ヒナ「お腹空いた…」   作:ひよりん

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第30話

「……?」

夜、意見交換会も終わり、遅い時間ではあるものの夕食をそろそろ、と言った頃合いだった

モモトークに一件の通知、差出人は…

「ハルナから?」

……

「…ふうん……」

アコに一言、言伝をして、私は宿舎を出た

 

「お待ちしていました、ヒナさん」

「…で、要件は?」

「お察しの通りです、食事はまだと聞いていますが…どうしますか?」

「……参ったわ」

「ふふ、ヒナさんに初めて勝てましたね」

当然こちらもここに来た時点でそれを期待していた

百鬼夜行における、ハルナが人を招いて食べたいもの

それがマズいはずがあるだろうか

「それで、何を食べるの?」

百鬼夜行で外食…

お寿司だろうか?それとも蕎麦なんかもいい、薬膳料理なども有名らしいが…

そういえば事実上の生徒会を務める陰陽部が行きつけの湯豆腐の店があるとも聞いた

今の時期にはまだ早いがそれも悪く無い…

「今日食べるのは…天ぷらです」

「……へぇ…」

…ふと、考え込む

「毎回揚げ物じゃない?」

「……そうですか?」

 

2人でのんびりと歓楽街を歩く、やはりこの辺りは人も多い

途中すれ違ったゲヘナ生はことごとく目を丸くしていたから明日辺りには噂になるかもしれない

「ここです」

「…へえ」

特別高級感はない、ゲヘナでは高級品のイメージだが、百鬼夜行ではそこまでなのだろうか

「良い匂いね」

油の匂いだが、決して臭くない、そういえばレンゲ曰く、「揚げ油の臭い店はマズい」という話を聞いた

「早速入りましょう」

店内に入り、カウンター席に通される

目の前で揚げるスタイルらしい

「コースでお願いします」

「かしこまりました」

「……来たことがあるの?」

「はい、ランチで来たばかりです、他の美食研究会のメンバーと」

「……ふうん」

わざわざそれで夜に、私を?

なんとも理解し難い話だ

「お昼は天丼しか無いので、ですがリーズナブルで、とても美味しかったんです」

「天丼…」

…きっとそれも美味しいのだろう、そう考えるとお腹が減る…

ことり、目の前に紙の敷かれた皿が置かれる、そして少しして…

「綺麗ね」

やや反り返ったエビ、衣が薄いのだろう、身の赤色が透けている

「いただきましょう」

「…いただきます」

何もかけなくて良いのだろうか?そう思いながらハルナに従い、口に運ぶ

さくり、軽やかな食感、そして塩気、エビの旨み…

「…美味しい…」

これは、シンプルだ、だけど…洗練されている

衣が邪魔にならないほど薄い、だけど食感はある

エビも塩気に負けない強い旨みがある

あっという間に一本消えたかと思うと、次に置かれたのは…

「これは?」

丸のままの小魚が3匹

一口ほどの大きさのそれを口に運ぶ

カリッ…これは先ほどとは違う、食感が強い、魚の風味もある…でも、この華やかな香りは…?

「なるほど、小鮎ですか」

「こあゆ?」

「鮎という魚の未成熟な個体です、鮎自体、香魚と呼ばれる程よい香りを発する魚なのですが…」

「へえ…」

ヒレの部分や頭も食べられる上に食感が非常に良い…でも、コレは口に残る味わい…

「おや…これは、レンコンですか」

「次は野菜なのね」

厚切りのレンコン、サクリ、ほくっ…コレは予想外の食感だ、レンコンはシャキシャキしていると思ったのに

「この大きさだと…下茹でもしてありますね、お次は舞茸ですか」

「今度は、アスパラ…」

野菜を何品か食べた後、もう一度エビが出てくる

先程食べた物と違い、丸い粒々のついた天ぷらだがやはり美味しい

「食感を変えてきましたか、面白いですね」

エビの天ぷらの次は、カボチャ、この時期には早い気がするが、甘くて美味しい

次は…とうもろこしの天ぷら

「これ、美味しい…!」

サクサク、プチプチ、甘いのに塩気が効いてて美味しい…!

その次に出てきたのは、小さい白いブロック状の天ぷら

「これは…イカですね」

さくっ…とろり…これは…

「生…?」

「レアに仕上げている様ですね、コレは美味しいです」

噛めば噛むほどイカの甘みが出てくる、火が通った部分は歯切れ良いのに、中心はねっとりと甘い…

「おや…どうやらもう終盤の様ですね」

…次は小さな野菜のかき揚げ…とうもろこしも入っていて、すごく美味しい

「…あれ?」

また、エビ…でも今度は揚げられた殻と脚まで添えられている

エビの殻を食べるのには抵抗があったが、口に運ぶ

ザクッ…ザクッザクッ…やはり硬い、だけどコレは美味しい、エビの強い香りが心地いい

「…ふぅ…」

一通り天ぷらを食べると、茶碗蒸し

(…具がない…)

美味しかったけど、具が入ってる方が好みだ…

これで終わりだと思うとなんだか物悲しい…

「さて、ヒナさん、メインディッシュですよ」

「え?」

ザクッザクッ、何かと思えば目の前で大きな魚の天ぷらが切り分けられ、どんぶりに盛り付けられている

タラリとタレがかけられたそれはまるで宝石の様

「……これは?」

「穴子の天丼ですね」

ゴクリ、正直まだ物足りなかったところだ、お味噌汁もあるのが嬉しい

目の前に置かれた丼に箸をつける

「…はぐ……うん…これは、良いわね」

穴子はサクサクふわふわ、タレも甘じょっぱいけど旨味がものすごく強い

これは私の好みをストレートに貫いている…

「あぐ…うん、はぐ…」

熱々のご飯にこの天ぷらとタレ、これがおいしくないはずがない

(…というか……これだけで良かった…)

「……ふぅ…ごちそうさま」

「ごちそうさまでした」

かなり食べた気がする、ハルナの方は最後かなり苦しそうだった、おそらく、最後の天丼は私の好みに合わせてくれたのだろう

「…いかがでしたか?」

「……私は、ランチの方が合ってるかもしれないわね」

「そうですか」

「でも……悪くなかったわ」

(フウカに頼んだら天丼作ってくれるかしら…)

 

…その後、お会計で目が点になった

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