ヒナ「お腹空いた…」 作:ひよりん
「…はぁ……」
「いやぁ、ため息が多いね〜、ヒナちゃん?」
「……あなたのせいよ、小鳥遊ホシノ」
ここはシャーレ、時刻はもう21時を回ったところ、少し痛む頭をさすりつつ、暗い室内であくびを一つ
「…はぁ……」
「本当にため息が多いね〜、幸せが逃げちゃうよ?」
「…そうね」
つまらない会話を楽しみながら、仮眠室を出る
“やあ、2人とも目が覚めた?”
…そう、ここはシャーレ、そして私は小鳥遊ホシノに無理やり仮眠室に押し込まれ、襲ってくる睡魔に屈してしまった
「久しぶりにこんなに寝たから、頭がいたい…」
“わかる…!”
「うへぇ、不健康トーク…」
“なら不健康ついでにご飯にしようか”
「どんなついでなのさ、それは…」
不服そうな小鳥遊ホシノを横目に、自身の腹部に意識が向かう
(…お腹、空いた…)
「この時間だし、デリバリーもあまりないわね…カップ麺?」
“ううん、ちょっと出かけてみない?”
「えー?」
「出かける…?」
自動ドアが開くと同時にピロリロと電子音が流れる
「うへ、そういえばあったねー、コンビニ」
“うん、色々買おうか”
(…色々売れ残ってる…)
惣菜棚にある、カップサラダを手に取る
「おっと、ヒナちゃんそれはいけないなぁ〜」
パッと手元のサラダを取り上げられ、棚に戻される
「ヒナちゃんが食べたいのはそういうのじゃ、ないんじゃな〜い?」
「……あなた、何を持ってるの」
「うへ、おじさんはこういうのが好きなんだよね」
ポテトチップスに甘い炭酸ジュース…それからカップ麺の豚キムチ味…
「それ、今から…?」
「もちろん!こういう時はとことんやる!…っていうのが、楽しいとおじさんは思うんだ」
「……」
それはわかる、なんなら普段はその考え方で楽しんでいる側だが…
最近は肌荒れや爪のささくれが気になる、栄養をちゃんと摂りたい気持ちも…
「そんなにサラダが食べたいなら、これにしときなって」
「これは…明太ポテトサラダ……これはサラダとは言わないと思うけど」
「うへ、手厳しいなぁ〜」
“あ、2人ともここにいた、買いたいものは決まった?”
「……」
「うへ……これは流石に、おじさんも何も言えないや」
小鳥遊ホシノはかなり買い込んだと思ったけど……上には上がいる
「先生、もう少し栄養を考えた方がいいと思う」
「というか、1人で食べる量じゃないよね?…何日分?」
カゴ2つに山盛りのカップ麺やスナック菓子とジュース、冷凍惣菜…これは良くない
“え、ええと……備蓄の食品が、ね…”
「本当かなぁ…」
「本当だとしても、毎日これなのはいただけないわ」
“…あ、あはは…”
「…まあ、でも何も食べないよりはいいわ」
先生のカゴから一つカップ麺を手に取る
(焼きそばか…これもいいかも)
「これはもらっておくわ」
“……許された?”
「みたいだね、命拾いしたねえ、先生?」
「早く行くわよ」
会計を済ませ、シャーレに戻る
…レジに立っていた子は随分と幼く見えたけど、こんな時間まで働いていて大丈夫なのだろうか
「さてと、まずは何から開けようかな?」
「…カップ麺だけで十分よ」
「いやいや、こんなにジュースもお菓子もあるのにそれはないでしょ〜?」
“そうだよヒナ、夜は長いよ?”
「……はぁ…」
ペリッ…ポテトチップスの袋が開いた音がした…ガサガサ、バリバリ…
「うーん、これ微妙じゃない?」
“そうだね、もっとバジルが強いと思ってたのに…あ、ほら、ヒナも”
……ここまできて、抵抗を続けるのもバカらしくなってきた
「はむ…」
パリッ…波型に切られたポテトにところどころチーズの塊、そしてピザのシーズニング…
(確かに、バジル味を謳ってる割には弱い…でも、悪くないわね)
「あ、こっちもいいよ」
“私これ好きなんだよ、知ってる?たこ焼き味だけ同じ値段なんだけど、原価が2円も高いらしいよ!”
「うへ〜、そりゃお得だぁ!」
麩菓子を手に取る、コンポタージュ味…ギュッと力を込め、袋の中で砕く
そして封を開き、細長く、小さくなった麩菓子を口に運ぶ
「……うん、おいしい」
“へえ、ヒナは砕く派なんだね”
「そのまま食べても美味しいけど、すぐフニャフニャになるから…それに、味も濃い気がするし…」
「えー、おじさんはこう…バリッ!って噛み砕く方が好きだなぁ…あれ、これチーズ味だと思ったら納豆だ…」
“パッケージ似てるよね、チーズはこっちかな…うん、美味しい”
「あー!?…先生、それはないよ…」
「……そろそろね」
タイマーの音が鳴る、そう、カップ麺の完成の音
それぞれが蓋をぺりぺりと剥がす中、私はお湯を捨てる、カップ焼きそばだからもう一手間あるのは仕方ない、でも…
(…この、フライ麺の匂いだけでお腹が減る…)
ソースを開け、ぐるぐるとかき混ぜ、全体を茶色く染める…なんて匂いだ、この匂いはたまらない
“…おお…この匂いはいいね”
「うへ、豚キムチの匂いもすごいけど、焼きそばには負けるなぁ…」
よく混ぜたら最後は…付属のカラシマヨネーズをかけて完成…
「いただきます」
「いただきます、お腹空いたあ、ずるるっ!…うん、この時間のラーメンは最高だね」
小鳥遊ホシノはスープが制服に飛び散るのすら気にせず麺をすする
(豚キムチ味……)
焼きそばを箸で持ち上げ、すする
「…うん、おいしい」
甘めのソース、そしてそれをたっぷり絡ませた麺、申し訳程度のキャベツ、それらも美味しい
だけどここにからしマヨネーズの酸味と辛味が入ると途端に味が引き締まる
(油っこさもあんまり気にならない、それに、マヨネーズの強いところと弱いところの差がいい…)
「うへ…美味しそう……一口ちょうだい?」
「いいわよ」
「やったあ、じゃあこっちもあげるよ」
カップを交換し、豚キムチラーメンを一口…
「……これは…」
乾燥させたキムチが入っているのだろう、辛さと酸味が強い…けど、それ以上に気になったのは…
(ホットスナックを入れてる?…これは、チキン?それに、焼き鳥まで入ってる…?)
揚げたチキンを刻んで入れてある、それがスープに油分と旨みを足している…
「どう?美味しいでしょ」
「…慣れてるのね」
「そうだよ、こういうのに慣れてるおじさんに任せて…これ、入れてみない?」
「…それは」
小鳥遊ホシノが取り出したのは、明太ポテトサラダ…それを、まさか…
「うへへ…美味しいんだあ、これ」
焼きそばにポトリと、トッピングされた…そして、こちらへと差し出される
「……」
…勝手に焼きそばに、そう思ったけど…わかる、これは美味しい
混ぜるのではなく、少しのポテトサラダと焼きそばを口に運ぶ
「……うん、美味しいわ」
「でしょ!」
このポテトサラダはからしマヨネーズとは違うまろやかさ、そして刺激をもたらしてくれる
(ポテトサラダ自体も美味しい、それにソースの濃い部分と食べると塩辛さをまろやかにしてくれる…)
焼きそばに少し合わせて食べるもよし、ポテトサラダをガッツリと持ち上げて少量の焼きそばを楽しむもよし
これは思ってた以上に相性がいい…気づくとほとんど容器は空になっていた
“ふう…美味しかった”
「先生、もうギブ?じゃああとのお菓子は2人で食べちゃおうか」
「…まだ食べるの?」
「もちろん、そうだ、先生映画流してよ、そっちの棚じゃないやつ」
“……ホシノも海好きでしょ?”
「うん、好きだよ、でもサメが人を襲うところは見たくないなぁ」
“はい…”
映画を眺めながらポテトチップスや駄菓子を楽しんだ
ポテトチップスを口いっぱいに頬張り、甘い炭酸ジュースで流し込んだり、チョコレートを乗せてみたり
「あ、この映画好きなんだよ!」
“へえ、ホシノも見たことあるんだね!”
「……どういう映画?」
「この映画でさ、ハンバーガーを食べるシーンがすごく良くてね!」
“わかる!でもこの映画の紹介には向いてないかな!”
「???」
「あ、アイス買ってあるよね!ミルクシェイク作ろっと!」
“いいね!”
映画の話をしながらミルクシェイクを飲んでみたり
“…くぅ……”
「…寝ちゃったね」
「そうね、次はこれとか…」
「え、まだ見るの?しょうがないなぁ…」
横になりながら映画を見て、いつの間にか眠ってたり…
“あ、起きちゃった?”
「…小鳥遊ホシノは…まだ寝てるのね」
“うん、もう少し寝ててもいいよ”
「……そうね」
“起きたらハンバーガーを注文しようか”
「栄養満点の朝ごはん?」
“そうだね”
(……すごく、楽しい1日…)
また微睡に体を委ねて、意識を沈めて…
「うへ、先生もわかってないなぁ…せっかくならチーズバーガーを頼まないと」
“いやー、朝からは重いと思って”
「…そもそも、野菜多めのハンバーガーも充分重いわ……うぷ…」
次の日はしばらく胸焼けが治らなかった
あとがき
スレも落ちたし書きたいこともしばらく書いたので
一旦食休みします
またスレと共に戻ってくることがあればよろしくお願いします