ヒナ「お腹空いた…」   作:ひよりん

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第9話

(チクタクチクタク…)

ああ、終わらない…ここ暫くは平和だったのに…

(ゴーン、ゴーン)

「…もう、こんな時間……」

時計の針は頂点で重なり、紫の空に煌々と月が輝いている

「……お腹減った…」

こうなったらもうダメだ、私の集中力は、続かない、こうなると……

「…でも、今日は何を食べようかしら…」

この時間にやってる店があるはずもなく、選択肢は備蓄のカップ麺と給食部の余りの材料を拝借するくらい

「……あ」

私はカップ麺を2つ選び、食堂に向かった

なぜ二つなのか、それは、決まらなかったから…

(シーフード…カレー…どちらも捨て難い、でも、ここで下手な選択はできない…)

 

食堂の鍵を開け、冷房を入れ、キッチンに入る

我ながら手慣れた手つきで冷蔵庫を漁り……

「……シーフードね」

野菜と肉を適当に取る、そして…

「…これね、よし」

まずは米を洗い、水に浸して放置

待つ間に白菜、ネギ、しいたけを適当に切り、1人用の鍋に放り込む、もちろん自分専用

そして、豚肉と鶏肉も一口大に、それも放り込む

顆粒だしと水を入れ、醤油と味醂をほんの少し垂らし、塩をひとつまみ

「…あとは待つだけね」

火にかけて煮えるまでにポン酢を椀に注ぎ、レンジ用の炊飯カップで米を炊く

ご飯が炊けたら蓋を開けて余計な蒸気を逃がしてから暫く蒸らす、お米の甘い匂いがたまらない

ぐぅ、とお腹が悲鳴をあげている、まだかまだか、いや、そろそろか?

箸を手に取り、手を合わせる

「いただきます」

鍋から白菜を取り、ポン酢に浸して食べる

じわっ…と広がる風味…うん、塩を少し多めに入れてよかった、これは…期待できる

適当な食事だけど、ここでミスはしたくない

「あむ…うん、コレはご飯が欲しい」

鶏肉をつまみ、ポン酢に軽く浸してご飯に乗せる、そして…

「…ふふ…」

サッパリと、だけどジューシーな味わい、鶏肉の味が消える前にご飯を食べるとこれまたいい

次は薄切りの豚肉でネギを巻く、噛んだ途端に熱さが口に広がる

「はふ…あふっ…」

慌てて水を口に含む、味が薄まったことに残念さを感じながらも、もう一度同じように豚肉でネギを包む

ポン酢に浸して今度はご飯に置き、少し冷ます

しいたけと鶏肉を鍋からそのままご飯にバウンドさせ、口に含む

「…あ」

この組み合わせは美味しい…今度はコレで何か作ってみようかな

「……そろそろいいわね」

豚肉で包んだネギを齧る

ポン酢の染みたネギ、ぶにぶとした食感と豚肉の脂のサクサク、これは良い歯応え

 

ご飯を半分、鍋の具材を少し消費したところで、本日の主役の登場だ

「……さて、と」

シーフードヌードルの蓋を開け、おもむろに鍋の上でひっくり返す

「…まずは、これね」

シーフードヌードルが柔らかくなったあたりで野菜と一緒に麺を掴み、食べる

コレがおいしくないはずがない

乾燥練り物や卵、タコ、それらも出汁を吸って普段とは違う味

1人用の鍋だからこそ、ちゃんとシーフードヌードルの味もする

カレーヌードルならきっとカレーの味がした、でも、カレー味にするのなら私はもっと濃くしたい

だからシーフードを選んだ…

「…あ、もう麺が…」

麺が減ってきた、だけどまだある…ここでお米を投入、〆のラーメンから更に進化させる

ぐつぐつと沸騰し、煮詰まっていく、米と麺が汁を吸い、もう直ぐ焦げ付くのではないか…?ここで粉チーズを投入する

「…良い匂い」

口の中に涎が溢れてくる、コレでリゾットができあがった……いや、まだできていない

火加減を調整し、じっくりと火を通す、鍋の底でパチパチと音を立てたあたりでおたまを滑らせ、おこげを剥がす

「……完璧…!」

このお焦げが作りたかった、おたまでお焦げとその周囲を掬い、よそう

「……あぁ……はふっ…うん…ほふっ」

カリッとしたおこげの食感とチーズの香り、リゾットそのものの味もしっかりとする

シーフードヌードルに野菜とお肉の溶け出した鍋、これが美味しくないはずがない

おこげができるたび、掬ってよそう、そしてそれを食べる

たまに野菜や麺、お肉が入るとコレがまたいい、食感の変化だけじゃなく、ネギや白菜の甘みが良いアクセントになる

お肉が混じると今度はジワリと旨みが滲み出る

「はふ……ん…」

そろそろ終わりは見えてきたけど、まだ残ってる…でも、そろそろお腹はいっぱい…

「……」

興味本位で、鍋を食べていた時の器のポン酢をリゾットに垂らす

そして、それを食べる

(……え…あ、これ…)

先程まで濃厚で重たい味わいだったのに、ポン酢の酸味でさっぱりして美味しい

こんなに美味しくなるとは思わなかった

しかもポン酢自体にもいろいろな旨みが溶け出しているからこれまた良い味を演出している

「……あ」

空になった鍋を惜しく思いながらも、満腹感に満足し、容器を流しに出して一息つく

「……こっちも食べようかな…」

カレーヌードルを手元でいじりながら、暫く休憩してから仕事に戻った

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