ヒナ「お腹空いた…」 作:ひよりん
「たまにポテト食べたくなるでしょ?」
「あー、わかる、委員長もそんな日あるんだ」
「そう、だから揚げてみたの、面倒だけど手作りの方が美味しいと思って」
「へえ、良いね、で?」
「どうなったと思う?」
イオリが考え込む
大袈裟に悩んでみせるし、きっと面白いオチを期待してるのだろうが…
「…わざわざ聞くくらいだから、爆発でもした?」
「……微妙だったのよ」
「微妙?」
「マズいとは言わないけど…美味しくはなかった、なんて言うか…フライドポテトも料理なんだって思ったわ」
「へー…で、何が悪かったの?」
「ポテトを切って、そのまま揚げたのが良くなかったのよ」
「……え?フライドポテトってそうやって作るんじゃないの?」
「違うみたいね、水にさらしたり茹でたり、色々と…」
「ねえ」
いつもより低い声が響く
「ポテトが好きなのは良いけど、早く終わらせてくれる? “芋洗い”のお二人さん」
「…はぁ……なんでこんな事に…あっ、いや、ごめん」
イオリがため息をひとつ、まあ…気持ちはわかる、まあ…今回のイオリは比較的悪くない
温泉開発部を追いかけ、いつの間にか1人で追いかけ続け、またもや畑に入ってしまった
前回の反省から野菜がないであろう方向に追い込んだものの、そこは実は芋畑
戦闘の最中、火炎放射器で芋から生えた茎や葉を燃やし尽くしてしまった
イオリは素直に謝罪し、フウカに事態を伝えたらしい
ここは私が聞いた時嬉しかったポイント
その結果、急遽大量の芋を掘り起こし、芋洗いを命じられることになったわけだが…
「フウカ、これどうするの?」
「言わないで…今必死に考えてるから…」
「芋って保存効くんじゃ…?」
「少しでも火が入ったらそこから腐るの!悪くなったのが混ざったらもう一気にダメになるんだから…!」
(大量にこの芋を消費するレシピか…)
流石にそんなものが浮かぶほど都合のいい頭はしていない
と言うよりは、食べたいものを思い浮かべるくらいしかできない
「とりあえず私はフライドポテトが食べたいんだけど」
「……」
フウカがあの目でコチラを見てくる
まあ、わかってはいたけど…それでもまだ私は美味しいポテトが諦めきれない……
ふと、洗っていた芋を見る
野菜の品種には詳しくないけど、これを使えばだいぶ美味しく食べられるような…そんな気がする
「……ねえ、ヒナ、最近面の皮が厚くなったって言われない?」
「悪いけど、面の皮だけぶ厚くても風紀委員長なんてやってられないの」
「…はぁ…わかったわよ…」
「フライドポテトね…まあ、話は聞いてたけど…ヒナの調べた通り、切った芋は水にさらした方が美味しくなるわ」
「そうなのね」
「アクが抜けて雑味も弱くなるし、デンプンも適度に抜けて粘りが強くはなくなるからホクホクした食感も楽しめるし」
(フライドポテトってそんなめんどくさい料理なのか…)
「じゃあはい」
「え?」
「何これ」
私とイオリの前に包丁とまな板が並べられる
「何言ってるの?食べたいなら作らないと…まさか私にやらせるつもりだったとか言わないわよね?」
「「……」」
イオリと顔を見合わせ、無言で芋を切り始めた
(こうなったら嫌になるくらい仕込んで、向こう一年は見たくないくらい食べるしかないわね)
くし切り、細切り、いろいろな形に切り分け、それらをボウルに入れ、水にさらす
「なあ委員長、こっちは茹でてみないか?」
「いいわね」
もはや実験のつもりでいくつかの芋を茹で、火を通してからザルにあげて水気を取る
「茹でると若干崩れるなぁ」
「早く揚げるわよ」
いい具合に温めた油に少しずつ沈め、ゆっくり揚げる
そしてザルにとり、油を切って塩をまぶし、全体に馴染ませる
「…おお」
「これで完成ね」
「「いただきます!」」
まずは水にさらしたポテトをひとつ口に運ぶ
「はむ…うん、これは美味しい」
ホクホクの食感、程よい塩気、お店で食べるポテトだ
(そう、これが食べたかった……)
「うん!これお店で出るやつだ!」
「そうね、今度は…」
一度茹でたものを口に運ぶ
「ザクッ…うん」
これは凄い、茹でた時、表面が崩れてしまったが、そこが逆にザクザクに仕上がっている
表面がよりザラついているせいで味がよく絡むし、ポテトの風味も強い
「ポテトチップスとフライドポテトのいいとこ取りみたいね…美味しい」
「うん…!これ、作るの手間だけどめちゃくちゃ美味しい!」
「茹でて、冷まして水気を切る手間がかかるけど、これはその価値があるわね」
ヒョイとポテトの皿が持ち上げられる
「あ、何?フウカ」
「もぐ……うん、美味しい、これなら大丈夫!今日の付け合わせはお願いね」
「えっ」
「はぁ!?」
その日、給食には食べ放題の付け合わせのポテトとポテトサラダ、コロッケが並んだ
次の日イオリに会ったら…
「もう畑に近づく奴がいたら追いかけるのやめる!」と、嘆いていた