ヒナ「お腹空いた…」   作:ひよりん

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第5話

「…はぁ……」

書類を片付け、時計を見る

時刻は2時、もちろん深夜である、既に仕事は終わり、あとは帰って寝るだけ…

(…今日はいつもより、早く終わった…)

そう、だから少しだけ多く眠れる…と思ったのも束の間

ぐぅ…ぎゅるる…

「……そう言えば、晩御飯から何も食べてなかった」

…カップ麺でも適当に食べて、誤魔化す?それともそのまま寝る?

「……」

チャリリと、ポケットの中の鍵を弄る、一度意識したらもうダメだ、お腹の減りが気になり目が冴えてきた

「…仕方ない、何か食べなきゃ」

食堂に向かうことが決まった、睡眠時間よりも、満腹が選ばれた

 

 

「…あ」

冷蔵庫を漁ると、いわゆるくず野菜、端材などとも呼ばれる、根や先端の使われなかった野菜がある

スープにでもするのだろうか、かなりの量がある

(ネギ、ニラ、キャベツ…にんじん…ニンニクの芽…)

口内に涎が溜まってきた、私はそれらの野菜を使う分だけ器に取り、卵を一つ拝借する

「……あ」

そして、たまたま見つけた、適当に炒めて食べるつもりだったけど…

これにしよう、これがいい、長期保存用の即席ラーメンを手に取る

(ええと、あとは…)

自費で買った、レンジで炊ける1人用炊飯器に一合分の米を入れ、水を注ぎ、軽く洗う

「……いいのかしら、ご飯まで」

…わかっている、わかっているが、最早この空腹には勝てない

ラーメンとご飯、明らかにこの時間にはカロリーとかそのレベルを超えて…

鍋に薄く油を塗り、キャベツ、ニンニクの芽、ニンジン、ニラの順に炒める

そして隣の鍋に湯を張り、麺を茹でる

「……これは、こうして」

ネギの根に近い部分を箸でつまみ、直火に当てる

パチパチと音が鳴る、少し焦げたあたりで麺の鍋にネギを入れ、一緒に煮込む

「……」

ご飯をレンジに入れ、炊く、麺はあと1分、ご飯はあと3分、野菜は醤油と塩胡椒で味をつけ、いつでも食べられる

「あとは、この卵を…」

どうしよう?目玉焼き?ご飯に載せる?それとも野菜炒めと…?

自身の空腹に従う、その気持ちは揺るがない…

「……よし」

私は即席麺の粉スープを開け、鍋に入れた、そう、丼ではなく、鍋に

そして軽くかき混ぜ、全体にスープが溶けたところに卵を割り落とす

火を止め、麺が程よくなったら丼に移し、その上に野菜炒めを乗せる

「……これは…」

完成するとその背徳的なボリュームにたじろいでしまう、だが、非情にも背後からは…ご飯が炊けたことを知らせる音

「……」

最早、食べない選択肢などなかった

全てが整った、氷を入れたグラスに水道水を注ぎ、ようやく完成

まずは…もちろんラーメン、野菜炒めの下の麺を掴み、持ち上げて啜る

「…!」

…安い袋麺、空腹な今なら苦にならない程度に思っていたけど、悪くない

美味しいわけではないけど、本来はケミカルなスープの味わいがどこか食べやすい

(…野菜炒めの味付けが効いたのね)

野菜炒めをほぐし、麺と合わせて食べるとより美味しく感じる

「…うん、そこまで濃くしてないけど、これくらいが好きかも」

熱々のラーメンを啜り、そしてキンキンの氷水で流し込む

焼けた喉を冷やすこの温度差が心地良い、そしてこんどはラーメンの後にご飯を口に含む

「…うん、あたり」

野菜炒め定食がメニューにある理由がわかる、香ばしく炒めて仕舞えば野菜も立派なおかずになる

野菜炒めだけを掴み、ご飯に一度着地させてから口に運ぶ

そしてラーメンスープが沁みたご飯を食べる

「……はぁ…」

良い…

食べ進めていると、とうとうそれが顔を出す

「…来たわね」

白身が固まった卵、ポーチドエッグという奴に近い状態、中の黄身はきっと固まっていない

それを慎重に取り出し、ご飯に乗せる

そして、箸の先端をさしこみ、割る

デロリ…完璧だ、火は通っていない、だけど程よく加熱され、少し硬くなっている

それを少量の野菜炒め、ご飯と合わせて口に運ぶ…

「……うん」

これが美味しくないはずがないのだから、ただ、あまりにも熱い

味わうたびに氷水が消えていく

いつの間にか、空になったラーメン丼を少し寂しく思いながら、ご飯の茶碗を眺める

「……」

スープをご飯に注いで、雑炊のように啜る

先程のラーメンとして食べた時より、ケミカルさがややキツイが、これもまた愛嬌

一粒残さず食べ、飲み干し…大きく息を吐く

「……はぁ…」

食器を洗い、改めて椅子に座る

(…また怒られるだろうけど)

最早帰る気などない、明日の朝もまた手伝えば良いのだと自身を納得させ

そのまま椅子とテーブルに体を預けて目を閉じたのだった

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