりあえず一緒に来てくれ」

「あんたらあけのの友達か……自己紹介をされたままで黙っているわけにはいかないな。あけのから聞いているかもしれないが、秋田八兵衛だ」

「とりあえず俺の家に行くから、俺の肩を使ってくれ」

「あんたらにそこまでされる理由が無い」

「理由ならある。あけのは俺の家族だ。そしてあんたは家族の恩人だからな」

「そこまでされるような恩は……」

「あけの、すごく心配してたんですよ。あなたが変な人に追われてるから、速く見つけないと、って」

「あけの、おまえまさかやつらのことを?」

「やつら……って、もしかして秋田さんは追っている人のことを知ってるんですか?」

「いや、知らない。だがそれは置いといて、そこまで言うならお世話になるか」

 晶の様子からあけのが二人に管理社のことまでは話していないことを悟ったハチは、秋隆についていくことにした。

異人かもしれないあけのは仲間であり、その仲間が信頼する人なら信用できたからだ。

管理社のことまでは知らないようであれば、最悪の場合でも自分を犠牲にすれば危害は無いだろう、それがハチの考えであった。

異人を排除するためにそれ以上の力を有する管理社。京介に敗北したことでハチは今後見つかった時点で逃げ延びる可能性はほとんどないと感じていた。

「秋田さん、気づいているか?」

 家の近くに差し掛かったころ、秋隆はあけのに聞こえないよう、小声でハチに話しかけた。

「何のことだ?」

「隠さなくてもいい。さっきからつけているやつのことだ」

「つけているやつって、あんた……」

「殺気は上手く隠しているけどな」

「そうか、においからして昼間に俺を襲ってきたやつだ。あいつは俺の問題、手出しはしないでもらいたい」

「さっきも言ったけどあんたはあけのの恩人、守ってやるのも恩返しだ。それにその体じゃ返り討ちだろ」

「そう言われても……まともに相手をしたら死ぬかもしれないんだぞ」

「それならなおのこと。心配するな、俺はあんたが思っているよりずっと強い」

「二人でなにをこそこそやってるの?」

「秋田さんに好き嫌いを聞いていただけだ」

「ホントに?」

「そうだよな」

「ああ」

 ハチと秋隆の密談にあけのが気づいたが、心配をかけたくなかった二人はとっさにごまかした。

「わかったけど、わたしにはそういうこと聞かなかったくせに……ハチには聞くんだ?」

「あけのは身内だけど、秋田さんはお客さんだろ。お客さんをもてなすのに嫌いなものがあっちゃ困るだろ」

「それはそうだけど……」

「そういうことだから、ちょっと買出し言ってくる。晶とあけのは秋田さんを連れて先に帰ってくれ」

「秋兄、それなら私も行くよ」

「一人で十分だ。あけのは家に不慣れだからな、おまえがしっかり面倒見てやってくれ」

「それもそうだね、じゃあ先に帰ってるから」

 晶とあけのはハチをつれて家に帰っていった。三人が角を曲がって見えなくなる。

「隠れてないで出てきたらどうだ。ここから大体二百メートル、尾行するには結構きつい距離だな」

 秋隆は大声でだれもいない道路に話しかけるが、誰も出て来はしない。

秋隆は家の方向に歩き始めると、角を曲がったところで突然振り向いた。

「黙って通れるとは思うな」

 振り向いた秋隆は後ろの電信柱に手を伸ばす。伸ばした手には京介の肩が握られている。

「あんた、身内の恩人が世話になったそうだな」

「恩人?何のことかは知らないが通してもらおうか」

 秋隆の手を振りほどくと、京介はそのまま秋隆の横を通ろうとした。だが秋隆は前に立ちはだかる。

「あんた、さっきから邪魔して、なんのつもりだ?」

「秋田八兵衛、って知ってるよな?おまえがさっきからつけている男だ」

「言いがかりはやめてくれないか!」

「そうは言ってもあの人は鼻が利くから、あんたが昼間に襲ってきた相手だってわかるんだよ」

「俺は秋田八兵衛なんて知らないし、そもそもにおいなんかで相手が誰かわかるわけないだろう。犬じゃあるまいし」

「あの人は異人……持っているのが犬の因子ならそれくらいできてもおかしくない」

「あんた、異人のことを……」

「知っているさ」

「なら、なんで俺の邪魔をする。あいつは暴走寸前の危険人物なんだぞ!」

「そうかもしれないが、俺が見た限りでは少なくても今日、明日は大丈夫だろ」

「だからこそ今のうちに始末しないといけないんだ」

「必要ない。いざとなったら俺がやる」

「暴走した異人を殺せると思っているのか?」

「俺にできないと思うなら、力づくでここを通るんだな」

「あんたは一体何者だ?」

「少し普通とは違うが、人間だよ」

「ならばそうさせてもらう」

 京介の右ストレートが秋隆の心臓を正確に狙う。だが秋隆は右の掌で難なく受け止めた。

「この程度の攻撃でなんとかなると思ったか?ここを通りたかったら全力で来い!」

「言わせておけば、肉体加速(フォースブースト)二倍速(セカンドアクセル)!」

 秋隆の挑発に京介も得意の肉体強化魔術で応戦する。

連続して放たれる京介の左ジャブは、一発の威力でさえ先ほどの右ストレートを超えている。秋隆はそれだけの破壊力の攻撃を機関銃のごとく受け続ける。

「甘い!」

 速さでは圧倒的に上回る京介であったがその拳は秋隆には届かない。秋隆は京介のパンチの軌道を全てずらして無効化した。

「これなら!」

 左ジャブでは数が足らないと感じた京介は攻撃を両手でおこなうことで手数を増やす。単純に考えて二倍、もはや休みなく飛んでくる銃弾に等しい京介の攻撃だが、それでも秋隆は攻撃を全て受け流した。

「もらった!」

 先に攻撃を当てたのは秋隆だった。

京介のパンチにカウンターで放たれた秋隆の右のパンチは、京介の顔面を見事に捕らえていた。だが、京介は平然としている。

「この感触……そうか」

 元々京介は秋隆たちを発見しなければそのままハチと戦うつもりであった。そのため先ほどの失態を繰り返さないよう、尾行しているときから不可視の甲冑(インビシブル・アーマー)を発動させていた。不可視の甲冑(インビシブル・アーマー)に守られている限り、並大抵の攻撃では京介には通用しない。

 左肘突き、右ストレート、右ハイキック、京介は攻撃を数からコンビネーションに変化させる。見事な三段攻撃も秋隆にかわされるが、これも京介の読みどおりであった。

右ハイキックを出した直後、京介はそのまま右アッパーを繰り出した。秋隆の顎に直撃したそれはほとんど腕の力のみの攻撃だったが、それでも秋隆を宙に浮かすほどの威力があった。

「まさか、あそこから……」

 秋隆は立ち上がるが、次々と繰り出される京介の連続攻撃に秋隆も反撃の手をだす暇がない。

「これで終わりだ、不屈の一撃(レイジングインパクト)!」

 防戦一方とはいえ、秋隆は正確に京介の拳をガードしていた。だが拳撃と伴って京介の左拳から光が放たれる。この光は自然そのものが持つ魔力、「霊力」を京介が収束させたもので、この技の威力は小型のダイナマイトに匹敵する。

「なに!」

まともに喰らえば一撃で命を失うほどの攻撃だが、秋隆は無傷だった。霊距離攻撃だったこともあり、決まったと思った京介は驚きを隠せないでいた。

「インパクトを……」

「さすがに今のは危なかったな」

「この、化け物!」

 多少手加減をしたとはいえ、京介の零距離攻撃を平然と回避している秋隆は化け物であった。京介は闇雲に不屈の一撃(レイジングインパクト)を連発する。

「まだまだだ」

 先ほどと入れ替わり、今度は秋隆が京介を攻め立てる。京介の不屈の一撃(レイジングインパクト)の連打を難なくかわし、懐にもぐりこんだ。

右手の突きに左アッパー、右つま先で蹴り上げ、最後に渾身の右ストレート。秋隆の連続攻撃には見た目にはわからない秘密があった。

「まさか、不可視の甲冑(インビシブル・アーマー)の上から……」

「おまえの負けだ。しばらくそこで寝ていろ」

「まだだ!」

 京介は立ち上がったが足はふらついている。

「おまえはまだまだ見込みがあるな。だがこれ以上はまた今度だ」

「待て」

「何だ?」

「どうやって俺の攻撃をかわした」

「偶然だ」

「そんな、まさか……改めて聞きたいんだが、あんたは何者だ?」

「四象秋隆。一応普通の高校生だ」

「四象……そうか、四象一族の末裔か。どうりで……」

 その場を立ち去った秋隆は、夕飯の買出しにスーパーに向かった。

 

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