ヒナ「お腹空いた…」   作:ひよりん

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第6話

「……ん…んぅ…?」

鼻をくすぐるような甘い匂いに、深く沈んだ意識が引き摺り出される

「……」

机から上体を起こすと、もうフウカは料理を始めていた、ジュリもいる

手伝わせれば良いものを、見逃してくれたらしい

「あ、ヒナ、おはよう!」

「おはよう…何か手伝うことある?」

「大丈夫!あとは焼くだけだから!」

焼くだけか、少し気になる

「おはようございます!風紀委員長!」

「おはよう、その…ごめんなさい、変なところで寝てて」

「いえ!ちょっと驚きましたけど、フウカ先輩から聞いてましたから!」

「…そう」

その返答に少し恥ずかしさも感じつつ、何かできることをと様子を伺う

ジュリは何かを切っているらしい、私よりも素早く、正確に

手が足りない様子はない…これなら掃除でもしてしまおうか…テーブル用の布巾は…

「あ!いいからいいから!」

「でも…」

「私たちも一息入れるところなの、ね、ジュリ」

「はい、先輩、フルーツ切り終わりました!」

「…そう」

大人しく引き上げるしかないのか、そう思っているとフウカがテーブルに皿を並べ始める

「朝ごはんにしましょ?」

「え、でも…」

「いいの、ね?」

「みんなで食べた方が美味しいですから!」

「……なら、いただくわ」

並べられたのは、パンケーキ…でも、ただのパンケーキじゃない

「…かわいい」

「頑張りました!」

満面の笑みのジュリが答える、きっと盛り付けは彼女なのだろう

まんまるのパンケーキにフルーツとチョコソースでクマの顔を作ってある

「そっちは、うさぎ?」

「そう、ジュリのは?」

「私はネコです!」

「器用なのね…」

食べるのが勿体無い、これにナイフとフォークを入れるのは、なんだか申し訳なくなる

「早く食べないと冷めちゃうわよ?ほら、そんなに気になるなら写真でも撮れば?」

「…お言葉に甘えて」

パシャリ、スマホのカメラ機能を私事に使ったのはいつ以来だろう

嬉しい気持ちで思わず顔が綻ぶ、改めてナイフとフォークを取り直し、申し訳ない気持ちを押し殺してナイフを…

ふわり…華やかなバターの香り、これは…

一口分をチョコソースとバナナと合わせて口に運ぶ

「…甘くて美味しい…」

「ね!」

いつもの給食と比べて、おいしい、甘いから?そうじゃない、丁寧に作られてる

柔らかくて、焦げずに程よく火の入ったホットケーキ、プレーンでバターの香りが口いっぱいに広がる

だけどコレ単体では甘さより、バターの香りと塩気が際立つ

そしてそこにチョコソースとバナナ、ねっとりとした甘味、そして強烈なチョコの香り

「……良いわね」

カットオレンジを合わせても良い、バナナのねっとりとした甘味と食感が変化し、歯切れ良く、そして酸味で引き締まる

冷蔵庫のフルーツはきっと他にもたくさんある、でもベーシックながらに相性のいい2種類を選んである

オレンジにもこだわりを感じる、切り分けたあと果汁を拭き取ってあるらしい、パンケーキが湿らないようにだ

切ってまとめておけば果汁が滲み出てびしゃびしゃだろうに…

「どうしてこんなに凝ってるの?」

「コレは特別、いつものお礼」

「風紀委員会にはお世話になってますから…」

「主に私が、だけどね」

そう言って2人が笑う

「……そう、じゃあ今後もちゃんと守らないとね」

ゆったりと3人で朝食を楽しんだ

 

……

 

「委員長、こちら万魔殿からです、給食部の予算の件で視察を…」

(……ああ、こういう事)

2人の思惑を理解し、苦笑しながらも、書類に目を通す

「イオリに行かせて、どうなっても評価は最良で通して」

「え、行く前に決めるんですか?」

「いいの、アコ、普段の食事が美味しくなって欲しいと思わない?」

「……まあ、それは…」

「じゃあ、そうしなさい」

アコを帰らせ、スマホの写真を眺める

(まあ、今回は打算もあったみたいだけど…)

「……悪くないわね」

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