ヒナ「お腹空いた…」   作:ひよりん

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第33話

「…お腹、空いたわね」

夜遅く、と言ってもまだ9時くらい…普段のことを思えばまだ早い時間

食堂に一つ声が響く

「じゃあそろそろ夜食にする?」

その声に応えるように、一つ声が返ってくる

「そうね、フウカ、お願い」

…今日の夜食は特別だ、なにせフウカが直接作ってくれるのだから

といっても、作るのは乾麺を使ったラーメンなのだが…

「じゃ、手伝って」

「え?」

「早く食べたいでしょ?」

「……わかったわ」

これは想定外、食べるだけの予定だったのに…

止むを得ずキッチンに立つ、フォークと豚バラのブロック肉を渡される

「はい、これ、刺して穴開けて」

言われた通りに豚肉を刺して穴を開ける

「丸めて鍋に入れて」

「……」

言われた通りに紐で縛り、鍋に入れて湯を張り火にかける

(めんどくさい…)

ペイッと生姜のカケラとネギの青い部分を放り込み、火を通す

……違う、こうじゃない

めんどくさい、これなら私1人で作って食べるのと何も変わらない

(……はぁ…)

火が通った豚肉を醤油とみりんを煮詰めた調味液が入った袋に移し、放置

…今の状況に不満はある、だけど、フウカの機嫌を損ねたくない

ふと、フウカの方を見ると…

「もうこっちは準備できたから、あとはその即席チャーシューを切り分けるだけ」

「…もう?」

いつのまにか切り分けられたネギやらキクラゲやら、そしてグラグラと煮えている湯

(…まあ、いいや)

フウカにチャーシューを渡し、切り分けてもらう、10分もつけてないのに意外といい色をしている

皿に移し、麺を待つ…前に

(……)

切れ端を一口

(……おいしい)

外側は濃い味、だけどやはりちゃんと味は染みてない

チャーシューはほろほろが好きだけど、このギュッと噛み締めるタイプのチャーシューも悪くない…

少し厚めに切ってあるのがまた憎い

「さて、じゃあ仕上げね」

フウカが乾麺を鍋に落とし、茹でる

その間に丼に粉末スープ、ラード、香味油、そして…

「え、何してるの」

スプーン2杯ほどの牛乳…それからお湯を入れて、混ぜる…

「気持ちはわかるけど…これが意外といい味出してくれるの」

唖然としていると茹で上がった麺がスープに投下され…ネギ、キクラゲ、チャーシューが盛り付けられて完成…

「はい、お待ちどうさま!」

(……牛乳ラーメン…)

「いただきます…」

スープをレンゲで掬い、一口…

「ずず……あれ…」

…確かに、ドバドバ入れた訳ではない、だから主張が弱いのはわかる

でも、コレは…

「どう、美味しいでしょ」

「…そうね、これは…美味しい」

牛乳はそのクセをやや残しつつもスープの濃厚さを後押ししている

コクがある、複雑で、まるで、お店で食べるとんこつラーメンのような…

「ずるる…うん、美味しい」

…まるでお店で食べているみたい

細切りのキクラゲとネギも相性がいい、キクラゲの食感、ネギの香り、口がサッパリしたところにチャーシュー…

「はぐ……あぐ…うん」

やはりこのギュッと噛み締められるチャーシューも美味しい…

チャーシューで麺とキクラゲを包み、口に運ぶ

「うん…これは……うん…」

流石にちょっと硬すぎた…

「ふぅ……あれ…」

いつのまにか麺も具も無くなった、これで終わりか…と思うと

「はい、替え玉…まだ食べるでしょ」

「…ありがとう」

殆ど具のないスープに麺を落とす

麺をほぐして、そしてすする

「ずるるっ…ずずっ…」

一心不乱に麺をすすり、空になれば替え玉を頼む

「ごちそうさま…」

すっかりスープも無くなって、お腹もいっぱい

というか思い返してみると、チャーシューを茹でる以外私は何もしていない

「……フウカ、ありがとう」

「え、うん…」 

(まさか、10玉いくなんて…)

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