ヒナ「お腹空いた…」   作:ひよりん

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第74話

「…お腹空いた…」

なんて事のない日、いつも通りの風景、いつも通りの書類仕事…

いつも通りの万魔殿からの嫌がらせ、いつも通りの不良達の対応…

(……疲れた、まだお昼なのに…もう帰りたい…)

時刻は正午を回ってしばらくしたころ、そろそろ食堂の席も空き始めるだろうか

(…はぁ…フウカに頼んだら、持ってきてくれないかしら)

 

食堂に向かうと予想通り、比較的席は空いていたけどまだ賑わっている

それにしても…

「…良い匂い……今日は何かしら…」

チラリと食べている生徒の方を見ると…丼ものらしい

トレーと箸とスプーンを取り、配膳される順番を待つ

「あ、ヒナ」

「お疲れ様、大盛りでよろしく」

「良いわよ、ほら」

トレーに置かれた丼には、ご飯が見えないほどに、しかし均一な3色

 

鶏そぼろ、炒り卵、それから…緑色の筒のような…アスパラとも違う、中に入ってるのは豆?

「これは?」

「サヤインゲン、インゲン豆の未熟な奴ね」

「へえ…」

どんぶりの他はお味噌汁と、それから

(今日は杏仁豆腐まで?予算苦しいって言ってたけど、意外となんとかなってるのね)

 

「いただきます…ずずず、うん」

軽くお味噌汁を混ぜて、一口…赤味噌特有の酸味のある香りに三つ葉の爽やかさがちょうど良い

具も三つ葉以外は豆腐だけでシンプル…

(となると、これは…)

スプーンで丼を掬い上げ、一口

「…うん、いいわね」

鶏そぼろから甘塩っぱい旨みとショウガの香りがご飯に滲み出ている、それに炒り卵、やさしい卵の風味…

 

「あとは、サヤインゲン…」

特に焼いたわけでも何かと和えたわけでもない、塩茹でされただけらしい

サヤインゲンだけを口に運ぶ

(…へえ)

少し青っぽくて、瑞々しくて、口の中をサッパリさせるような…

3色まとめて掬い上げ、頬張れば口の中でそれぞれが調和して…

(…これ、本当に美味しいわね、大盛りにして良かった)

 

お味噌汁で口を洗い、丼を頬張る

噛めば噛むほど味が滲み出るジューシーなそぼろ、その刺激をまろやかにする卵、そしてアクセントになるサヤインゲン…

(…意外とサヤインゲンがいい仕事してるのね)

味が単調にならず、飽きがこない

いや、このシンプルな味付けならそもそも飽きることもないだろう

 

どんぶりが空になり、お味噌汁も飲み干した、となると…あとはデザートだけ

杏仁豆腐を口に運ぶ

程よく甘い、そして穏やかでミルキーな香りが口一杯に広がる

「…うん、涼しくて、いいわね…」

 

「ご馳走様、おいしかったわ」

「午後も頑張って」

「まあ、うん、スタミナもついたし、なんとかなるわね」

 

その日の午後は何故か普段の倍忙しかった

 

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