ヒナ「お腹空いた…」 作:ひよりん
チク、タク、チク、タク、時計の針が機械的に音を鳴らす
1秒ごと、じっくり、ゆっくりと時を刻む音…それ以外の音が聞こえない程無音
それもその筈、気づけば外は真っ暗、すっかり夜遅くなった
チク、タク、チク、タク…ゴーンと長針が12を指したことを示す、大きな鐘の音
そして、短針もまた、同じ数字を指している
「……お腹、減ったわね」
12時、食事には程よい頃だ…半日前なら
(もう、すっかり…慣れたわね、この時間まで終わらないのも)
ため息すら出ない、この学園都市キヴォトスで最も騒がしいであろう、このゲヘナ学園すら静かになるほどの深夜
「…今日は……コレにしようかしら」
だけどそれは、安心してゆっくりと食事が出来る時間でもある
カップ麺の蓋を開け、かやくと粉スープを入れ、少し振って粉末スープを全体に馴染ませてからお湯を注ぐ
(5分…5分か…)
部室の共用冷蔵庫から冷えたお茶のペットボトルを手に取り、ソファに座りスマホを触ってのんびりと待つ
(…そういえば、美食研究会のアカウント…ハルナ達はまた、トリニティに行こうとしてるのかしら……はぁ…)
「…前もってハルナを……は、流石にダメね、大事にならなければ…いいけど」
5分経ったのを確認し、蓋を開ける
「…たまにはコレも良いわね」
今日は、きつねうどん…大きなお揚げを箸で掴み、一口かぶりつく
「ん…ほふ……うん、美味しい」
じゅわりと染み出す甘い煮汁、インスタントなのに、コレに限っては下手なうどん屋さんで食べるより美味しい
かじったお揚げを器の底に押し込み、麺でフタをする
「ふー…ふー…はふ…ずずず…ふうっ…」
平たい麺がスープをたっぷりとまとっているからか、啜るたびに出汁の香りが口の中いっぱいに広がる
あまりの熱さに思わずお茶で流し込んだけど…
「うん……はぁ…」
すごく、落ち着く味…
「ずずず…はふ…」
麺に紛れてタマゴやカマボコが混じってくるのは中々悪くない…
とくに乾燥ネギの強い香りがいい、好き嫌いは分かれるだろうけど
一通りうどんを食べ終わった辺りで顔を出したのは底に押しやったお揚げ
「はぐ……うん」
最初に食べた時よりも出汁の香りが濃くて、甘味が落ち着いて…
細かく千切れた麺やネギ、タマゴのカケラと一緒にコレを口に運ぶと最初に食べた時とは全く別の食べ物だ
「……ふう…ごちそうさま」
(…そういえば、百鬼夜行で美味しいと蕎麦屋さんに連れて行ってもらった事はあったけど…うどんも良いかもしれないわね)
「……ハルナが何かをやらかしたら、連れて行ってもらおうかしら」