転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた 作:大きいホクロ
ファイティングライフ 竜王決戦 収録カード
『運命の竜皇』フレーバーテキスト
「タワーの頂上が近いな…」
「ユウキ…無事でいて……」
雅は勝導が心配なようで先程からずっとあんな感じだ。
「ユウキ君…大丈夫かな?」
「大丈夫っすよ、ユウキは強いっす」
水瀬ともう1人も心配そうにしている。
それほど勝導には人望があるという事だろう。
まるで主人公みたいな奴だ。…主人公?
……何かパズルのピースが頭の中でハマった気がした、しかし何のピースかはやっぱり分からない。
「総帥は最強だから総帥が勝つに決まってるってんだよ」
オッサンが反論する。副総帥の実力ですら副総帥なことを考えると確かに相当強いのだろう。
「お前は反論しなくて良いのか?うちの総帥が勝ってるって」
「こんな狭いところで争っても仕方ないだろ」
「それもそうだな…」
この肩に棘がある男はその辺冷静だ。
瞬間、爆発音が響いた。
「な、なんだぁ!?」
「上っすか!?」
「っ…ユウキ!」
「総帥!」
「何が起こってるんだ…」
爆発音に驚いたのも束の間、エレベーターが頂上に到着した。
「ユウキ!無事!?」
雅の声がタワーの頂上に響いた。広がっていた土煙が少しずつ晴れていく。
そこには竜がいた。
勝導の切札、希望の竜王のようだが、以前タッグファイトした時とはまた姿が違う。
ここは謎のファイト中の空間じゃ無い、タワーの頂点で夜空が周りには広がっている。
「………僕の勝ちだよ」
その竜の足元に立っていた勝導の口が開かれた。
「ああ、そのようだ」
その視線と言葉の先、そこに居た男の姿は勝導とよく似ていた。
しかし身長は勝導より少し高く、さらに大人びている。
「…ユウキが…2人?」
「瓜二つっすね……」
「総帥……」
副総帥の言葉を聞く限りあの勝導と瓜二つの男が総帥で間違いないようだ。
「…みんな?良かった、無事だったんだね」
「うん、悪道君が勝ってくれたよ」
「流石だね、ゼン君」
勝道の声はとても優しい声だ。
しかし今の勝導はどこか悲しみを孕んでいる、そんな気がした。
「まあな。ところでそいつが、か?」
「ああ、彼がDFCの総帥で、僕の兄だ」
「ユウキの…お兄さん?」
「そうだ。俺は勝導ユウ、DFCを作った男だ」
雅の反応を見たところ、勝導の仲間たちもそれを知らなかったらしい。
普段は仮面でもしていたのだろう。
お約束みたいにな。
……お約束?何の約束だよそれは?
「ユウキ、お前はいずれ後悔する。この世界のあり方について、そしていずれ苦しむだろう」
「それでも、カード達を使ってまで兄さんの理想の世界を作りたいとは思わない、皆は生きているんだ」
そう言いながら竜を勝導は愛おしげに撫でている。
撫でられている側の竜も心地良さそうだ。
「そうだな。しかし忘れるな、生きているのは俺達もなのだよ。どちらの未来を想うべきか、人であるならば理解はできるだろう…」
「そうかもしれないね、それでも僕は進むよ。たとえその先が修羅の道であっても」
「甘い弟だよ、本当に…」
「それが僕だ」
2人の間で何やらよくわからない会話が続けられている。
恐らくオッサンの話してた崇高な理念についてなのだろうがイマイチ全貌は見えてこない。
「キョウ、DFCの団員を頼む。彼らの助けになってくれ」
「御意。…行ってしまうのですね」
キョウと呼ばれて副総帥が反応した。
彼の名前らしい。
これからのDFCは実質彼が総帥となるのだろう。
「オツ、君達団員を導くべき存在がこのザマで不甲斐ない限りだ。情けないがキョウを頼ってくれ」
「そ、総帥……総帥は、俺たちに勇気と居場所をくれました!…あなた様のおかげです!」
お前の名前オツかよ…。本当にオッサンじゃねぇか…。
「敗者は消えるのみだ……ああそれとキョウ、そこのウツワの事も気に掛けてやってね」
「…なるほど、分かりました」
副総帥は俺と勝導の仲間達側を一瞥した。
ウツワ、それは一体何を意味するのかはわからないが、その言葉に嫌な予感を俺は覚えた。
「それじゃあ、さよなら」
世界が歪んだ。そこに現れた捩れのような物に総帥は入って行った。
「兄さん!どこへ行こうと言うんだい!」
「どこかに、さ」
「場所を聞いてるんだよ!帰ってきて!さっきも言ったけど父さんだって心配しているんだ!」
「父さんにはすまないと伝えてくれ。後、これはお前の勝利の証だ、じゃあな」
「待って!行かないで!兄さん!」
カードが放たれ勝導の目の前の地面に突き刺さる。
それを放った勝導ユウはその歪みの中へと消えて行った。
「……兄さん」
呆然としながら勝導はカードを拾い上げた。
「見つけ出すよ…いずれ」
「終わったん、すか?」
「…みたいね」
竜も光となり姿を消した。
残ったのは星空と俺たちだけだった。
「ユウキ君、大丈夫?」
「ごめんねみんな、僕の兄が発端でこんなことになって。でも大丈夫、全て終わったから」
強がってるのが付き合いの浅い俺ですら分かった。かなり応えているようだ。
「勝導ユウキ、DFCは今回の敗北を契機に形を変える」
「良いんですか?」
「ああ。私達はこれから別の方向で理想を追っていく。総帥の弟君である君の力になろう」
「僕と兄の思想は違いますよ?」
「それは分かっているさ。それでも総帥は君と戦うことになっても心配をずっとしていたさ、だから私は君を守る」
「……ありがとうございます」
「さて、帰りましょ、ユウキ」
「うん、マコト」
2人の距離はとても近かった。
「時間も遅い。私が君達を送り届けよう」
この男は本当に敵だったのかと疑いたくなるレベルだな。本当は話し合いで解決できたんじゃないか?とすら思えてくる。
「すいません何から何まで…」
「取り敢えずエレベーターに乗りたまえ」
「またこれに乗るの時間かかりそうっすね〜」
「文句言わないの」
また騒がしくエレベーターに乗り込んで行く。
彼らの緩い雰囲気は上りより自然な感じがする。
「悪道君も、行こ?」
「そうだな」
「あっ…」
水瀬が手をこちらに向ける。
俺はその手を握らずに歩き出す。
満天に広がっている星空に雲が広がり出したのに、俺たちは気付くことはなかった。
結局DFCが何なのかは分からないまま今回の騒動は幕を閉じた。
今更聞くのも野暮と感じたし、これからは関わることも無いだろうとあまり気にもならなかった。
エレベーターは降っていく。
緊張が解けた緩い雰囲気に囲まれながら。
『ウツワ』という言葉はすっかり頭から抜け落ち、副総帥から向けられている視線に俺は気付いていなかった。
1クールアニメで例えると10話まで終わったくらい