ヒナ「お腹空いた…」 作:ひよりん
「…はぁ…」
祭囃子、賑やかな笑い声、夜なのにキラキラと明るくて賑やかな街
ここは百鬼夜行…お祭りの多い学園
「ため息が多いね、委員長」
「…結構忙しかったから」
芋煮をたらふく食べた後、眠気に襲われながら色んな話をした、数戦手合わせもした
…おかげですっかり腹ごなしは済んでいる
(屋台、行ってみたいな…)
「そう言えば委員長、パトロールには行かなくていいの?」
イオリがイタズラっぽく笑う、なるほど
「……そうね、パトロールは、必要ね」
そうだ、ここにはゲヘナの修学旅行で来ている
ゲヘナの生徒が大人しくお祭りを楽しむだろうか?答えは、100人に聞こうが1000人に聞こうが否
百花繚乱もパトロールに出ているらしいが、まさか百花繚乱に任せて私たちはぐうたらとしているわけにはいかない
「行くわよ、イオリ」
「よしきた!」
イオリを連れて、お祭りの屋台の並ぶ道を歩く
ヨーヨー釣り、フランクフルト、チョコバナナ、金魚すくいに射的、唐揚げ…
(……)
これは良い、どこからも良い匂い、そして楽しそうな声
「へー、色々売ってる…」
「……」
ふと、人混みの中の1人の生徒を目で追う…
(あの面は……いや…屋台にも同じものが…?…紛らわしいわね)
「…はぁ……気が休まらないわ」
「そう?私は結構好きな雰囲気だけど…あっ!委員長、焼きそばだって!」
焼きそば…焼きそばといえば、前にフウカに作ってもらった焼きそばは絶品だった
噛み締めれば麺から出汁の香り、キャベツも甘くて豚肉はカリッとジューシー…
ソースも紅生姜も主張は強すぎないのに存在感があって実に美味しかった
「……」
こういう屋台の焼きそばもきっと、おいしい
たくさんの麺と具材をざっくりと炒め合わせ、ドバドバとかけられたソースの甘辛い味
きっと麺が焦げてまとまって固まった部分もあるだろう、それもご飯のおこげの様でまた美味しい
(…食べたい)
「うーん、でもなんか気分じゃないな、あっ委員長、向こうにわたあめの屋台もある!」
「わたあめ…?」
…確かに美味しい、でもお腹にはあまりたまらない
ふわふわの綿飴は口に含むと一瞬で溶けてしまう
ふんわりしているのに、口に入れればしっとりと溶けて…甘い
(…悪くないかも)
「あ、でもやっぱりお腹減ってるならあそこの焼き鳥とか?」
…確かに、この焼き鳥の匂いはいい…
鳥の皮めの脂が弾ける匂いも、パチパチという音も、最高に食欲をそそる
ネギもきっとじっくりと火を通されてきっと甘くなっているのだろう、それに塩気のある鶏肉…
「…食べながら歩けるし、これなら…」
そこまで浮かれてる様にも見えないだろう、そう思い屋台に近づくと…
「あ…」
「……あなたは」
…青い陣羽織は百花繚乱のトレードマーク
「…御稜ナグサ」
「…ゲヘナの…」
「……えっと?」
…なんともいえない空気が流れる
(スッ)
「…これ」
差し出されたのは、今買おうとしていた焼き鳥
「…いいの?」
「うん」
焼き鳥を2本、受け取り、片方はイオリに渡す
「ありがとう、いただきます」
「いただきます」
パクリ、鶏肉を加えて串から外す
「もぐもぐ…」
「…うん、旨い!」
イオリほど大袈裟には喜べないが、これは確かに美味しい
シンプルだからこそ、素材の味が活きる
弾力のある鶏肉、塩気も程よく、噛み締めるほどに鳥の旨味が染み出してくる
「…美味しいわ」
「良かった」
次は間に挟まれたネギと肉を一緒に口に含む
しゃき、じわ…これは良い、ネギの水分に旨味が詰まっていて、これはもはや出汁の様だ
それに鶏肉、この相性は疑う余地も無い
ネギをじっくり焼くことで引き出された甘みと塩気の効いた鶏肉…
「うん…これはいいわね」
3人で歩きながら焼き鳥を食べた
…途中で何回か絡まれたが、撃退しているとそのうち絡まれなくなった