ヒナ「お腹空いた…」 作:ひよりん
「お腹すいたわね」
“そうだね、そろそろお昼にしようか”
今日は私はシャーレに当番に来ている、ゲヘナと違って平和なここで少しゆっくりと過ごさせてもらっているわけだが
“ヒナ、お昼は持ってきた?”
「…今日はね」
“あれ?てっきりないと思って何頼もうか悩んでたのに”
それは少し失礼じゃないかと思いながら、ビニール袋を見せる
“それは?”
「お昼よ」
“……え?”
袋から出したのは、キャベツ、豚肉、中華麺など
“…もしかして……?”
「先生、焼きそばは好き?」
“もちろん!!喜んで!”
「まだ何とは言ってないけど」
“え、食べられないの…?”
…大袈裟に悲しんで見せる先生にため息をつく
「作るから、少し待ってて、一緒に食べましょう」
“わかったよ、ありがとう!”
…今日の焼きそばはかつてフウカが作ってくれた物、その作り方を聞いて材料も揃えた
(…大丈夫、きっと上手くできる…)
熱したフライパンに油を垂らし、その上に豚薄切り肉を並べる
ジュージューといい音が鳴る…これだけでもご飯に乗せて食べたいところだけど
(塩胡椒を振って、片面にしっかり火を通したらキャベツ…)
ざくぎりにしたキャベツにしっかり火を通す、軽く焼き色がつき始めたら蓋をして、蒸し焼き…
“おお…良い匂い…”
キャベツが全体的にしんなりとし始めたら麺を入れ、出汁粉を溶いた水をまわしかけ、麺をほぐす
水分が蒸発して水気が無くなってきたら麺をフライパンに押し付ける
ジリジリ、チリチリ…油で上がるような音が聞こえたらみりんを垂らし、ソースを回しかけ、よく混ぜ合わせて完成
「できた…!」
“おお……美味しそう、ヒナって料理得意なんだね”
「…えっと、そんなに…」
適当に盛り付け、紅生姜とあおさのりをふりかけ、これで食べられる
“いただきます!”
「いただきます…あむ」
端で掴み、麺を口に運ぶ
“うん、美味しい!”
…悪くはない、確かに美味しい、けど…
(何か違う、フウカの作ったやつほど美味しくない…)
…当然だろう、フウカほどの練度は私にはない
だけど、このレシピはフウカに教わった物なのに…何が違うんだろう
(…豚肉も、キャベツも、麺も…うん)
全て、少しずつ劣っている、だから、全体のクオリティが低く感じる
「……」
“どうしたの?”
「え?」
“もしかして、疲れちゃった?…ごめんね、いつも忙しいのにご飯まで用意してくれて…”
「い、いや、別に…このくらい…でも、これは…」
“すごく美味しいよ、ありがとう”
「……」
あれこれと言葉を並べたかったけど、その一言で何かを言う気も無くしてしまった
「…本当に美味しい?」
“うん、すごく美味しいよ”
少し口に運ぶ、出汁とソースの甘くて香ばしい香り
豚肉と麺をあえて焦がしたカリカリとした食感、キャベツのザクザク感
甘辛いソースと塩胡椒…酸味のある紅生姜
(……確かに、美味しい)
改めて自分の作った焼きそばを口に運ぶと、これは美味しい焼きそばだ
…別に、比べなくてよかったのに…
(…少し、疲れてたのかも)
今はこの焼きそばで先生が喜んでくれたことに満足しよう
「ありがとうフウカ、おかげで上手にできたわ」
「よかった、じゃあ明日のお昼よろしくね」
「え?」
「明日のお昼焼きそばだから、レシピ料ってことで!」
「……嘘でしょ…?」