ヒナ「お腹空いた…」 作:ひよりん
「…はぁ…」
時刻は3時、今日のお昼は焼き魚だったらしい…らしいというのは、食べ損ねたからだ
(…秋刀魚なんていいわね、時期には少し早いけど…)
焼き鮭、焼き鯖もいい…果たしてどんな魚が出たのだろうか
そんなことを思いつつ、空いた時間で空腹を満たすために食堂へと向かう
「フウカ、いる?」
「あ、ヒナさんお疲れ様です」
「ジュリ、仕込み中?フウカは…居ないのね」
「フウカ先輩は今買い出しに出てて…」
「そう…何か、あまり物とかあったりしない?」
「……えーと」
ジュリが気まずそうに目を逸らす、どうやらアテが外れた、適当に何かで空腹を誤魔化すしかない…
「…あれ、それは?」
ジュリが片付けようとしているボウルに入ってるのは…
「あ、このトマトソースですか?お昼のあまりですけど…」
「お昼は焼き魚じゃ…?」
「はい、アジの焼き物にトマトソースを添えた物でした」
(…アジ…なるほど、でもそれならフライにしたいわね…)
手間の都合上、フライにはしなかったのか…
そんなことを考えつつ、トマトソースを眺める
「…ねえ、それでいいから分けて貰える?」
「え、はい、構いませんけど…」
ジュリの困惑もわかる、でもこれをそのまま食べるわけではない
冷やご飯を拝借し、それにまわしかけ、冷蔵庫からスライスチーズを…
「あ、コレも合うと思います」
「…牛乳、いいわね」
冷やご飯に大さじ2杯ほどの牛乳、そしてたっぷりのトマトソースとスライスチーズを2枚
器にラップをかけ、それをレンジに入れて少し温める
「…はぁ…お腹空いた」
「今日忙しそうでしたもんね…」
レンジが完成の音を鳴らす、ラップをあけると蒸気と共にトマトの香りがフワッと広がる
あとはペッパーミルでガリガリと黒コショウを削って振りかければ完成…
「いただきます…」
よく混ぜて、トマトソースとチーズを絡めて口に運ぶ
「はふっ…あふ……うん…美味しい」
トマトの旨みとチーズの塩気、黒胡椒の香り…どれもガツンと主張してくる
(チーズ2枚は少なかったかな…)
そう思いつつも、チーズの少ないところはトマトソースが、多いところはチーズが
量のばらつきがアクセントになっていて良い…
「…わかりにくいけど、牛乳もいい仕事ね」
「良かったです!」
牛乳がなければもう少し刺激的な味わいだったのだろうか、それも気になるがこのまろやかさも食べやすくて良い
さすがは給食部と言ったところだろうか…
「はぐ…うん……やっぱり…足りないわね」
…半分ほど食べたところで、決断した
チーズをさらに2枚投入し、レンジに、そして温まったものをよく混ぜる
「……ふふ」
全体にまとわりつくチーズが暴力的…口に運べばチーズ、チーズ、チーズ
ご飯やトマトソースの食感はあれど、口に広がるのは圧倒的にチーズ
(主役がチーズみたいになってる…今度はトマトソースを…)
トマトソースを継ぎ足して、今度はご飯を継ぎ足して…
「……結構食べたわね」
「…え、ええと…そうですね」
…チーズもトマトソースも冷やご飯も、どれもそこそこ消費したあたりで冷静になる
コレは、食べ過ぎた…
「…ごちそうさまでした、じゃあ、私は…」
「ただいまー、今日はいろいろ仕入れて…あれ、ヒナ?」
「あ、お、おかえりなさい、フウカ先輩…」
「…お邪魔してるわ、その…もう食べたから帰るところ」
「え、そうなの?せっかく今から作るところなのに、今日はチーズをたっぷり使ってドリアにしようと思って!」
「いいわね……あ」
…マズイかもしれない
「…えっと、フウカ先輩…その、チーズは、その…」
「え?何?どうしたの?」
買ってきた食材を片付けるために冷蔵庫を開けたフウカの顔は、きっと今頃引き攣っているのだろう…
(…まあ、いいか)
だってもう、私は満腹なのだから
「な、何よコレー!!?」
…食堂にフウカの悲鳴のような怒号が響いた