ヒナ「お腹空いた…」   作:ひよりん

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第60話

「……ふう、これで終わりね」

深夜、とは言ってもいつもよりはずっと早い時間

日付が回る前に帰れるのは助かる

(…帰りにどこか寄って、何か食べ物でも買って帰ろうかしら…)

そう思い、荷物をまとめる

 

なにが良いだろうか、最近は色々食べた、食堂に行ける日が多かったから肉も魚も食べ損ねてはいない

となると麺類…も、よく食べている…

(パスタもラーメンも、最近よく食べてるし…うどんかそば?…うーん…パン?)

なにを食べようか、なにが良いだろうか…そう思いながら帰っていると…

(…あれ?…そういえば、こっちの道、通った事ないかも…遠回りだけど…まあ)

フラフラと知らない道を歩く

 

「…へえ……いいわね」

夜遅くの散歩も悪くない、こんなところで、面白いものを見つけられるなんて…

(屋台…しかもこの香りは、おでんね、そういえば今年は食べてないし…)

迷わずに暖簾をくぐる

 

「1人いい?…あ」

「……どうも」

(…確か、ヴァルキューレの…公安局長)

「尾刃カンナ、ね…いつもお世話になってるわ」

「いえ、こちらこそ…先日はお世話になりました」

ヴァルキューレには美食研究会や温泉開発部の件で迷惑をかけてはいるけど…

(…先日って…この前の不良掃討作戦でイオリを貸した事…よね…?)

 

「…さて、なにを頼もうかしら…」

チラリと横目で尾刃カンナの皿を覗く

(…こんにゃくに卵、もち巾着…美味しそう…)

「こんにゃくと卵、あとがんもどき」

「…せっかくなら大根もいってください、ここのは美味しいですよ」

「なら、それももらおうかしら」

平たい皿に軽く汁を切られたおでんが乗せられる、皿の端の練りカラシも雰囲気があって良い…

 

(レトロ、って感じね…こういうのも、悪くない…)

「…いただきます」

大根を四つに割り、冷ましながら口に運ぶ

「ふー…ふー……はふっ…ほふ…」

よくお出汁の染みた大根、でも、普通のおでんとは違う……鰹と醤油の香ばしい香りがハッキリわかる

「…これは、美味しいわね…」

カラシを箸で塗り、もう一口、刺激的な香りがいい…

夜の寒さも冬本番よりはマシになったけど、まだ冷える、だからこそより美味しい…

 

がんもどきを箸で割る、滲み出てくる出汁が勿体無い程に美味しそう…

割った断面にカラシを塗りたくり、一口…

「ほふ……うん…!」

がんもどき自体に出汁とは違う、やや甘い味付けがしてある、それにカラシが良いアクセントになる

(…よく食べるな…)

卵を半分に割り、頬張る

「ほふ……うん…これも美味しい…あ、柚子胡椒とちくわ、じゃがいもと大根」

(……本当によく食べるな…)

 

「…ゲヘナは最近どうですか」

「比較的マシよ、おかげで今日はいつもより早く片付いたし」

「……もう日付が変わりますが」

「まあね」

こんにゃくを頬張りながら追加のおでんを受け取る、柚子胡椒をちくわの穴に塗り一口

「はぐ……うん…」

ピリリと辛く、刺激的…でも後味は爽やか…これは美味しい

「…普段はどのくらいに終わるんですか」

「2時くらいかしら」

「……そうですか」

 

ジャガイモを崩してカラシを塗り、柚子胡椒を少しだけ乗せて…

「ほふ…はふ…」

ホクホクのジャガイモ、じゃがバターみたいで、噛み締めるたびに塩気の効いたお出汁の香りもする

それに辛子と柚子胡椒…合わないはずがない

大根にも同じようにカラシを塗り、柚子胡椒を乗せる

「…それにしても…ここは、良いお店ね、あなたのお気に入り?尾刃カンナ」

「ドーナッツやら豚骨ラーメンやら、色々食べましたが…こんな屋台の120円の大根が1番美味しいもので」

「…なんとなく、わかる気がするわ」

 

「…ごちそうさまでした、じゃあ」

「ええ、また」

「…それにしても、あなたも意外なところがあるのね」

「…何か?」

「…まあ、あんまり人前で飲まないなら、私はなにも…」

「……?……!…こ、これはただの麦茶で…!」

「心配しないで、誰にも言わないから」

 

しばらく追いかけ回されて麦茶を飲まされた

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