ヒナ「お腹空いた…」   作:ひよりん

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第67話

「お腹減った…」

時刻は日付が変わる少し前、相も変わらず山積みの書類との格闘も、この時間になれば流石に嫌気がさす

(…カップ麺…でも良いけど、今日はお米の気分…ガッツリいこうかしら)

深夜の間食…もとい、本食ともなれば…それなりのモノを…

 

「…何でいるの…?」

思わず間の抜けた声が出てしまった、ギョッとした様子のフウカとしばらく見つめ合い、二つのため息が響く

要するに、お互い様、と言うことだろう

「あの一件以来、仕込みの手間が増えちゃって」

「…手間?」

 

要するに、予算が削減されると仕入れる食材もより安く手に入れる必要が出てくる

なので、下処理をしてない肉や魚など仕入れて、自分で下処理をすることになる

その手間が増えた為に…

「こんな時間まで居残り、と…」

「お互い、しばらくはしんどいわね」

「そうね、万魔殿転覆でもしてみる?」

「そんな無駄なことしてる暇があったら明日の献立考えてるわ」

「確かに、私も他のことした方が有意義ね…」

 

「ところで、ご飯食べに来たんでしょ?座って良いわよ」

「え、いいの?」

「余裕は無いから、簡単なものでいいなら」

「…悪いわね、ありがたくいただくわ」

当初のガッツリした食事とはいかない様だが、自分で作る手間が無いだけ妥協しよう…

 

(……あれ、この匂い…汁物?いや…)

鼻をくすぐる出汁の匂い…そして何かを刻む音…

うどんだろうか?それとも、そば…どちらも捨て難い、でも…

「はい、お待たせ」

「…予想が外れたわね」

 

出てきたのは、大きめのおにぎり二つにお味噌汁と沢庵漬け…

「文句あるなら下げるけど」

「予想以上で嬉しいって意味よ」

「そう、ならいいけど」

(余計な事言って取り上げられる前に…)

「いただきます」

 

まずはおにぎりを一つ、手づかみで…

「はぐ…もぐ……ん」

塩気がしっかりついている、だから噛むほどにご飯の甘みも引き立って美味しい…

一口、二口と食べ進めると…

「うっ……むぐ…梅干し…」

「嫌いだった?」

「全然、ただびっくりしただけ…というか…」

少し大きくおにぎりを頬張る、やはり…これは…

(やっぱりめちゃくちゃおにぎりに合うわね、おいしい…)

 

お味噌汁を飲んで一息つく

ネギと油揚げだけのシンプルなお味噌汁、コクのある、だけどほのかに甘さを感じさせる味噌汁で口の中を洗い、もう一度おにぎりを頬張る

(…こういうの、いいわね…)

厚めに切られたたくあんを齧り、次のおにぎり…

(これの中身も梅干しかしら…)

 

何口か食べ進めたあたりで、少し違う味…目を閉じて、口の中の味をよく確かめる

(なに、この…少し甘くて、ええと…)

当てたいけど、パッと出てこない…これは…

「……ああ、昆布の佃煮…コレもいいわね」

醤油と砂糖で煮詰めたシンプルな佃煮、これとお米も、異様に合う…

 

ぽりぽり、ずずず、もぐもぐ…

(……深夜にコレが出てくるのは、流石に幸せね…)

 

「ごちそうさま、何か手伝うことある?」

「ううん、私ももう帰るところだから」

「そう…悪いわね」

「いいのいいの、代わりに今度美食研究会が来た時、よろしくね」

「任せておきなさい、私が直接行くわ」

 

(…アレにウインナーと卵焼きがあったら完璧だったわね、買っとこうかしら)

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