ヒナ「お腹空いた…」 作:ひよりん
「…はぁ…」
今日は今朝から意見交換会、模擬戦、詰所見学、パトロール同行、その他諸々とかなり、かなり忙しい
(パトロール…というより、これは…)
歩いていればすぐ喧嘩に出くわす、案内役のレンゲ曰く、「喧嘩と祭りは百鬼夜行の華」だという
(それにしても、そろそろ…)
もうすでに14時ごろ、今日はお昼ご飯をまだ食べてない…
「…はぁ…ようやく落ち着いた…」
レンゲが一つ、ため息をつく、どうやらこの状況は彼女にとっても想定外だったらしい
「お昼でも食べましょうか」
「あー、うん…でも、この辺には…」
…いろいろお店はある、番傘や下駄、風鈴…食事処は一軒だけ
「あのお店だと、何かあるの?」
「いや……うーん…アタシらは良く行くんだけど、お客を連れて行く様なところじゃ無いっていうか…」
「…別に構わないわ」
「いや、でも…しばらく戻ったらうなぎとか…」
「うなぎ…」
確かにうなぎは魅力的だ…でも、私がそのお店を見かけたのはかなり、かなり遠い位置…
「せっかく百花繚乱のパトロールに同行してるんだから、あなたたちが普段食べてる物と同じものを食べさせて」
「…そういう事なら、まあ…」
本音は、常日頃から利用する様な食堂ならハズレはない、そう考えたからだ
「らっしゃーい!」
「おばちゃん!いつもの!2つちょうだい!」
(いつもの…何が出てくるのかしら)
ワクワクを隠し、席に着く
「はい、お待たせしました」
少しして出てきたのは…
「……これは?」
「これが、時間のない時にここで食べるご飯なんだけど…」
茶色いご飯に、お味噌汁、めざしの焼き物が2つと沢庵、それから…
「この小鉢に入った白いのは?」
「それはとろろ、山芋をすりおろした物で、出汁醤油が混ざってるからそのままでも食べられる」
「…え、何してるの?」
レンゲは汁をご飯にかけ、それにめざし、沢庵を乗せて崩してかき混ぜる
その上からとろろ…
(…これは、前にチナツと食べたものに似てるけど…)
あの時はそこまでぐちゃぐちゃではなかった、手早く栄養補給をするための食事という意味では効率的だけど…
風情とか、情緒とか、そういうものが欠けている……
(割り切って、食べないと)
これは仕事の一環だ、普段の業務の延長線
そう思い汁をかける、そしてめざしをおいて箸で崩し、たくあんととろろ
乱雑に混ぜてかき込むように口に流し込んで……
「ずずず……あれ…?」
(…これは…意外と美味しい…?)
お味噌汁自体が上等で、出汁の香りもいい、とろろが全体に混ざっているのもあって、食べやすい
だけど…気になるのはこの強い出汁の香り
(これはご飯自体から、いい香りが…しかもこれ)
「コショウ?」
「そうだよ、ここのご飯は胡椒飯って言って、出汁と胡椒で炊いてるんだ」
「…なんでそんな事を?」
「それだけでも味がついてグッと美味しくなるし、質の低いお米でも臭くない、なにより風邪の引き始めに効く!」
なるほど、つまりこれは、体調不良の予防にもなるのか
めざしも骨ごと食べられる、その上ご飯から香る胡椒が抜群に合う
「…これ、おいしいわ」
ぽり、時々口に入るたくあんがものすごく良い
簡単に食べられて、お腹も膨れるのに栄養も取れるのだとしたら、これは通うのも良くわかる
「…ごちそうさま」
「ごちそうさま!」
支払いを済ませ、さっさと店を出ると…
「あ、レンゲ先輩!」
「ヒナ委員長、奇遇ですね」
別れてパトロールをしていたユカリとチナツと出会した
「……それ」
2人が手に持っていたのは、からあげに焼きそば、わたあめ、チョコバナナ
「ユカリ…」
「ち、違いますの!これは…!」
チナツが持っていたチョコバナナをさっと手に取り、レンゲに差し出す
「私達も少し肩の力を抜きましょう」
4人で屋台を回りながらパトロールした