転生したらなんかカードゲーム世界のライバルポジになってた 作:大きいホクロ
そして見つかることはない。
ファイティングライフ 竜武乱閃 収録カード
『生贄村の番犬』フレーバーテキスト
「用務員さんおはよー」
「おーおはようー」
「おはようございまーす」
「おはよう」
「よお悪ガキ!おはよう!」
「………おはよーございまーす」
何故かここで用務員をしているDFCのオッサンに挨拶するだけでその場を離れる。
「まあ待てよ」
つもりだったのだが引き止められた。
「なんだよ…」
「俺は悪ガキ君がしっかり学校に馴染めてるかが心配なんだぜ。生徒会なんか入ってちゃんと周りと協調性持って関われてるか?」
余計なお世話過ぎる。こいつは俺の保護者か何かのつもりなのだろうか?
「別にしっかりやれてるよ。…じゃあな」
「おう。ああそうだ副総帥から言伝預かってんだよ…」
オッサンは急に小声になった。
「生徒会長には気をつけろ」
生徒会長、ね………
思い返すのは生徒会四天王とのファースト・コンタクトだ。
入学前日に俺は顔合わせ等のために生徒会室を訪れていた。
「はじめまして、悪道ゼンです」
「僕は三月ノゾムだ、よろしくね」
「二ノ宮ザンセツだ、よろしくな。試験の動画見たぜ、やるじゃねぇか」
「よろしくね悪道君、私は会長の皇道ススム。それにしてもやっぱり親子ね。ツクルさんの面影を感じるわ」
今なんて言った?“ツクルさん”?
「……母さんの知り合いなのか?」
ツクル…悪道ツクル。それは俺の死んだ母の名前だった。
「ええ、昔お世話になったの。それと…焦って敬語忘れてるわよ?」
「ッチ…すいません」
やり辛い相手だ。
「活きが良い子は好きよ。改めてよろしくね、悪道ゼン君。生徒会にその名を残し続ける事を期待しているわ」
生徒会長は母さんを知っていた。
そしてただの知り合いが下の名前で“さん”付けするだろうか?
元から懸念もあったが先ほどの副総帥の忠告がより生徒会長を警戒させる。
そんな事を考えながら校舎に入ると、坊主頭がやたらと目につくことに気が付いた。
恐らく二ノ宮先輩のテストに不合格だった者たちだろう。
男女関係なく坊主頭が大量だ。
「おはようございます、ゼン様」
「宵闇か…」
相変わらず全身真っ黒である。
春はいいが夏はどうするんだこいつ?
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
そこら中に居る丸刈りをスルーして俺たちは教室に向かった。
教室の中に何人か丸刈りが増えていた。
昼休みに特にやることもなく窓の外の広い校庭を眺めていると、遠目に見ても目立つ甲冑が視界に入った。
入試で勝導と組んでいた奴だろう。
そこそこ強いんだろうが別に良いか、と視線を外そうとすると突然宵闇が目の前に現れた。
「っ…!?おま…いつの間に…」
「ゼン様、二ノ宮様がファイトするようです」
「二ノ宮先輩がか…相手は?」
「武家ミコト様とでございます」
武家ミコト、つまり甲冑だ。
「なるほどな。……見に行くか」
二ノ宮先輩の戦いは正直少し気になっていた。
二ノ宮先輩はどうせ入試を受けた俺の手の内は知っているし俺が手の内を見てもお互い様だろう。
「くっ……これが、生徒会四天王の実力…」
「なかなか骨がある奴だったな。だが終わりだ、行け!『氷山の大男』!」
「くっ…私の負けだ…」
「ミコトさん!」
「ミコト!大丈夫っすか!?」
「武家っ!!」
遠巻きに眺められる位置で観戦していたが、二ノ宮先輩の圧勝だった。
負けた武家の近くには勝導と丸刈りと捻咲がいた。
………捻咲?そう言えば勝導と同じクラスになってたなあいつ。
なんか凄い味方ヅラしながら武家に駆け寄ってる…。
「さて…武家とか言ったか?今の勝負でお前の強さはよく分かった。根性と実力も両方ある程度ある。だけどな、罰は与えなきゃ不公平ってもんだ…他の俺に負けた奴らに示しが付かない。バリカンを渡してやれ」
バリカンを持った二ノ宮の取り巻きが武家にそれを差し出す。
セルフでやらせるのかよ…鬼だな二ノ宮先輩。
「…………罰は受け入れる」
「待ってくれっす!俺が相手っす!」
丸刈りになってるから気付かなかったがあいつ「す」かよ…。
「お前は駄目だ。既に丸刈りだろ」
「じゃあ、僕なら良いのかな?」
そう言うのは勝導だった。
「ああ、良いぜ。だけどお前の頭丸めるだけじゃ2人分は釣り合わない。足りない分を何で補う?」
「ユウキ殿…私のことは気にしないでくれ…」
「放っておけないさ。じゃあこういうのはどうかな、僕が負けたら僕とシラユリが頭を丸めるよ」
「は!?待ちなさいよユウキなんで私まで髪の毛かけなきゃいけないのよ!」
「大丈夫、僕は勝つさ」
「良いぜ。乗ってやる」
「ヤバっ……ちょっとユウキ絶対勝ちなさいよ!」
勝導の周りは相変わらず賑やかだ。
あの捻咲とすら仲良くやっているようである。
正直勝導が負ける気はしないし捻咲の髪は守られるだろう。
これが「す」だったら俺が……。
「あら?悪道久しぶりね」
「雅か…あっちに混ざらなくていいのか?」
「今はちょっとまだね……今はまだユウキに甘えちゃう」
雅の実力は副総帥も褒めていたし勝導無しで合格もしている程度には強いはずではある。
「丸刈りにはされてないんだな」
「あんな露骨に手加減してる奴らには負けないわよ」
「手加減してるのか雑魚なのかどっちなんだろうな」
「まあ先輩の顔立ててやりなさい」
雅は叩き直す会を軽く倒せるくらいは強いらしい。正直以前戦った時より楽しそうだ。
勝導はどうせ二ノ宮先輩に勝つ。
分かりきった対戦を見るくらいなら俺だって少し遊びたい。
「どうだ、一戦やってみるか?」
「ちょうど良いわ、いつかの借り返してやるわ」
どうやら向こうも乗り気なようで助かる。
俺と雅は場所を移して対戦を始めた。
「終わりだ。『生贄村の番犬』で攻撃」
「俺の勝ちだ」
「私の負けね」
「強くなったな。小学生の頃とは大違いだ」
プレイングが拙かった小学生の頃とは比べ物にならない程に雅は成長していた。
恐らく『彷徨いの龍』を軸に据えていた頃だったら俺は負けていただろう。
「一緒に戦いたい男がいるからね。そいつはアンタと同じくらい強いから…だから絶対私もアンタ達に並ぶ」
「楽しみにしておく」
「吠え面かかせてやるからみてなさい」
そう言いながら雅は教室に帰って行った。
俺も教室に戻る事にする。
………何か忘れている気がするが、普段ほど強い引っ掛かりでは無いから些細な事だろう。
勝導視点相性と実力的に負ける事が無いと冷静に分析して賭けてます。