ヒナ「お腹空いた…」 作:ひよりん
(…お腹すいた…)
煌びやかなパーティー会場、楽しげな音楽と笑い声、そして美味しそうな香りをさせている料理の数々…
…今日は世間はクリスマス、なので委員会のみんなも小数を残して早めに帰し、私達もそこそこに…
そう思っていた時だった
「キキキッ!暇そうだな風紀委員ども!」
「いきなりなんですか、マコト議長…私たちはこれから帰る所なのですが」
「おお、それは丁度いいな、つまり今日の業務はもうないということだろう?」
(ああ、これは…不味いパターンね)
その想像の通り、パーティーの警備を指示された、立場上、必要なことまで私達は断る事もできない
(…仕方ない)
「私1人いれば十分ね、その程度の規模なんでしょう?」
「何?」
「い、委員長…!」
「アコ、私は明日は休むから」
「…わ、わかりました…」
「ふん、1人で広いパーティー会場全域を警備だと?おもしろい、やってみろ!」
という事で現在、そういう事情だから私だけはパーティードレスではなく、制服に銃を携えて、上の階から会場を見下ろしている
(…意外と平和ね)
パーティーの参加者が私を気にしているのが嫌でもわかる、これでも騒動を起こすとしたら相当な命知らずくらい
「…いいなぁ…」
ふと、口から漏れてしまう
丸のままのターキーをローストしたもの、それに近づけば切り分けて皿に盛り付けてもらえる
ターキーの周りにある野菜も美味しそうに焼かれている…よく旨みを吸ってるはず.
(…あっちはフライドチキンか…アレもいいわね、一口サイズなのも…)
揚げたて熱々をザクザクと…じわりと滲み出るチキンの脂も最高…だろうけど
「オニオングラタンスープとか…あ…ケーキもいいわね…後は…ああ、あの魚の…」
「風紀委員長、すごい気迫だ…」
「アレなら何か起きても大丈夫かな…マコト議長からは念のため控えておけと言われたけど…」
「あんなふうに目を光らせられてたら…何もできないよね…」
(……)
その後も順調にパーティーは進み、閉会時間になるまで問題は起きなかった
(……長かった)
最後の客も帰ったし、後は帰るだけ、今から急げばコンビニで売れ残ったケーキやチキンくらいなら帰るかもしれない
「オイ」
「…何?マコト」
空腹でイライラしている、だというのに無遠慮に…もう少ししたら日付も変わるっていうのに
「なぜ1人で残った」
今更それを聞く意味なんて無いのに
「……」
「まあいい、お前と分かり合えるとは思ってなかったからな…キキキッ! 誰か、持ってきてやれ」
ビニール袋が差し出される
「これは?」
「残飯処理も仕事のうちだ、持って帰れ」
「……」
受け取って袋を覗く、タッパーに詰められたチキンをはじめとしたお惣菜…
崩れてるけどケーキもある
「…そう、もらっていくわ」
「フン」
…コンビニに寄る必要は無くなった
「マコト先輩、どうしてパーティーに風紀委員会を?」
「ん?なんだイロハ、そんな事もわからないのか、ヴァルキューレの生徒がドーナツ屋に入り浸るとその地域の犯罪率が下がるってアレだ」
「……ああ」
「え、何々?イロハちゃんはわかるの?」
「マコト先輩が素直じゃ無いことがわかりました」
「え、どういう事!?」
「つまり…」
「うるさいぞイロハァ!!」
「さて、と……」
タッパーを開け、フライドチキンをオーブントースターに放り込む
(ほんとはローストチキンとか、オニオングラタンスープとかが欲しかったけど)
贅沢は言えないから仕方ない…
味噌味の袋麺を開け、茹でる、そして冷凍ご飯をレンジで温める…
粉末スープをお茹で溶いて、麺を入れて整えて…
(…クリスマス要素…もう日付変わったけど)
一口サイズのフライドチキンをポトポトとラーメンに落とす
これで油を馴染ませたら完成
「いただきます…さく…ふぅ…」
まだやや衣の食感の残ったフライドチキンを口に運ぶ、衣から滲み出てくるラーメンスープがたまらない
「はぷ…うん…はぐ…」
フライドチキンをご飯のおかずにはしたことがなかったけど…これなら意外と悪く無いかも…
「ずずず…ず…はぁ……」
ラーメンもチキンの味が少しだけ感じられる、ふやけた衣も一緒に口に入れると一際美味しい
そしてこの濃い味がご飯に合う
“あむ……はむ…うん”
あっという間に食べ終わってしまった
(とすると……これね)
つい、急いで食べてしまったのは…ケーキがあるから
「…崩れてグチャグチャね」
タッパーに入っていた以上最初から崩れてはいたが…もう見るも無惨なケーキをスプーンで掬い、食べる
「……うん、これは美味しい」
崩れていてもその味はあまり変わらない、甘いクリームとふわふわのスポンジ
瑞々しいフルーツもある…
(ああ…疲れが消えていくみたいね…)
甘いものが、美味しくて仕方ない…
口に含んだら溶けるようなクリームとスポンジ、いちごも甘酸っぱくて、スプーンが止められない
(……もう、終わり?)
まだ数口しか食べてないはず、なのにもうタッパーは空っぽで…
「……ごちそうさまでした」
(…明日は休みを取ってるし、ケーキ屋さんに行ってみようかしら)
身支度もそこそこにベッドで休んだ
次の日、ケーキ屋の目の前で緊急出動の要請を受け、泣きながら帰った
温泉開発部を普段の8割増しの力で制圧した