ヒナ「お腹空いた…」   作:ひよりん

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第78話

「……」

カリカリカリ、書類をペン先が撫でる音が静かな部屋に響く

「……はぁ…あれ」

コーヒーを口にしようとしてカップを運び、口をつけて空なのに気づく

いつの間にか時間もかなり経っていた

(…一息入れようかしら)

 

コーヒーを入れ、一息つく

(……今日は日付変わる前に帰れそう…)

──ドタドタドタッ

「…に、ないわね」

─バタンッ

 

「居た!何で返事してくれないの!?」

「何の話よ…」

入ってきたのはフウカ、この焦り様…一体何があったのだろうか…?

机に放り出された携帯を見ると、ジュリとフウカからの数えるのも面倒なほどの連絡の履歴

「…何?」

「魚!捌ける!?」

「…は?」

 

「ジュリ!助っ人連れてきたわよ!!」

「お疲れ様です!お願いします!」

「うわ、生臭い…何この匂い」

食堂に充満する生魚の匂い、こんなにキツい匂いを発すると言うことは、数も相応にある…

「…実はね、いつも魚を仕入れてる市場でね…魚を仕入れようとしたら…」

「その、発注ミスが起きてしまいまして…」

「……まあ、ミスは起こるわよ、仕方ないわ」

「で、今日中に全部捌いて、下処理した上で保管できる分は保管して…」

「……無茶じゃない?」

「無茶よ!!わかってるわよ!!」

 

「あんまり上手くないけど、いい?」

「大丈夫!」

包丁の刃をたて、撫でる様にうろこをかき、次にお腹を開いて内臓をかき出し、お腹と全体を流水で優しく洗う

(…手が、既に臭い…)

頭を落とし、開いたお腹から包丁を入れて、背骨にあたったら今度は背中から、合流したら尻尾から背骨を滑らせて…

「……身が、ボロボロ…」

「いやいや、そのくらい平気平気、ジャンジャンやっちゃって!」

その後もしばらく身がボロボロの三枚おろしを量産した

 

「…日付変わっちゃったわね」

「そうね…」

「ですね…」

「…じゃあ、食べてく?」

「……食べるわ」

「それじゃあ、ジュリ!アレお願い!私はご飯炊いてくるから」

「わかりました!」

 

ジュリが冷蔵庫から取り出したのはショウガ、ミョウガ、ネギ、大葉に味噌に醤油…

(…味噌と醤油で食べるのかしら、薄切りの青魚で薬味を包んで……いいわね…)

「薬味を刻んで、魚はぶつ切りにして…」

「……ジュ、ジュリ?何で両手に包丁を持って──」

「叩きます!!」

両手の包丁を振り下ろし、どんどん叩いて刻んでいく、せっかくの切り身がミンチに…

そしてそこに味噌と少しの醤油を加えてさらに叩いて…

「できました!」

魚版のハンバーグのタネが、お皿に盛られて…炊き立てのご飯と簡素なお味噌汁と一緒に差し出される

 

「…ねえ、何でミンチにしたの…ねえ…?」

「いいから食べてみなさいよ」

「……いただきます…もぐ」

なめろうを一口含み、噛み締める…

温かいご飯をかきこみ、お味噌汁で口を洗う

「…これ、正解」

「でしょ?」

腹立たしい程自慢げに笑う2人を無視し、黙々となめろうをご飯に乗せて食べる

魚のねっとりとした甘旨い味わい、そこに濃厚な味噌と爽やかな薬味…白いご飯が進む

 

いつの間にか2人も黙々とご飯にがっついている

なめろうをご飯の上に乗せ、少し熱を伝えてから口に運ぶ、溶け出した脂がたまらない…

温かいご飯と混ぜて、お味噌汁をかけて…とても上品とは言えない食べ方だけど、余すこと食べた

「あまりにも美味しくて、お皿まで舐めたくなるから、なめろうっていうんだって」

「へえ……なるほどね」

「舐めちゃダメだからね?」

「私を何だと思ってるの…?」

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