ヒナ「お腹空いた…」 作:ひよりん
「……はぁ」
空腹、夜の遅い時間、1人きりの委員会の部屋
もう慣れてしまった気もするが、この空腹にだけはどうしても抗えない
(お腹、減った……)
こうなってはもう私になす術はなく、ただ食事を取るために委員会の部屋を出て、食堂を目指す
夏の夜風は生暖かい、火山から吹き下ろすのもあって、熱く、そしてじっとりと蒸れた風
(……決めた)
今日の食事はアレにしよう、一度決めたらもう変えられない
この時間に食べるのにとっておき、夜食の代表…
「まずは…と」
お米を軽く洗い、水に浸す、30分ほど水に浸せば良いだろう
この長い時間を有効活用するために冷蔵庫を漁る
(あった、出汁をとった後の昆布…それに鮭、こっちは…?…青のり…これもいいわね)
出汁をとった後の昆布、これは給食で再利用するために残しておいたものだろう
細かく刻み、醤油とみりんで炊く、簡易的な佃煮
それを煮込んでいる間に塩をした鮭を油を引いたフライパンで焼く
(…そうだ)
急遽予定変更、焼き上がった鮭を取り出し、ほぐし身にする
空いたフライパンは斜めにして少量油を足して熱しておく
(このくらいあれば、できるはず)
小麦粉、水を混ぜたものを箸につけ、その油の中に落とすと…
「できた、天かす」
キッチンペーパーに置き、油を切る
ご飯をレンジで炊き、煮詰まった佃煮の汁気を切る
これで大体の準備はできた、あとは…
レンジからご飯が炊けたことを知らせる音、だけどそれをあえて無視する
炊き上がってから5分…10分してようやく取り出す、甘いお米の香り…完璧な炊き加減…!
容器の蓋を開け、即座にしゃもじで底からすくいあげる様にかき混ぜ、もう一度蓋をする
その間に器に塩と水を用意、今度こそ準備完了
水で手を濡らし、塩を手に取り塗り込む、そして熱々のご飯を…握る
「っ…熱い…!…でも…」
(おにぎりは熱いうちに握る方が圧倒的に美味しい…!)
2度、3度ほど握り、形が整ったらお皿に移す、それを繰り返す
(今度はコレね)
昆布の佃煮を入れてみたり、鮭のほぐし身を入れてみたり
「…こんなものかしら」
鮭と昆布のおにぎりと塩むすび…まずはこれで十分、だが
(あとは…)
残ったご飯をボウルに移し、ごま油、麺つゆを加えて切り混ぜる、全体が色付いたら天かすと青のりを加える…
「それで、これを握る」
おにぎりを量産し続け、しばらくすると…
(作りすぎた…)
明らかに1人分ではない、4〜5人…いや、もっと食べられるくらいの量のおにぎり…
「……まあ、いいわ…」
とにかく今はお腹が空いている
一人分のおにぎりを皿に取り、席に運ぶ
「いただきます…はぐ…はふ」
一口目は確かに固い、固く握られたおにぎりが、口に入ると柔らかくほどけていく
塩気もあり、お米の甘さもある、熱々のおにぎり…これはごちそうだ
「はふ…うん…」
少し食べ進めると昆布の佃煮にあたる、甘めに煮詰めたがしっかりと醤油の旨味と香ばしさがある…
ご飯の上に乗せただけでも絶品だが、おにぎりに詰めることでより一体感を増している
(細かく切ったのが効いてるわね、食感もアクセントになってて良い…)
「はふ…もぐ……ごくん…むしゃ…はふ」
次を手に取る、今度は鮭だ
(…塩が強いけど、でも…うん、ご飯が甘いからおいしく食べられる)
ほぐし身にしたことで食感の変化もなく、ご飯に味がまとわりついている
(これなら混ぜ込むほうが良かったかも…さて)
最後は混ぜご飯のおむすび、これに関しては…もう、色々とずるい、この匂いはたまらない
「…はぐ……うん…ふふっ…」
笑ってしまうほど美味しい、油が入っているのに油っこくなく、パクパクと食べられる
天かすのざくざくとした食感、青のりの強い香り、甘辛いめんつゆ、そしてごま油…
このごま油がいい、普通のおにぎりよりも口の中でよりほどける
「……あれ」
先ほどまで食べていたおにぎりはどこへ?気づけばなくなっていた…なくなったのなら仕方ない
(…あと一つだけ…)
パクパクと食べていると皿の上のおにぎりは消えていく
…気づけば幾つ食べたかわからなくなっていた
「……ラップしなきゃ」
残りのおにぎりをラップし、冷蔵庫に入れる
そして席に着く…
「…ふぁ……」
あとはただ、力尽きたように眠った
当然の如く怒っていたフウカにはおにぎりを差し出して機嫌を取った、今回はなんとか成功